勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年09月

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    中国は、グローバル経済の下で豊富な労働力を武器に躍進した。今は状況が全くことなり、中国の異質性が強く目立つようになっている。在中の欧州企業は、ゼロコロナ政策に堪忍袋の緒が切れる状態だ。政策に、合理性の一片も感じられない結果であろう。米国でも同様の動きを強めている。

     

    『ロイター』(9月21日付)は、「中国、投資先としての魅力低下ー欧州商工会議所」と題する記事を掲載した。

     

    欧州商工会議所は9月21日、企業が中国に対する信頼を失いつつあり、投資先としての中国の地位が低下しているとの報告書をまとめた。「柔軟性に欠ける一貫性のない」新型コロナウイルス対策が主因という。

     


    (1)「報告書は会員企業1800社の回答を基に作成。中国ビジネスについて中国、欧州連合(EU)、欧州企業に967件の提言を行った。中国に対しては一貫性のない政策変更を控え、EUとの協力を強化し、国際便を増便するよう要求。EUには積極的に中国に関与し、関係解消を求める声を拒否すべきだと訴えた」

     

    ゼロコロナ政策は、中国の抱える非合理性の象徴的な存在であろう。海外の効果的なワクチンを導入することもなく、単なる「メンツ」維持で政策を行なうという理解不能な政治体系である。これが、永続できるとは思えないのだ。

     

    (2)「会見したイエルク・ブトケ商工会議所会長は、中国以外の国は引き続きグローバル化にコミットしているが、中国は依然として内向きで、過去1年で中国と他国の違いが「著しく際立った」と指摘。中国のゼロコロナ政策については「世界は集団免疫で生活しているが、中国は世界がオミクロン株を根絶するのを待っている。これは当然あり得ないことだ」と述べた

     

    今や、WTO(世界保健機関)からも疎まれるほど、中国の防疫対策は珍無類なものだ。習氏の指導した最初の業績(武漢市の封鎖)を高く評価するために、あえてゼロコロナを継続するという政治的な政策である。昔の「皇帝」と同じ感覚なのだ。古い。始皇帝の感覚とどれだけの違いがあるか、疑問に思うほどである。

     


    (3)「国有企業改革の停滞、中国からの欧州人流出、中国人スタッフの海外渡航制限、ビジネスを巡る政治化の増加も、中国の魅力を低下させる要因になっていると指摘した。現在、進行中の投資や計画中の投資を他市場に移すことを検討している企業は記録的な数に上っているという。ブトケ会長は来月開幕する共産党大会について、退任するとみられている劉鶴副首相は常に改革を訴えた「かけがえのない人物」と指摘。「経済的な意思決定がどのような布陣で行われるか、それによってこの国がどこに向かおうとしているのかが分かるかもしれない」と述べた」

     

    中国をサプライチェーンから外そうという動きは確実に進んでいる。これは、中国にとって極めてマイナスな動きであるが、それを傍観しているところに、得体の知れない鈍感さを感じるのだ。もはや、経済成長は眼中になく、あるのは習氏の国家主席3期目だけであろう。それゆえに、3期目に何が行なわれるのか、十分に警戒すべきだ。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月21日付)は、「『中国抜き』サプライチェーンの現実味」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス禍にロシアのウクライナ侵攻、そしてアジアで高まる地政学リスクが世界のサプライチェーン(供給網)を混乱させている。このため、主要な調達先の国内回帰が再び活発化。とりわけ、製造業の一大拠点である中国から移転させる動きが加速している。

     

    (4)「中国との経済的つながりを断つ完全な「デカップリング」の可能性はなお低いものの、サプライチェーンはこれまでと比べ統合されたものとはならないだろう。このことは企業と消費者ばかりか、恐らくは長期のインフレ見通しにも多大な影響を及ぼす。欧州で提案された2つの法案がまさに好例と言える。欧州連合(EU)は14日、強制労働によって生産されたとみられる製品を禁止することを提案した。中国を名指ししてはいないものの、新疆ウイグル自治区で疑われている強制労働が主なターゲットであることは明らかだ」

     

    中国の価値観と欧米の価値観の相違が、「脱中国」という経済行為へ駆り立てていることに、中国は強い関心を持つべきだ。ロシアのような人権弾圧国と深いつながりを深めるような国家システムでは、もはや発展の期待は持てないのだ。

     


    (5)「ここ数週間に発表された、いくつかの国連報告書もそうした動きを後押ししている。国連の専門家は、新疆で強制労働が行われていると「結論付けるのは妥当」とする報告書を発表した。また、国連人権高等弁務官事務所はウイグルやその他のイスラム系少数派に対して、中国は犯罪を行っていると指摘した。中国はそうした嫌疑を否定している。欧州の法案は米国ほど厳格ではなさそうだ。米国のものは新疆製製品が強制労働によるものではないとの証明を輸入業者に求めている。これは非常に高いハードルだ。EUの法案はそうではなく、調査の結果次第で輸入差し止めの可能性があるというものだ。だが、これは変更される可能性がある。この法案の成立にはEU理事会と欧州議会の承認が必要だからだ」

     

    中国は、人権弾圧国として西側諸国から糾弾される側に立たされている。中国共産主義自体への批判として、世界の経済活動から排除される対象になった。自由貿易の前提である人権を守るという根本が問われている時代だ。米中デカップリングは、人権を守るための不可避的な措置と言える。

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    中国では地方に散在する金融機関が、暴力団に支配されるという日本で考えられない事態を引き起こしている。日本では、明治の開国とともに金融制度を完備し、国民が安心して預金できる基礎をつくった。これが、零細貯蓄を集め産業資金を供給するパイプになった。中国では、こういう制度設計になっていないのだ。

     

    有り体に言えば、中国は「杜撰」の一語である。今、中国の農村で起こっている取りつけ騒ぎは、これを示している。だが、地方の騒ぎとして油断していると「大火」になりかねない。その「油」が、無意識のうちに一杯、撒かれているのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「
    中国中小銀行に不安、地銀で取り付け騒ぎ 農村銀行破綻」と題する記事を掲載した。

     

    中国で中小銀行の経営への不安が強まっている。今春、小規模な地域金融機関で預金が引き出せなくなった問題は、地方銀行大手の取り付け騒ぎに発展した。農村部を基盤とする2行の破綻も明らかになった。政府は地域発の金融不安が全国に広がりかねないと警戒する。不良債権処理の加速や公的資金の注入で中小銀行の経営健全化を急ぐ。

     

    (1)「中国の中小銀行は、日本の地銀に相当する都市商業銀行、農業協同組合に似た農村商業銀行、農村部に基盤を持つ村鎮銀行などがある。銀行数では全体の9割を占めるが、総資産は全体の3割弱にすぎない。中小銀行への警戒感が強まったのは、河南省や安徽省の村鎮銀行で4月下旬から預金を引き出せなくなったためだ。投資グループを通じて銀行を実質支配していた犯罪集団が資金を不正流出させていた疑いがある。預金引き出しを求める抗議活動が広がり、社会問題となった」

     

    当局による銀行監査が、定期的に厳格に行なわれていれば、銀行が暴力団に乗っ取られるような事態を防げる筈だ。そこは、「賄賂の社会」である。阿吽の呼吸で見逃されてきたに違いない。公務員のモラルのなさが問題発生の大元にある。

     

    (2)「政府は現時点で50万元(約100万円)を上限に、預金の払い戻しを肩代わりしている。混乱の収束を狙ったが、上場地銀大手の南京銀行での取り付け騒ぎに発展した。問題の村鎮銀行が南京銀行の決済システムを使っていたことがきっかけだ。同行にも資金リスクが及びかねないと懸念した預金者らが9月初旬、一部店舗に詰めかけた。銀行の破綻も発生した。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は8月、遼陽農村商業銀行と遼寧太子河村鎮銀行が破綻手続きに入るのを認めた。当局は「違法な経営で地方の金融秩序を破壊した」と指摘した。乱脈経営などを問題視しているとみられ、別の地元銀行が事業を引き継ぐ」

     

    「預金保険」は、どうなっているのか。これが備わっていれば、こういう不祥事でも預金者を保護できたであろう。この点が曖昧である。

     


    (3)「中小銀行の多くが拠点を構える農村部や小都市は人口流出が続いている。そのうえ、新型コロナウイルスの感染を抑えるための厳しい移動制限や不動産市場の低迷が重なり、地域経済は疲弊している。銀保監会などが2021年、営業拠点外の顧客からの預金受け入れを禁止したことも中小銀行の打撃となった。経営体力が弱い中小銀行が域外にも預金者を抱えると、経営難に陥ったときに金融不安が全国に広がりかねない。禁止措置は金融リスクを減らすが、営業エリアが小さい村鎮銀行などは資金集めの有力な手段を失った」

     

    中国は、今年から「人口減」社会へ突入する。その走りで、すでに農村部や小都市では、人口流出が起こっているのだ。中国経済の「衰退」第一局面が始まる。日本の昭和恐慌(1929~31年)では、不況が深刻であった。中小の金融機関は倒産の憂き目にあったが、現在の中国のような不正事件と関わりがあったわけでない。日本で90年も昔に起こったことが、現在の中国に現れている。

     


    (4)「政府は、中小銀行の経営健全化を急ぐ。中小銀行が金融当局の指導のもと、16月に処理した不良資産は6700億元に上った。前年同期より32%多かった。大手行も含めた全体の処理額も年々増えているが、その増加率(18%)を上回った。銀保監会や中国人民銀行(中央銀行)はさらに、6省を「不良債権処理加速地域」に指定する。具体的な地域は未公表だが、政府関係者は「取り付け騒ぎが広がった河南省のほか、東北地方の省や村鎮銀行が多い省が対象になる」と語る」

     

    地方政府は、こういう中小金融機関の救済を行なうと同時に、住宅ローン返済拒否問題にも取り組まなければならない。財源は、3割以上減っている中で、金融不始末の後処理をすることは、もはや絶望的な事態に置かれているはずだ。中国経済は、本当の危機に直面している。

     


    (5)「公的資本の注入で将来リスクにも備える。3200億元のインフラ債を転用する。20~21年に投じた2100億元に続く第2弾となる。中国財政省は21年夏「インフラ債を使った公的資金の注入は(第1弾の)一度限り」と表明したが、中小銀行のリスクが再び高まり、方針転換した。中国共産党は22年中に、金融行政の方向性を示す全国金融工作会議を開く予定だ。5年に1度の開催で今回が6回目となる。1997年の第1回以外はいずれも党大会前に開き、国有銀行改革や資産バブル抑制など重要政策の方針を固めた」

     

    地方政府は、倒産寸前の金融機関へは、公的資金の注入によって資本勘定を厚くしなければならない。その作業もするのだ。現在が、経済非常時であることは間違いない。こういう難局で、悠然と「ゼロコロナ政策」を強行している習近平氏の頭の中は、どういう構造であろうか。一度、知りたいと思うのだ。これを、漫然として眺めている周囲も何を考えているのか、不可思議な国である。

     

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    韓国の対ドル・ウォン相場が、1400ウォン割れ寸前でもみ合っている。当局のドル売り介入によって1400ウォン割れを防いでいる結果だ。この「防衛線」が崩れれば、ウォンは一気に「50ウォン」単位で下落するのでないかという恐怖感が漂っている。

     

    韓国銀行は20日、今年8月末現在の外貨預金残高が882億7000万ドルとなり、前月末に比べ21億1000万ドル減少したと発表した。この減少幅の大きさが警戒感を強めている。現在の、ウォン相場は1ドル=1394ウォン(21日12時08分)で踏ん張っている。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月21日付)は、「
    投資家の韓国離れ加速 アジア通貨危機の再来懸念」と題する記事を掲載した。

     

    米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引き締めを受けドルが上昇を続ける中、韓国ウォンは金融危機以来の安値に沈んでいる。一部のアナリストや投資家は、強いドルが一因となり、韓国などの国から資金が流出し市場が不安定化した1997~98年のアジア通貨危機と類似しているとして懸念を示している。

     

    (1)「ハンファ投資証券のチーフエコノミスト、キム・イルク氏は、韓国にとって「資金流出は深刻な問題だ」と指摘。さらに流出が続けば通貨や株式、また債券に新たな圧力がかかることになる。そうなれば、コモディティー(商品)の輸入コストはウォンベースで上昇し、企業にとっては資金調達の負担も高まることになると述べた」

     

    ウォンの対ドル相場は16日、取引時間中に1ドル=1399ウォンを付け、1400ウォン割れが迫り、韓国の通貨当局は対応に追われた。外国為替市場では、心理的抵抗線とされる1400ウォンを割り込めば、不安感が一段と高まりかねないと懸念されている。実際に1400ウォン割れとなれば、ウォン安が加速し、企業だけでなく、個人の間でも恐怖心理が広がりかねないからだ。

     

    通貨当局は1400ウォン割れを阻止するために総力戦を展開している。16日から通貨当局は都市銀行と国策銀行にドルの取引状況を1時間単位で報告するよう求めた。通常外国為替取扱銀行は午前10時、午後1時、午後5時の3回、ドル取引状況を報告するが、1時間単位でリアルタイムに報告するよう要求する「実力行使」に出た。市中銀行関係者は「顧客のドル需要を満たす程度のドル資金だけを確保し、銀行が為替差益を得ようとするドル買い入れを行ってはならないという圧力だ」と話した。『朝鮮日報』(9月19日付)が伝えている。

     


    (2)「ドルは19日の時点でウォンに対し、年初来で17%上昇。主要16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数の約13%上昇を上回るペースとなっている。韓国はウォン安がさらに歓迎されない独自の問題も複数抱えている。同国は家計や企業の債務が多いため、中央銀行がインフレ抑制や通貨を支えるため積極的に政策を引き締めることができない状況となっている。同国はまた、特に最大の貿易相手国である中国などとの輸出に大きく依存するなど、より長期にわたる課題も抱えている

     

    下線のように、韓国は固有の問題点を抱えている。家計や企業の債務が多いことだ。家計債務の対GDP比は100%を上回り、OECD(経済協力開発機構)の中で最悪である。韓国が、外貨流出を抑制すべく金利を急速に引き上げれば、家計の破綻リスクを誘発する。企業も、金利を営業利益で支払えない「死に体」が増えている。こうして、民間部門が高金利に耐えられない脆弱な構造になっている。

     

    中国経済の不振も痛手だ。中国は、韓国輸出の4分の1(香港を含めれば3割)を占めている。その中国経済が不振である。対中貿易は、これまで恒常的に黒字であったが、すでに5ヶ月赤字に落込んでいる。この対中赤字が、韓国貿易収支構造を大きくマイナスへ引き寄せている。

     

    以上のような固有の問題点を抱える韓国経済が、3度目の通貨危機に陥らないという保証はないのだ。むしろ、今回は中国経済不振という、これまでになかったマイナス材料が出ている。為替投機筋の狙い目はここであろう。

     

    対ドルで1400ウォンを割込めば即、米国からドル資金を借入れて対応せざるを得まい。韓国では、これを「通貨スワップ」としているが、正式には「ドル借入れ」である。韓国は体裁を付けて「通貨スワップ」と称しているだけだ。

     

     

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    9月16日の上海協力機構(SCO)会議で、プーチン氏と習氏との会談を映像で見ると異様な雰囲気を感じさせるものだった。殺気立ったプーチン氏と、困惑する習氏の表情が対照的であったのだ。習氏は、SCOの夕食会に出席せず北京へ帰ったのである。

     

    中ロ枢軸と言われる両国の関係は今や、今年2月4日に見せた「限りない友情」という華やかなムードを醸していないのだ。中国は、ロシアに対して不信感を持ち始めたようである。インドのモディ氏は、プーチン氏へ「今は戦争をしているときでない」と明確に批判する事態となった。プーチン氏は、中印から揃って「ウクライナ侵攻」への批判を受ける側に立たされている。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(9月19日付)は、「モディ氏と習氏 プーチン氏と距離を置く発言」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、中国とインドがプーチン大統領に対して懸念を表明したことで、この戦争に対する世界の見方が変りつつあるとの観測が欧米当局者の間で広がっている。ウクライナ侵攻後、非西側諸国との間で結束を高めようとしているプーチン氏にとって国際的影響力の低下は打撃となる。

     

    (1)「ある欧州高官は、こうした中国やインドの発言を「不快感を純粋、明確に示唆している」と受け止めており、インドと中国が今後、ロシア及び西側諸国への対応を変える可能性があると語った。ある大臣は、発言をロシアに対する「実質的な批判」と理解しているとフィナンシャル・タイムズ紙に対し語った。「特にモディ氏の発言だ。彼は今の事態に不満を持っていると思う」と述べた。モディ氏はプーチン氏に「今は戦争の時ではない」と苦言を呈した。プーチン氏は同氏に「現状が一刻も早く終わるよう全力を尽くす」と約束し、インド側から「これまで継続的に表明されてきた懸念」に言及した。その前には、プーチン氏は公の発言で、習氏が戦争を「懸念」していることを認めた」

     

    習氏とモディ氏によるプーチン氏への発言は今後、プーチン氏の行動へ一定の影響を与えることが考えられる。とくに、ロシアがウクライナで戦略核を使用した場合、ロシアは「仲間内」から外される恐れも出るだろう。その意味で、レッドラインを越させない効果はあるように思う。

     


    (2)「こうして、中ロ主導の地域協力組織「上海協力機構(SCO)」の会議における首脳同氏のやり取りは、対ロシア制裁に加わっていない2大経済大国がウクライナ侵攻に対する懸念を最も公の形で表明する場となった。米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は16日、今回の発言はプーチン氏が「国際社会からさらに孤立している」ことを明確に示したと述べた。「これまでプーチン氏に対する反感を声高に表明していなかった国々も、同氏がウクライナでやっていることに疑問を抱き始めている」 中国とインドが明らかに懸念を表明したことは、プーチン氏が目指している「非西側諸国間の結束」に対する障害となり得る

     

    下線のように中国とインドが、ウクライナ侵攻へ懸念を示したことは、「非西側諸国間の結束」にひび割れを起こす要因となろう。ロシアへ逆風が吹いていることは明らかである。

     

    (3)「中国は国際市場で割安になったロシアの1次産品を安値で購入している。だが、制裁でロシアの防衛や技術分野で不足が生じても、中国企業は米国からの二次的制裁のリスクを恐れ、それを穴埋めすることには慎重な姿勢を取っている。モスクワに駐在する別の西側の外交官は「ロシアは中国にもっと期待していたはずだ」という。「中国企業は、積極的に行動しないように指示されているか、あるいは取引に高官の許可が必要になっているかのいずれかだ」と指摘する」

     

    中国は、ファーウェイがイラン制裁への「二次制裁」で副会長がカナダで逮捕(その後保釈)された一件が身に応えている。ロシアでも「二次制裁」はあり得るからだ。現に、米国はそれを強く警告している。

     


    (4)「ニューデリーのシンクタンク、政策研究センター(CPR)上級研究員のスシャント・シン氏は「モディ氏の発言は、同氏が意図した通り、プーチン氏を支持してはいないというメッセージを西側諸国に伝える役割を果たした」と語った。モディ氏はウクライナの主権や領土に関する「議論の割れる問題」には触れず、食糧安全保障や燃料・肥料の供給といった戦争の影響に関する点に絞って発言した、とシン氏はいう」

     

    モディ氏は、西側諸国へプーチン支持でないことをアピールした。モディ氏は、米国へ「クアッド」(日米豪印)で接近しているからだ。インドの武器国産化問題で、米国から支援を受ける約束を受け取っている。その「領収書」代わりの発言とも読めるのだ。

     


    (5)「西側諸国の高官は、モディ氏らが懸念を表明したことは、プーチン氏の主張に対する挑戦と受け止めている。戦争による経済的打撃が悪化したのは、西側の対ロシア制裁が原因だと主張するプーチン氏の持論に異議を表明したという見方だ。欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は18日、仏週刊紙『ジュルナル・デュ・ディマンシュ』への寄稿文で、ウクライナ軍による占領地の奪回は、ロシア軍の弱さと士気の低さを如実に示した、とした。最近の出来事を見れば、「ウクライナ軍はまだ戦争に勝利こそしていないが、ロシア軍が負けつつあるのは間違いない」と主張した。ボレル氏は、まだ戦争は続く、とした上で、和平のプロセスについて考える時期が来ているとした」

     

    中国やインドが、ロシアへ苦言を呈するようになったのは、ロシア軍の劣勢とも深く絡んでいる。ロシア軍の無様な戦い方を見ると、とても「軍事大国」と呼べない幼稚さを見せつけているのだ。プーチン氏もロシアも苦境に立たされてきた。

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    先の習近平氏とプーチン氏の首脳会談後、ロシアのパトルシェフ連邦安全保障会議書記が19日、中国外交担当トップの楊潔チ共産党政治局員と会談した。パトルシェフ氏は、戦略的提携を深化して防衛協力を拡大し、主要な地政学的問題で両国が連携を強化するよう要請したと、『ロイター』(9月19日付)が伝えた。

     

    中ロ首脳会談では、双方が意見を述べ合っただけで深い詰めがなかった。習氏は、夕食もとらず帰国するという「隙間風」が吹いていたので、ロシア側がプーチン氏の側近を中国へ派遣したものだ。中ロは、今後とも「共同演習やパトロールを中心に、さらなる軍事協力と参謀本部間の連絡強化で合意した」という。

     


    中ロは、ウクライナで軍事行動を共にすることはなくても、軍事協力と参謀本部間の連絡強化を申し合わせた。ただ、中ロの協力関係強化が、中国軍にマイナスになるという調査報告が米国防大学から発表された。ロシア軍の脆弱性が、そのまま中国軍の弱点になるという注目すべき報告である。

     

    米『CNN』(9月17日付)は、「中国軍、ロシア軍と同じ潜在的な弱点 米国防大の新報告書」と題する記事を掲載した。

     

    中国軍はウクライナで苦戦するロシア軍と同じ潜在的な弱点を抱えており、同様の戦争を遂行する能力の妨げになる可能性がある――。米国防大学がそんな報告書を公表した。

    報告書では、軍種を超えた訓練の不足が人民解放軍(PLA)のアキレス腱になる可能性があると指摘している。ただ、専門家は中国の能力を過小評価することには依然慎重で、ロシアとの比較には注意を促している。

     


    (1)「報告書では2021年までの6年間、PLAの陸海空軍とロケット軍、戦略支援部隊の5軍種に所属する幹部将校300人以上の経歴を調査した。その結果、どの軍種においても、幹部はキャリアを開始した軍種以外で作戦経験を積む機会に乏しいことが判明した。別の言い方をすれば、
    PLAの陸軍兵は陸軍兵のまま、海軍兵は海軍兵のまま、空軍兵は空軍兵のままキャリアを過ごす。報告書では、PLAの要員がそうした狭い組織の外に出ることはまれだと述べ、軍種をまたいだ訓練が1986年から法律で義務付けられている米軍とは対照的だと指摘している」

     

    人民解放軍(PLA)の幹部将校は、下線のように陸軍は陸軍、海軍は海軍と生涯に他の軍務を経験することがない。米国は1986年以降にこの垣根を取り払い、あらゆる軍務を経験させている。この経験が、陸・海・空の一体化作戦に不可欠という。

     


    (2)「報告書はさらに、こうした「硬直性が将来の紛争で中国の有効性を低下させる可能性がある」とし、特に軍種をまたいだ高レベルの統合行動が求められる紛争では問題になると指摘。PLAは「軍全体のまとまりに欠ける」ウクライナでのロシア軍と同様の問題に見舞われる可能性があると示唆した。7カ月前のウクライナ侵攻開始以降、ロシア軍の組織構造の欠陥は外部から見て明らかになっている。専門家によれば、ウクライナ軍の反転攻勢で最近敗走した際、ロシアの地上部隊は航空支援を欠いていた。開戦当初には兵たん面の問題で補給能力がそがれ、ロシア軍のトラックは地形に適したタイヤもなく、整備不足による故障が相次いだ

     

    ウクライナ侵攻で見せたロシア軍の欠陥は、地上部隊が航空支援できなかった点にあるという。他軍務を経験していないので、硬直的な戦い方になるという。ウクライナ侵攻でロシア軍は、開戦3日間で空挺部隊の大半を失った。

     


    (3)「報告書の著者であるジョエル・ウズノー氏によると、PLAの幹部は軍種をまたいだ訓練の不足から、これと同様の問題に直面している。「例えば、作戦指揮官が後方支援部門でキャリアを広げる機会はほとんどない。その逆もしかりだ」(ウズノー氏)。同氏は米国防大学中国軍事研究センターの上級研究員を務める。報告書によると、21年に四つ星司令官(米軍の統合参謀本部議長やインド太平洋軍司令官、あるいは中国の中央軍事委員会幹部や戦区司令官など)を比較したところ、米軍の40人全員が統合軍の経験があったのに対し、中国軍では31人中77%しか統合軍の経験がなかった。米国では四つ星司令官のほぼ全員が作戦経験を持つが、中国では半数近くが「プロの政治将校」だという」

     

    PLAは、ロシア軍が見せたウクライナ戦争での欠陥を、そのまま受け継いでいる可能性が強い。台湾軍は、米軍による訓練を受けているので、他軍務を経験させているだろう。驚くべきは、中国の四つ星司令官の約半数が「政治将校」上がりだ。つまり、実戦指揮の経験がない「アマチュア」である。これは、中国最大の弱点であろう。

     


    (4)「ハワイにある米太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター氏は、今回の報告書は「中国の現状や今後について私が見た中で最良の分析だ」と語る。一方で、この報告書を基にウクライナと似た戦争でのPLAの戦いぶりを予想するのには慎重になった方がいいとも指摘した。中国軍にはロシア軍より優れた点が他に数多くあるからだ。中国は新兵訓練の質がより高く、現在はもう徴集兵に依存していないが、ロシア軍は下士官の「80~85%を入隊7カ月の徴集兵に頼っている」(シュスター氏)。ロシアとは異なり、中国にはプロの下士官も存在するという」

     

    中国軍が、ロシア軍並の弱さという結論を出すべきでない、としている。当然だろう。敵を見くびって負けた例は多い。今回のロシア軍がそれだ。



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