勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年10月

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    中国共産党大会が終了した。最高指導部を指す政治局常務委員には、習氏を筆頭に7人が選出。習氏側近が大多数を占めた。改革派は姿を消したので、中国経済の先行きはさらに危なくなってきた。統制経済色を強めて、生産性の低下は免れぬ状況になろう。経済は、習氏の管轄下に入るので、厖大な不動産バブルが残した債務の処理をどう行なうのか。気懸りな点が、余りにも多いい布陣である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月23日付)は、「習近平氏、3期目指導部が発足 首相候補に李強氏」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「最高指導部を指す政治局常務委員には習氏を筆頭に7人が選出。習氏側近が大多数を占めた。習氏と距離があるとされる胡春華(フー・チュンホア)氏は常務委員に選ばれなかった。党の上位24人である政治局員にも選出されておらず、降格した形となった。最高指導部に選出されたのは習氏のほか、李強氏、趙楽際(ジャオ・ルォージー)氏、王滬寧(ワン・フーニン)、蔡奇氏、丁薛祥氏、李希氏。習氏は党序列1位で、引き続き国家主席を務める見通し」

     

    習氏は、側近を集めて最高指導部を構成する。改革派は、排除された格好である。習氏は、改革よりも統制を好んでおり、中国経済の失速が目立つようになろう。習氏の目的は、いかに自己の権力を守るかに焦点を合わせている。イエスマンを集めて、台湾侵攻策を練るに違いない。

     


    民族主義者の王滬寧(ワン・フーニン)氏が残留する。習氏に、「米国衰退・中国発展」を吹き込んでいる人物として有名だ。戦時中の日本に喩えれば、「大川周明」といった役どころである。こういう「神がかった人物」を側近に据えるのは危険過ぎる。台湾侵攻を焚きつけるに違いない。

     

    (2)「李強氏は現在、上海市トップを務める。今回、党の序列2位となったことで、李克強(リー・クォーチャン)首相の後任候補に決まった。李強氏は2023年3月に開かれる全国人民代表大会(全人代、中国の国会に相当)の手続きを経て、首相に就任する見通し。李強氏は上海市の都市封鎖(ロックダウン)を巡り中国内で批判を浴びたが、習氏が側近である李強氏の起用に強い意向をもっていたとされる」

     

    李強氏は、習氏の元部下である。「子分」を首相に据えて、習氏はやりたい放題の体制を整えた。「自沈型」内閣になろう。経済政策も習氏好みの統制色を強める前兆である。

     


    (3)「国務委員兼外相を務める王毅(ワン・イー)氏が、序列24位以内の政治局員に選ばれた。王氏は退任が決まった楊潔篪(ヤン・ジエチー)党政治局員の後任として、中国外交を取り仕切る党中央外事工作委員会弁公室の主任に就任する可能性が高い。王氏は今月で69歳になる。党大会時に68歳の党幹部は引退する年齢制限の慣例を破って、党序列200位以内の中央委員から24位以内の政治局員に昇格した」

     

    王毅(ワン・イー)氏は外交トップに座る。「戦狼外交」の旗手であっただけに、今後も摩擦型外交は継続すると見られる。西側諸国との摩擦解消とは反対の方向へ行くであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(10月23日付)は、「経済も習氏直轄、側近の李氏・何氏が運営へ」と題する記事を掲載した。

     

    経済政策を担う首相に側近の李強氏が就く見通しとなったほか、金融部門の責任者も旧知の部下を登用するとみられる。改革派官僚が軒並み政策運営の第一線から去り、経済の統制色がいっそう強まるとの懸念が高まっている。

     

    (4)「中国は国家主席が政治と外交、首相が経済をそれぞれ担い、役割を分担してきた。李強(リー・チャン)氏は共産党の序列2位となり、現首相の李克強氏の後任になる公算が大きい。李強氏は浙江省トップだった習氏を支えてきた側近だけに、習氏の意向をくみながら経済政策を運営していくと見るのが自然だ。金融行政のトップも、習氏に近い何立峰・国家発展改革委員会主任が就くとの見方が出ている。何氏は今回、序列24位以内の政治局員に選ばれた。2023年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で退任する方向の劉鶴副首相を引き継ぎ、国務院(政府)金融安定発展委員会を取り仕切るとみられる」

     


    何氏は広東省出身で、アモイ大学卒業の経済学博士。習氏が副市長として福建省アモイ市に赴任していた頃、習氏と仕事の合間にバスケットボールを楽しんだと言われる。赴任当初、福建になじめなかった習氏と親しく交流し、習氏の信頼を得たという。党高官の執務室が集まる中南海に長く勤務した関係者は、何氏について「習氏が心を許せる『弟分』のような存在」と評している。『日本経済新聞 電子版』(10月7日付)が報じた。

     

    何氏は、マルクス経済学の博士号であろう。現実の経済政策立案において、役立たずは確実だ。不動産バブル後遺症が、マルクス経済学で解決できるとは思えない。

       


    有頂天の韓国に落し穴

    習3期目で台湾リスク

    日米半導体で強い結束

     

    最近の韓国は、メディアに「日本対等論」がしばしば登場する。韓国の総合力が、日本を上回るというのだ。例えば、次のようなものがある。『中央日報』(10月19日付)のコラムの一節である。

     

    「韓国は100年前の無気力な国ではない。韓国人が日本人より多くの月給を受け、第4次産業革命のゲームチェンジャーとなった半導体強国であり、新興防衛産業輸出国であり、文化ソフト強国だ」としている。この裏には、円相場が1ドル150円前後と急落していることで、胸の溜飲を下げていると見られる。「隣家の不幸は喜び」という心境だろう。

     


    円急落は、日米金利差の拡大によるものと、世界的な資源価格高騰による貿易赤字が理由である。敢えて利上げせず、消費者物価の上昇を「待っている」のは、来春の3%以上の賃上げを実現して、「所得主導」経済へ軌道を移す戦術である。千載一遇のチャンスを生かすのだ。この裏には、来年の急激な円高反転を見込んでいる点もある。

     

    有頂天の韓国に落し穴

    韓国は、こういう舞台裏を理解せず「日本経済沈没論」で拍手喝采している。中でも、前記のコラムでは、韓国が「第4次産業革命のゲームチェンジャーとなった半導体強国」と自画自賛している。本当にそうだろうか。2019年7月、日本が韓国への半導体有力3素材の輸出手続きを強化しただけで、大々的な「反日不買運動」を始めた。その上、文大統領(当時)は、「二度と再び日本に負けない」と宣言するほどだった。

     

    韓国は、日本の輸出手続き規制をダイレクトな輸出規制と取り違えた。韓国の必要量は、従来と同様に日本の輸出で確保しているのである。韓国が、このように空騒ぎした背景には韓国半導体に根本的な脆弱性が存在するからだ。

     

    韓国は、確かに汎用品である「メモリー型半導体」で世界一の生産国である。だが、半導体の製造設備や素材は輸入依存である。半導体の製造技術だけで世界一の座にあるだけなのだ。その製造技術も、日本からの窃取であったことは隠せない事実だ。基礎技術のない韓国が、奇跡的に「メモリー型半導体」で急成長できた裏には、日本を踏台にしていたのである。こうした制約条件のために、韓国半導体は今も「非メモリー型半導体」で遅れをとっている。

     


    世界の半導体は、通信技術上の「4G」(
    第4世代)から「5G」(第5世代)への移行に合わせ、レベルアップが求められている。「4G」では、モバイル機器が拡散したのでメモリー需要が急増した。つまり、メモリー型半導体が主流であった。だが、「5G」になると、VR(仮想的空間を現実化する)や、AR(仮想的空間の情報を現実世界に重ね合わせる)などが主流になる。半導体はこれに合わせて、非メモリー型半導体の世界へ移行する。こういう大きな転換期に、韓国半導体はスムーズに移行できるのか問われている。

     

    いささか、小難しい技術論に触れたが、ハイテクの世界は足踏みせず、絶えず新しい分野を求めて発展し続けていることを強調したに過ぎない。韓国は、こういう大きな半導体の流れにうねりが起こっているほかに、世界的な半導体再編の波が訪れていることに無頓着である。韓国の「半導体世界一」が、ずっと続くという幻想に浸っているのだ。

     


    世界的な半導体再編の波は、米中対立が始発点である。米国は、中国の軍事的な台頭を抑えるべく、戦略技術である半導体に関わる全般的技術の中国流出を断ち切る大胆な方針を実行に移している。具体的には「チップ4」の形成に動き出している。日米韓台4ヶ国が、半導体生産で共同戦線を張ろうという狙いだ。

     

    韓国は、「チップ4」に参加するのかまだ不明である。中国で半導体生産をしているほかに、半導体の対中輸出が6割と多いからだ。こうした韓国の中途半端な姿勢が、日米台に比べて目立つ。台湾も中国へ半導体輸出している。台湾が、躊躇なく「チップ4」へ参加したのは、輸出する半導体が受注による非メモリー型半導体であるからだ。韓国は、メモリー型半導体で汎用品であるから、他の半導体メーカーに代替されるリスクを抱える。中国への輸出減を恐れているのだ。

     

    「チップ4」では、非メモリー型半導体への取り組みが重要なものになる。韓国が、仮に「チップ4」へ参加しなければ、日米台がスクラムを組んで世界最強半導体にのし上がる可能性が強まる。韓国は、取り残されるのだ。

     


    習3期目で台湾リスク

    台湾は、全島が半導体工場で埋め尽くされるほど、半導体生産に力を入れている。台湾政府の強力な支援がある結果だ。だが、中国の「台湾統一」という政治目標は、習近平氏の中国国家主席3期目によって現実課題に急浮上している。先の共産党大会では、「台湾統一」を党規則に書き込んでいる。平和統一が困難であれば、「軍事統一」を振りかざすであろう。

     

    習氏の3期目の任期は、2027年までである。となると、これからの5年間に中国が強硬策を取らない保証はないのだ。こうして、台湾の「地政学リスク」が大きくなってきた。そこで、この7~9月期の利益で世界一の半導体メーカーになったTSMC(台湾積体電路製造)は、日本と一層の関係強化に踏み出すという情報が、『ロイター』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』から相次いで報じられているほどである。(続く)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-10-06

    メルマガ401号 韓国「半導体二流国」、欧州が注目の台湾へ焦り 収益力に格段の違い

    2022-10-13

    メルマガ403号 韓国最大野党「外交ボケ」、120年前の李朝と変わらず 国家危機へ

     

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    韓国最大野党「共に民主党」代表の李在明(イ・ジェミョン)氏は、日米韓三ヶ国軍事演習に対して猛批判を加えた。韓国軍が、自衛隊と共同演習するのは韓国へ自衛隊を「侵攻させる」としたもの。これが、李氏の「親日国防論」という時代錯誤の認識である。

     

    朝鮮半島有事の際は、日本の基地を利用して米軍が出動する仕組みになっている。李氏は、こういう韓国防衛の実態を知らずに反日を煽っているのだ。その意図は、自らが「被告」として起訴されている現実を覆い隠そうとするものと見られる。韓国国会の6割の議席を占める最大野党代表として、余りにも恥ずかしい行為と言うほかない。

     


    『朝鮮日報』(10月23日付)は、「共に民主・李在明代表の『親日国防』扇動、道理をわきまえない安全保障観を自白」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の金昌均(キム・チャンギュン)論説主幹である。

     

    ウクライナ問題を見ていて、米国と同じ側にいることがどれほど大きな幸せであるかを切に感じるようになった。ロシアの一撃に耐えられそうもないと見えたウクライナが予想外に善戦しているのは、米国の装備や情報のおかげだ。

     

    (1)「韓国の立場は、ウクライナよりもはるかに堅固だ。米軍が2万8000人も駐屯して守ってくれている同盟国だ。日本5万2000人、ドイツ3万6000人に続き、世界で3番目に多い。しかも、2万8000人で終わりではない。韓国が侵略されたら、その数倍の増援軍が韓半島に駆け付けることになっている。その実効性を担保してくれるのが日本という後方基地だ」

     

    日本駐留の米軍は、5万2000名と海外派遣米軍として最大規模である。これは、朝鮮半島有事の際に、日本から韓国へ増援部隊を送る前提であろう。日本は毎年、この米軍駐留経費まで支払っているのだ。ということは、韓国の安全保障費用の一部を賄っていることにもなろう。こういう実態を知らないで、韓国では「反日運動」を行なっているのである。

     


    (2)「2002年に沖縄を訪問した韓国外交部(省に相当)の関係者は、那覇軍港の近くに2000万平方メートルを超える土地がさびた鉄条網に囲まれて放置されているのを見ていぶかしがった。「なぜこの土地を遊ばせているのか」と尋ねたら、日本政府の関係者は「韓国で戦争が起きた場合に米国から空輸されてくる増援軍の1次集結地として使われる土地」と説明したという」

     

    那覇軍港の近くには、厖大な遊休地があるという。それは、朝鮮半島有事の際に、米軍物資の輸送ヤードとして利用する目的とされる。韓国は、これだけ日本に面倒を見させていることになる。 

    (3)「革新系最大野党「共に民主党」の李在明代表は少し前、海上で実施された韓米日合同訓練について「極端な親日国防」というフレームを当てがった。旭日旗、自衛隊、独島といった刺激性の高い単語を動員した。近いうちに韓国の領土で日本の軍靴の音が大きく聞こえるかのように脅かした。日本の軍国主義の亡霊がよみがえっているという意味だ。それなら日本は、韓国と違って軍事協力を喜び、積極性を見せているべきだが、果たしてそうか」 

    「旭日旗、自衛隊、独島(竹島)」は、韓国の三大反日単語である。この言葉を使って日本を非難すれば、世論を動かせるというのが李在明氏の狙いである。世論を使って、自らにかけられている嫌疑をもみ消そうとしているのだ。


    (4)「日本も、韓国と安全保障問題で関わり合いになることを好ましく思っていない。北朝鮮の軍事的標的になる危険があるからだ。韓国が、在韓米軍の台湾問題介入で中国を刺激するのではないかと懸念しているのと同じことだ。実際、北朝鮮が日本を狙ったミサイルの発射試験をしているのは、有事の際に韓半島へ投入される在日米軍の基地を念頭に置いているからだ」

     

    日本の安全保障に関わる重要な国のランキングは、次のようになっている。米国、豪州、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インド、韓国の順番である。韓国は5番目だ。インド太平洋戦略が、日本防衛にとって重要という位置づけである。韓国は、こういう日本防衛におけるシフトを理解していないのだ。

     

    (5)「韓国と日本の共通分母は、対米同盟だけではない。北朝鮮の核ミサイルが落ちてくる可能性のある国は、事実上、韓国と日本だけだ。米国が、本土を脅かす北朝鮮のICBMを凍結する代償として核保有を容認する「利己的選択」をする場合、強力に抗議してこれを阻止せねばならない国も韓国と日本だ。同じ脅威に直面している国と力を合わせることは安全保障の基本原則だ。日本が好きだから、日本と親しくなりたいから協力するのではない。国を守る上で必要だからだ」

     

    安全保障問題で相手国と協力する場合、価値観が同じであれば「好き・嫌い」を超えて手を結ばなければならない。李氏は、子どもじみた発言で日本と手を結ばずとも防衛できる誤解している。愚かな政治家の典型例である。

     


    (6)「李在明代表は、「歴史を忘れた国民には未来がない」と言った。李代表の歴史観は、1980年代の大学における新入生の意識化カリキュラムそのままだ。韓国のあらゆる悪の原因を親日に求めている。こんな自閉的被害妄想史観こそ、国の未来を危うくする。李代表が国を率いる指導者になりたいのなら、韓国の安全保障がどのように動いているのか、まずその基本原理から理解しなければならない」

     

    煽動政治家・李在明は、ウソの発言でも大衆の支持を得られればそれでいい、という危険な発想の持ち主である。韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)氏もこのタイプである。韓国政治が、近代化されない要因の一つは、扇動政治家がもてはやされる現実にある。

     

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    ロシア占領下のヘルソン州西岸では10月18日夜から、ウクライナ軍による爆撃を避けるために直ちに避難するよう促すメッセージが、住民の携帯電話に送信されていた。同時に、ドニプロ川を渡る交通手段が19日午前7時から利用可能になるとも伝えていた。ウクライナ軍は、ロシア軍が19日から軍事行動を停止したと発表した。具体的に、撤退を開始した模様である。

     

    ロシア軍は、ドニプロ川西岸に約2万5000~4万人のロシア精鋭部隊を投入。塹壕を掘るなど、長期の抵抗戦を行なう構えを見せてきた。それが、武器・弾薬・食糧の深刻な不足に悩まされ、ついに撤退に追込まれた。これで、ウクライナ軍のヘルソン奪回作戦は、大きく前進することになった。

     


    『共同通信』(10月22日付)は、「ロシア軍、ヘルソン州西部から撤退開始か 米研究所」と題する記事を掲載した。

     

    米シンクタンク、戦争研究所は21日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部ヘルソン州の戦況について、ロシア軍が州西部から撤退を開始したとの分析を発表した。また州都ヘルソンなどからの撤退を覆い隠すためにロシア軍はドニエプル川にあるカホフカ水力発電所のダムを爆破するようだと指摘した。

     

    (1)「英国防省は21日、ヘルソン州を流れるドニエプル川に架かり、ウクライナ軍が7月下旬に攻撃したアントノフ大橋の近くにロシア軍が簡易橋を設置したとの分析を発表した。簡易橋は、川の西岸に位置する州都ヘルソンなどから東岸に撤退する経路として活用する可能性がある。ウクライナ軍は21日、ヘルソン州の88集落を奪還し、ドニエプル川西岸の都市ベリスラフでは、ロシアの占領当局の活動が19日から停止したと発表した」

     

    ヘルソン州を流れるドニエプル川は、最も狭い川幅で約1キロメートルもあるという。ここへ、ロシア軍が簡易橋を設置し撤退するものと見られるという。ただ、仮橋のために重量のある武器の撤退は困難と見られ、現地に放置されると予測されている。要するに、ロシア軍は「身体一つ」で撤退という屈辱を強いられている。

     


    (2)「ロシア側はウクライナ軍の攻撃を理由に15日、ヘルソン州の住民に退避を勧告。ウクライナのゼレンスキー大統領はカホフカ水力発電所のダムをロシアが自作自演で破壊しようとしていると批判している。ダム破壊による被害をロシアが撤退の口実にするとの観測もある」

     

    ロシア軍は、撤退という無様な姿をカムフラージュすべく、カホフカ水力発電所のダムを破壊する危険性が浮上している。ロシア軍の陰謀作戦で、ウクライナ軍が発電所を破壊したと言い逃れする準備を始めたという。ロシア軍特異のウソ情報を広める「偽旗戦術」を練り始めているのだ。

     


    ウクライナは、年末までにヘルソン州全体の奪還作戦を終了させたいとしている。すでに始まった平原の「泥沼化」によって進軍が抑えられるので、幹線道路を使った作戦を展開すると見られる。「ハイマース」によるロシア軍の兵站線潰しが、ロシア軍の戦意を大きく引き下げている。

     

    ロシアのテレビ局は19日、住民多数がドニプロ川西岸に集まる様子を放映。ボートに乗るための列が映されたものの、全体の人数などは明らかではない。一方、ウクライナ当局は、多数の人が実際に避難しているかどうかについて疑問を抱いており、群衆が川岸に集まっている画像は大部分が見せかけだと示唆した。

     

    ロシアに追放されたヘルソン州トップの側近のセルヒイ・クラン氏は、見せかけの「住民退去劇」で、ロシア軍のドニプロ川西岸からの完全撤退という、より大きな動きを覆い隠そうとしている可能性があると述べた。ロシア軍が、19日からドニエプル川西岸の都市ベリスラフで、活動を停止したことを勘案すると、「住民退去劇」はどこまで本当かは不明であろう。

     

    テイカカズラ
       

    ウクライナでの戦況は、ロシア大統領プーチン氏にますます厳しくなっている。西側の情報機関によれば、ロシア軍の武器庫は底を突きかけている。驚くことに、プーチン氏がそのことを知ったのはつい最近だという。英『フィナンシャル・タイムズ』(10月18日付)が報じた。そのためプーチン氏は、自分に残された手段の一つである核兵器使用の可能性をほのめかすことで、ウクライナと同国を支援する西側諸国を妥協せざるを得ない事態に追い込もうとしている。

     

    こういう事態を受けて、アメリカのロイド・オースティン国防長官とロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は21日、電話会談を行い、ウクライナ情勢について協議した。両者の電話会談はロシアがウクライナに侵攻して以来2度目だ。詳細な内容は不明であるが、米国が核問題を警告したことは当然であろう。

     


    英『BBC』(10月22日付)は、「米国防長官、ロシア国防相とウクライナ情勢めぐり電話会談 侵攻後2度目

     

    アメリカのロイド・オースティン国防長官とロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は21日、電話会談を行い、ウクライナ情勢について協議した。両者の電話会談はロシアがウクライナに侵攻して以来2度目。

     

    米国とロシアはそれぞれ、オースティン氏とショイグ氏が電話会談を行ったことを認めた。ウクライナ情勢について協議したという。2人が話をするのは、513日の電話会談以来。

     

    (1)「電話会談後、米国防総省報道官のパット・ライダー准将はBBCに対し、米国は「対話できる状態を保ちたいと思っている」と述べた。「2人が話したのは5月以来のことなので、オースティン長官は今日がショイグ国防相とつながる機会だと捉えた」と、ライダー報道官は説明した。ロシア国防省は、「ウクライナ情勢を含め、国際安全保障をめぐる現在の課題について話し合った」と発表した。5月に行われた前回の電話会談後、オースティン氏は即時停戦を求めていたが、今回はこの要求について言及しなかった」

     

    米国は、ロシアが核を投下した場合、通常兵器でウクライナのロシア軍を「殲滅」すると通告済である。今回の電話会談でも、それを繰り返し通告したものと見られる。

    NATO(北大西洋条約機構)は、ウクライナで核投下された場合、「爆風が吹いた」ことを理由にロシアへ通常兵器で報復攻撃すると通告している。このように、ロシアは米・NATO軍から強い警告がされている。これらを無視した「暴挙」は、現実問題として困難という見方が出ている。

     



    (2)「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこれまで、ウクライナで核兵器を使用する可能性を示唆し、ジョー・バイデン米大統領はこれに警告を発している。米英の政府関係者は、プーチン氏がこうした間接的な脅しを実行に移す可能性は低いとみている。今回の電話会談がこうした問題への対応として予定されたのかを問われると、米国防総省のライダー報道官は、プーチン大統領が示唆した内容は「無責任で懸念すべきもの」だが、米国はロシアが核兵器の使用を決定したことを示す兆候を今のところ確認していないと述べた」

     

    ロシアが、核を投下してもウクライナが「白旗」を掲げるわけでない。さらに、抵抗を強めるであろう。一方、ロシアは国際社会から一層の非難を浴びることは間違いない。ロシア連邦崩壊も囁かれている。ロシア連邦はすでに、ウクライナ侵攻だけでロシアへ疑念を深めているところだ。それがさらなる「蛮行」に及べば、空中分解へのリスクを高めるであろう。国連でも、ロシアへの視線はさらに厳しくなる。西側諸国による経済制裁は、半永久的に継続されれば、ロシア経済も崩壊する。このように、ロシアは衰微への道を歩むに違いない。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(10月18日付)は、「
    ウクライナ、外交排除するな 軍事支援を補完 第三国仲介も」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領は、キューバ危機を鮮明に覚えている数少ない世界的リーダーの一人だ。今からちょうど60年前の1962年10月、米国とソ連の対立が核戦争寸前まで高まった当時、同氏はまだ20歳を前にした学生だった。その彼が10月6日、世界はキューバ危機以来の核のアルマゲドン(世界最終戦争)に今、近づいていると半分は自分に語りかけるように世界に警告する発言をした。

     

    (3)「西側で、最終的な和平協定を検討している人々は、大まかな条件は設定している。ロシアは少なくとも2月24日の侵攻開始前の地点まで撤退する必要がある。ウクライナは今後も黒海へのアクセスや領空の制空権に加え、ロシアの善意に依存した形ではなく、独立国家としての安全保障を確約された存続可能な国家として未来を保証されなければならない。どの交渉においてもクリミア半島の扱いが最も難しい争点になるだろう。だが解決が不可能であるかに思える問題に創造力を発揮し解決策を編み出すことこそ高レベルの外交交渉の真骨頂だ。そうした外交が今、もっと求められている」

     

    ロシアに対して、2月24日以前の線まで戻れという要求が、簡単に実現するとも思えない。ウクライナ側としては、言われなき侵略と多大な被害を受けている。この保障をどうするかも大きな課題だ。和平交渉は、ロシア側が徹底的な敗北を喫しない限り、実現不可能であろう。

     

     

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