ロシアのウクライナ侵攻は、北朝鮮による韓国侵略と同じ構図である。韓国の左派メディアは、中ロへの親近感が先立ち、ウクライナへの支援に及び腰である。こういう歪んだ安保観は、韓国の安全保障問題にとって極めて危険である。だが、韓国左派メディアはそのことに気付かないという幼児性を見せている。驚くべきことだ。
北東アジアの安保体制を確たるものにするには、日米韓三ヶ国が緊密に連携しなければならない。こういう客観情勢の中で、韓国左派政党と左派メディアは、日本が加わる日米韓三ヶ国合同軍事演習に、反日を理由に反対している。日本の自衛隊が、韓国の安全を守るために参加していることに、感謝はなく難癖を付けて反対しているのだ。内心では、韓国が北朝鮮によって攻められ、統一されることを願っているからであろう。彼らには、自由と民主主義を守ろうという気迫はゼロだ。これが、韓国民族派(左派)の偽りない心情である。
韓国左派メディア『ハンギョレ新聞』(9月30日付)は、「韓日間の懸案解決なき中での韓米日軍事訓練を懸念する」と題する社説を掲載した。
韓米海軍と日本の海上自衛隊が30日、東海(注:日本海)公海上で対潜水艦訓練を実施する。韓米日の共同軍事訓練は2017年4月以後5年6カ月ぶりで、東海で実施されるのは初めて。北朝鮮の軍事的脅威の危険が再び高まったのは事実だが、韓日間の懸案解決の進展がない状況で、韓国政府が日本との軍事協力だけを急ぐのは懸念すべきことだ。
(1)「国防部は29日、「今回の訓練は北朝鮮の核・ミサイル対応のための韓米日軍事協力を2017年以前の水準に復元していくという国防部の措置の一環であり、特に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射能力を備えた北朝鮮の潜水艦に対する探索・識別と追跡能力を向上させるために進めるもの」だと説明した。韓米日訓練に慎重だった文在寅(ムン・ジェイン)政権の政策を否定し、今後3カ国軍事訓練を持続的に実施するなど、安全保障をめぐる協力を強化するという政策変化を明らかにしたのだ」
文政権の安保政策は、北朝鮮が攻めてこないという前提の上に組立てられた「おとぎ話」である。北朝鮮の金正恩氏は、文在寅氏を全く信じていなかったことは、彼が米トランプ氏へ当てた書簡で明らかになっている。韓国は、北朝鮮に騙されていたのだ。
韓国の前政権は、こういう不確かな前提で安保政策を立てていたのだ。現政権が、これを現実に引き戻して、日米韓三ヶ国合同軍事演習を始めるのは当然のこと。日本は、これに協力しているに過ぎない。
日本の安全保障にとって重要な国々は次のようなランクだ。米国、豪州、インド、ASEAN、そして韓国の順序である。日本の防衛の主要舞台は、「インド太平洋地域」になっている。朝鮮半島は、「お呼びでない」のだ。
(2)「北朝鮮の核兵器の高度化と核武力政策の法制化、韓国を狙った核先制使用の威嚇、朝中ロの密着などを考えると、安全保障態勢を強化していく必要はある。だからといって、非常に敏感な事案である日本との軍事協力を世論の同意なしに急いで進めるべき理由はない。強制動員問題、日本の経済報復措置など懸案の解決に全く進展がなく、日本は「韓国が国際法を違反した」と主張しながら、謝罪と賠償の意向も示していない。このような状況で、軍事的協力だけを先に強化することを国民が納得できるだろうか。しかも日本が「領土」と主張して紛争地域化を試みている独島(ドクト)から遠くない東海上の公海区域で訓練を行うとなると、警戒感が大きくならざるをえない」
下線のような韓国の主張に対して、日本が出した回答は「インド太平洋安全保障」である。「クアッド」(日米豪印)という4ヶ国の緩い連帯だが、これはインドを取り込む上での戦略である。時間を掛けて、「非同盟・中立」外交のインドを西側諸国へ取り込む狙いだ。すでに、米印関係は格段の進展を見せている。米国はインドへの武器供与とインドでの武器生産に協力を約束している。これを取り持ったのが、安倍元首相である。
先ごろ、インドのムディ首相がロシアのプーチン大統領へ、「今は戦争しているときでない」と苦言を呈した背景に米印接近がある。韓国は、こういう外交上の機微に渡る問題から遮断されている。相変わらずの「反日論」で自己陶酔状態だ。どうぞ、いつまでも酔っていればいいだろう。日本と米国が、相手にしないだけだ。
(3)「今回の訓練は米国が対中国牽制を念頭に置いて進めてきた韓米日軍事協力の強化、それにともなう日本の軍事力強化という大きな流れと相まって、重要な分岐点になる可能性がある。台湾をめぐる米中の緊張が高まる中、韓国がどのような原則と戦略で対応するかが朝鮮半島と北東アジアの平和において重要な問題になりつつある」
日本の軍事力強化は、日米同盟の一環として行なっているものだ。同じ立場はドイツである。防衛費の対GDP比は、日本と同じ1%であった。ドイツは、それを2%に増やすと宣言した。ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)の一員としての軍備増強である。日本の日米同盟と同じ環境である。単独の防衛費増額ではない。これくらいのことが、なぜ分らないのか。その石頭に驚くのだ。