勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年09月

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    プーチン大統領は、非常に拙いタイミングで「30万人動員令」を掛けてしまった。原油価格の下落がはっきりして、ロシア財政は8月から赤字に転落した。ウクライナ侵攻に伴う軍事費負担が歳出増加の要因だ。そこへ、この動員令という新たな財政負担が加わる。財政破綻は近い。

     

    こうして、ロシア経済は開戦当初の原油価格高騰時とは真逆の状況へ追込まれた。戦争が長引くほど、ロシア経済を窮地に追込む構造が定着したのだ。人材流出も痛手である。高度の技能保持者ほど脱出している。この影響は今後、何十年も影響するとみられている。プーチン氏は、自ら「貧乏くじ」を引いてしまった。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月29日付)は、「プーチン氏の動員令、ロシア経済に痛烈な打撃」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン氏がウクライナ侵攻にさらなる資源をつぎ込むことを決めたことで、ロシア経済に暗雲が立ちこめてきた。動員令に伴い30万人以上を新たに投入すれば、徴集兵の軍装備や訓練、給料を手当てする必要が出てくるためだ。さらに民間企業にとっては、兵役または徴兵逃れの国外脱出によって人手が奪われ、新たな問題に直面することになる。

     

    (1)「折しも、エネルギー価格高騰による収益押し上げ効果はピークを過ぎたもようだ。ロシアの財政収支は8月、エネルギー収入の落ち込みが響き、赤字に転落した。これには足元の原油急落や、ロシアが欧州への天然ガス供給をほぼ完全に遮断した影響はまだ反映されておらず、すでにそれ以前の段階で国家財政が手当てできていないことになる。戦争では往々にして、長期的に戦費を確保できる経済力を持った側が勝利することが多い。ウクライナ経済も壊滅的な打撃を受けているが、西側から巨額の資金援助を受けている」

     

    ロシア経済は、原油価格の急落と戦費の増大という「ダブルパンチ」を受け、急速に悪化している。長期の戦争には、耐えられない状況に追込まれてきた。

     


    (2)「ロシア経済の崩壊が迫っていることを示す兆候はないが、国内の経営者や投資家の間では、部分動員令を受けて動揺が広がっている。プーチン氏の発令がさらなる徴兵に扉を開いたとの指摘もある。ほぼ国内投資家のみに限られるロシアの株式市場は、動員令の発表を受けて急落した。動員令の発令前に公表された政府データによると、8月の財政収支は大幅な赤字となった。その結果、今年1~8月の財政黒字は1370億ルーブル(約3400億円)と、1~7月の約4810億ルーブルから大幅に縮小した」

     

    単月では、8月に財政赤字になった。ただ、これまでの黒字によって、1~8月は財政黒字だが、間もなく正直正銘の財政赤字国になる。いつまでも、戦争継続が不可能になる。来年は転機となろう。

     


    (3)「ロシア経済が抱える問題は、自らの政策が招いた「自業自得」の側面もある。ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の跳ね上がりは当初、ロシアに巨額の収入をもたらしていた。国際金融協会(IIF)では、1~7月のロシア連邦予算のうち、石油・ガス収入は約45%を占めていたと分析している。ところが、エネルギー価格の高騰は世界経済の成長に急ブレーキをかけ、各地で石油需要の減退を招いた。原油の国際指標である北海ブレントは6月の高値から約3割下げ、バレル当たり85ドルを割り込んでいる。ロシア産原油が約20ドルのディスカウントで取引されていることを踏まえると、ロシアはすでに財政収支を均衡させるのに必要な水準を下回る価格で原油を販売していることになる

     

    財政収支を均衡させる原油価格は、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツは2021年に、この水準をバレル当たり69ドルと推定している。現行のディスカント価格65ドルでは赤字になっている。

     

    (4)「キャピタル・エコノミクスでは、ロシアの石油・ガス収入が2023年に今年の推定およそ3400億ドル(約49兆1300億円)から1700億ドルに半減すると試算している。落ち込みの規模は昨年のロシア国防予算の2倍以上に相当する額だ。西側諸国はさらに制裁を強める構えで、主要7カ国(G7)はロシア産石油に価格上限を設定する方向で調整している」

     

    23年の石油・ガス収入は、今年の半分程度に落込むという。落込み幅は、国防予算の2倍以上に相当する。これでは、ロシア経済はお手上げ必至だ。

     

    (5)「高まる不安から、国外脱出を図る兵役年齢のロシア人男性が国境へと殺到しており、ウクライナ侵攻以降、すでに相当な規模に達していた頭脳流出がさらに加速している。IEビジネス・スクール(マドリード)のマクシム・ミロノフ教授(金融)は、「人々は行けるところに逃げている」と話す。「彼らは高い技能を持ち、教育水準の高い労働者が中心だ。そのため今回の動員令は、来年のみならず、数十年にわたって経済に重大な影響をもたらすだろう」と指摘」

     

    人材の流出が、ロシア経済の成長でブレーキになる。すでに、IT関連技術者は大挙して出国している。

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    韓国左派メディア『ハンギョレ新聞』は、旧徴用工問題で日本が韓国と「謝罪と賠償」についての認識を共有していると報じた。28日に日韓首相は会談したが、このお膳立てをした韓国外務省の次官が、このおように発言したというのだ。この報道が事実とすれば、これまでの日本側の対応をひっくり返して、韓国側へ譲歩した印象である。事実関係の究明が待たれる。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月28日付)は、「韓国外交部次官『強制動員への謝罪・賠償への呼応が必要…日本も認識』」と題する記事を掲載した。

     

    安倍晋三元首相の国葬出席のために日本を訪問した韓国のハン・ドクス首相が28日、岸田文雄首相と会い、両国間の懸案について意見を交わした。今月21日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に続いて重ねられた首脳級の出会いでも、核心懸案である強制動員被害者賠償問題を解決するための具体的議論はなかった。

     


    (1)「ハン・ドクス首相はこの日、会談直後に報道資料を出し、ハン・ドクス首相が岸田首相に会い「(韓国)政府を代表して安倍元首相の別世に対する哀悼と慰労の意」を伝え、「韓日関係を含む相互の関心事について意見を交換し、懸案の解決と両国関係改善の必要性に共感した」と明らかにした。しかし、梗塞した両国関係を解き明かすに足る生産的議論はなされなかった

     

    下線部では、日韓両国が歩みよるような話合いはなかった、としている。

     

    (2)「ハン首相は会談直後に記者団と会い「岸田首相が国連総会を契機に実現した首脳間の出会いで、『尹錫悦大統領の韓日関係改善に対する意志を感じることができた』と話した」としつつも、「現在は両国の外交長官が議論して解決策を探すことにした段階だ。具体的な案をめぐって詰める状況ではない」と話した。続いて「岸田首相が『韓日の間で(歴史問題などの)懸案も重要だが、サプライチェーンの再編などもう少し前に進もう。韓日が一緒にすべきことは多い」という意見を強調し、(私もそれに)強く共感した」と明らかにした』

     

    下線部では、日韓が具体的な案について議論を交わす段階でないと認めている。

     

    (3)「日本と交渉実務を務めているチョ・ヒョンドン外交部第1次官もこの日、「昨年の国連総会を契機に韓日首脳間会談が2年9カ月ぶりに実現した。1週間後の今日、両国の最高レベルの間に協議が連鎖的になされたことは、韓日関係の改善にきわめて肯定的だ」と強調した。しかし、追加の首脳会談については「岸田首相の礼訪過程で話がなかったが、11月のASEAN首脳会議、主要20カ国(G20)首脳会議などの外交日程を念頭に置いている」と期待を示した」

     

    日韓の追加会談は、11月のASEAN首脳会議やG20首脳会議などの際にあるかも知れないと韓国側が期待を寄せている。日本側は、何ら触れていない。

     


    (4)「チョ次官は、さらに最大の懸案である強制動員被害者賠償問題に関連しては「解決を模索する過程で韓国側が解決する措置も重要だが、それに劣らず日本側の呼応も必要だ。韓日協議の過程でこうした考えを共有している」と話した。また「韓国で4回行われた民官協議会の過程でも(慰安婦合意事例など)そうした懸念が提起された」とし、「この(日本企業の謝罪と賠償参加)部分が解决方案に含まれなければ、(韓国側の)国民的な共感と支持を受けにくいことを(日本側も)認識している。日本側にそうした立場を伝え、日本側も共感している」と付け加えた」

     

    韓国外務次官は、下線部のような極めて微妙な発言をしている。日本外務省が、「日本企業の謝罪と賠償参加」について共感姿勢を示したとしている。これは、韓国側の「我田引水」発言と見られるが、日本外務省があいづちを打ったのかも知れない。韓国側は、これを見逃さず、「日本譲歩」という間違った印象を持ったのであろう。この問題は、1965年の日韓基本協定で解決済である。日本は、間違ったイメージを韓国に与えるべきでない。

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    今年の成長率3%割れ

    経済発展が腐敗招く?

    バブル負担を回避策す

     

    中国のゼロコロナ政策は、世界「七不思議」の一つである。パンデミックに対して、「ゼロコロナ政策」を堅持しているからだ。WHO(世界保健機関)からも、呆れられほど頑なに都市封鎖を続けている理由は、政治的なものでしかない。

     

    中国は、2020年の新型コロナの発生以来、わずかな数の感染者発生でも直ぐに都市封鎖してきた。その表向き理由は、犠牲者を極限まで減らすことにあるとしている。現実には、医療体制の不備が理由である。これを表面化させないためには、人流を減らす都市封鎖しか方法がないのだ。

     

    実は、このゼロコロナ政策の中に習近平氏の思惑がすべて封印されている。都市封鎖によってもたらされる経済的犠牲よりも、人間の生命を守ることが重要というメッセージが隠されていることに気付くことだ。これは、習氏がこれから手に入れようとしている国家主席3期目において行なう政策の基本型になるはずだ。つまり、経済成長の停滞を受入れようという驚くべき覚悟がすでにある。

     


    習氏は、不動産バブル崩壊の後遺症が、重く長く中国経済を圧迫することをすでに知り抜いているであろう。側近から、進講を受けている筈だ。これを打破するには経済改革が不可欠であるが、そうなると政治的に忌避すべき相手である「経済改革派」の意見を受入れざるを得ない。それは人事面でも、習氏のライバルを育成するに相応しく、習氏の政敵になり得るという大きな危険性を持つのだ。

     

    こうして、習氏は自らの身を滅ぼす危険性のある「経済改革派」の台頭を認める訳にいかないのだ。ここは、是が非でも毛沢東主義の完成に向けてリーダーシップを発揮することが、習氏の身のためになる。つまり、習氏の「自己保身」が毛沢東主義の完成という美名によって遂行できる、と判断しているであろう。毛沢東は、自らの権力基盤を守るべく、文化大革命(1966~76年)のもたらす経済大混乱を放置した。その心情が、習氏にも共通していると見るべきであろう。

     


    今年の成長率3%割れ

    中国経済は現在、厳しい局面にある。IMF(国際通貨基金)は、中国の今年のGDP成長率予想を年初の4.4%から7月には3.3%へ下方修正した。その理由の一つが、ゼロコロナ政策だった。また、住宅価格上昇と家計の債務急増が、不動産セクターの危機を助長している点にも懸念を表明した。一方、世界銀行は9月に今年の中国経済の成長率予測を2.8%に下方修正した。5月には、5.0%と予測していたのである。

     

    これまで、中国政府は経済成長率に最も敏感であった。GDPを水増ししてまでも、虚勢を張ってきたのだ。この狙いは、米国との経済格差を少しでも縮め、国威発揚につなげることにあった。こういう、過去の常套手段から見れば、中国が少しでも経済成長に勢いを失えば、テコ入れするはずだが、昨年からそういう本格的な動きがピタリと止まっている。

     


    習氏は昨年7月、「共同富裕論」を唱えてセンセーショナルを巻き起こした。2020年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子ども数)が1.30に低下したことにショックを受けた結果だ。それ以前は、1.60という噓データを公表してきたが、化けの皮が剥がされたのである。21年は、OECD(経済協力開発機構)によれば、1.16へとさらに低下している。日本の1.30(2021年)を下回るのだ。

     

    合計特殊出生率は、国力の動向を推し量る重要な尺度である。人口横ばいを維持するには、2.08が必要とされている。中国は、この状態から著しく乖離してきた。中国では、すでにゼロコロナ政策による民心離脱によって、結婚・出産への意欲が低下している。今後は、合計特殊出生率が1.0を割込み、世界ワースト1~2位を、韓国と競う国家になるのは時間の問題になっている。

     


    習氏が、この状況に危機感を持ったのは正しいが、対応を間違えたのである。原因を、学習塾とインターネット・ゲームによる教育費の増加と見たのだ。さらに、高額の住宅ローン返済も生活を圧迫しているとして、不動産開発企業への融資を抑制する方針を打ち出した。

     

    確かに前記の諸要因は、生活を圧迫して教育費用を賄いきれない家庭を生み出している。だが、習氏の狙ったのはこういうインターネット・ビジネスや不動産開発企業に、習氏の政敵が手を延ばしていないかという疑念を持ったのだ。高収益の業種には、習氏の政敵が大株主として潜り込み、高株価や高配当率の恩恵を受けて、政治資金を得ていないかと見たのである。

     

    習氏は、自己の権力維持が最大の目的であるので、IT関連産業と不動産開発企業について、融資関係を徹底的に調べさせた。これが、不動産開発企業への融資を滞らせ、現在の不動産バブル崩壊への糸口になっている。調査を受けた金融機関は、1不動産開発企業について国有銀行を含めて40行以上とされる。これら金融機関は、これを契機に不動開発企業へ融資を絞り込むことになった。不動産開発企業のデフォルトが、多発している背景にはこういう政治的要因が影を落としているのだ。(つづく)

     

     

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    ロシアのプーチン「30万人動員令」は、いかに事前準備もなく発令されたかが次第に判明してきた。招集された兵士達が、自分たちの置かれている状況がいかに悲惨であるかを、動画で訴えているのだ。この状態では、戦意が高まるどころか、脱走したくなるような寒々とした環境にあることが分る。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(9月28日付)は、「銃創の止血にはタンポン、兵舎はまるで収容所 戦わずして死にそうなロシア徴集兵」と題する記事を掲載した。

     

    新たに戦闘に動員されたロシア兵たちがいかに厳しい状況に置かれているかを示すさまざまな動画が拡散されている。食料や備品も不足するなか、銃弾で負傷した兵士が、止血にタンポンを使えと指示される有様だ。

     


    (1)「Ukraine Reporterがツイッターに投稿した動画では、1人の徴集兵が、自分たちの状況に不満を訴えた動画のせいで、所属部隊が罰を受けていると語っている。2日前に撮った「不満」動画のあとに起きたことを報告する内容だ。「状況はさらに悪くなる、と警告された。今日は、トイレの使用が制限された」。食料と水も与えられていない、と兵士は続けた。「まるでどんどん膨張する強制収容所のような様相だ」。また別の動画では、シベリア南部のアルタイ地方にいる部隊の女性上官が徴集兵たちに向かって、薬や止血帯を含めたあらゆるものを買っておけと話している。上官は言う。「防護具と軍服は支給されるが、それ以外は何もない

     

    ロシア軍は、兵站部が極度に手薄であることを示している。下線部のように、兵器と軍服は支給するが、それ以外の身の回り品は自分で買えという指示は絶望的だ。これでは、前線へ出る前に脱走したくなって当然だ。

     

    もう一つ、前線へ出る前の数ヶ月という訓練がないことだ。即、前線への配備では戦死するために行くようなもの。なにやら、沖縄戦で現地の人たちが無理矢理、銃を持たされた光景と重なる。悲劇だ。

     


    (2)「撃たれた傷の治療には、女性用タンポンを使えとも話している。「銃弾による傷を負った場合は、(タンポンを)傷口にじかに詰めれば、(タンポンが)膨らみ始める」、「必ず安いタンポンを買うように」と上官は言う。「自分の身は自分で守れ」。ベラルーシの報道機関ネクスタがツイートした「徴集兵の冒険パート1」というタイトルの動画は、兵士やバックパックなどの荷物でほぼ立錐の余地もない兵舎での、スペース争いを垣間見ることができる」

     

    銃撃を受けた際には、自分で買った「タンポン」を傷に当てて応急措置を取れという命令だ。上官は、「自分の身は自分で守れ」とも言う。これでは、軍隊とは言えない。組織的な戦いを放棄している様子が手に取るように分る。

     


    (3)「ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍が膨大な損失を被った後、プーチン大統領は9月21日、深刻な人員不足を補うための予備役の「部分的動員」を発表。事実上は誰が招集されるかもわからないことも相まって、ロシア国内では怒りと衝撃が広がっている。ロシア政府は予備役30万人を召集する予定だと発表したが、ここ数日の動画からは、動員現場は混乱を極めており、酔っぱらいの徴集兵を映した動画も拡散されている。プーチンの動員発表後、男性たちが召集を逃れようとしたことから、ロシアとジョージアの国境には、長さ6マイル(約9.7キロ)におよぶ車列ができた」

     

    招集状況は、デタラメである。亡くなった人への招集がかかっているほどだ。老人まで招集がかかるなど混乱の極みである。予備役名簿が整理されていない結果であろう。

     


    (4)「ウクライナレポーターが9月25日にツイートした動画には、コーカサス地方で起きた騒動の様子がとらえられている。「ダゲスタン共和国で起きた、ロシアの動員に対する激しい抗議」という説明が添えられている。「秩序回復のために(プーチン直属の武装部隊)ロシア国家親衛隊が派遣されたが、抗議活動は勢いを増しつつある、と地元の情報筋は伝えている」とツイートには書かれている」

     

    コーカサス地方では、動員令に反対する人たちが強固な抗議活動を始めている。少数民族の戦死者が多いことから、その不平不満が爆発しているに違いない。モスクワなど大都市出身者の犠牲者は、極めて少ないのが実態だ。こういう不公平性が、地方へも知れ渡ってきたのだろう。

    テイカカズラ
       

    ロシア軍兵士の士気は、驚くべきほど低下を見せている。ウクライナ軍は、ドネツク州北部にまで奪回作戦を広げているが、ロシア兵は酔っ払っておりウクライナ軍の捕虜になるまで気付かない状況に陥っている。戦いの雌雄は決まったのも同然の光景を見せているのだ。

     

    この状況では、ロシア政府の目論む占領地の「ロシア領」編入が危うくなっている。ロシア軍が連れてきた「村長」は、ウクライナ軍の奪回作戦に怯えいち早く逃走する始末である。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月28日付)は、「ロシアの編入シナリオに狂いも、ウ軍の反撃に勢い」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアから東部ハリコフ州の奪還を果たしたウクライナの反撃が、ドネツク州北部に広がってきた。ここはロシアが一方的な編入を目指している地域で、ロシアが思惑通りに制圧できるのか不透明感が高まっている。ウクライナ軍はこのほど、ロシアが4月下旬に支配下に収めていたドネツク州の村ルブツィを奪還した。東進するウクライナ軍の行く手には、焼け焦げたロシア軍の戦車の残骸が並び、道路脇には膨張したロシア兵の遺体が横たわっていた。ロシア軍の装甲車は貴重な戦利品で、修復・再利用するため反対方向にけん引されている。

     

    (1)「ウクライナ軍はこのほど、ロシアが4月下旬に支配下に収めていたドネツク州の村ルブツィを奪還した。ハリコフ州での敗北で前線のロシア兵の士気は下がっており、援軍が到着しても、周辺からの撤退に歯止めがかかっていない。25日には、ウクライナ軍が近隣の村で複数の捕虜を確保した。あるウクライナ兵は、ロシア兵の多くが泥酔していたためだと語り、「しらふの兵士は逃げたが、酔った兵士は村が攻撃されていることにすら気付いておらず、拘束された」と明かす」

     

    ロシア軍は、北東部のハリコフからあっけなく遁走して以来、全軍の士気が低下しているという。兵士は、最前線にも関わらず酔っ払っている始末だ。しらふの兵士は逃亡しており、かつての「赤軍」の面影はどこにもない。プーチン氏は、ソ連時代の前提でウクライナへ侵攻したが、現実のロシア兵はこの体たらくである。

     


    (2)「ウクライナ軍はここドネツク州北部で、9月10日にハリコフ州イジュームから背走したロシア軍の残党を追っている。ロシア国防省は撤退について、ドンバスの防衛を強化するための意図的な部隊再配置だと主張しているが、実際には撤退は混乱を極めたようだ。イジューム東部の道路沿いや周辺の森林には、焼け焦げたロシア軍の装甲車が大量に放置されている。「彼らの多くは今も、森に潜んでいる。武器を持っている者も持っていない者もいる。だからこそ、とりわけ夜間は警戒しなればならない」と述べる司令官。「時には道路に自ら姿を現して、降伏する兵士もいる。水も食料も何もないからだ」と言う」

     

    逃げ遅れたロシア兵は、周辺の森林に身を隠しているという。大量の武器が放棄されている。ウクライナ軍は、それらを一つ一つ点検して、そのまま使えるか、修理が必要かを決めて後方へ送っているという。

     

    この状況で、プーチン氏は30万人動員令を掛けたが、単なる補充兵という扱いであれば、全軍を覆っている士気低下に染まって、何らの働きもしないだろうと、元韓国軍将官が指摘している。動員令によって招集した部隊が、すべての戦闘機能を備えて、そっくり前線部隊と入れ替わらなければ勝利の機会はないと指摘するのだ。ロシア軍には、兵站面ですでにその余裕がないであろうとも見ている。

     


    (3)「親ロ派武装勢力が一方的に独立を宣言した「ドネツク人民共和国」の下で、ルブツィには新たな行政府が置かれ、村長が据えられていた。だが、ウクライナ軍が攻めてくると、これらの当局者や協力者はすべて逃げていったという。ドネツク州から2010年に移ってきた元炭鉱労働者のウォロディミル・グレンコフさんはこう明かす。4月にウクライナ軍が戦火の中、後退を余儀なくされたつらい日のことを思い出しながら、グレンコフさんは「本当にウクライナ軍が戻ってきてうれしい」「プーチンはここで強さを見せつけようと思ったが、あっけなく敗れた。ロシアの世界は崩壊した」と喜びをかみしめていた」

     

    「ドネツク人民共和国」では、新たな行政府が置かれ村長が据えられてが、ウクライナ軍の奪回作戦でいち早く逃走した。この状態では、「住民投票」を行なってロシア領編入と言っても、ただの宣言に過ぎず中身はゼロである。プーチン氏は、危ない最後の賭けに出ている。

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