勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年11月

    a1320_000159_m
       

    中国当局は、ゼロコロナ反対を叫ぶ街頭の若者たちへ対抗策を取り始めた。街灯を消して、デモ参加者の顔写真を撮っているのだ。いよいよ、苛烈な弾圧が始まる序曲であろう。問題は、習政権が若者から仕事を奪っていることにある。若者の失業率は18%に達しており、「3年間、仕事がない」という悲痛な叫びが出ているのだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「中国の抗議デモ、背後に若者の経済不安」と題する記事を掲載した。 

    中国各地の主要都市で先週末発生した市民の抗議デモは、当局による新型コロナウイルスの厳格な封じ込め対策への不満が引き金となった。背後には、当局が爆発しかねないとして警戒を強める別の「マグマ」もくすぶっている。中国の若者層に広がる経済的な不満だ。

     

    (1)「大学構内を含め、市民が異例の抗議活動を展開した背景には、中国当局がなかなか景気減速に歯止めをかけられないでいることがある。中国の成長率は今年、コロナが最初に流行した2020年を除き、40余年ぶりの水準に沈む見通しだ。若者層にとって、先行きの見通しはとりわけ暗い。中国都市部の若者(16~24歳)の失業率は18%前後と、過去最悪の水準付近で高止まりしている。中国では来夏、過去最多となる1158万人余りの学生が卒業する。ところが、大卒者ら若者の仕事は、インターネットや教育、サービス業を中心に消滅した。厳格なゼロコロナ政策に加え、中国当局が過去1年に民間企業への締め付けを強めてきたことが原因だ」 

    約3年にわたるロックダウンで、中国経済は大きく揺さぶられている。その間に、「共同富裕」という名目で、IT関連産業や不動産開発業へ規制の網がかけられた。実は、これら部門が若者にとって憧れの職場である。それが、消えかかっている。新規雇用どころか解雇へ動いているのだ。

     

    (2)「上海では11月26日夜、デモ隊の一部が「この3年間、仕事がない!」と叫んでいた。参加者の話で分かった。人気ソーシャルメディア「豆瓣(ドウバン)」では昨年、厳しい雇用情勢を共に嘆く支援グループが結成され、5万2000人余りの参加者が集まった。高まる不満が治安悪化へと発展しないよう、習近平国家主席ら指導部にとっては、早期の成長てこ入れが喫緊の課題となっている。とはいえ、ハイテク企業や不動産市場への締め付けが足かせとなり、輸出主導の中国経済が世界の需要低下という逆風に耐える力は弱まっており、景気回復は難しいと指摘されている。多くの専門家が予測するように、冬場にコロナ感染が全国的に増えれば、なおさらだ」 

    ゼロコロナ抗議活動の実態は、若者の雇用不安が引き金になっている。ロックダウンによる不満が、雇用不安への怒りと結びつき、大きなうねりになっているのであろう。

     

    (3)「キャピタル・エコノミクスのアジア上級エコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は、「習(氏)にとって最も危険なのは、市民が指導部の国家運営能力を疑い始める展開だ」と話す。「ゼロコロナ下で検査と隔離が永遠と繰り返される現状により、その点に人々の関心が向かっている」と指摘」

     

    国民に雇用を保証できない政権は、無能扱いされて当然だ。中国共産党は、国民との間でこうした「社会契約」を結んで、独裁政治を行なっているはずだ。その大事な雇用を保証できなければ、若者が不満を言い立てるには自然な動きであろう。

     

    (4)「中国共産党の指導部にとって、若者の経済的な不満はかねて心配の種だった。大規模な学生運動を武力で弾圧した1989年の天安門事件を巡っては、当時インフレ率が18%に跳ね上がっていたことがデモを誘発したとみるエコノミストが多い。今回のデモは、新疆ウイグル自治区のウルムチで起こった火災の犠牲者への追悼から、ゼロコロナ政策への批判へと変化する中で発生した。別の懸念も浮上している。27日には、北京の名門、清華大学で数百人の学生がキャンパス内で「民主主義と法の支配を」と連呼した。また言論の自由への弾圧に抗議するため、各地でデモ隊が白い紙を掲げた。上海では、習氏の辞任を要求する声も上がった」 

    天安門事件の裏にも経済的な不安があった。今回のゼロコロナ反対運動と似た側面がある。この延長で、「共産党反対」という過激な言葉が出るのはやむを得まい。

     

    (5)「エコノミストの間では、中国の若者にとって雇用市場の圧力は今後も続くとの見方が多い。中国景気が減速する度に、その痛みは新たに労働市場に加わる若者に過度に集中する傾向があるという。企業の間で経験者を維持しようとする動きが出るほか、先行き不透明感を理由に、採用を凍結することが要因だ。また度重なるコロナ検査と封鎖措置により、飲食店や旅行代理店など、多くのサービス業者が廃業に追い込まれた。これらは若者にとって大きな雇用の受け皿だ 

    ゼロコロナ対策が続く限り、下線のように多くのサービス業が廃業に追込まれる。サービス業は、若者が好む職場である。こう見ると、ゼロコロナが、若者の経済的な不安を駆り立てる大きな要因を含んでいることに気づくべきだ。

    118
       

    ロシアは、核脅迫という「最後通告」とその後の「Uターン」を繰り返し、戦争目的も絶えず変化している。このため西側諸国の政府当局者の間では、プーチン氏は自分の手に負えなくなっているこの戦争で、行き当たりばったりに対処することを余儀なくされているとの見方が強まっている。 

    ロシアは、欧米の制裁で重要産業の運営維持に苦慮している。このため、自動車、航空機、鉄道の部品を含む製品500以上のリストをインドに送付していたことが分かった。『ロイター』(11月29日付)が報じた。ロシアは、ここまで追込まれているが、「止めるに止められない戦争」という、最悪事態へ自ら落込んでいる。プーチン氏にも解決方法はないのだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月29日付)は、「ぶれるプーチン氏、戦争目的と『レッドライン』は」と題する記事を掲載した。 

    ウラジーミル・プーチン大統領が主導したウクライナ侵攻後、ロシアはしばしば戦争をエスカレートさせるという脅しをかけてきたが、脅しの多くを後にトーンダウンするか無視している。米国とその同盟国は、プーチン氏の真のレッドラインはどこなのか推測せざるを得なくなっている。 

    (1)「キングス・カレッジ・ロンドン戦争学部のマイケル・クラーク客員教授は、「プーチン氏の行動には現在、自暴自棄の要素がある。なぜなら、戦況が芳しくないこと、そして戦闘の長期化を覚悟しなければならないことを知っているはずだからだ」と述べた。ロシアはウクライナへの侵攻を拡大させている。ここ数週間でさらに数万人の兵士を前線に送り、ウクライナの電力網をはじめとする民間インフラへの攻撃を繰り返しており、首都キーウなどの都市はたびたび停電に見舞われている」 

    プーチン氏は、自暴自棄になっている気配があるという。勝ち目のない戦争だが、自ら止めるワケにもいかない。そこで、ウクライナの厭戦気分や支援する西側諸国の支援疲れを待っているのであろう。

     

    (2)「軍事アナリストらによると、ロシアの目的は、冬季にウクライナ国民を凍えさせることで士気を低下させ、西側諸国のウクライナ支援のコストをさらに高め、戦争が積極的に押し進められていることをロシア国内向けに示すことだという。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の双方が維持するレッドラインの一つは、ほとんど明言されていないが、相手との直接的な軍事衝突を望んでいないことだ」 

    ロシアは、NATO軍との軍事衝突を望んでいない。全面衝突になればさらに勝ち目がなくなるからだ。ロシア大統領選挙は2024年3月である。プーチン氏が立候補するならば、早く戦争を切り上げる必要があろう。

     

    (3)「ロシアのその他のレッドラインは、しばしば幻想であることが判明しており、特に好戦的な発言の一部は裏目に出ている。プーチン氏は9月21日、「ロシアとその国民を守るために利用可能な全ての手段」を講じると述べ、ウクライナで核兵器を使用する用意があると警告した。同氏は「これははったりではない」と付け加えた。ロシア政府はその後、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の準備を進めていると非難した」 

    弱い犬ほど「遠吠え」するというが、ロシアはこれまで何回か「核威嚇」してきた。これにより、ウクライナやNATOの厭戦気分を引き出す計画であった。

     

    (4)「西側諸国の当局者はこの動きについて、衝突をエスカレートさせる口実だと指摘した。西側の当局者やアナリストによると、この脅しの主な目的は、西側諸国の市民に戦争に関するパニックを起こさせ、ウクライナへの支持をやめて、ロシアが示す条件で和平交渉を進めるよう各国政府を説得してもらうことにあった。今のところ、この脅しは西側諸国によるウクライナ支援に影響しておらず、支援は順調に続いているように見える」 

    米国は、ロシアへ核使用のリスクを伝えている。通常兵器での報復である。ロシア軍部は、これを聞いて震え上がったのであろう。ロシアの黒海艦隊を全滅させると通告されているのだ。

     

    (5)「プーチン氏の核戦力による威嚇は、世界からの非難を浴び、ロシアを外交的に一層孤立させた。ジョー・バイデン米大統領はロシア政府に対し、戦術核兵器の使用が「極めて深刻な過ち」になると警告した極め付きは、中国の習近平国家主席が初めて公の場でロシアによる戦争行為を非難したことだった。習氏は、いかなる者も紛争で核兵器を使用したり、その使用をちらつかせたりすべきではないとけん制した」 

    ロシアの盟友である中国は、ロシアの核使用に反対している。インドも表明した。こうなると、ロシアの核脅迫発言は国際社会で自らの孤立を深めるだけだ。

     

    (6)「ロシア政府は、10月下旬までに姿勢を後退させた。プーチン氏はテレビの長時間インタビューで、ロシアにはウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。世界中にいるロシアの外交官からも同様の発言が出た。西側専門家は、戦場における核兵器の使用はロシアの軍事侵攻の目的達成にほとんど役立たず、米国とその同盟諸国を戦争にさらに深く引き込むリスクがあると指摘する。また、1945年以来維持されてきた核兵器使用のタブーを破れば、ロシアへの非難が強まり国際的な孤立が一層深まるだろ」 

    プーチン氏は、ウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。自らまき散らした「核脅迫」は不発になりそうだ。こうなると、ロシアはどうするのか。「ダラダラ戦争」を行なって「偽正義」を言い募るという無益な試みで時間を空費するのだ。その間の人命の損失を考える余裕はなくなっている。自分の身の処し方で夢中になっているのであろう。

     

     

     

    a0960_008572_m
       


    市民が、習氏や中国共産党の支配に対して直接、抗議の声を上げて立ち向かうなど、これまで想像も出来ない事態が起こっている。新型コロナ・ウィルスの厳格な封じ込め策を導入してから約3年。中国の習近平国家主席は、各地で広がる抗議デモにおいて名指しで批判される存在となった。

     

    中国政府が、市民の声を聞き入れれば、たちどころに160万人のコロナ感染による死者が出ると予測されている。医療施設の不足が原因だ。こういう状態をつくってしまった習政権に責任である。過去3年にわたるロックダウンで、「無菌状態」になっていることが最大の理由である。防疫無知は、悲劇を生むという典型例が今、中国に起こっている。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(11月29日付)は、「広がるゼロコロナ抗議、習氏の『無謬神話』試練に」と題する記事を掲載した。

     

    2011年、中国の国家副主席だった習近平氏は米国のバイデン副大統領(当時)との会談で、北アフリカと中東をかき乱す「アラブの春」が起きたのは、地域の指導者が自国民とのつながりを失ったためだと語った。それから10年あまりたち、習氏が中国共産党と軍のトップとして3期目を確保してから6週間足らずで、国家主席は中東の指導者の過ちを繰り返すかたちで、窮地に立たされている。

     

    (1)「習氏はこれまで頻繁に、存亡にかかわる重大な課題への対処に関して、中国の党主導政治システムが、米国など民主主義統治体制にあるライバル国と比較し、優位にあると豪語してきた。現在、新型コロナ・ウィルス対策の規制を緩和すれば、この冬に数十万人、下手をすれば数百万人もの高齢者の命を奪う事態になりかねず、党主導政治システムの優位性という自負が吹き飛ぶ」

     

    ゼロコロナ問題が、中国政治システムの根幹を揺るがす事態となってきた。鉄壁を誇る中国共産党が、ゼロコロナ対策の失敗で大揺れだ。理屈に合わぬことは、永続しないという喩えであろう。

     

    (2)「習氏は12年、共産党内の演説で上級幹部に向かって、ベルリンの壁が崩壊した2年後にソ連共産党が崩れ去ったのは、立ち上がって党を救うだけの「男気がある」人物が1人もいなかったからだと語った。このため多くの人は今、毛沢東以来最も強力な中国の指導者としての地位を築き、10月の第20回共産党大会ですでに弱っていたライバルも排除した習氏が、自身の成功の象徴である看板政策を戦わずして手放すことに懐疑的だ。英ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)中国研究所のスティーブ・ツァン所長は、「習氏は無謬神話を維持する必要がある」と話す。「強権的な指導者や独裁者が挑戦を受ければ、通常は本能的に抑圧で応じる。習氏が例外だとは思えない」と指摘する。

     

    習氏の看板政策であるゼロコロナ対策によって、民衆の抵抗に出遭っている。先ずは、抵抗運動を弾圧するであろう。それが、さらなる不信感を生むとしても、当面は妥協しないと思われる。習氏の「権威」が傷つくからだ。

     

    (3)「韓国ソウルの延世大学で中国研究を専門とするジョン・デラリー教授は、「(中国の指導者は)『党大会の成功』に固執するあまり、度重なるロックダウン(都市封鎖)で人々がどれほど強い不満を抱えているか、民意を見失ってしまった」と指摘する。「次に何が起きたとしても、これは習氏のゼロコロナ政策に対する強烈な非難だ。街頭デモと大学構内での批判演説が発生するに至るとは、前代未聞だ」。

     

    中国共産党は、国民の反対運動を強権で踏み潰してきた歴史である。一切の妥協を拒否すると見られる。

     

    (4)「公然と習氏を批判する大衆が、思い通りにゼロコロナの規制を崩すことに成功したとしても、それは中国の国家主席にとっての政治的な惨事であるだけでなく、公衆衛生上の災禍に発展する恐れがある。在中国欧州連合(EU)商工会議所のイエルク・ブトケ会頭は「今、封鎖を解除すれば破滅的な事態になる」と予想する。2020年1月にパンデミックが始まって以来、1度も中国を出ていないブトケ氏は、政府はむしろ「中国が来年往来を再開できるよう強力なワクチン接種対策」に取り組むべきだと訴える」

     

    過去3年近く、ゼロコロナによって社会の自然免疫はゼロ状態である。ここで、規制を解除すれば一気に感染者の激増を招く。大混乱は必至である。

     

    (5)「中国は、パンデミックの最初の2年間に感染の波を食い止めることに成功したが、それは国民がコロナに対する自然免疫を獲得していないことを意味する。高齢者の間でワクチン接種が進んでいないことが、問題を一段と悪化させる。中国と米国の科学者らは最近、抑制策なしで変異型ウイルス「オミクロン型」の感染拡大が起きれば、集中治療室に対する需要が供給(収容能力)の15.6倍に達し、160万人近い死者が出ると推測する。「彼らがコロナに対応してきた方法は、完全に中央集権化されており、それも中央政府だけでなく習氏自身によって管理されている」とゴア氏は語る。「地方政府による(ゼロコロナ政策緩和の)実験の余地が全くない。経済再開に向けて大きな問題になる」と指摘する」

     

    ゼロコロナを撤廃すれば、集中治療室に対する需要が、供給(収容能力)の15.6倍に達し、160万人近い死者が出ると推測されている。「地球最後の日」が来るような騒ぎは確実だ。中国共産党は、内外で評価ゼロとなろう。習氏は、進むも退くもできない事態を迎えている。すべて、習氏の責任である。

    a0960_008527_m
       


    日本には、韓国と外国人観光客数数を競争しているという認識はない。韓国が、勝手に日本と「競争心」を燃やしている。パンデミック終了後だけに、海外旅行客の動向に関心が持たれる。韓国は、日本に遅れてはならぬと必死の形相だ。 

    10月のデータでは、日本が49万8600人で、前月比で2.4倍もの増加であった。韓国は、28万9590人で、前月比73.%増。このデータには、チェジュ(済州)島から入国した外国人の数が除外されているという。これを含めれば、30万人台になったであろう。

     

    韓国紙『WOWKOREA』(11月29日付)は、「日韓間で熱を帯び始めた、外国人観光客の獲得競争」と題する記事を掲載した。 

    韓国経済新聞は11月19日、10月の外国人入国者が韓国と日本共に大幅に増加した中、両国の間で外国人観光客の獲得競争が激化していると伝えた。こうした中、韓国の文化体育観光部(部は省に相当)は韓国観光公社と共に、現在サッカーのワールドカップ(W杯)が開催されているカタールの首都ドーハで、韓国観光のPRキャンペーンを展開。外国人観光客の取り込みに余念がない。 

    (1)「韓国法務部出入国・外国人政策本部によると、先月に韓国を訪問した外国人は28万9590人で、前月(16万6568人)比73.%増えた。韓国経済新聞は「この数字には団体観光客と(南部のリゾート地)チェジュ(済州)島から入国した外国人の数が除外されている。それだけに、実際に韓国を訪問した外国人の数はこれよりはるかに多いというのが観光業界の分析だ」と伝えている。一方、日本政府観光局によると、10月に日本を訪問した外国人観光客は49万8600人で、前月(20万6500人)比2.4倍も増加した」 

    10月の外国人観光客数は、日本が前月比2.4倍、韓国は73.9%であった。増加率では、日本が韓国の3.2倍という急増ぶりである。日本と韓国では、地理的条件が全く違うので、単純比較は難しいであろう。日本は列島で、韓国が半島である。

     

    (2)「日本政府は10月11日から短期滞在ビザ(査証)の免除や外国人の個人旅行の受け入れを再開。日本政府は韓国人に対するビザ免除措置を2020年3月9日から一時停止していたが、約2年7か月ぶりに再びビザなしで日本に入国できるようになった。これまで15万人としていた日本への入国者数の上限も撤廃したほか、入国者は日本到着時の新型コロナ検査と入国時の待機も原則必要なくなった」 

    日本は、10月からビザなし旅行を受入れるようになった。これが、外国人観光客を急増させたのであろう。 

    (3)「韓国経済新聞は、10月の両国のこうした状況に「この1か月間、両国の観光客誘致の『成績』は優劣をつけにくいほど良かった。ドル高の影響で、米国など海外旅行客の集客に有利な条件が整ったことが両国に好影響をもたらした」と分析した上で、「日韓両国は、相手国に先を越されぬよう、特化した観光商品の開発に全力を傾けるなど、熾烈(しれつ)な競争を繰り広げそうだ」と伝えた」 

    日韓は、地理的条件と観光資源が全く異なるゆえに、無駄な競争は意味ないであろう。それよりも、外国人に日韓両国を旅行して貰うアイデアを出すべきだ。まさに、競争よりも協調である。日韓二ヶ国回って貰えれば「割引価格」を適用するという工夫である。「客回し」である。

     

    (4)「同紙は、「外国人観光客を取り逃さないために両国が繰り出したカードは『ラグジュアリー商品』だ」とし、「観光の魅力度を高め、客単価を最大限高めるという戦略だ」と解説した。同紙によると、11月1日にはプライベート機に乗って米国から観光客46人が韓国を訪れた。国籍は様々で、元高級官僚や会社経営者などという。韓国のほか、ベトナムやトルコなど計7か国を訪問する旅行商品で、価格は約2200万円。韓国観光公社のユ・ジュンホ観光商品室長は同紙の取材に「富裕層の観光客の支出は一般の観光客より4倍以上多い」と話した」 

    富裕層のプライベート機による海外旅行もあることに驚かされる。これは、アイデアさえ出せば、日本の旅行会社でも実現可能だ。

     

    (4)「文化体育観光部は、カタールでのW杯開催に合わせて、首都ドーハの中心部に大会組織委員会が運営する特設会場に韓国観光広報館を設置した。聯合ニュースによると、広報館では人工知能(AI)による肌診断や韓国スタイルのメ-キャップをバーチャルで試せる医療・ウエルネスプログラム、ハングルのカリグラフィー(西洋書道)をはじめとする伝統文化プログラムを準備した。K-POPダンスゲームなども体験できるという」 

    韓国は、カタールでのW杯開催に合わせて展示館を設置した。韓国チームの成績が良ければ、韓国への旅行客が増えるであろう。

     

    (5)「日本政府観光局も、客単価と付加価値の高いアドベンチャー体験型旅行商品の開発に力を入れている。ウインターシーズンを迎え、スキーなどのレジャー活動を楽しみたいと考えている旅行者を積極的に取り入れたい考えだ。両国の外国人観光客の獲得競争は、今後、ますます熱を帯びることになりそうだ」 

    海外旅行客の増加は、「輸出」と同じでドルを稼ぐことになる。20年1月の新型コロナ発生する前の日本は、2019年に年間2000万人へ達した。20年以降は、パンデミックで見る影もない状態だ。これを再び盛り返すには、どうするかである。韓国と競争するだけでは意味がない。

     

     

    a1320_000159_m
       

    中国は、米軍がアフガニスタン撤退後にイスラム勢力が復活し、中国へ武力闘争を挑むことに最も警戒してきた。その恐怖が、現実問題として浮上してきた。一帯一路プロジェクトが、「新帝国主義」と断罪したのである。中国は、新疆ウイグル自治区でイスラム教を弾圧しているだけに、厄介な問題を抱えるに至った。 

    『朝鮮日報』(11月29日付)は、「『習近平の中国の夢は白昼夢に過ぎない』…ISが中国の一帯一路を脅かす理由とは」と題する記事を掲載した。 

    アフガニスタンとパキスタンでテロを繰り返すイスラム武装勢力「イスラム国ホラサン州(IS-K)」が「習近平の中国の夢は中国帝国主義の白昼夢に過ぎない」と主張し、中央アジア・アフリカなどの一帯一路プロジェクトを脅かす意志を表明した。

     

    (1)「今年9月、IS-Kが発刊する英字誌「ホラサンの声」(VoK)は、中国国内の少数民族である新疆ウイグル族のムスリムに対する人権弾圧や、中国のグローバル経済膨張政策を非難した。IS-Kは、アフガニスタンでイスラム神政国家を立てることを目標にしている。ホラサン(ホラーサーン)とは、歴史的にイラン北東部、トルクメニスタン南部、アフガニスタン北部地域を通称する名称で、「太陽の地」という意味だ。昨年8月に米国がアフガニスタンから慌ただしく撤退した際、カブール空港で自爆テロを起こし、民間人170人と米軍関係者13人を殺害したのもIS-Kだった」 

    中国が、新疆ウイグル自治区を弾圧していることは国連からも非難される事態となっている。もはや、西側諸国の「デッチアゲ」と言い張ることが不可能になった。この時点でイスラム武装勢力が、公然と中国を闘争相手と宣言したことは頭の痛い問題が一つ増えたことになる。

     

    (2)「これに関連して米国の外交・安全保障誌「フォーリン・ポリシー」は19日、公式ウェブサイトで「中国が中東・中央アジアで経済的影響力を拡大していることを受け、2017年以降中国に対し沈黙していたISが好戦的な修辞を更新した」と分析した。イラク・シリアで始まったISは、最盛期の2014年7月に指導者のアブ・バクル・アル・バグダディ氏が、ムスリムの人権を踏みにじる20カ国中の第1位に中国を挙げた。ISは2015年に中国人とノルウェー人を誘拐・殺害し、2017年にはパキスタン南西部のバルチスタン州で中国語を教えていた若い中国人夫婦を誘拐・殺害した。バルチスタン州は、中国が570億ドル(現在のレートで約8兆4000億円。以下同じ)を投じて道路と港湾を建設する「中国・パキスタン経済回廊」の核心となる地域だ」 

    ISは、最盛期の2014年7月にムスリムの人権を踏みにじる国として、20カ国中の第1位に中国を挙げていた。中国が、アフガン情勢に神経を配る理由はここにある。

     

    (3)「また同年、ウイグル族出身のIS構成員がイラクで「抑圧されている人々の復讐のため、血が川のごとく流れるようにする」と脅している動画も公開された。しかし2018年からは、中国について公に言及することはなくなった。「フォーリン・ポリシー」誌は「『ホラサンの声』の記事は、イスラムテロ集団の間で中国に対する関心が、ムスリム弾圧という宗教的観点から、米国・ロシア・英国のようにグローバルな覇権を追求する中国帝国主義へと移っていきつつあることを意味する」と分析した。VoKの記事は、中国の一帯一路政策を、かつて英国の植民政策の先頭に立った東インド会社と同じ「現代版帝国主義膨張」と見なした」 

    下線のように、イスラム武装勢力は一帯一路事業をかつての東印度会社と同じ「帝国主義」と見ている。中国が、「債務のワナ」に陥れて港湾などを担保として取り上げる「悪行」は、確かに東印度会社以上と言えるかも知れない。一帯一路は、習氏の始めた事業である。

     

    (4)「他方、IS-K「中国は西側と違ってソフトパワーも弱く、対米グローバル競争、周辺国との地域的競争の構図により、グローバルな覇者になるには限界がある」とも主張した。また、米中対立の構図の中で、ISが中国の利益を攻撃できることを示唆した。IS-Kは記事で「野蛮な中国の無神論者たちは、グローバル覇権に有利な文字的利点も持ち合わせていない」とし「臆病な中国の無神論者たちに、西側とISを同時に相手にする度胸はあるか」と問うた」 

    中国は、歴史的に真の信仰を持ったことのない希有の民族である。世間では、儒教を信仰と誤解しているが、ただの「修養論」である。来世を信じて初めて信仰と言える。中国は、その意味で信仰がない「無神論」の国だ。人権弾圧もこれに由来している。

     

    (5)「IS-Kは、「中国の物質主義・重商主義的帝国主義」を、かつて短命に終わったモンゴルの西進になぞらえ「中国の悪党どもも、モンゴルのように同じ形で失敗するだろう」と主張した。「フォーリン・ポリシー」誌は、これに関して「中国の夢は西側からだけでなく、アフガニスタンなど複数の地域に存在するISからも挑戦を受けるものとみられる」との見方を示した」 

    イスラム武装勢力は、中国を「物質主義・重商主義的帝国主義」と規定したが、正しい分析であろう。やたらと外貨準備を積み上げたり、資本流出規制して為替相場を管理下に置くなど、資本主義以前の重商主義国家そのもの。アダムスミスが猛批判した対象は、現在の中国にも当てはまる。

    このページのトップヘ