勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年09月

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    ロシアのウクライナ侵攻は、北朝鮮による韓国侵略と同じ構図である。韓国の左派メディアは、中ロへの親近感が先立ち、ウクライナへの支援に及び腰である。こういう歪んだ安保観は、韓国の安全保障問題にとって極めて危険である。だが、韓国左派メディアはそのことに気付かないという幼児性を見せている。驚くべきことだ。

     

    北東アジアの安保体制を確たるものにするには、日米韓三ヶ国が緊密に連携しなければならない。こういう客観情勢の中で、韓国左派政党と左派メディアは、日本が加わる日米韓三ヶ国合同軍事演習に、反日を理由に反対している。日本の自衛隊が、韓国の安全を守るために参加していることに、感謝はなく難癖を付けて反対しているのだ。内心では、韓国が北朝鮮によって攻められ、統一されることを願っているからであろう。彼らには、自由と民主主義を守ろうという気迫はゼロだ。これが、韓国民族派(左派)の偽りない心情である。

     

    韓国左派メディア『ハンギョレ新聞』(9月30日付)は、「韓日間の懸案解決なき中での韓米日軍事訓練を懸念する」と題する社説を掲載した。

     

    韓米海軍と日本の海上自衛隊が30日、東海(注:日本海)公海上で対潜水艦訓練を実施する。韓米日の共同軍事訓練は2017年4月以後5年6カ月ぶりで、東海で実施されるのは初めて。北朝鮮の軍事的脅威の危険が再び高まったのは事実だが、韓日間の懸案解決の進展がない状況で、韓国政府が日本との軍事協力だけを急ぐのは懸念すべきことだ。

     


    (1)「国防部は29日、「今回の訓練は北朝鮮の核・ミサイル対応のための韓米日軍事協力を2017年以前の水準に復元していくという国防部の措置の一環であり、特に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射能力を備えた北朝鮮の潜水艦に対する探索・識別と追跡能力を向上させるために進めるもの」だと説明した。韓米日訓練に慎重だった文在寅(ムン・ジェイン)政権の政策を否定し、今後3カ国軍事訓練を持続的に実施するなど、安全保障をめぐる協力を強化するという政策変化を明らかにしたのだ」

     

    文政権の安保政策は、北朝鮮が攻めてこないという前提の上に組立てられた「おとぎ話」である。北朝鮮の金正恩氏は、文在寅氏を全く信じていなかったことは、彼が米トランプ氏へ当てた書簡で明らかになっている。韓国は、北朝鮮に騙されていたのだ。

     

    韓国の前政権は、こういう不確かな前提で安保政策を立てていたのだ。現政権が、これを現実に引き戻して、日米韓三ヶ国合同軍事演習を始めるのは当然のこと。日本は、これに協力しているに過ぎない。

     

    日本の安全保障にとって重要な国々は次のようなランクだ。米国、豪州、インド、ASEAN、そして韓国の順序である。日本の防衛の主要舞台は、「インド太平洋地域」になっている。朝鮮半島は、「お呼びでない」のだ。

     


    (2)「北朝鮮の核兵器の高度化と核武力政策の法制化、韓国を狙った核先制使用の威嚇、朝中ロの密着などを考えると、安全保障態勢を強化していく必要はある。だからといって、非常に敏感な事案である日本との軍事協力を世論の同意なしに急いで進めるべき理由はない。強制動員問題、日本の経済報復措置など懸案の解決に全く進展がなく、日本は「韓国が国際法を違反した」と主張しながら、謝罪と賠償の意向も示していない。このような状況で、軍事的協力だけを先に強化することを国民が納得できるだろうか。しかも日本が「領土」と主張して紛争地域化を試みている独島(ドクト)から遠くない東海上の公海区域で訓練を行うとなると、警戒感が大きくならざるをえない」

     

    下線のような韓国の主張に対して、日本が出した回答は「インド太平洋安全保障」である。「クアッド」(日米豪印)という4ヶ国の緩い連帯だが、これはインドを取り込む上での戦略である。時間を掛けて、「非同盟・中立」外交のインドを西側諸国へ取り込む狙いだ。すでに、米印関係は格段の進展を見せている。米国はインドへの武器供与とインドでの武器生産に協力を約束している。これを取り持ったのが、安倍元首相である。

     

    先ごろ、インドのムディ首相がロシアのプーチン大統領へ、「今は戦争しているときでない」と苦言を呈した背景に米印接近がある。韓国は、こういう外交上の機微に渡る問題から遮断されている。相変わらずの「反日論」で自己陶酔状態だ。どうぞ、いつまでも酔っていればいいだろう。日本と米国が、相手にしないだけだ。

     

    (3)「今回の訓練は米国が対中国牽制を念頭に置いて進めてきた韓米日軍事協力の強化、それにともなう日本の軍事力強化という大きな流れと相まって、重要な分岐点になる可能性がある。台湾をめぐる米中の緊張が高まる中、韓国がどのような原則と戦略で対応するかが朝鮮半島と北東アジアの平和において重要な問題になりつつある」

     

    日本の軍事力強化は、日米同盟の一環として行なっているものだ。同じ立場はドイツである。防衛費の対GDP比は、日本と同じ1%であった。ドイツは、それを2%に増やすと宣言した。ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)の一員としての軍備増強である。日本の日米同盟と同じ環境である。単独の防衛費増額ではない。これくらいのことが、なぜ分らないのか。その石頭に驚くのだ。

     

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    米国は、近代海軍で先鞭を付けた国である。海洋国家ゆえに、海軍の充実に国力を賭けてきた。中国は大陸国家である。その中国が、覇権国家を目指して海軍の充実に動きだしているが、その発想法では米国と競争にならないのだ。

     

    米海軍は、無人潜水機の開発へ乗り出す。中国海軍が、他国侵略作戦を始める前から、海中でその動静を探ろうというアイデアである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月29日付)は、「米軍、大型無人潜水機を開発へ 対中国で『海中権』確保」と題する記事を掲載した。

     

    米海軍が大型無人潜水機の開発と配備を急いでいる。海中は秘匿性が高く、台湾周辺や南シナ海で戦闘が起きても接近して敵への攻撃や情報収集を実行しやすい。生産コストが低い利点もある。英国やオーストラリアと協力し、海中を制する「海中権」を中国に渡さないようにする。

     


    (1)「オースティン米国防長官は28日、西部カリフォルニア州サンディエゴの海軍情報戦争センター太平洋を訪れた。無人潜水機や無人水上艦の技術開発の現状などについて説明を受けた。オースティン氏は開発の促進に向けて「可能なかぎりの全ての協力が必要だ」と強調した。「みなさんは最先端(の技術)に取り組んでおり、努力して兵士のために革新を続けていくために私はみなさんに食ってかかっていく」と鼓舞した」

     

    米海軍は、無人潜水機や無人水上艦を開発する。試作機が完成しており後は量産化だけ。米国が超大国でいられる大きな理由は、最強の海軍力をもち、世界の海を支配しているからだ。今後も、この優位性を絶対に守らなければならない。無人潜水機や無人水上艦は、それを補強する有力手段になる。

     


    (2)「米海軍は、分散型の艦隊編成にシフトを進めている。中国軍のミサイルは精度が高く、米軍は少数の大型艦に重要機能を集中させて攻撃を受ければ戦力が一気に下がるリスクがある。対応策の一つとして打ち出したのが無人潜水機や無人水上艦の導入だ。海軍は今春、超大型無人潜水機「オルカ」の水中実験を実施した。まずは敵の脅威にさらされている海域で機雷を海底に設置する役割を想定する。海軍は多彩な能力を持たせる方針で、将来的に情報収集や電子戦の能力に加え、水上艦攻撃用の魚雷などの攻撃能力を搭載するとの見方がある」

     

    米海軍は今春、超大型無人潜水機「オルカ」の水中実験を実施している。このデータを利用して多彩な攻撃手段を備えるのであろう。同盟国の軍備増強が中国抑止力となる以上、歓迎すべきことだ。

     


    (3)「米ランド研究所のデビッド・オクマネク上級国際防衛研究員は、大型無人潜水機が情報収集や対艦攻撃能力を持つと台湾有事への対応に寄与すると分析する。「無人潜水機は有人の潜水艦に比べてとても安価で大量生産しやすい。日本の米海軍横須賀基地などに前方展開すれば脅威に対して素早く対応できる」と指摘する。米国は、中国が台湾の「統一」に向けた行動に踏み切り、その周辺で戦闘が起こった場合、多数のミサイルを発射して米軍の海上艦の接近を阻止しようとすると想定している。海中で活動する潜水機は見つかりにくい。中国の防衛網の内側に入り込み、台湾への上陸や海上封鎖を試みる中国の艦船を攻撃するシナリオが考えられる

     

    もともと、米国の原子力潜水艦部隊は強力な存在である。台湾有事の際、2隻の原子力潜水艦によって、台湾海峡へ終結する中国海軍の全艦船を24時間以内に沈没できるほどの能力がある、とされている。これに、無人潜水機が投入されれば、守りはより完璧なものになろう。

     


    (4)「米英豪の3カ国は23日の首脳声明で、海中戦力の増強に向け協力すると確認した。2023年に無人潜水機の実験に着手する予定だ。米国防総省で高官を務めたセス・クロプシー氏は「技術や運用面で相乗効果が見込める」と唱える。米国だけでなく英豪も実験データの共有により、自国での開発を早め、能力を向上させる効果を見込んでいるもようだ。米英豪は安全保障の枠組み「オーカス」の一環として、豪州が原子力潜水艦を配備できるよう協力している。だが、実現は40年代にずれ込むとの見方がある。それまで中国に対する抑止力を強めるには無人潜水機が重要だとの見方も浮上している」

     

    「AUKUS」(米英豪)は、23年に無人潜水機の実験に着手するという。すでに、試験機は多数出来上がっているのだ。これから、その効率的な使用法を編み出す段階にまで来ていることを示している。

     


    (5)「アメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー上級研究員は「(軍事上)海中能力は米国が中国よりも圧倒的に優れている唯一の分野だ」と語る。中国は海中で敵を見つける能力が現時点で比較的低いとの見方が多い」

     

    中国の潜水艦は、海中での「静謐性」が劣ることで有名である。そこで、日本の潜水艦技術を盗み出そうと必死になっている。これは、中国当事者の発言だ。日本潜水艦の高い静謐性は、門外不出である。特別なマル秘事項になっているという。 

     

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    韓国政治は今、異常な状態にある。メディアが、ユン大統領の米国発言をねつ造し、与野党抗争の火に油を注ぐ事態を招いている。およそ、メディアの「中立性」とほど遠く、「党派性」を前面に出している。先進国では考えられない光景である。

     

    この結果、国内で旧徴用工問題について静かに議論できる雰囲気でなく、韓国政府として交渉できる案をまとめることは不可能であろう。野党が、政府批判する絶好の標的にするだろう。

     

    『中央日報』(9月28日付)は、「用問題、超党派的な接近が必要だ」と題するコラムを掲載した。筆者は、魏聖洛(ウィ・ソンラク)元韓半島平和交渉本部長である。

     

    韓日首脳会談の波紋は徴用問題の過去と現在を改めて考えさせた。この波紋の基底には、徴用関連の解決法が提示されない限り韓国と正式な首脳会談をしないという日本の立場がある。

     

    (1)「日本がこうした硬直した立場を見せるまで、韓日間では長い攻防があった。前政権で大法院(最高裁)の最終判決が出て、韓国は三権分立と被害者中心主義を前に出して韓日協定上の紛争解決手続きである2国間協議と仲裁委回付を拒否し、大法院の判決の履行を模索した。国内法中心の接近だった。刺激を受けた日本は大法院の判決の履行を一切拒否し、韓日協定で終わった問題という立場を守った。国際法中心の接近だった。結局、日本は解決法がなければ首脳会談をしないという立場を固めるに至った」

     

    韓国大法院は、どうして永遠に日韓紛争の種になる徴用工問題判決を出したのか。文大統領の意に沿うような判決を出したばかりに、日韓は争わなければならない事態に陥っているのだ。韓国は国内的視点であるが、日本は国際法の視点に立って論理を組立てている。両国が、上手く組む合うことにならないのだ。

     


    (2)「新政権は、従来よりもやや現実的な姿勢で解決策づくりに努力してきた。官民合同委員会を設置し、意見をまとめる努力もした。閣僚級も被害者に会った。もう政府は解決法の提示が次の手順と考えるようだ。解決法は代位弁済と似たものになると推定される。ところが政府がこのように進めても問題はないのか不安だ。最初の理由は解決法に関する世論をまとめる作業が不足している点だ」

     

    韓国は国内視点であるから、国内の意見を統一しなければならない。これでは、百年河清を待つような話だ。金の話になると絶対に強欲な主張が出て、議論をリードするものである。

     

    (3)「大法院の判決が韓日協定に合わず、日本が国際的合意の履行を強く要求する現実の中で、韓国が柔軟な解決法を出さなければ問題を解決するのは難しい。これはやむを得ず韓国が譲歩する姿として映るため、国民感情上、負担になる。負担となる解決法を出すため、その過程で世論をまとめる作業がなければならず、そのための装置がなければいけない。こうした点で官民合同委を推進した政府の接近は正しい方向だが、議論の過程で被害者団体は政府が特定解決法を進める可能性を警戒して政府を批判し、次々と合同委から離脱した。代位弁済に対しても批判的な見解が表出した。意見がまとまったというよりも論争が拡大したという印象だ」

     

    本来は、文政権が引き起こした問題であるから、文政権時代に解決すべきであった。それが、逃げ回りユン政権に押し付けた形だ。野党は、与党に協力するどころか、足を引っ張る状態である。解決案が、まとまるような雰囲気はゼロである。

     


    (4)「政府の低い支持率と与野党間の激しい対立だ。各種捜査の対象となった野党は闘争モードになっている。それだけに政治的な環境は厳しい。こうした状況で政府が一方的に特定解決法を進める場合、被害者は異議を提起し、進歩世論と野党は反対する余地がある。低い支持率の政府としては揮発性が高い過去の問題に巻き込まれて推進の動力を失いかねない。政府がこれを貫徹するとしても、野党が反対を続ければ、今後、政権交代があれば慰安婦事例のように覆る可能性がある。これは政府と野党、国すべてにプラスにならず、避けなければいけない」

     

    徴用工問題は、韓国の反日問題のシンボルとなっている。韓国に、反日を政治的に利用しようという一派が存在する限り、解決は不可能となろう。韓国は、日本の協力を得られず外交上で不利な状況が続くであろう。

    (5)「急いで容易にしようとして法的に脆弱な解決法を採択することがないよう留意する点だ。その場合、被害者団体が大法院の判決に背くとして訴訟を起こす可能性がある。裁判所が被害者の主張を認めれば厳しい状況を迎える。難しくても法的に問題のない解決法を追求しなければいけない。一部の人は、今のような与野党対決局面で野党の賛成は得られないというだろう。このような時であるほど、特定事案に限定してでも国益のために与野党が「協治」する事例をつくる必要がある。政府がどうするかにかかっている」

     

    韓国野党が、日本との関係改善は国益に適うことという認識にならない限り、徴用工問題は帰結しないだろう。日本は、韓国がそれを自覚するまで待つほかない。

     

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    ロシアは、30万人の動員令を出したが、徴兵した新兵にまともな訓練を受けさせることなく、ウクライナ前線へ送る無謀な戦い方をしている。当初から危惧されていた通りのパターンだ。ロシア軍の混乱ぶりが窺える。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(9月29日付)は、「プーチンが部分動員したロシア兵、もうウクライナに投降か」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が9月21日に出したばかりの「部分動員令」で5日前に招集された兵士が、早くもウクライナ軍に投降したらしいことが分かった。

     


    (1)「ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は、27日にメッセージアプリ「テレグラム」に動画を投稿した。5日前に、ウクライナと国境を接するロシア西部のロストフから動員されたロシア兵とされる人物の動画で、部分動員令によって招集された兵士がウクライナで投降した初めての例だと説明している。「(ウクライナ東部の)クプヤンシク近郊の森で、ウクライナ軍の第92旅団が凍えて怯え切った『動員兵』を捕らえた。所属部隊から脱走し、ロシアに戻ろうとしたが道に迷った兵士だ」と説明している」

     

    27日にメッセージアプリ「テレグラム」で5日前としているので22日だ。21日に動員令が出た翌日に、前線へ送られたことになる。訓練もせずに、兵士を前線に立たせたのだ。ロシア軍の疲弊ぶりを覗かせている。

     


    (2)「ロシアの脱走兵とされる男は動画の中で、自分は部分動員令でロシア軍に徴兵されたと語った。またウクライナとの戦闘ではロシア側に多くの犠牲者が出ていると述べ、ロシア政府のプロパガンダに耳を傾けてはならない、ウクライナとの戦闘に参加してはならないと呼びかけた。この脱走兵は、自分は戦場に派遣されて3日目にウクライナ軍に捕らえられたと述べ、所属部隊の司令官には一度しか会っていないとも語った」

     

    招集された新兵は、補充兵として欠員の出ている部隊へ配属されている。最悪の事態である。これでは、何らの戦力強化にもならず、犠牲者を増やすだけである。

     


    (3)「ウクライナ軍参謀本部は先日、フェイスブックのページに行った投稿の中で、ロシア軍の犠牲者が増え続けるなか、適切な訓練を受けていないロシア兵が戦場に派遣されていると指摘していた。「部分動員令の一環として招集された兵士たちが、ロシア軍の各部隊に配備され始めている」と同省は投稿の中で述べ、新たにウクライナに配備される兵士たちは、事前の訓練を受けていないと指摘した。さらに投稿は「ロシアの軍と政府の指導部は、部分動員令に加えて(各地方の首長が自主的に動員を行う)『自主動員』の呼びかけを続けている」と述べた。「罪を犯して有罪評決を受けた者も動員され、既にウクライナでの戦闘に加わっている」と指摘」

     

    ロシア軍は、悲惨な戦い方を余儀なくされている。これでは、100万人の新兵を集めても、一片の戦力にもならず消耗品となるだけだろう。

     


    (4)「国外追放されたロシアの人権派弁護士、イワン・パブロフが最近結成した法律組織「PervyOtdel」も、動員されたロシア兵たちは、訓練も健康状態のチェックもなしに前線に派遣されていると報告。27日に投稿した動画の中では、ロシアのある動員兵が「自分が所属する部隊は訓練なしで前線に派遣されることになると言われた」と証言している。この動員兵はこう言っている。「みなさん、こんにちは。我々第1装甲連隊は、9月29日に(ウクライナ南部の)ヘルソンに向かう。射撃訓練もなく、基礎理論の説明もない。何もないまま、戦場に送られるのだ」と述べている」

     

    訓練も健康状態のチェックもないという。ロシア軍は、この戦争をどのように終結させるのか、青写真がないことを物語っている。完全な「敗戦モード」である。

     


    (5)「この前日には、ロシア語の独立系ニュースメディア「メディアゾナ」が、ロシア西部リペツクから戦場に派遣された動員兵の妻に話を聞いている。妻は取材に対して、夫が所属する連隊は1日だけ訓練を受けた後、ドンバス地方の「前線」に派遣されたと語った」

     

    ロシア軍が、これだけ急いで派兵していることは、ウクライナ軍の攻撃に「弾よけ」が必要という最悪局面にある証拠である。

     

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    ハイテク企業は、次代を切開く「先兵業種」である。だが中国では、習近平氏によって強い管理下に置かれている。資本の野放図な発展を認めないという理由によるものだ。共産党の優位性を揺るがす企業の発展は認めないというのである。

     

    こうして、中国のハイテク企業は政治によって発展の壁をつくられてしまった。ハイテク企業として優先すべき研究開発投資に熱が入らず、株主優遇に力を入れるという珍しい行動を取っている。中国経済の終りを告げるものだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月30日付)は、「萎縮する中国テック企業、成長投資より自社株買い」と題する記事を掲載した。

     

    香港株式市場で中国テックの雄、ネットサービスの騰訊控股(テンセント)の株価下落が鮮明だ。29日の終値は270.6香港ドルと、2021年末比で40%弱安い水準にある。27%安の香港ハンセン指数に比べ下げが目立つ。

     

    (1)「『ATM』と呼ばれる中国の主要テック3社のアリババ集団、テンセント、美団の株価が下落トレンドから抜け出せない。3社の時価総額は直近で5兆3000億香港ドル(約98兆円)と、20年9月末と比べて57%減少した。この2年で7兆香港ドル(約130兆円)の時価総額が失われた。背景には国家の安全や「共同富裕(ともに豊かになる)」の名の下にテック企業への統制を一気に強めた習近平(シー・ジンピン)指導部の政策がある。国内市場で圧倒的な地位を築いて高い成長を実現してきたテック企業の手法は通用しなくなった」

     

    ハイテク企業は、どこの国でも高い付加価値によって経済成長に寄与し、雇用の受け皿になっている。中国は、それを認めないというもの。資本の増殖は、腐敗の源という認識からだ。共産主義の本質を見せると同時に、習近平氏が政敵の付け入る余地を認めないという狙いだ。

     


    (2)「リスクを冒してまで成長を追わなくなった企業の姿勢は、資金の使い方に表れている。自社株買いが膨らむ一方、研究開発投資の伸びが鈍化している。中国メディアによると、テンセントの22年の自社株買いは9月時点で195億香港ドルと、21年通年の約26億香港ドルから急増した。1~9月に600億香港ドルだった香港市場の自社株買いのうち、テンセントは首位で全体の3割を占める。アリババも3月、自社株の取得枠を250億米ドルと、従来の150億米ドルから大幅に拡充した」

     

    ハイテク企業でありながら、多くの研究開発費も必要なくなった。現状維持で十分というのだ。中国経済全体の底上げには結びつかなくなった。

     


    (3)「これまでテンセントはネット企業への積極的な資本参加によって自陣営を拡大してきた。自社でゲームのほか、映画や音楽の配信サービスを展開するほか、約13億人の利用者を抱える対話アプリはネット通販や配車など他社サービスを束ねる機能も持つ。影響力拡大を警戒する当局の統制で、産業支配につながるような大胆なM&A(合併・買収)を手掛けづらくなり成長戦略は見直しを迫られている」

     

    習氏は、「資本の増殖」に嫌悪感を持っているので、産業支配につながるような大胆なM&Aが不可能になった。

     

    (4)「中国誌『財経』によると、ATM3社を含む中国テック企業10社の研究開発費の前年比伸び率は21年に14%と、3年連続で鈍化した。成長につながる前向きな投資を抑え、余裕資金を自社株買いに充てざるを得ない企業の苦境が浮かぶ。アップルやグーグルなど中国以外の主要10社の伸び率(18%)に逆転され、イノベーションが成長につながる好循環に陰りが見える。10月の中国共産党大会を経て、習指導部は異例の3期目に入る。国家による統制があらゆる分野に及ぶ中で、自由な発想からイノベーションが生まれるテック産業の好循環を取り戻せるだろうか。軟調なテック企業の株価からは市場参加者の悲観的な見方が浮かび上がる」

     

    中国テック企業10社の研究開発費は、21年に前年比伸び率が14%。3年連続で鈍化している。アップルやグーグルなど中国以外の主要10社の伸び率は、同18%増で逆転された。この差が、中国経済の相対的な地盤沈下となるはずだ。

     

    次の記事もご参考に。

    2022-09-29

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