勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年10月

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    中国は、「自立自強」経済を強調しているが、ファーウェイに見るごとく、半導体輸入を禁止されると、業績は見る影もないほど落込んでいる。習近平氏は、こういう現実を知らずに「大言壮語」しているに違いない。

     

    『ブルームバーグ』(10月27日付)は、「中国ファーウェイ、1~9月は約40%減益-スマホ事業立て直せず」と題する記事を掲載した。

     

    かつて世界一のスマートフォンメーカーだったこともある中国の華為技術(ファーウェイ)は、1~9月に利益を大きく減らした。米国の制裁措置でスマホ事業を立て直すことができない同社は、研究開発に多額の資金を投じている。

     


    (1)「ブルームバーグの計算によれば、ファーウェイの1~9月純利益は272億元(約5500億円)と、前年同期の465億元から約40%減少。利益率も6.1%と、前年同期の2桁台から急低下した。7~9月の売上高は6%増の1442億元になったと、ブルームバーグは算出している」

     

    ファーウェイは、財務情報の詳細を開示しないが、ブルームバーグが独自計算で大幅な減益を炙り出した。余りの減益に公表を避けたにちがいない。企業責任の回避である。輪番会長を務める徐直軍氏は、「全体的な業績は予想通り」とした上で、デバイス事業の落ち込み鈍化が続いた」と説明した。

     

    米国が、先端半導体輸出を禁止したことやソフト使用を禁じたことから、好採算であったスマホ事業の継続が困難になったもの。IT関連事業での米国の影響力の大きさを改めて見せつけた形だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「ファーウェイ 192%減収 5G関連堅調で下げ幅縮小」と題する記事を掲載した。

     

    中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が27日発表した19月期の売上高は前年同期比2.%減の4458億元(約9兆円)だった。減収率は16月期(6%)から改善した。米政府の制裁を受けてスマートフォン関連は厳しい状況が続く一方、高速通信規格「5G」やクラウドなどの関連サービスが伸びた。

     

    (2)「ファーウェイは四半期別の売上高を自ら開示していない。79月期は前年同期比6.%増となった計算で、2四半期連続で前年実績を上回った。スマホなどの端末事業は、米政府による輸出規制を受け、高性能半導体の調達が厳しく制限された影響で低迷が続く。ただ電気自動車(EV)向け部品などは伸びたもよう。通信会社や法人向けの事業は堅調で、5Gの活用では様々な産業で5000件以上のプロジェクトを進めたほか、クラウドサービスも中国内外で受注を伸ばした」

     

    ファーウェイは、秘密主義を貫いている。弱みを掴まれないように、強気姿勢を見せているが、米国からの制裁によって屋台骨が狂うほどの影響を受けている。中国のIT企業は、根本部分で米国に依存していることを改めて示している。

     

    (3)「徐直軍(エリック・シュー)副会長兼輪番会長は、同日の発表文で「全体的な経営成績は予定通りだ。端末事業は下げ止まりつつあり、ICT(情報通信技術)インフラ事業は安定した成長を保った」と説明した。ファーウェイを巡っては、米政府が安全保障上の懸念を理由に19年から段階的に輸出規制などの制裁を強めてきた。ファーウェイは制裁の影響を大きく受けたスマホ事業の落ち込みを補うため、デジタル化や「脱炭素」関連のサービス、EVの」部品やシステムなどに注力している。米政府は、同社を含む中国のハイテク関連企業に対する厳しい姿勢を変えていない。ファーウェイにとっては、今後も先行きを楽観できない状況が続くとみられる」

     

    ファーウェイは、19年に米国から制裁を受けた当時、必ずはね返すと豪語していた。基礎技術を持たない中国が、基本特許のすべてを握る米国へ太刀打ちできるはずがないのだ。習近平氏にも、こういう基本認識が欠けている。

     

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    ロシア軍が、ウクライナで苦戦している。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者、プリゴジン氏は、プーチン大統領に「軍の幹部が戦争を誤らせていると直言した」と米紙『ワシントンポスト』が伝えた。それによると、ロシア軍が「ワグネル」の傭兵に頼る一方で、十分な資金と物資を与えていないと不満を口にしたとのことだ。

     

    こうした戦況不利の中で、欧州ではロシアに政変が起こる場合、どのような形になるかを語られ始めている。クーデターか民衆蜂起か。いろいろ形が想像されるが、結果は誰にも分からないのも事実。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「追い込まれたプーチン氏 欧州が占う政変4つのシナリオ」と題する記事を掲載した。

     

    なりふり構わぬやり方でウクライナの攻勢を押しとどめようとするロシア。核の脅しというカードまで振りかざすが、プーチン政権はいずれ行き詰まるとの見方が欧州政界で強まってきた。取材をすると4つのシナリオが浮かぶ。

     

    (1)「ウクライナを支える欧米諸国を核兵器でけん制するロシア。「ロシア軍の位置に大きな変化はない」(北大西洋条約機構=NATO=のストルテンベルグ事務総長)、「プーチン氏は(核保有国としての)責任をわかっている」(マクロン仏大統領)。欧州の要人から「核を使う可能性は低い」とのコメントがここにきて相次いでいる」

     

    欧州は最初、プーチン氏の「核発言」に驚かされたがその後、落ち着きを取り戻して対抗策を練るゆとりを持ち始めた。

     

    (2)「もっとも、最悪の事態に備えた検討はしているようだ。仮に核兵器が使われたらどうなるのか。米国が巡航ミサイルなどでウクライナ領内のロシア軍を攻撃。独仏英なども加わり、ロシアの黒海艦隊と戦車群を壊滅させる――。表向きは沈黙を守る欧州の外交・安保関係者に話を聞くと、そんな展開が想定される。核では反撃せず、あくまでも通常兵器でウクライナ軍を支援するのがポイントだという」

     

    下線のような対抗策が、取られそうだ。通常兵器で、ロシア軍を殲滅させるというもの。ここまで対抗策が明らかになると、ロシア軍も迂闊に動けまい。ウクライナ軍は、ウクライナ全土に広く布陣しており、一カ所に集中しているのではない。

     

    (3)「第3次世界大戦につながりかねない恐ろしい想定だが、「核を使用してしまえば『核を使うぞ』という脅しも効果がなくなり、いよいよロシアは追い詰められる」と政治評論家セルゲイ・スムレニー氏(元ロシア反体制派ジャーナリスト)は言う。プーチン政権が崩壊するとしたら、どんな道筋が考えられるのか。欧州の当局者は、大きくわけて4つのシナリオを想定する」

     

    ロシアが、核を使えば国際世論は完全に「反ロシア」に向かう。これは、ロシアにとって致命的な打撃になる。建前上、「核使用賛成国」はいないはずだ。

     


    (4)「1つ目はクーデター。プーチン体制を支える治安・軍要員(シロビキ)の一部が離反し、政権中枢部を拘束するという展開だ。「反乱を起こすとしたら悲惨な前線を知る佐官など現場指揮官クラスではないか」(スムレニー氏)」

     

    常に話題となるのがクーデターである。これは、ロシアが国家として浮沈の瀬戸際にまで追込まれるときだ。

     

    (5)「2つ目は民衆蜂起。モスクワなど大都市で大規模な抗議デモが連日のように続き、最終的には軍の一部が市民側に合流して武装蜂起のような形になる。1989年、ルーマニアで独裁者チャウシェスクを倒したような「革命」のロシア版だ。

    3つ目は国民の大量亡命だ。東ドイツは1989年、市民の西ドイツへの大量流出と、政権への抗議デモのダブルパンチで共産独裁政権を放棄せざるを得なかった。

    4つ目は地方の離反。広範な自治権がある共和国などが「独立」あるいは「ウクライナ戦争からの離脱」を一方的に宣言するケースだ。いまウクライナ戦線で手いっぱいのロシア軍は地方の反乱を鎮圧する余裕はない、とされる」

     

    民衆蜂起、国民の大量亡命、ロシアの地方離脱のうち、もっとも可能性があるのは地方の離脱であろう。戦死者が地方に集中している現実や、経済的に補助を受けられなくなれば、反旗を翻す可能性もある。

     

    (6)「ロシア国民のあいだで際立った経済的な困窮があるわけではなく、ルーマニアのように軍と市民が一体になって武装蜂起する気配はない。徴兵などから逃れるため、数百万人がカザフスタンやジョージアに出国したとされるが、これは人口1億4000万人の数%にすぎない。冷戦期に国民の5人に1人が西側に亡命した東ドイツの水準を大きく下回る。プーチン政権が倒れるまでウクライナの苦しみは続く」

     

    ロシアの地方は、プーチン氏が核を使えば「核反対」の動きを強めて、離脱する可能性がありそうだ。核は、「禁断の木の実」である。使ったら、その後にどんな事態が起こるか。ロシアにとって有利なことはゼロである。

     

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    中国が、「一帯一路」で建設させた中国ラオス貨物鉄道は、2021年12月に開業した。中国雲南省昆明を起点としてラオスを縦断し、首都ビエンチャンまで約1000キロメートルをつなぐ。旅客のほか、国際貨物輸送も行う。トラック輸送が主体だった東南アジア・中国間の物流が大幅に改善するとみられていた。

     

    現実はこの前触れと違って、昆明・ビエンチャン間は1日平均2本が運行するのみ。計画の2割に止まっている。ラオスは、総事業費約59億ドル(8700億円)のうち、6割の約35億ドルを中国輸出入銀行からの負債でまかなった。英経済分析機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、今後4年以内にデフォルトを宣言する可能性が高い国として、ラオスのほかにパキスタン、ミャンマーなどを挙げている。

     

    ラオスは、デフォルト国の一つとして名前が上がっているほどだ。うかうかしていると、中国に「担保」を取り上げられる危険が迫っている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月26日付)は、「中国ラオス貨物鉄道「利用は計画の2割」 債務返済に難題」と題する記事を掲載した。

     

    東南アジアのラオスと中国を結ぶ鉄道の利用が伸び悩んでいる。広域経済圏構想「一帯一路」を象徴する鉄道として中国主導で建設されたが、貨物輸送量は計画の2割にとどまる。建設費などを中国からの借金で調達していて、低迷が続けば、代わりに重要インフラを押さえられる「債務のワナ」にはまる可能性もある。

     

    (1)「中国ラオス鉄道は2021年12月に開業した。中国雲南省昆明を起点としてラオスを縦断し、首都ビエンチャンまで約1000キロメートルをつなぐ。旅客のほか、国際貨物輸送も行う。トラック輸送が主体だった東南アジア・中国間の物流が大幅に改善するとみられていた。10月にはタイやマレーシアの鉄道網に接続したほか、シンガポールに延ばす計画もある。中国やラオス国営メディアは鉄道の効果をしきりに強調している。開業半年で64万㌧超の貨物を運搬し、高速鉄道もラオス国内で41万人の乗客が利用したとされる」

     

    中国は、昆明―ラオスータイーマレーシアを結ぶ鉄道構想を立てた。この10月に、全線が開通したが、問題はその利用率である。昆明―ラオス間は、想定よりも大幅に下回った利用で想定の2割である。中国に騙されて過大需要を見込み、建設に踏み切ったのであろう。

     

    (2)「実態は苦戦が続く。9月中旬にビエンチャン郊外にある物流施設「タナレンドライポート(TDP)」を訪れると、約60ヘクタールの施設で見られたコンテナはまばらだった。昆明・ビエンチャン間では1日平均2本が運行するのみで、8月にTDPを通過したコンテナ数は6000個と、計画の2割どまりであった。中国が新型コロナウイルスの流入を抑える「ゼロコロナ政策」を堅持し、6月まで上海で都市封鎖が行われるなど、国際物流の需要が激減したことが低迷の主因とされる。ただ、貨物取り扱いの方法も不透明で、ブローカーが介在して輸送費をつり上げ、荷主が使いにくい状況も続く」

     

    中国・昆明とラオス・ビエンチャン間では、1日平均2本が運行するのみである。計画の2割という。今後は、おいおい需要が増えるとしても、急増は期待できまい。

     

    (3)「同鉄道はラオス鉄道公社と中国企業3社の合弁企業が建設し、総事業費約59億ドル(8700億円)のうち、6割の約35億ドルを中国輸出入銀行からの有利子負債でまかなった。ラオス政府は債務の政府保証がなく、多額の債務は発生しないと主張する。だが、鉄道をテコに東南アジア、中国、欧州を結ぶ陸上輸送のハブを目指しているため、「鉄道会社を簡単にはつぶせず、偶発債務となる可能性がある」(日本貿易振興機構ビエンチャン事務所の山田健一郎氏)との見方が支配的だ。世界銀行などによると、21年末時点でラオスの公的債務は国内総生産(GDP)比で88%に高まった。対外債務は推定104億ドルで、対中国がほぼ半分を占める

     

    ラオスは、21年末で公的債務が対GDP比で88%にも高まっている。対外推定債務は104億ドルで中国がその半分を占める。中国が、最大の債権国だ。中国も外貨事情は厳しくなっているので、ラオスの返済が遅れれば、資金繰りに影響する。中国にも困った事情を抱えている。

     

    (4)「ラオス経済は、新型コロナで大きな打撃を受けた。足元のインフレ進行や通貨下落に加え、国運を懸けた鉄道の利用低迷で、対外債務返済に窮する可能性は一層高まっている。レアメタルの鉱山から得られた収入を鉄道事業の担保とするなど、重要施設を手放さざるを得なくなる懸念も急浮上している

     

    中国は、レアメタル鉱山からの収入を鉄道事業の担保に入れている。中国への返済が滞れば、鉱山施設を差し押さえられる契約である。血も涙もない「国際高利貸し」中国のことだ。レアメタル鉱山と言えば、垂涎の的。中国は、「赤い爪」を延ばすに違いない。そうなればラオスにとって悲劇となろう。

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    習近平国家主席の3選が決まった。市場経済に理解のある改革派が、最高指導部だけでなく枢要部門から消えることで、中国経済の今後に警戒観が高まっている。富裕者は、習氏の一枚看板である「共同富裕論」の犠牲になることを恐れている。身の危険を感じるのだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(10月25日付)は、「中国脱出を急ぐ富裕層、習近平氏の続投を嫌気」と題する記事を掲載した。

     

    習近平総書記(国家主席)と中国共産党が支配する世界第2の経済大国の先行きを悲観して、中国の富裕層が国外脱出計画を実行に移し始めている。

     

    (1)「習氏は先週末、党総書記と中央軍事委員会主席としてさらに5年間の続投を決め、毛沢東以来最も強力な指導者としての地位を固めた。69歳の習氏は、終身政権への道を開いた。欧州を拠点とする弁護士で香港や中国の資産家の法務を手掛けるデービッド・レスペランス氏は、中国の経済発展に乗じて長年繁栄を享受してきた国内の経済エリートにとって、習氏の3期目入りが人生の岐路になりそうだと話す。「習主席が不動の地位を固めたのを受けて、超富裕層の事業家からすでに3件、緊急避難計画を『実行に移す』よう指示を受けた」と言う」

     

    中国の富裕者は、かねてから脱出計画を練っていた様子。不幸な国民である。中国共産党を信じられないのだ。

     

    (2)「習氏は、9700万人の党員を抱える中国共産党内では、同氏が過去の厳しい政策を転換するのではないかという観測が出ていた。中国で、6000人を雇用する国際法律事務所デントンズ・ロダイクのシンガポール在勤シニアパートナー、キアメン・ロー氏は、富裕層の資産を管理運用する「ファミリーオフィス」の設立に関する問い合わせや指示も同様に「数カ月前」から増えていたと述べた。「私の顧客は党大会よりもずっと前から(習氏の)3期目を既定路線とみていた」と指摘」

     

    習氏の政策転換を期待する声もあったが、空振りに終わった。富裕層は、そういう甘い期待を持たず、厳しい路線の継続を予測して、富裕層の資産を管理運用する「ファミリーオフィス」の設立に関する問い合わせをして準備してきた。

     

    (3)これまで長い間、中国の資産家やエリート一族は香港を移住先に選んできたが、中国政府が統制を強化したため魅力が薄れたとロー氏は付け加えた。シティ・プライベートバンクによると、シンガポールにあるファミリーオフィスの数は2017〜19年の間に5倍に増え、さらに20年末からの1年間で400から700へとほぼ倍増した。シンガポールの法律事務所ベイフロント・ローのディレクター、ライアン・リン氏は、先週の中国共産党大会の期間中、シンガポールでのファミリーオフィス設立について5人の資産家から相談を受け、うち3件は正式な手続きに入ったと明かした。リン氏はこの1年間で約30件のファミリーオフィス設立を手掛けた。ほとんどの中国人が、シンガポールに資産を移すだけでなく移住も望んだという」

     

    従来の中国では、香港が有力な移住先であった。現在は、シンガポールにファミリーオフィス(私的財産管理会社)を置く人々が増えている。

     

    (4)「レスペランス氏によると、顧客の多くは国外の安全な避難先への合法的な資産移転や新たな住まいの確保、家族の市民権取得など脱出準備に数年かけている。中国の富裕層は格差是正を促す「共同富裕(共に豊かになる)」の実現に向けた私的な寄付に代わり、正式な富裕税が導入されるという噂におびえると同時に、脱出後の身の安全についても不安を募らせているという」

     

    習氏の「共同富裕論」は、富裕層から資金を寄付させる形で運用しようとしている。富裕層は、先手を打って海外脱出を選んでいるのだ。中国の資産格差は、想像を超えた規模であることがわかる。

     

    (5)「ここ数年、アリババ集団創業者のジャック・マー(馬雲)氏などの著名人が公の場から一時的または長期的に相次いで姿を消し、富裕層の不安を高めている。「資産家の間には『高速で逃げられる帆船に金の延べ棒と予備の帳簿を積んで港に隠しておけ』という言い伝えがある。現代風に言えばプライベートジェットにパスポートと外国の銀行口座だ」とレスペランス氏は言う。「現実の世界はそれくらい大変になっている」。だが、準備万端整ったとはいえない人も多いようだ。中国の富裕層向けの米不動産サイトの創業者は、十分に準備しないまま国外脱出を急ぐ顧客から対応しきれないほど問い合わせが殺到していると話した

     

    富裕層が、国外脱出を図るべく大急ぎで準備を始めているという。日本では考えられない光景だが、共産党への不信感が強いのだ。

     

    (6)「一方、上海や北京の移民法律事務所では、「卓越した能力」の保持者を対象とする米国永住権(グリーンカード)の申請が急増している。超富裕層がよく使う高額投資家向けビザよりも取得に時間がかからないからだ」

     

    「卓越した能力」の保持者は、米国永住権への申請が急増している。研究者などが、この分類に入るのか。

     

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    異常な胡錦濤氏の退場劇

    台湾統一の旗で3選実現

    侵攻「第二のプーチン」

    一人っ子政策が脆弱化

     

    中国共産党大会が終わり、習近平氏の国家主席3期目が決定した。同時に、新たな最高指導部7人も発表された。全員が、習氏に忠節を誓ったメンバーである。これまで、最高指導部入りは、投票によって選ばれてきたが、今回は習氏が面談して決めたという。これでは、指導部全員が習派によって占められるのは当然である。

     

    中国は、これまで外部から「独裁」として批判された。これに対して、選挙による「党内民主主義」を主張して反論してきた。だが、今回の最高指導部メンバーは、習氏が気に入る人物の登用である。これでは、完全な独裁体制確立と言えるだろう。

     

    習氏は、これまでの役員68歳定年制も破って見せた。定年前の人物でも退任したり、定年過ぎての続投もあった。習氏自身が、定年を過ぎた69歳である。それにも関わらず、3期目を実現した。さらに、新指導部に次期国家主席候補もいないため、習氏は国家主席4期の可能性を残している。終身国家主席への布石だ。

     

    異常な胡錦濤氏の退場劇

    前述の通り、今回の共産党大会は異例ずくめであった。その象徴的な「事件」が、党大会閉会当日に見られた胡錦濤前国家主席の異常な退場劇である。胡氏は、退場を嫌がる素振りを見せながらも、係員によって強引に退場させられたのである。世界のメディアが陣取る前の「異変」だ。ことの次第は、次のようなものである。

     

    スペインの日刊紙『ABC』は10月22日、胡前主席が退場させられた映像について、退場前の様子からの写真14枚をサイトに公開した。

    胡氏は、机の上に置かれた赤い書類ファイルを開けようとして腕を伸ばすと、隣席の栗委員長(習氏の側近)が胡氏の手をつかんでその書類ファイルを自分の方に寄せた。見させないためだ。すると、胡氏が不快な表情を見せ、栗氏が何か話しかけた。胡氏は固い表情になった。これを見守った習主席は、どこかに目くばせを送ったように見え、孔紹遜中央弁公庁副主任が習主席の横に来た。続けて、随行員とみられる男性が胡前主席の後に近づいた。

     

    一般に、テレビで見られる胡錦濤氏の退場風景は、係官によって連れ出される場面だけである。だが、前記のスペイン日刊紙はその前の「重要場面」を克明に写し出している。中国当局は、胡氏の健康状態悪化が理由としているが、そういう様子に見えず、意思に反して連れ出されたと見るのが正常であろう。

     

    なぜ、胡氏は強引に連れ出されたのか。赤い書類ファイルには、次期の最高指導部メンバー名が記載されていたのでないかと推測されている。その中には、胡錦濤派(共産主義青年団出身)の李克強、汪洋、胡春華の氏名がなかったので、習氏は胡氏に見せたくなかったのだろうと推測されている。胡氏が、会場で発言しないように封じたのだ。

     

    豪州国立大学のリサーチフェローのハースコビッチ氏は、「胡氏は体調不良だったとのありふれた説明は確かにありそうに聞こえる。だが、中国共産党の高齢指導部やエリート政治集団に関する党の秘密主義からすると、もっと多くの、よりえげつない説明の方が当てはまる」と語った。『ロイター』(10月25日付)報じた。胡錦濤政権が、引継いだ改革開放政策の完全終焉と、習一強体制による「戦時政権」が始まった劇的シーンと言えよう。

     

    台湾統一の旗で3選実現

    共産党大会閉会式で見せた「ドタバタ劇」は、中国の将来を示唆する内容を含んでいる。それは、習氏に忠節を誓うメンバーだけを集めた最高指導部が、中国の将来を危うくさせる高リスク政策を実行する危険性だ。私は、この最高指導部を「戦時内閣」と見ている。

     

    習氏が、慣例を破って国家主席3期目を実現させた最大の理由は、「台湾統一」である。中国が台湾を取り戻して、「中華の夢」を復活させるというものだ。

     

    清国時代の台湾は、文明果つる「化外(けがい)の地」で厄介者扱いされていた。日本へ割譲した本音は、「厄介払い」だったのである。台湾は、日本統治下で儒教でない近代化教育を受け、欧米流の近代化コースに乗った。現在、世界の半導体でトップにのし上がった裏には、日本統治下という歴史の重みがある。中国が、台湾を取り戻したいという理屈には、他家へ出した子どもが立派に成長したので、本家へ戸籍ともども取り戻したいということなのだ。

     

    習「戦時内閣」が、抱えるリスクには3つある。その源流は、台湾統一にある。

    1)米中対立が、「自立自強」路線のリスクを増大させる。

    2)台湾侵攻が、ロシアのウクライナ侵攻と同じリスクを抱える。

    3)中国経済が、構造的脆弱性に耐えられないリスクを抱える。

     

    前記の3つのリスクについて、私のコメントを付したい。

     

    1)米国を初めとする西側諸国は、価値観が一致することを理由にして連携関係を強化している。中国が、南シナ海で島嶼を埋め立て軍事基地化する横暴な振る舞いや、さらに台湾侵攻の構えを強化していることで、米中対立は決定的な状態に陥っている。具体的には、インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)が、中国を対象に自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協調をつくった。(続く)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-10-03

    メルマガ400号 決定的な「ロシア敗北」 ウクライナ東部要衝地を奪回され退勢挽回は不可能「迫る核危機」

    2022-10-17

    メルマガ404号 習近平「3期目」、台湾侵攻で自らの首絞める 「第二のロシア」確実

     

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