勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年08月

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    戦国時代の中国であれば、現在のような天変地異は「大乱の前兆」と占うであろう。皇帝の振る舞いが悪いので天の怒りを買っている印。近く、政治的大乱が起こるという占いが出るにちがいない。習近平氏にとっては、なんとも気懸りな話であろう。

     

    中国では、「南船北馬」といわれている。字義通りに言えば、南は水が豊かで北は馬で旅するということ。その南で大干ばつである。これまでは、水力発電が止まってしまい、工場の操業ストップが大ニュースになった。農産物の被害も甚大なのだ。

     


    『ロイター』(8月28日付)は、「中国・長江流域で記録的水不足、農産物の被害甚大 停電も」と題する記事を掲載した。

     

    中国はこの夏、長江流域が記録的な猛暑と水不足に見舞われ、農産物が甚大な被害を受けた。収穫期が迫る中、熱波は収まり始めているが、政府は農家に可能な限り作物の植え直しや切り替えを促すなど、対応に追われている。

     

    (1)「長江流域は4億5000万人余りの生活を支え、農業生産が全国の3分の1を占めるが、今夏は70日以上にわたり異常な高温と雨不足に襲われた。向こう10日間で降雨が予想されるものの、中部江西省の鄱陽湖近隣の農家は、もう熱波の打撃から立ち直るのは難しいのではないかと気をもんでいる。長江とつながる鄱陽湖はほとんど干上がっている」

     

    長江流域は、中国の心臓部である。中国の人口と農産物の約3分の1占める。ここへ、記録的な干ばつが襲っている。経済に大きな打撃だ。

     

    (2)「農業省は23日、農家に対してコメを収穫・貯蔵するとともに、今後数週間は穀物の生育を強化する対策をとるよう呼びかける緊急の通達を出した。既に干ばつで大きな被害を受けている地域では、サツマイモなどの晩秋の作物に切り替えるよう勧めているが、容易ではない。江西省の省都、南昌郊外の村で農業を営むフー・バオリンさん(70)は「土地がないから他の作物への切り替えはできない」と話す。菜種やゴマなどの生育状況は平年に比べて極端に悪く、ザボンのサイズは通常のわずか3分1だ」

     

    ザボンのサイズは、通常のわずか3分1という。とても商品にはならない。米の栽培には、この時期に干ばつでは全滅である。大変な災難に出くわしたものだ。

     

    (3)「近くの井戸は枯れてしまった。池は10日ほど前に完全に干上がり、その周囲をガチョウの群れが所在なげにうろつくばかり。村人は近隣で発生する山火事とも闘った。「これを見せようとして、わざわざ連れて来たわけじゃない。(村の)どこへ行ってもいい。まったく同じだ」。農業省は23日、猛暑が秋の穀物生産に「深刻な脅威」をもたらすと警鐘を鳴らし、地方自治体にさらなる水の確保に「全力を尽くす」よう促した。国営テレビCCTVによると、最も被害が大きかった四川省は25日にドローンが配備され、人工降雨作戦が展開されたほか、長江沿いの他の地域では消防士を動員して乾き切った作物への散水が行われた」

     

    夏の作物は、ほぼ全滅であろう。秋の穀物も、水不足で種まきができないにちがいない。

     


    (4)「アナリストは最も生産への被害が大きいのはコメとみている。シドニーの農業ブローカー会社IKONのオレ・ホウエ氏は「熱波の影響が最も大きいのはコメだと思う。トウモロコシにも影響は出るだろうが、コメほどではない」と言う。中国はコメの消費と輸入が世界最大。米農務省によると、中国はそもそも2022/23年のコメ輸入が過去最高の600万トンと推計されていた」

     

    干ばつによる農産物被害では、コメが最大の被害を受けているという。もともと、コメの自給率は100%でないから、輸入に依存せざるをえない。小麦がウクライナ侵攻で不足しているので、世界的にコメへ需要がシフトしている。中国の干ばつで、コメ需要は一段の増加になる。

     


    (5)
    「雨不足は東海岸に位置する浙江省や江蘇省など長江の下流域にも影響が及んでいる。国土資源省は25日、両省に挟まれた太湖に7月中旬から長江の水を5億立方メートル引き込んだにもかかわらず、水位が過去20年間で最低になったと発表した。資源省は11日、干ばつは既に耕地約2万2000平方キロメートル、家畜35万頭に影響を与えたと発表したが、最終的な被害はこれをはるかに上回る公算が大きい」

     

    歌謡曲「無錫(むしゃく)旅情」に唄われているあの太湖の水位が、過去20年間で最低という。ウソか真か知らないが、「真珠」を養殖していると言っていたが、それも不可能であろう。ともかく、甚大な被害が出ていることは間違いない。

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    中国は古い重商主義の虜

    中国は古い重商主義の虜

    政府への不信感が膨らむ

    国威発揚でインフラ投資

    利下げ招く人民元安相場

     

    中国経済にとっては、不運であろう。不動産バブル崩壊とロックダウンが重なったことだ。中国が仮に市場経済国であれば、先進国並の対応策を取って、ロックダウン(都市封鎖)による経済圧迫から逃れられたはずだ。

     

    中国の権威主義は、それを許さなかった。習近平氏が、前例のない国家主席3期目を目指しており、ゼロコロナ政策を放棄してロックダウンを中止すれば、習氏の過去の成功物語を否定することになるからだ。「一将功成りて万骨枯る」という諺どおり、習氏の国家主席3期目実現のため、ロックダウンが継続されている。

     


    習氏は、今秋にめでたく国家主席3期を実現するというのが大方の見方である。ただ、ロックダウンはそれに合わせて中止すれば、これまでの意図が丸見えということから、来年春まで継続すると見られている。そうなると、不動産バブル崩壊の後遺症とロックダウンの経済的な被害が重なる「複合不況」によって、中国経済はどういう状態になるか。想像するのも恐ろしい結果が見え隠れしている。

     

    中国は古い重商主義の虜

    中国は、個人レベルのロックダウン被害を救済する措置を行なっていない。先進国では、国民へ現金給付し、パンデミックの被害を補う政策を実施した。中国では、そういう政策が見られないのだ。自動車購入者へ補助金を出したが、これはパンデミック被害の救済とは言い難い。結局、無差別での個人救済を無視している裏には、中国政府にある種の「信念」が存在していると見られる。それは、マルクス・レーニン主義とは無縁の「重商主義」思想である。

     

    重商主義とは、16~18世紀にかけた約300年間、欧州で支配的な経済政策であった。輸出を最大化し、輸入を最小化する経済政策である。特に、絶対君主制を標榜する国家では、軍隊や官僚による体制維持のために国富増大が必要であった。そのために、貿易黒字による外貨準備蓄積に励んだ。中国共産党は、重商主義に則って国民を富ませることより先ず、国家を成長させて世界覇権を獲得する目標に向かっている。これが、パンデミック下でも国民生活を顧みない背景である。

     

    重商主義のモデル国は英国であった。この重商主義に反旗を翻したのが、かのアダム・スミスである。自由な貿易による市場経済が、国を富ませ国民生活を豊かにすると主張した。現在の市場経済論の先駆者である。いうまでもなく、先進国はすべて市場経済による資本主義だ。中国の重商主義は、この資本主義を目の敵にして挑戦している。いかにも時代錯誤の振る舞いだが、当事者は大真面目であるから手が付けられないのである。

     


    中国の悲劇は、政府と家計が別々の方向を向いていることだ。中国共産党は重商主義を信奉しており、国家の富を最大限大きくすることを目標に据えている。しかし、国民は市場経済の中で生活している。国家が、パンデミック下でも国民生活に何らの救済の手を差し伸べない以上、「自衛」せざるを得ない事態に追込まれている。米国では、国民が政府から多額の救済金を給付されたので、焦って仕事を探さない珍現象をもたらしている。中国では、米国と真逆なことが起こっているのである。

     

    中国経済は、14億の国民が最終的に動かしている。この単純は事実が、中国経済をこれまでにない「複合不況」へ追込んでいる。個人消費が落込み、経済循環の歯車を止めているのだ。

     

    個人は、ロックダウンで明日の仕事がいつ封鎖されるか分らない恐怖の中で生きている。その日に得た収入は、極限まで切り詰め貯蓄して、生活防衛に走っているのである。一方、不動産バブル崩壊はもはや明らかである。新規に住宅を購入する意欲は、極端に低下している。

     


    住宅購入意欲を削いでいる裏には、購入契約を結んだマンションが、予定通りに竣工せず工事が止まっていることが影響している。消費者は、不安から住宅ローン支払いを拒否する不払い運動を始めた。その数は、全土で320棟以上に及んでいる。住宅ローン支払いが止まれば、銀行にとって即、不動産開発企業向け融資は不良債権化する。中国の信用機構へ重大な影響を及ぼしかねない事態だ。

     

    政府への不信感が膨らむ

    ロックダウンで、家計は支出をギリギリまで切り詰めて貯蓄に走っている。住宅購入者は、住宅ローンを払っても住宅が手に入るか不明である。この二つが重なり合った時、中国国民はこれまでにない「政府不信」に陥るにちがいない。それは、中国の経済成長の基盤を崩壊させることだ。後で取り上げるが、金利を下げても「政府不信」が祟って、借入れが増えない「流動性のワナ」という最悪事態へ落込んでいる。(つづく)

     

    次の記事もご参考に

    2022-08-08

    メルマガ384号 中国「台湾大演習」、戦争への意思表示 米軍に勝つ自信なく「短期決戦狙う」

    2022-07-18

    メルマガ378号 「地獄の1丁目」中国経済、住宅バブル崩壊が直撃 覇権争い脱落

     


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    朝鮮李朝は、国際情勢の変化について無関心であった。中国の属国であったことが、そういう外交音痴にさせたのであろう。この悪弊は、今の韓国にも引継がれている。中国の台湾侵攻を「対岸の火事」と見ているからだ。

     

    韓国の貿易は、台湾海峡を通らざる得ないことを忘れている。中国軍が今回、台湾海峡を封鎖する大演習を行なったが、あれは台湾侵攻の際に現実化するものである。韓国は、その際に経済面で大きな負担を強いられる。ましてや、台湾海峡は公海である。公海封鎖は、国際法違反である。米同盟国が、この封鎖を実力で排除すれば、韓国も参加せざるを得ない立場だ。こういう認識が、韓国にはゼロという国際情勢音痴ぶりである。

     


    『ハンギョレ新聞』(8月24日付)は、「THAAD、再び韓中対立の雷管に『台湾問題』で望まぬ紛争に巻き込まれる危険性も」と題する記事を掲載した。

     

    THAAD(高高度防衛ミサイル)は韓中関係においては活火山であり、休火山だ。2017年のTHAAD国内配備と中国の「THAAD報復」で両国対立が爆発して凍りついた韓中関係は、「THAAD三不」(三つのノー:THAADを追加配備せず、米国のミサイル防御システムに参加せず、韓米日軍事同盟に参加しない)で封印された。

     

    (1)「中国はTHAADの韓国国内配備を、米国の対中国包囲措置に韓国が加わったことだとみなしている。特に中国は、台湾紛争の際、THAADが自国の軍事行動の足を引っ張る可能性があると疑っている。今月2~3日のナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で台湾海峡危機が高まったが、国内では依然として「対岸の火事」と考える人が多い。しかし、専門家たちの考えは違う」

     

    韓国のTHAAD設置が、中国に脅威であるとすれば、それだけで戦争抑止の役割を果たす筈だ。台湾問題が、韓国にとって無縁の問題と見ているのは、台湾海峡が公海であり韓国にとって重要は「シーレーン」という認識欠如がもたらす欠陥である。はっきり言えば、「ボケ」ているのだ。

     


    (2)「台湾海峡の軍事的緊張が高まった9日、国策研究機関の韓国国防研究院が、韓国と米国の専門家28人に対し、台湾海峡有事の際の在韓米軍投入の可能性を尋ねた。大方の専門家たちが、台湾有事の際には在韓米軍が投入されるだろうと答えた。特に、中国の台湾本島攻撃(19人)や中国と台湾の全面戦争(21人)など、強い武力衝突が起きるほど、在韓米軍の投入を予想する専門家が多かった。台湾有事の際に在韓米軍が投入されれば、韓国が中国を牽制・攻撃する発進基地になる。ペロシ議長の台湾訪問に反発し、今月5日に中国が台湾包囲訓練を行った時、在韓米軍U-2偵察機が台湾海峡近くに飛行したという。同偵察機はすでに2020年から台湾海峡、西海の山東半島と渤海湾などで中国を監視・偵察している」

     

    台湾有事に、在韓米軍が防衛に出動するのは「イロハのイ」であろう。在日米軍も出動する以上、当然の行動だ。韓国には、台湾海峡が重要なシーレーンという認識がゼロである。台湾海峡は公海である。それが、中国によって封鎖されれば排除することは当然の責務なのだ。

     


    (3)「台湾海峡をめぐる米中の軍事対立と危機の高まりは、韓中関係にも直接的な悪影響を及ぼす。世宗研究所のチョン・ジェフン研究委員は「最近の米中軍事安全保障争いと台湾海峡危機」という題名の論文で、「台湾海峡で米中間武力紛争が激化し、中国が米海軍と空軍を目標に攻勢的行動に出た場合、米国は足りない自国の海・空軍戦力を補うため、同盟国に戦略支援を要請する可能性も高い」と主張した」

     

    このパラグラフでは、必ず起こることを指摘している。韓国はその際、どのように対応するのか。中国へ義理立てして韓国軍の出動を拒否すれば、どういう事態がその後に起こるか。想像するべきだろう。米韓同盟は、根本から揺らぐであろう。世界秩序からの脱落である。

     

    (4)「イ・ジョンソプ国防長官は11日の記者懇談会で、台湾海峡での紛争に在韓米軍が投入される可能性について「米国側が至急そのように運用する状況があるとすれば、韓国国民が懸念していることを尊重しながら決めることになるだろう」とし、「韓国が過度に懸念する必要はない」と述べた。イ長官の説明は、2006年1月に韓米政府が在韓米軍の「戦略的柔軟性」に合意して発表した共同声明における「米国は韓国国民の意志と関係なく北東アジア地域の紛争に介入することはないという韓国の立場を尊重し」という内容に基づいたものだ」

     

    韓国は、2006年当時の平穏な国際情勢を前提にした「戦略的柔軟性」を盾に取って、米軍の行動を制限できるはずがない。現状は、はるかに切迫しているのだ。戦争という「一刻を争う」時に、そんな「古証文」を持出しても意味はないだろう。

     

    (5)「ハンギョレ平和研究所のチョン・ウクシク所長兼平和ネットワーク代表は「2006年の韓米戦略的柔軟性合意の共同声明の内容を根拠に、韓国領土を利用する米国軍事力に対する主権的統制案を用意し、韓国の意思と関係なく米国と中国の軍事衝突に関与することがないようにしなければならない」と指摘した」

     

    真の平和を維持するには、抑止力を持つことである。ロシアウのクライナ侵攻でも、それを立証している。ウクライナが、NATO(北大西洋条約機構)へ加盟していれば、侵攻を防げたであろう。台湾は、形式的には「孤立無援」の状態である。中国が、もっとも侵攻しやすい状態である。ウクライナと同じ状況にある。朝鮮戦争の被害国である韓国は、台湾問題に付いてどうあるべきか。真摯に考えるべき立場にある。韓国は、国連軍によって守られたのだ。

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    ロシアは今年7月11日以降、フィンランド国境近くに建設された液化天然ガス(LNG)施設で、相当量の天然ガスを焼却しているという。バルト海を通じてロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」で、欧州へ販売予定だったものと推測されている。

     

    ロシアが、ウクライナ侵攻さえしなかったなら、前記の天然ガスは欧州へ供給されていた筈だ。ドイツ外相は、「ロシアとはウクライナ侵攻前の状態に戻らない」と宣告。ロシアは欧州最大の「親ロ国」ドイツを失った。

     


    米『CNN』(8月26日付)は、「ロシア、大量の天然ガスを焼却処理 欧州への供給分か」と題する記事を掲載した。

     

    エネルギー調査企業「リスタッド・エナジー」は8月27日までに、欧州向けの天然ガスの供給量を厳しく絞っているロシアが1日あたり約1000万ドル(約13億8000万円)相当のガスを焼却していると推測する分析結果を公表した。

     

    (1)「同社は放射熱の水準を調べた衛星監視データに基づき、ロシアは今年7月11日以降、フィンランド国境近くに建設された液化天然ガス(LNG)施設で相当な量の天然ガスを焼失させていると指摘。これらのガスは通常ならば、バルト海を通じてロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」を経由して欧州へ流れるはずだったものだろうとも推察した」

     


    ロシアの天然ガスは、パイプライン「ノルドストリーム1」を通じて欧州へ供給される筈だった。それが、ウクライナ侵攻によるEUとの対立でキャンセルとなって、仕方なく焼却処分にしていると見られる。

     

    これまでのロシアと欧州の結合強化は、米国が危惧していたものである。ロシアには、2014年のクリミア半島侵攻以来、地政学的なリスクがつきまとっていたからだ。欧州はそれを軽視して、経済要因(エネルギー)だけで接近して、現在のような経済制裁を科し、自らも傷つくリスクを背負った。改めて、米国の「慧眼」に驚いているところだろう。

     


    (2)「同社は先週公表した分析結果で、今月17日時点での欧州市場のガス価格が100万英国熱量単位(MMBtu)あたり67ドルだったことを踏まえれば、ロシアが燃やしているガスの量の価格は1日約1000万ドルと推定した。その量は、1日あたり約434万立方メートルで、年間ベースに換算した場合、16億立方メートルに相当。欧州連合(EU)全体のガス需要のうち約0.5%に匹敵するとした。焼却処分の理由は不明とし、今年後半に稼働予定の同LNG施設の試験操業の一環や組織内部での調整不足が原因の可能性などに言及。政治的な判断が絡むこともあり得るとした」

     

    原油や天然ガスは操業が始まると、途中で井戸に蓋をして止めることができない宿命を負っている。一度、止めてしまうとそれ以降の生産に大きな障害を伴うという。ロシアにとって、欧州が天然ガス購入をキャンセルしたことで、代替販売先を確保できない限り、大きな損害になる。

     

    (3)「リスタッド・エナジーは、燃えさかる炎は非常に鮮明であることからロシアと友好的な政治関係が戻った場合、欧州へ送ることが可能な準備を整えていることを示唆もしていると述べた」

     

    ロシアが、敢えて焼却処分にしているのは、「いつでも供給できますよ」というゼスチャーに見えるという。だが、欧州最大の経済国ドイツは、ロシアへ厳しい姿勢だ。

     

    米『CNN』(8月27日付)は、「ウクライナ侵攻前の世界情勢の復元は不可能、独外相」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのベアボック外相は27日までに、ロシアによるウクライナ侵攻が半年の節目を迎えたことを受け、恒久的な変質を強いられた世界情勢はもはや以前の構図には戻り得ないとの認識を示した。

     


    (4)「首都ベルリンでアイスランドのギルバドッティル外相と共に臨んだ記者会見で述べた。ベアボック氏は、ロシアのプーチン大統領は侵攻開始直前の2月23日の最後の転機でも数多くの話し合いの提案に応ぜず、自国を現在までこれまでにない長い闇夜の状態に陥らせたと主張。この間、悔恨の姿勢も見せず真摯(しんし)な交渉も持ちかけなかったとした。こういう情勢のなかで、仮に侵攻前の国際情勢の復元を求める声が出たとしても、その意図は十分に理解出来るが、かつての世界はもう存在し得ないと指摘。「過去半年で起きたことは元に戻せない」と説いた」

     

    プーチン氏が、ウクライナ侵攻前に欧州主要国首脳との話合いで真摯に応じず、ドイツはロシアの開戦責任を鋭く追及する姿勢を見せている。具体的には、経済制裁の厳守だ。これまでの「独ロ」という親密な関係復元は不可能としている。つまり、ロシアからのエネルギー購入はあり得ないという強硬姿勢を見せている。ロシアのような「侵略国家」とは、関係を結ばないという絶縁宣言だ。

     


    (5)「ベアボック外相は、「この残忍な侵略戦争がある限り、ドイツは軍事援助や自衛の権利を支える努力を続ける」と宣言。一方で、ドイツ自身もバルト諸国が直面している安全保障上の脅威などを認識し、自国の防衛能力の保持に努めると強調した。一方、ギルバドッティル外相もウクライナ支持の立場にあることを表明。ロシアには侵攻の説明責任があるとし、同国に目標を達成させてはいけないとし「ウクライナは勝利を収めなければならない」と訴えた」

     

    ドイツは、ロシアという侵略国家が存在する以上、自衛力強化を行ない対抗する姿勢を明白にしている。ロシアは、エネルギー生産国として有利であるという従来通りの認識を持ち続けていれば、欧州から弾き飛ばされることは確実である。ドイツという「後ろ盾」を失ったのだ。

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    習近平氏は、一人で「ゼロコロナ政策」に酔い悦に入っているが、中国14億の人民は、明日の見通しが立たないという絶望状態に追い込まれている。周辺でわずかな人がコロナに感染すると、「一網打尽」で何万、何十万人の人々の生活歯車が止められ、閉じ込められるのだ。これでは、生活設計が立たないのだ。消費を切り詰め貯蓄に励むという「穴蔵生活」が始まっている。中国経済が凍土になろうとしているのだ。

     

    『ロイター』(8月27日付)は、「中国の消費回復は容易ならず、ロックダウンの恐怖まん延」と題するコラムを掲載した。

     

    ロックダウン(都市封鎖)の実施と解除が繰り返されている中国は、「傷」が癒えるのに時間がかかっている。電子商取引大手JDドットコム(京東商城)とスマートフォン(スマホ)メーカーの小米科技(シャオミ)の四半期決算からは、消費者が非必需品の購入を控えている様子が読み取れ、消費が急速に回復するとの期待は打ち砕かれた。消費の回復は政府の見込みよりも遅れる可能性がある。

     


    (1)「当局が上海など主要都市で実施していた厳格なロックダウンを6月に解除した後、大きな打撃を受けていたサービスセクターが持ち直したのは自然な流れだった。コロナ禍の不満を晴らす「リベンジ消費」が小売販売の回復を後押しし、政府統計によると自動車と化粧品の販売は前年比でそれぞれ14%と8%増えた。しかし、リベンジ消費は短命だった。JDドットコムが23日発表した4~6月期の売上高は市場予想を上回ったが、同社は衣料など非必需品の需要は依然として弱いとの危機感を示した。顧客はスマホなど電子製品の買い替えを先延ばしした。シャオミが19日発表した4~6月期の売上高は前年比で20%落ち込んだ」

     

    ロックダウン明けの消費は、一時的な回復を見せたが息は続かなかった。収入見通しが付かない結果である。ロックダウンが、いつ再び始まるか分らない。その恐怖感が、消費を抑制している。

     


    (2)「他にも点滅している赤信号がある。キャピタル・エコノミクスのアナリストによると、自動車販売とサービスセクターの電力消費は7月にわずかに増加したが、都市間交通機関の乗客数は引き続き低迷。キャピタル・エコノミクスが算出する中国の経済活動に関する指数によると、7月の経済生産全体は前年同月比で減少した」

     

    『ブルームバーグ』(8月26日付)は、8月の中国景気を次のように報じている。

     

    不動産市場は8月も低迷。政府が数カ月にわたり住宅ローンを増やしローン金利を引き下げるよう取り組んでいるにもかかわらず、中国の上位4 都市では販売が急減し続けている。自動車販売の伸びも7月に比べて大幅に鈍化した。記録的な干ばつに伴う電力危機や新型コロナの感染再拡大など、8月に生じた逆風は、特に中小企業の景況感を損ねている。英銀スタンダードチャータードが中小企業500社余りを対象に実施した調査は、生産活動が「大幅に減速」し、新規受注が軟化、銀行の資金調達コストが上昇したため、8月に景況感が悪化したことを示している。要するに、8月はさらに悪化する予測である。

     


    (3)「原因のほとんどは、新型コロナウイルスの拡大を厳格に抑える「ゼロコロナ」政策にある。人々はいつ、どこで実施されるか分からないロックダウンに不意に巻き込まれるリスクを計算に入れなければならない。上海のイケアで当局が顧客を店内に閉じ込めようとした時、脱出しようとする顧客の顔に浮かんだパニックの表情を見れば明らかだ。この夏には海南島で新型コロナの感染が確認され、約8万人の旅行客が足止めを食らった」

     

    ロックダウンが、市民に恐怖感を与えている。中国国民は世界で唯一、習氏の「モルモット」実験材料にされている。その結果は、経済的に大きなマイナス点になるが、習氏は自分の「国家主席3期目」の実現しか眼に入らないのだ。

     


    (4)「だからといってオンラインでスマホが買えなくなるわけではない。危険なのは、消費者信頼感の悪化が慢性化することだ。例えば日本ではデフレ状態が何年も続いたため、物価は下がり続けるものだとの考えが定着し、買い物を先延ばしするのが当たり前になった。日本がなんとかこうした消費行動を変えるまで長期にわたり景気は低迷している。しかも、その変化はまだ道半ばだ。中国の貯蓄率は既に世界最高水準だが、最近の中銀の調査によると、消費するより貯蓄したいと答えた人の割合は58.3%と、過去20年間で最高となった」

     

    ロックダウンは、消費者の信頼感を奪っている点が重大問題である。将来見通しが付かない点では、バブル崩壊後の日本経済と瓜二つである。中国は、無自覚のうちに日本の辿って来た道に嵌り込んでいる。「反日」中国が、日本の歩んだ道へ迷い込んでいる。皮肉なことだ。

     


    (5)「景気低迷の広がりを考えて、民間部門は投資と雇用を圧縮している。『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』によると、電子商取引大手アリババは4~6月期に人員を1万人近く削減した。中国政府が消費者の信頼感回復に手間取れば、悲観論が自己強化されるリスクは大きくなる」

     

    アリババだけでない。他の大手通販も同じである。昨年7月の「共同富裕論」以来のIT関連ビジネスへの締め付けてきた結果である。国民から雇用を奪っているのだ。

     

    つぎの記事もご参考に。

    2022-08-22

    メルマガ388号 習近平の「大罪」、27年後の建国100年 人口7億人「亡国の淵」

     

     

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