戦国時代の中国であれば、現在のような天変地異は「大乱の前兆」と占うであろう。皇帝の振る舞いが悪いので天の怒りを買っている印。近く、政治的大乱が起こるという占いが出るにちがいない。習近平氏にとっては、なんとも気懸りな話であろう。
中国では、「南船北馬」といわれている。字義通りに言えば、南は水が豊かで北は馬で旅するということ。その南で大干ばつである。これまでは、水力発電が止まってしまい、工場の操業ストップが大ニュースになった。農産物の被害も甚大なのだ。
『ロイター』(8月28日付)は、「中国・長江流域で記録的水不足、農産物の被害甚大 停電も」と題する記事を掲載した。
中国はこの夏、長江流域が記録的な猛暑と水不足に見舞われ、農産物が甚大な被害を受けた。収穫期が迫る中、熱波は収まり始めているが、政府は農家に可能な限り作物の植え直しや切り替えを促すなど、対応に追われている。
(1)「長江流域は4億5000万人余りの生活を支え、農業生産が全国の3分の1を占めるが、今夏は70日以上にわたり異常な高温と雨不足に襲われた。向こう10日間で降雨が予想されるものの、中部江西省の鄱陽湖近隣の農家は、もう熱波の打撃から立ち直るのは難しいのではないかと気をもんでいる。長江とつながる鄱陽湖はほとんど干上がっている」
長江流域は、中国の心臓部である。中国の人口と農産物の約3分の1占める。ここへ、記録的な干ばつが襲っている。経済に大きな打撃だ。
(2)「農業省は23日、農家に対してコメを収穫・貯蔵するとともに、今後数週間は穀物の生育を強化する対策をとるよう呼びかける緊急の通達を出した。既に干ばつで大きな被害を受けている地域では、サツマイモなどの晩秋の作物に切り替えるよう勧めているが、容易ではない。江西省の省都、南昌郊外の村で農業を営むフー・バオリンさん(70)は「土地がないから他の作物への切り替えはできない」と話す。菜種やゴマなどの生育状況は平年に比べて極端に悪く、ザボンのサイズは通常のわずか3分1だ」
ザボンのサイズは、通常のわずか3分1という。とても商品にはならない。米の栽培には、この時期に干ばつでは全滅である。大変な災難に出くわしたものだ。
(3)「近くの井戸は枯れてしまった。池は10日ほど前に完全に干上がり、その周囲をガチョウの群れが所在なげにうろつくばかり。村人は近隣で発生する山火事とも闘った。「これを見せようとして、わざわざ連れて来たわけじゃない。(村の)どこへ行ってもいい。まったく同じだ」。農業省は23日、猛暑が秋の穀物生産に「深刻な脅威」をもたらすと警鐘を鳴らし、地方自治体にさらなる水の確保に「全力を尽くす」よう促した。国営テレビCCTVによると、最も被害が大きかった四川省は25日にドローンが配備され、人工降雨作戦が展開されたほか、長江沿いの他の地域では消防士を動員して乾き切った作物への散水が行われた」
夏の作物は、ほぼ全滅であろう。秋の穀物も、水不足で種まきができないにちがいない。
(4)「アナリストは最も生産への被害が大きいのはコメとみている。シドニーの農業ブローカー会社IKONのオレ・ホウエ氏は「熱波の影響が最も大きいのはコメだと思う。トウモロコシにも影響は出るだろうが、コメほどではない」と言う。中国はコメの消費と輸入が世界最大。米農務省によると、中国はそもそも2022/23年のコメ輸入が過去最高の600万トンと推計されていた」
干ばつによる農産物被害では、コメが最大の被害を受けているという。もともと、コメの自給率は100%でないから、輸入に依存せざるをえない。小麦がウクライナ侵攻で不足しているので、世界的にコメへ需要がシフトしている。中国の干ばつで、コメ需要は一段の増加になる。
(5)「雨不足は東海岸に位置する浙江省や江蘇省など長江の下流域にも影響が及んでいる。国土資源省は25日、両省に挟まれた太湖に7月中旬から長江の水を5億立方メートル引き込んだにもかかわらず、水位が過去20年間で最低になったと発表した。資源省は11日、干ばつは既に耕地約2万2000平方キロメートル、家畜35万頭に影響を与えたと発表したが、最終的な被害はこれをはるかに上回る公算が大きい」
歌謡曲「無錫(むしゃく)旅情」に唄われているあの太湖の水位が、過去20年間で最低という。ウソか真か知らないが、「真珠」を養殖していると言っていたが、それも不可能であろう。ともかく、甚大な被害が出ていることは間違いない。