勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年10月

    テイカカズラ
       

    韓国経済は、輸出が屋台骨を支える構造である。その頼みの輸出は、来年は増加率ゼロという厳しい見方が出てきた。IMF(国際通貨基金)アジア太平洋局長の予測である。中国経済の不振や半導体市況の急落などが、輸出に大きな影響を与えるものと見られる。

     

    『東亜日報』(10月26日付)は、「IMFアジア太平洋局長『物価は今年がピーク』」と題する記事を掲載した。

     

    来年度の韓国輸出の伸び率が0%まで下がるだろうという国際通貨基金(IMF)の予測が出た。

    (1)「IMFのクリシュナ・クリシュナ・スリニバーサン・アジア太平洋局長は25日、韓国銀行で「グローバル経済と韓国」をテーマに記者懇談会を開き、「来年度の韓国輸出は低迷すると予想される」としたうえで、このように話した。スリニバーサン氏は、今年は3%台後半の韓国の輸出成長率は、来年度は0%に迫るだろうと見込んだ」

     

    韓国は、輸出が支える経済である。輸出増加率ゼロ%は、輸出企業へ大きな打撃になる。雇用悪化から、内需へ負の影響を与える。半導体市況は、来年前半までの急落は不可避である。この間にしっかりと在庫調整が進めば、後半から回復の芽も期待されるとしているが不確かである。中国は、韓国の最大輸出先だ。「共同富裕論」で競争よりも平等実現という理念を言い始めた。経済実態の悪化をカムフラージュしているに過ぎない。

     

    (2)「スリニバーサン氏は、「韓国は、世界の実体経済や金融市場環境から大きな影響を受けてきた」とし、「交易条件のショックや米国の通貨緊縮などが、(否定的な)影響を与えている」と理由を説明した。その上で、IMFは来年度の韓国の経済成長率の予測値を2.0%で、従来よりも0.9%ポイント下方修正したと説明した。

     

    IMFは、来年の韓国成長率を2.9%から2%へと3分の1も引下げた。これは、未だ甘いと見るべきだ。輸出ゼロ%では、設備投資も延期されるし賃上げも小幅になろう。高金利下であることもマイナスだ。

     

    (3)「スリニバーサン氏はさらに、「前月比消費者物価の上昇率は下がる傾向が出てきており、物価は今年にピークに達し、徐々に2024年頃は目標水準に戻るだろう」とし、「成長への影響は避けられないが、緊縮を通じて必ずインフレに真っ向から対応することが重要だ」と呼びかけた。スリニバーサン氏は、さらに「政府負債が国内総生産(GDP)の55%水準まで増えたと理解しているが、中期的に財政政策の基準を定め、信頼を守っていくことが重要だ」とも勧告した」

     

    物価は、今年がピークとしている。来年以降に低下すれば、それに応じて、金利引き下げも可能になる。ただ、引下げるときは「小幅」が原則である。設備投資は、金利が底であることを確認して再開されるであろう。

     

    いずれにしても、韓国経済が厳しい局面にあることは確かである。韓国政府は、80分間の景気対策会議をTVで公開して、国民に理解を求めるという「広報」を始めている。

     

    『東亜日報』(10月31日付)は、「尹大統領主宰の非常経済会議『危機克服』の信頼を提供できなかった80分」と題する記事を掲載した

     

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨日、龍山(ヨンサン)の大統領室の2階で主宰した第11回非常経済民生会議がテレビで生中継された。これまでは大統領の冒頭発言が終われば非公開に転換されたが、今回は80分ほどの会議内容が丸ごと公開されたのだ。グローバル経済危機の状況で、政府がどのような悩みを抱えており、経済に活力を吹き込むためにどのような対策を立てているのか、国民に率直に知らせようという趣旨だった。

     

    (4)「今回の非常経済会議に注目が集まったのは、ただテレビでの生中継という形式のためだけではない。経済の不確実性が日増しに大きくなる状況で、新政府がどのように危機を突破しようとしているのか、直接聞くことができる機会だった。そのような点で、今回の生中継は初めての試みという点で多少意味があったかも知れないが、内容の面では少なからぬ残念さを残した。各省庁の政策を並べる水準に止まったためだ」

     

    政府の非常経済会議が、テレビでの生中継されるほど緊迫感が迫っている証拠だ。これは、「貴族労組」への過激な賃上げ闘争をけん制する意味もあろう。貴族労組の高賃上げが、大企業の下請け単価の切下げとなって、中小企業経営を圧迫するからだ。韓国の個人消費の対GDP比は、46%(2020年)と日本よりも10ポイント低いのが現実だ。

     

    最近の韓国は、一部企業の賃金が日本を上回ったと自慢している。それは一握りの企業だ。何よりも、個人消費比率の低さがそれを証明している。

     

     




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    文政権の与党であった「共に民主党」は、政権交代後に次々とスキャンダルが暴露されている。ユン政権の政治報復と強弁して国会審議にも応じないという暴走ぶりだ。ユン大統領の施政方針演説も欠席した。

     

    こういう混乱状況を眺めていると、韓国の民度の低さがいやが上にも強く印象づけられる。「共に民主党」は、国民の負託に応えているだろうかという疑念が湧くのだ。これが許されるというのは、韓国の民主主義が相当遅れていることを立証している。

     

    『朝鮮日報』(10月30日付)は、「うそ・扇動・非常識の『共に民主党ワールド』」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長である。

     

    共に民主党の旧権力側だけで不正スキャンダルが相次いでいるのも奇妙だが、それよりさらに珍しいことがある。そちら側の人々は一様に犯罪を政治で覆す才能を持っていることだ。

     

    (1)「韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相が代表的だ。不法資金を受け取った疑惑により大法院(最高裁)で有罪が確定したにもかかわらず、最後まで潔白を訴え、「政治報復」を主張した。決定的な小切手の物証まで登場したが、追徴金も払わずに持ちこたえ、その果てに文在寅(ムン・ジェイン)政権は10年以上前の検察の捜査過程を調査すると騒ぎ立てた。過ちを認めるのではなく、政治攻防に追い込むのが共通した手法だ」

     

    韓国元首相(左派)が、賄賂を受け取った事件で最高裁まで争われ有罪になった。決定的な小切手の物証まで登場したという。それでも、事件を認めず「シラ」を切ったもの。韓国社会の低俗性を余すところなく示している。絶対に「反省しない」社会のようだ。 

    (2)「李在明(イ·ジェミョン)代表も同じ道を歩もうと決心したようだ。大庄洞疑惑に関与した周辺人物を「知らない人物」だと言い放ち、最側近が逮捕されると「野党弾圧」だと反撃した。贈賄側の具体的供述が出てきたにもかかわらず、「でっち上げ」を主張し、「特別検事を阻もうとしている」と対抗した。民主党は李代表擁護に総力戦を繰り広げた。大統領の施政演説をボイコットし、検察の捜索を阻止しようと7時間も対峙した。裁判所が発行した令状の執行を妨害し、司法手続き自体を拒否する方式で対応した。法治国家の公党がレッドラインを超えたも同然だ」

     

    李在明氏は、名うての「ウソ製造機」である。これまで、ウソで切り抜け出世街道をかけ上がってきた人物だ。日本ならば、絶対に排除される人物が、こともあろうに「大統領候補」にまで上り詰め、僅差で敗れるまでに「出世」してきた。何か、寒々としてものを感じるが、今は在宅起訴で「被告人」となっている。通常ならば、「共に民主党」代表を辞任する筈だが居座っている。辞任すれば、逮捕・拘留もありうるからだ。常識では測れない行動である。

     

    (3)「国益を害する民主党の自害劇は絶えず繰り返されている。庶民生活を窮乏させた所得主導成長、「住宅価格の狂乱」を招いた強引な不動産規制、住宅賃貸市場の大混乱を引き起こした反市場的な賃貸借3法、タクシー業界の混乱を招いた「配車サービス『タダ』禁止法」などがその一例だ。野党になって以降は、でたらめ・低質・偽り・扇動が平気で通用する「民主党ワールド」の精神世界はどんな構造だろうか。議会権力を掌握した巨大野党が「問題そのもの」に転落した韓国政治の現実が嘆かわしい」

     

    魏聖洛(ウィ・ソンラク)元ロシア大使は昨年、1冊の本を出版した。その中で、韓国では「アマチュアリズム、ポピュリズム、イデオロギー・党派性、自己中心的・感情的観点、国内政治従属外交が韓国の抱える五つの外交的泥沼」だと指摘。さらに、「この泥沼は互いに否定的影響を与え、韓国外交の先進化を阻む」と述べたという。

     

    この指摘は、韓国社会の特質を抉り出している。反日の騒ぎは、下線部分がすべて当てはまるのだ。「物事を深く考えないで騒ぎ立てる」(アマチュアリズム、ポピュリズム、イデオロギー)。それによって、「人気を集める」(党派性、自己中心的・感情的観点)という手法は、文政権によって嫌と言うほど繰り広げられた。韓国の低俗な政治的流れが、いまもなお炸裂しているようである。これでは、韓国が救われない。気の毒に思うのだ。

     

     

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    中国経済は、最大の危機に直面している。それにも関わらず、次期首相候補の李強(リー・チャン)氏は経済政策の素養ゼロという「ハチャメチャ」人事が発令されよう。李氏は、最高指導部では、2位にランクされている。当然、首相ポストに就任だ。

     

    李氏は、習近平氏に忠勤を励んだことで取り立てられた人物とされている。上海市トップとして2ヶ月も「ゼロコロナ政策」を行なって、市民から大変な批判を浴びた経緯がある。習氏の意向には100%従うことで、首相のポストを得ただけという酷評も聞かれる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月31日付)は、「李強氏、経済手腕は未知数 首相候補」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党序列2位の李強氏が、2023年3月の首相就任に向けて急ピッチで準備を進める。近く副首相に就くとみられる。「ハイテク研究に熱心」との評価がある一方、中央政府での勤務経験がない。マクロ経済運営の手腕は未知数だ。

     

    (1)「李強氏は上海市に近い浙江省生まれ。地元の農業大学の分校で学んだ。浙江省政府で農民の救済事業などを担当し、浙江省温州市のトップに就いた。転機は2002年に浙江省トップとして赴任した習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)との出会いだ。党委員会の秘書長として支え、信頼を得るようになった。習氏が党トップに就いてから江蘇省や上海市のトップを任され、今年10月に最高指導部である政治局常務委員のメンバーに選ばれた」

     

    中国経済は、不動産バブル崩壊後の過剰債務によって押し潰される状況になっている。本来ならば、改革開放政策の継続をすべきだが、習氏の「反企業主義」によって企業管理を強める逆コースを選択する。習氏は、政敵が民営企業の株主として利益を得るのを警戒している結果だ。要するに、習氏の利益優先で「反企業主義」になっている。

     

    こういう状況下では、李氏が手腕を発揮できる余地はない。それでも、李氏に経済知識やマクロ経済政策の素養があればまだしも、それもないとすれば、完全な「イエスマン」になるほかない。歴代中国の首相では、最悪ケースとなろう。周恩来とは比較すべきもない。

     

    (2)「李氏を知る共産党員は、「口数が少なく、だれに対しても腰が低い」と語る。上海市トップとして今春、新型コロナウイルス対応のロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。短期間のはずだった封鎖が2カ月に及んだ不手際は国民の反発を呼んだ。インターネット上では封鎖中の視察先で住民の抗議を受ける動画も拡散された。都市封鎖で猛烈な批判を浴びた李氏だが、別の党員は「米テスラを上海に誘致できたのは紛れもなく李氏の手柄だ」と弁護する。李氏が、地元当局にテスラの税制優遇や安価な土地の貸与などを指示したのが決め手になった。ハイテク分野の研究に余念がないとの指摘もある」

     

    李氏の手腕は、米国テスラ(EV)を誘致したことという。「土地本位制」のメリットを与えた側である。それだけに、今後の不動産バブル解決にメスを振るえるかどうかだ。

     

    (3)「スピード出世を遂げた李氏だが、中央政府である国務院での勤務経験はない。現首相の李克強(リー・クォーチャン)氏や前首相の温家宝氏は、5年の副首相経験を経て首相に就いた。副首相経験者を首相候補への登竜門と位置づけてきたのは、それだけ首相の所掌範囲が多岐にわたり、重責であることを物語っている。李氏は首相登板まで準備期間が5カ月足らずしかなく、今から副首相に就いても経験をどこまで積みあげられるのか不安を残す」

     

    李氏は、副首相経験者がゼロというハンディも背負っている。こういう人物を首相に任命する習氏の腹は、操縦し易いということだけにあるのだろう。現首相とは、しばしば意見対立があったというから、今度は「イエスマン」を据えるのだ。

     

    (4)「中国経済は、新型コロナの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で停滞局面が長引いている。バブルを抑え込むための規制強化が住宅不況を招き、不動産経済からの脱却も見通せていない。地方では急速な少子高齢化や人口流出で経済が疲弊している。農村系金融機関の破綻など金融不安のマグマもたまっている。輸入資源などの価格を押し上げる人民元安も歯止めがかかっていない」

     

    中国経済の現状が、李氏にとって重荷であることは確実である。国務院の専門家から見れば、「頼りない首相が来た」と早くも侮られていることは確実だろう。

     

    (5)「首相就任後は習氏の意向をくみ取って、格差縮小をめざす「共同富裕(共に豊かになる)」政策の具体化などに着手するとみられる。山積する課題への対応も待ったなしだが、危機対応への不安はくすぶる」

     

    「共同富裕論」は、税制が解決する問題である。「金持ち優遇」の現行税制では、永遠に解決不能である。富裕階級には、固定資産税を課して負担させるべきである。新首相に、その勇気があれば天晴れだ。

     

     

     

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    強まる中国の戦狼外交

    戦略物資となる半導体

    危険な存在になる中国

    先進国は「見果てぬ夢」

     

    韓国左派(実態は民族主義)は、中国を母国のように扱っている。文在寅政権は、民族主義の特質が最も強く表われていた。中国の要求に、ほぼ沿う形であったのだ。安全保障の「3不政策」が、その典型である。

     

    安全保障は、国家経営の基盤である。韓国は、その安全保障政策で中国の言いなりになっていたのだ。つまり、1)THAAD(超高高度ミサイル網)の追加配備をしない。2)米ミサイル防衛システムに参加しない。3)日米韓の安保協力は軍事同盟に発展しない、というもの。なぜ、こういう韓国防衛の根幹部分を中国へ委ねるようなことを行なったのか。それには、中国の力によって北朝鮮の暴走を食止めてほしいという願望が込められていた。

     

    現実に、中国が北朝鮮に対し影響力を発揮した形跡はない。むしろ中朝は、一体化の動きを強めていた。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻後、中朝ロは朝鮮戦争以来の結束を固める事態になっている。韓国が、中国へ期待した成果は全く得られないことが明白になった。

     

    強まる中国の戦狼外交

    韓国の政権は、5月に保守派に代わった。当然、中国との関わり方は変わる。前記の「三不政策」は、政府次元の合意でないと強く打ち出している。正式な条約でないからだ。中国は、せっかく手にした「約束」である。韓国へ強くその履行を迫る。中国のこうした「戦狼外交」は、習氏の国家主席3期目によって一段と強まる方向だ。

     

    習氏は、最高指導部を習派で固めた。反対論などブレーキ役になる人物はゼロである。この結果、中国は台湾侵攻など危険な行動に出る可能性が極めて強まった。習氏は今年、69歳である。これから10年間、「台湾統一」「尖閣諸島併合」という懸案の領土問題に決着を付ける決意を固めている。具体的には、軍事行動に出ることだ。習氏は、国家主席3期だけでなく4期目も視野に入れて、領土問題の解決に力をいれる体制だ。

     

    米国は、中国の野望が鮮明になるとともに、これを抑止する行動に出ることは言うまでもない。米国が、習氏に「台湾統一」や「尖閣諸島併合」を諦めさせるには、米同盟国と協調して抑止力を高めるしか道はない。韓国は今後、米国の要請にそった行動をするかどうかが問われている。

     

    文政権は、明らかに中国へ誼(よしみ)を通じていた。はっきり言えば、中国の言いなりになっていた。習氏の国家主席3期目が、「戦闘的」な振る舞いをすることは明らかである。こうして、韓国による中国への迎合的な行動は極めて危険なものとなり、米同盟国として「利敵行為」になることを知っているだろうか。

     

    韓国が、中国へ煮え切らない態度を取り続けている背景には、対中輸出が全体の25%を占め国別で首位であることだ。香港を含めれば3割を超えている。とりわけ、半導体は全輸出の20%を占め、その中で対中輸出は60%も占めるほどだ。半導体という一つの品目において、これだけ中国へ依存することは、中国の政治動向へ敏感にならざるを得ない面があろう。それには、同情する点もある。

     

    ただ、中国はロシアと協力して世界秩序の塗りかえ目的で、「中ロ枢軸」を固めている。中国の戦略は超長期戦である。2049年に世界一の経済力と軍事力を蓄え、その影響力で新興国を味方につけて世界秩序を中ロに有利な専制主義に変えるという「夢物語」を持っているのだ。

     

    こういう中国の狙いが明白である以上、韓国はここで米同盟国と協調しなければ、北朝鮮を先兵として専制主義国家群へ飲み込まれる危険性が高まる。将来、韓国も現在の香港市民が人権蹂躙や言論統制で苦しんでいる状態へ変わる運命が待っている。決して、誇張した言い方ではあるまい。

     

    戦略物資となる半導体

    韓国は、中国への半導体輸出が魅力で、中国との関係見直しに躊躇している。だが、この半導体は米国で生まれた戦略物資である。中国の武器弾薬の生産には、不可欠な物資である以上、米中対立の激化とともに半導体が輸出禁止になることは致し方ない。韓国は、半導体輸出が、利益を生む手段としか見ていないのだ。戦略物資という認識が足りないのである。

     

    米商務省は10月7日、中国が「世界一目標」を実現する上で不可欠な最先端半導体や製造装置の輸出を認可制にすると発表した。先端技術の対中輸出を制限する従来規則を、大幅に強化した。先端半導体が、中国の軍拡を支える鍵である以上、安全保障上の観点から対中輸出を事実上、全面的に禁止するものだ。

     

    今回の規制は、スマートフォン(スマホ)やパソコン、データサーバーなどに幅広く使用される先端半導体の製造装置や、パソコンなどに使われる基本的な演算処理用半導体を製造する装置、先端半導体そのものも対象となる。

     

    同盟国が、米国と足並みをそろえて同様の規制を1年後に課す方針である。つまり、米国企業だけでなく米同盟国にも適用するという厳しい内容だ。韓国企業も同じ扱いを受ける。

    (つづく)

     

    次の記事もご参考に。

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    メルマガ401号 韓国「半導体二流国」、欧州が注目の台湾へ焦り 収益力に格段の違い

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    メルマガ403号 韓国最大野党「外交ボケ」、120年前の李朝と変わらず 国家危機へ直

     

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    ロシアのショイグ国防相は23日、30万人の「部分動員」が終了したと述べた。動員された新兵8万2000人が紛争地域に派遣され、そのうち4万1000人が部隊に配属されたことを明らかにした。21万8000人は訓練中という。ショイグ氏は「これ以上の措置は予定されていない」とした。今後は、ロシア国内の数百万人の予備兵を動員するのではなく、原則として志願兵や職業軍人を派遣する方針である。

     

    ロシアが、200万人とされる予備役兵の動員を諦めた理由は何か。国民の動員忌避の動きが活発化していることだ。動員令の掛る可能性がある人々は、一斉に姿を隠しており、海外逃亡者が増えている。モスクワ市役所では、3分の1が逃亡したという情報が出て来た。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(10月29日付)は、「モスクワ市職員の3分の1が『国外逃亡』情報 動員後の劣悪すぎる状況を恐れて」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。ロシアでは、徴兵を逃れようとする国民の「大量脱出」が起きている。

     

    (1)「地元メディア「Nestka」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家らが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている」

     

    多くの専門職の人々が、職場を逃げ出している。職場に私物を残したままの状態であり、いかに切迫していたかを示している。戦争への強い拒絶感を物語る。

     

    (2)「プーチンは9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃れた。10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。ロシア人ジャーナリストのロマン・スーペルは10月14日、ロシア政府の情報筋の話として、モスクワ市政府の部局長だったアレクセイ・マルティノフ(28)の死を受け、市職員が相次ぎ辞表を提出していると、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。マルティノフは戦闘経験がないにもかかわらず、9月23日に徴兵され、10月10日にウクライナでの戦闘中に死亡したという」

     

    10月中旬、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことが判明。これが引き金になって、モスクワ市職員の「大量逃亡」が始まった。戦死したこの職員は、9月23日に徴兵されて10月10日に死亡である。モスクワ市職員が、この悲劇に恐れをなすのは当然であろう。招集=戦死では、余りにも残酷である。

     

    (3)「政府筋はスーペルに、「大量脱出が起きている。職員がメモを残して去っている。IT技術者、広告やマーケティング、広報の担当者や、一般の公務員もだ。まさに大量脱出だ」と話している。スーペルは「動員されたモスクワ市政府職員のアレクセイ・マルティノフが死亡したことが、昨日明らかになっている」と指摘した」

     

    ロシア政府筋すら、大量脱出を認めているほど。招集されて間もない戦死では、誰でも逃亡するだろう。ましてや、大義のない戦争である。この戦いで命を落とすことは、「犬死」に

    なる。

     

    (4)「ロシアの国営メディア放送局RTの副編集長ナターリャ・ロセバは、マルティノフは軍に入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。「彼は若い頃、セミョノフスキー連隊に所属していた」とロセバは指摘。「彼には戦闘経験がなかった。(入隊から)数日後に前線に送られ、10月10日に英雄として死亡した」と述べた。ラトビアに拠点を置くロシア語の独立系ニュースメディア「Meduza」によると、セミョノフスキー連隊は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当しているという」

     

    国営メディア関係者すら、モスクワ市職員が入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと認めている。この戦死した職員は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当し戦争経験はゼロであった。

     

    (5)「著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、ロシアからリトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。ロシア国営通信社タス通信は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている」

     

    元大統領候補者も国外逃亡している。大統領選挙に立候補したほどだから、プーチン氏の政敵に当る。こういう事情から、プーチン氏が再び立候補できないように「招集する」ことを恐れたのであろう。生命の危険を感じれば、誰でも逃亡して当然であろう。

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