勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年10月

    a0960_005041_m
       

    韓国は、「高物価、ウォン安、高利子」という三重苦に苛まされている。金融市場では、企業金融が異常な逼迫状態に追込まれている。韓国が、1997年に迎えた最初の金融危機は、企業金融逼迫への対応が遅れたことも一因。今回の事態とダブっている面もあるのだ。警戒すべきであろう。

     

    今回、企業金融逼迫が表面化したきっかけは、地方時自体の江原道(カンウォンド)が、遊園地の韓国レゴランド(公社運営)に対し、支払い保証を実行しなかったことにある。支払い保証金額は、2050億ウォン(約215億円)の企業手形(ABCP)である。その債務履行を拒否した結果、不渡り処理となって問題を大きく広げることになった。

     


    地方自治体の江原道が、傍系の公社へ行なっていた債務保証拒否は、いかにも韓国らしい「約束を守らない」実態を表している。これまで、「自治体保証=超優良等級」と見なしてきた金融市場の「信頼」は、これで一挙に崩れたのだ。こうして、短期資金市場だけでなく社債・国債市場まで急速に冷え込むことになった。

     

    今月17日、最高信用格付け(AAA)の韓国電力公社は、利回り5.75%と5.9%を提示して合計4000億ウォン規模の債券(2~3年物)を発行しようとした。だが、1200億ウォン(約126億円)分は投資家がつかず取引が成立しなかった。

     

    韓電は、莫大な赤字とエネルギー原価上昇で、資金調達が急務だった。相対的に信用格付けが低いAA-級社債よりも多くの利子支払いを約束したが、9月から売買不成立が頻繁になるなど投資家集めに困難を強いられている。同じ信用格付け(AAA)を保有している韓国道路公社も、17日に1000億ウォン規模の債券(2年物)の発行を試みたが投資家さえつかず全額売買不成立となった。公社すら、高金利を提示した債券発行を試みているが、「不発」に終わる事態だ。金融不安の実態の大きさを示している。

     

    『中央日報』(10月24日付)は、「尋常でないレゴランド発の資金市場不安」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国政府と韓国銀行が資金市場安定に向け緊急対応に出た。秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相と李昌ヨン(イ・チャンヨン)韓国銀行総裁、金周顕(キム・ジュヒョン)金融委員長らがきのう非常マクロ経済金融会議を開いた。この席では企業の資金難を軽減するため社債市場に50兆ウォン以上の流動性を供給することに決めた。債券市場安定ファンドと中小企業銀行、産業銀行、信用保証基金など政策金融機関を総動員する」

     

    政府は、50兆ウォン(約5兆2500億円)の資金を投入予定だ。この投入規模が、適正かどうかの議論がされている。だが、「高物価、ウォン安、高利子」という現実が控えているだけに、予断は難しい。ただ、臨機応変に市場の動向を見ながら、投入資金を増やすほかない。

     

    (2)「最近社債・企業手形(CP)市場では格付けが比較的良好な大企業まで資金調達が厳しくなっている。ある大手企業は、社債1500億ウォン相当を発行しようとしたが販売予測で大規模未達が発生した。別の大手企業は市場での調達が不如意なため系列会社から3カ月の短期資金5000億ウォンを借り入れた」

     

    民間の優良企業の社債・CPまで販売が難しくなっている。金融市場は、疑心暗鬼に陥っているのだ。韓国レゴランドが与えられていた支払い保証拒否は、大きな不信感を呼んでいる。

     

    (3)「中堅・中小企業の資金事情は、大企業よりはるかに深刻だ。年10%以上の金利を提示しても投資家を見つけるのは容易でない状況だ。金融投資協会によると非優良社債(BBB-等級、3年物)利回りは21日に年11.59%まで上昇した。金融危機の衝撃が残っていた2010年1月以来12年9カ月ぶりの高水準だ」

     

    年10%以上の金利を提示しても社債が売れない事態だ。韓国が2008年、二度目の金融危機を迎えて以来のことである。韓国は、先進国入りしたと自画自賛しているが、金融的な脆弱性は全く変わっていないのだ。

     

    (4)「政府と韓国銀行は、共同で市場の沈静化に出た。だが一気にすべての問題が解決できると期待するのは難しい。今回のレゴランド発の流動性悪化は危機の始まりにすぎず、今後さらに厳しい状況がやってくる可能性もある。政府と韓国銀行は、いかなる場合にも流動性悪化が金融危機のようなシステムリスクに拡大しないよう総力を挙げなければならない。万一堅実な企業まで一時的な流動性不足で黒字で不渡りを出すことは防がなければならない」

     

    韓国は、三度目の金融危機に陥らないためにどうすべきかが問われている。金融危機に陥って、日本から嗤われないように最大の努力をすべきだろう。もはや、日本を頼れないのだ。

     

    a0960_008426_m
       

    習近平氏は、国家主席3期目を目指して「自立自強」を強調した。毛沢東の「自力更生」をもじった言葉とされる。西側諸国の技術(力)を借りずとも、2035年に一人当り名目GDPを先進国(イタリアを想定)並みにすると力んで見せたのである。

     

    この構想は、実現するだろうか。専門家は、即座に「ノー」と否定している。本欄でも、これまで一貫してこれを否定してきた。中国の前途には「中進国のワナ」が控えていることを忘れた「夢物語」である。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月28日付)は、「『中所得国のわな』に陥りつつある中国」と題する寄稿を掲載した。筆者は、ミッキー・D・レビー氏。ベレンバーグ・キャピタル・マーケッツの上級エコノミストで、米シンクタンク、フーバー研究所の客員研究員である。

     

    習近平総書記(国家主席)の権力が確固たるものになり、中国の未来に関する同氏のイデオロギー的な見解が確認された。それ以外に、中国政府が低迷する同国経済にどう対応するかについてはほとんど明らかにされなかった。成長は減速しており、独裁体制の強化は長期的な問題を悪化させるだけだろう。指揮統制型の統治モデルには本質的な欠陥がある。中国政府が統制を強めるにつれて、経済成長への足かせは大きくなり、その度合いは増すだろう。

     

    (1)「習主席が、市場経済離れを加速させているのは全く皮肉なことだ。中国を現在のような経済大国に発展させたのは、まさに市場経済だからだ。中国を貧困から救い出した力強い経済成長は、ハイブリッド型のモデルによって推進された。それは国家資本主義の一形態で、中国政府は、生産性の低い大規模な国有企業と並行して、民間による所有と米国式の自由な企業活動の隆盛を認めた」

     

    下線は、重要な指摘をしている。中国の急成長を実現したものは、「一人っ子政策」による生産年齢人口比率の急上昇と市場原理の導入である。習氏は、市場原理導入が政敵の隠れ蓑になることを恐れている。そのため、市場経済を抑制して計画経済へ戻すとしている。これは、生産性を抑制するのだ。さらに悪いことに、すでに2011年から生産年齢人口比率は低下に向かい経済成長率を押し下げるのだ。こういう、状況下では、市場経済原理の継続が不可欠である。習氏は、逆行しているのだ。

     

    (2)「輸出関連の中国製造業は、低コストの労働力や政府による投資に加えて、国外の技術とノウハウを効率良く獲得したことを原動力にして活況を呈した。自由な企業活動が認められたことによって、人材が中国に流入し、技術革新と生産性向上をけん引した。世界の輸出に占める中国のシェアは2000年の4%から2015年には14%に高まり、高賃金の雇用を生み出すとともに、国内の繁栄をもたらし、それが近代的な都市インフラを資金面で支えた。この期間の世界経済成長の30%を中国が占めた」

     

    中国は、まさに1)によって急成長を遂げた。今後は、人口動態面からも成長率は低下する。それだけに、市場経済原理を重視した政策を続けなければならない。決して止めてはならならないのだ。習氏は逆のことをしようとしている。

     

    (3)「一部の論客は、中国の経済成長モデルが米国の資本主義に代わる好ましい選択肢になると謳い、遠い未来まで急成長が続くと予測していた。それは甘い考えだった。経済はそのようには機能しない。中国の安価な労働力供給が底を突くのに伴い、賃金や生産コストが急増する一方、投下資本利益率は低下した。資本と労働力の投入による総合的な生産性は下がった。輸出関連の製造業を中心とするモデルから国内消費を中心とするモデルに移行するという中国の目標は達成できず、成長はますます政府支出に依存するようになっている。これは失敗が運命付けられた政策だ」

     

    経済成長に「中国式」は存在しない。存在するものは、市場原理による生産性の増加だ。習氏の描く「中国式」は、反市場原理であって滅亡の経済方程式である。毒薬を飲んではいけないのだ。

     

    (4)「習政権は自由な企業活動を抑制し、中国に繁栄をもたらしたものをむしばんでいる。より厳しい締め付けは、民間の起業家精神や、技術革新と資本の移動を押さえつけている。政府が産業の所有を進め、国家の資源配分が官僚的に行われていることにより、非効率性と余剰が生じている」

     

    習氏は、マルクス主義によって目を塞がれている。経済は、マルクスという政治原理によらず、合理的な市場経済システムによって発展する。この分かりきったことが、なぜ分からないのか。歯がゆい思いだ。習氏は、マルクス主義という「麻薬」によって、正常な判断力を奪われているとしか言いようがない。

     

    (5)「中国の不動産問題を例に取ろう。中央政府の計画立案者は、著しく高い国内総生産(GDP)の目標を掲げ続け、インフラや居住用不動産に対する政府支出を増やすことで、それを達成した。従順な地方の党指導者は土地の売却益や不動産開発業者が創出した雇用から恩恵を受けた。開発ブームと不動産価格の上昇により、不動産関連の活動がGDPに占める割合は25%以上、家計の純資産に占める割合は約75%と、非常に不健全かつ持続不可能な水準に到達した。そうした行き過ぎた状態は破綻をきたしつつあり、住宅価格の急落と先行きの見通しの悪化は家計の純資産に打撃を与え、信頼感を低下させている」

     

    中国の現状は、このパラグラフの通りになっている。もはや限界にぶつかっている。この状況では、2035年に一人当り名目GDPがイタリア並みの3万ドルへは達しない。その前で挫折して「中進国のワナ」へ落込むのは必至である。今後、平均して5%強の成長を35年まで続けられる保証はないのだ。人民元高は続かない。人民元売りを警戒する段階になった。これも、「中進国のワナ」に拍車をかける。

     

    a0001_000268_m
       


    国際観艦式は、海上自衛隊創設70周年を記念して開かれる。11月6日、相模湾で開催されるもの。米豪印など12か国の艦艇18隻が参加する予定だ。招待した韓国と中国は、回答期限を約2週間過ぎても回答がなかった。その韓国が27日、ようやく参加意思を表明した。

     

    韓国の回答遅延は、最大野党「共に民主党」が、日米韓三ヶ国の軍事演習を「親日国防論」として反対論を煽ってきたことへの配慮と見られる。その結果、国際観艦式への参加は駆逐艦でなく、補助艦という「格落ち」にした。まだ、「反日」の殻を付けたままである。

     

    海自が発表した参加国名簿は、米国・英国・豪州・フランス・カナダ・インド・インドネシア・マレーシア・ニュージーランド・パキスタン・シンガポール・タイなど12カ国。韓国が、最後に加わった。中国は、回答もせず無視の格好だ。

     

    『中央日報』(10月28日付)は、「『親日国防』論争より北朝鮮脅威…韓国、日本観艦式に補給艦『昭陽』派遣へ」と題する記事を掲載した。


    韓国政府は来月6日、日本海上自衛隊の主催で開かれる国際観艦式に韓国海軍補給艦「昭陽(ソヤン)」を派遣することを27日、決めた。この日午前、ソウル龍山(ヨンサン)大統領室で開かれた国家安全保障会議(NSC)定例常任委員会会議でこのように決まったと政府は明らかにした。

    (1)「国防部と海軍はこの日、参加の背景に関連して「過去に日本が主管した国際観艦式に海軍が2度参加した前例と、国際観艦式に関連した国際慣例などを総合的に考慮した結果」としながら「最近北朝鮮の相次ぐ挑発でもたらされた韓半島(朝鮮半島)周辺の厳しい安全保障状況を考慮する場合、今回の国際観艦式への参加が持つ安保上の含意を最優先で考慮した」と明らかにした」

     

    国際観艦式は、近隣国の友好親善の集まりである。韓国だけが、旭日旗に難癖を付けて騒いでいるに過ぎない。度量の狭さを曝け出している。

     

    (2)「政府が、「親日国防」という野党のフレーム攻撃と低い政権支持率にもかかわらず、観艦式参加を決めたのは、北朝鮮核・ミサイル脅威を座視できないという判断という意味だ。ある政府消息筋は、「北朝鮮が各種挑発を日常的に繰り返し、追加核実験まで敢行しようとする勢いだが、韓日米共助と国際社会の協力が切実な時点」としながら「国際観艦式が友邦間の軍事協力を象徴する国際的な行事であるだけに、国内の政治的論争を離れて大乗的な次元で決断した」と話した」

     

    韓国最大野党「共に民主党」は、民族主義グループである。反日が「党是」のような政党である。いずれ、国際情勢変化の中で淘汰されるであろう。


    (3)「政府は通常、国際観艦式に派遣する駆逐艦ではない補給艦「昭陽(ソヤン)」(AOE-II・1万トン級)を派遣することに決めた。これについて軍消息筋は「国民感情などを考慮して物資補給などが主任務である補給艦にトーンダウンしたとみられる」と述べた。これに関連して、韓国政府消息筋は「政府内ではすでに艦艇を派遣するという雰囲気が強かった」とし「それでも反対する声が高く、27日のNSCで激論が交わされた」と話した」

     

    国際観艦式には、どこの国も駆逐艦を派遣する。韓国は、補給艦という「格下」を参加させる。日本もこの前例に従い韓国の国際観艦式には、補給艦を送ればよい。それだけの話だ。


    (4)「韓日間の国際観艦式参加問題は、文在寅(ムン・ジェイン)政府時期である2018年、日本艦艇の旗掲揚を巡り両国が鋭く対抗することによって触発された。当時、文政府は自衛艦旗が旧日本軍の「旭日旗」のようだとし、日本国旗である「日章旗(日の丸)」を付けて済州島(チェジュド)で開かれる国際観艦式に出席するように要求したが日本側が断った」

    文在寅政権は、本当に偏見に満ちた政権であった。旭日旗を「戦犯旗」と蔑んでいる。日本への侮辱であるが、日本の植民地にされた憾みをこうして晴らしているのだ。


    (5)「旭日旗論争が続いていることに関連し、国防部関係者は「自衛艦旗に対して国際的に認定されているかどうかを全数調査した」とし、「中国を含めて世界で問題としている国家はなく、我々も過去の観艦式では問題にしなかった」と説明した。ソウル大学国際大学院の朴チョル熙(パク・チョルヒ)教授は、「2018年以前は韓日両国が国際慣例通り互いに国際観艦式に出席したことを、(文在寅大統領時期の)政界が問題として異常な関係になってしまった側面がある」とし「両国間の安保協力を正常化するためにも観艦式出席は避けられない」と述べた」

     

    韓国は、旭日旗に対する国際世論を調べたという。その結果、「拒否反応」はゼロであった。当然のこと。反対は、「内政干渉」になる。韓国は、こういう認識もない「田舎者」集団として嗤われるだけであろう。

     

    あじさいのたまご
       

    韓国半導体業界が衝撃を受けている。7~9月期の営業利益が大幅減益に見舞われたからだ。半導体産業は、韓国が世界に誇る唯一の産業である。半導体が、ついに循環不況の波に飲み込まれた。

     

    世界の半導体リードタイム(発注から納品までにかかる時間)は、9月1日に4日間短くなり、数年ぶりの大幅な短縮となった。業界の供給不足が緩和されつつあることを示すものだ。すでに、半導体市況は崩落が始まっている。これから、リードタイムの緩和化が顕著になれば、どれだけ市況は下落するのか想像するのも怖いほどの事態が訪れそうである。

     

    サスケハナ・ファイナンシャル・グループの調査によると、2017~20年までの半導体リードタイムは、次のようなものであった。ピークは、15.3週(2018年8月1日)。ボトムは、12.7週(2020年1月1日)。これ以降は増加に点じるが、15週を上回ったのは21年1月1日である。

     

    ここを起点にして、次のようにリードタイムは増加の一途を辿っている。

    20.4週 21年 5月1日

    25.0週 21年11月1日

    27.1週 22年 5月1日(ピーク)

    26.3週 22年 9月1日

    出所:『ブルームバーグ』(10月18日付)

     

    要するに、半導体のリードタイムは、現在の26.3週が正常な12.7~15.3週まで緩和されるとなれば、相当な市況崩落を見込まなければならない。これが、韓国半導体業界を直撃するであろう。

     

    『中央日報』(10月27日付)は、「SKハイニックスの営業利益半減…韓国の電子・部品業界に氷河期」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の主要企業の業績悪化が現実化している。世界的な景気急冷にともなう需要減少とウクライナ戦争、インフレなど複合リスクにより主要な電子・IT・部品企業が氷河期に入った。

    (1)「SKハイニックスは26日、7-9月期の営業利益が1兆6556億ウォン(約1714億円)を記録したと公示した。メモリー半導体市場の低迷で前年同期より60.3%減った。金融投資業界が予想した見通しの2兆1569億ウォンより30%減る予想外に低調な業績でアーニングショックとなった。売り上げは10兆9829億ウォンで前年同期比7%減少した。SKハイニックスは来年の投資規模を今年より50%減らす計画とも明らかにした」

     

    SKハイニックスの7~9月期の営業利益は、前年比で60.3%もの大幅減益になった。これを受けて来年の投資規模を今年より50%減らす。メモリー半導体の市況崩落が響いたもの。だが、これは序の口である。来年上半期一杯は急落し、下半期に明るさを取り戻せるかというのが、世界の認識になりつつある。

     

    (2)「LGディスプレーは、7-9月期に7593億ウォンの営業赤字を出したと公示した。4-6月期の4883億ウォンの赤字に続く2四半期連続の赤字だ。LGディスプレーは今年の設備投資を1兆ウォン以上減らし、来年以降も減価償却費の半分水準に投資計画を見直すと明らかにした。サムスン電機もこの日売り上げが前年同期比で5.4%減の2兆3838億ウォン、営業利益が31.8%減の3110億ウォンとなったと発表した。これに先立ちサムスン電子も、7日に速報値として7-9月期の営業利益が前年同期比31.7%減の10兆8000億ウォンを記録したと明らかにしている。確定値は27日に発表する」

     

    ディスプレーの不況ぶりは深刻である。4~6月期、7~9月期と2期連族の営業赤字に陥っている。サムスン電機(サムスン電子ではない)は、営業利益が31.8%減である。サムスン電子も、同31.7%減と大きな落込みだ。

     

    『東亜日報』(10月27日付)は、「『資金大乱』で企業投資にも寒波、『経済の安全弁』が見えない」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「グローバル景気低迷の懸念の中、資金市場で資金源が底をつく現象まで重なり、企業の投資計画に赤信号が灯っている。SKハイニックスは当初、10兆ウォン台後半と予測されていた来年の投資規模を、今年より50%以上減らすことにした。SKハイニックス側は、「2008~2009年の金融危機に匹敵する投資縮小だ」と話した。これに先立って、現代(ヒョンデ)自動車と現代オイルバンク、ハンファソリューションなども、予定されていた投資計画を撤回または縮小、保留する方針を明らかにした。」

     

    現代自動車も設備投資繰り延べを発表した。韓国を襲う高金利の波が、韓国の代表的な企業の設備投資にブレーキを掛けている。


    (4)「企業各社は、大規模な投資の推進過程で調達した資金の返済にも追われている。金利が高騰し、利払いの費用まで雪だるまのように増えている。1年以内に返済しなければならない短期借入金だけでも530兆ウォンで、史上最大だ。急速に冷え込む資金市場は、企業の資金調達の困難をさらに厳しくさせている。高まる対外経済リスクと金利高、ドル高、物価高の3重苦の中でも持ちこたえてきたのが韓国の主要企業だ。経済のマクロ指標が悪化し、金融市場の不安が高まっている状況でも、政府は「韓国経済のファンダメンタルは堅調だ」と、危機説を一蹴してきた。しかし、今やそのファンダメンタルを支えてきた代表企業まで揺れている」

    韓国の代表的な企業も、過去の借入金返済で追われている。急激な利上げで返済負担が重くなっている。これまでの韓国経済楽観論がウソのように消えた。底の浅い経済である。日本を追い越したなど「だじゃれ」は飛ばさないことだ。

    a1180_012903
       

    習近平氏は、先の共産党大会で2049年に「中国世界一」宣言をしたことで、市場は仰け反るほどの衝撃を受けた。実現の可能性がゼロであるからだ。本欄は、こうした習氏の野望について、繰り返しその「可能性ゼロ」を強調してきた。市場は改めて、習氏の「自立自強」戦略と、「世界一論」が完全に矛楯していることに驚愕して、株式と人民元を売り込んだのであろう。

     

    『ブルームバーグ』(10月27日付)は、「中国習主席の2049年目標、世界支配を意味と専門家 経済犠牲いとわず」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は少なくともあと10年、場合によっては終身にわたり統治を続ける体制を整えた。そこで問題となるのは、その権力を使って習氏が何をするのかだ。

     

    (1)「習氏は、自らが目指す中国の方向を明確にしている。先週の共産党大会の開幕式では、中国を2035年までに近代的な社会主義大国とし、1人当たり所得を引き上げ、軍を近代化させる目標をあらためて唱えた。そして中華人民共和国の建国100年を迎える49年までには、「総合的な国力と国際影響力という点で、世界をリードする」国にしたい考えだ」

     

    中国が、経済面での裏づけなしに「世界一」になることは不可能だ。習氏の経済政策は、市場主義に背を向けて計画経済に固執している。これでは、中国経済が世界一になる機会を失う。習氏は、「下放」で中学と高校の系統だった教育を受けていない。この空白が基本的な思考力を歪めているとしか思えない。大学は理系である。いわゆる「一般教養」科目の知識が欠落しているに違いない。こういう人物が、中国の最高権力を握っている。危険極まりないのだ。

     

    (2)「市場が不安視しているのは、どのようにして習氏がそれを実現しようとするのかだ。5年に一度の指導部交代では自身の側近で最高指導部を固め、とりわけ上海市トップの李強党委員会書記を中央政府での経験がないにもかかわらず首相に抜てきした。この人事が明らかになった今週前半、中国資産は売り浴びせに見舞われた。習氏は優先課題の軸足を経済発展から安全保障に移す考えも示唆。ライバルを完全に排除した習氏がどのように中国を動かしていくのか、投資家は懸念を強めている」

     

    習氏は、市場暴落が中国へ「警告」したことに反感を持っているであろう。「資本が謀略を仕組んだ」程度にしか感じまい。先に英国で首相が辞任した。これは、市場が政府の経済政策へ「ノー」を突付けた結果だ。資本主義国は、市場経済システムであるから、市場の反応は大きな意味を持つ。習氏は、市場ですら「敵対的存在」に映っているに違いない。民主主義国では、市場=公正(フェア)という認識である。

     

    (3)「英国の元外交官で王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員、チャールズ・パートン氏は、「2049年の目標を達成したとして、自分の名前を歴史に刻みたいのだろう」と、指摘する。「共産党用語を解釈するなら、米国をたたき落として中国が一番になり、世界を中国の利益と価値観に沿うような体制とすることだ」と、習氏の目標を説明した」

     

    習氏が、客観的な立場を重視する人物であれば、自己の名前を歴史へ意図的に残そうとは考えまい。この前近代的な習氏の思考が、結果として中国を不幸な道へ追込むであろう。

     

    (4)「習氏の指針には矛盾も多い。経済成長の押し上げを掲げる一方で、「ゼロコロナ」政策継続でロックダウン(都市封鎖)を実施。テクノロジーの自給自足を目指しつつも、テクノロジー業界の利益は無視。開放を進めるとしつつ、言論の自由と資本の移動は制限。何よりも、「歴史的任務」完了と「中華民族国家の復興実現」のためだとして台湾を巡る破滅的な戦争に突入すれば、壮大なビジョンの実現には恐らく最大の問題となる」

     

    中国が世界一になるには、経済が世界一にならなければ、軍事力も世界一になれないのだ。習氏は、軍事力で世界一を目指しながら、経済では逆走している。ここに矛楯を感じないとすれば、正気の沙汰ではない。狂気と言うほかないのだ。

     

    (5)「香港大学の劉冬舒助教は、「習氏は歴史上の要人として名前を残すことを目指している。過去には経済発展と矛盾する方針が掲げられれば、中国はそれを実行しないと考える人が多かった。だが今は、経済発展と市場の信頼を犠牲にすることをいとわない度合いがはるかに高まったように見える」と語った」

     

    中国が、狂気の集団と化していることは間違いない。マルクス主義によれば、資本主義が最終的に共産主義になるとしている。中国は、まだ資本主義を「マスター」していないのだ。よって、「社会主義の現代化」は不可能である。中国は、狂信集団になったようである。

    このページのトップヘ