韓国は、「高物価、ウォン安、高利子」という三重苦に苛まされている。金融市場では、企業金融が異常な逼迫状態に追込まれている。韓国が、1997年に迎えた最初の金融危機は、企業金融逼迫への対応が遅れたことも一因。今回の事態とダブっている面もあるのだ。警戒すべきであろう。
今回、企業金融逼迫が表面化したきっかけは、地方時自体の江原道(カンウォンド)が、遊園地の韓国レゴランド(公社運営)に対し、支払い保証を実行しなかったことにある。支払い保証金額は、2050億ウォン(約215億円)の企業手形(ABCP)である。その債務履行を拒否した結果、不渡り処理となって問題を大きく広げることになった。
地方自治体の江原道が、傍系の公社へ行なっていた債務保証拒否は、いかにも韓国らしい「約束を守らない」実態を表している。これまで、「自治体保証=超優良等級」と見なしてきた金融市場の「信頼」は、これで一挙に崩れたのだ。こうして、短期資金市場だけでなく社債・国債市場まで急速に冷え込むことになった。
今月17日、最高信用格付け(AAA)の韓国電力公社は、利回り5.75%と5.9%を提示して合計4000億ウォン規模の債券(2~3年物)を発行しようとした。だが、1200億ウォン(約126億円)分は投資家がつかず取引が成立しなかった。
韓電は、莫大な赤字とエネルギー原価上昇で、資金調達が急務だった。相対的に信用格付けが低いAA-級社債よりも多くの利子支払いを約束したが、9月から売買不成立が頻繁になるなど投資家集めに困難を強いられている。同じ信用格付け(AAA)を保有している韓国道路公社も、17日に1000億ウォン規模の債券(2年物)の発行を試みたが投資家さえつかず全額売買不成立となった。公社すら、高金利を提示した債券発行を試みているが、「不発」に終わる事態だ。金融不安の実態の大きさを示している。
『中央日報』(10月24日付)は、「尋常でないレゴランド発の資金市場不安」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国政府と韓国銀行が資金市場安定に向け緊急対応に出た。秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相と李昌ヨン(イ・チャンヨン)韓国銀行総裁、金周顕(キム・ジュヒョン)金融委員長らがきのう非常マクロ経済金融会議を開いた。この席では企業の資金難を軽減するため社債市場に50兆ウォン以上の流動性を供給することに決めた。債券市場安定ファンドと中小企業銀行、産業銀行、信用保証基金など政策金融機関を総動員する」
政府は、50兆ウォン(約5兆2500億円)の資金を投入予定だ。この投入規模が、適正かどうかの議論がされている。だが、「高物価、ウォン安、高利子」という現実が控えているだけに、予断は難しい。ただ、臨機応変に市場の動向を見ながら、投入資金を増やすほかない。
(2)「最近社債・企業手形(CP)市場では格付けが比較的良好な大企業まで資金調達が厳しくなっている。ある大手企業は、社債1500億ウォン相当を発行しようとしたが販売予測で大規模未達が発生した。別の大手企業は市場での調達が不如意なため系列会社から3カ月の短期資金5000億ウォンを借り入れた」
民間の優良企業の社債・CPまで販売が難しくなっている。金融市場は、疑心暗鬼に陥っているのだ。韓国レゴランドが与えられていた支払い保証拒否は、大きな不信感を呼んでいる。
(3)「中堅・中小企業の資金事情は、大企業よりはるかに深刻だ。年10%以上の金利を提示しても投資家を見つけるのは容易でない状況だ。金融投資協会によると非優良社債(BBB-等級、3年物)利回りは21日に年11.59%まで上昇した。金融危機の衝撃が残っていた2010年1月以来12年9カ月ぶりの高水準だ」
年10%以上の金利を提示しても社債が売れない事態だ。韓国が2008年、二度目の金融危機を迎えて以来のことである。韓国は、先進国入りしたと自画自賛しているが、金融的な脆弱性は全く変わっていないのだ。
(4)「政府と韓国銀行は、共同で市場の沈静化に出た。だが一気にすべての問題が解決できると期待するのは難しい。今回のレゴランド発の流動性悪化は危機の始まりにすぎず、今後さらに厳しい状況がやってくる可能性もある。政府と韓国銀行は、いかなる場合にも流動性悪化が金融危機のようなシステムリスクに拡大しないよう総力を挙げなければならない。万一堅実な企業まで一時的な流動性不足で黒字で不渡りを出すことは防がなければならない」
韓国は、三度目の金融危機に陥らないためにどうすべきかが問われている。金融危機に陥って、日本から嗤われないように最大の努力をすべきだろう。もはや、日本を頼れないのだ。