勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年12月

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    ロシアは、ウクライナ戦争で大苦戦を強いられている。弾道ミサイルの備蓄も急減しており、兵器の損失規模もウクライナの3倍にのぼるとの推計も出てきた。こうした状況下で、中ロ首脳のオンライン会議が12月30日行なわれた。これにより来春、中国の習近平国家主席がロシアを訪問することを決めた。

     

    ロシア国営メディアによると、プーチン氏は「ロシアと中国の軍隊の交流強化を目指す」と話し、軍事協力の強化を示唆した。中国から軍事支援を得たいという願望が強く滲み出た発言である。ロシア軍劣勢の中で、中国が今になって軍事支援するリスクを冒すとは考えられない。経済的な面での話し合いと見られている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月31日付)は、「ロシア軍の消耗顕著に『兵器損失』ウクライナの3倍か 広がる兵員不足観測 29日に大量ミサイル攻撃」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア軍は12月29日朝、ウクライナ全土で大規模なミサイル攻撃を実施した。ウクライナ軍によると各地のエネルギー関連のインフラ施設に向けて69発のミサイルが発射され、54発が迎撃された。ロシア軍は10月からウクライナ各地のインフラを標的にしたミサイル攻撃を続けてきた。市民生活を窮乏化させ、継戦能力を奪うのが狙いだったが、いまだに戦局をロシア優位に転換できていない。ウクライナ国防省の情報機関トップ、キリロ・ブダノフ氏は英BBCが29日に公開したインタビューで、ロシア軍が「完全に行き詰まっている」と語った」

     

    ロシア軍は、米国提供の「ハイマース」によって兵站線を徹底的に潰されている。ロシア軍「行き詰り」の理由はこれだ。

     

    (2)「ロシア軍のミサイル備蓄は急減している。これまでの大規模攻撃で発射されたミサイルの数は確認された分だけで計549発。ロシアの年間生産量のおよそ6年分を3ヵ月で使い切った計算だ。米欧による先端技術部品の輸出禁止でロシアのミサイル生産能力も落ちている。ウクライナ軍はあと2~3回の大規模攻撃でロシア軍の弾道ミサイルの備蓄が尽きるとの見方を示す。兵器の損失も膨らみ続けている。民間の軍事情報サイト「Oryx」の24日時点のリストによると、破壊されたり、ウクライナ側に渡ったりしたロシア側の装備品は計約8500点で、ウクライナ側のほぼ3倍だ。ロシア軍は直近の1カ月で計240両を超える戦車と装甲車を失ったという」

     

    ロシアは、ミサイルの年間生産量のおよそ6年分を、3ヵ月で使い切った計算という。これだけ早いペースで、ウクライナ国内へ攻撃しても戦況を回復できないのは、ウクライナ国民の士気の高さだ。理不尽な戦争への怒りが、ウクライナを結束させている。

     

    (3)「ロシア軍では兵員不足の懸念も広がる。現在のロシア軍の兵員は訓練不足の徴集兵が多く、敵地で戦うために損耗率も高い。侵攻開始以来の死傷者数は10万人を大きく超えるとみられる。ロシアの独立系メディア、メドゥーザは22日「数カ月後には再び深刻な人手不足に陥りかねない」と指摘した。プーチン大統領は21日、9月末に部分動員令で集めた30万人のうち、15万人はまだ戦闘地域に投入していないと主張した」

     

    ウクライナは、ロシア軍兵士10万人以上が死亡したとしている。これが、正しいとすれば、この2倍以上の重傷者が出ていると見られる。特に、痛手は将校クラスの損失である。戦場で指揮官がいない部隊は、烏合の衆になりかねないのだ。

     

    (4)「ショイグ国防相は21日、軍の規模をいまの3割増の150万人に拡大させることを提案した。兵力の早期消耗をにらんだ大規模な追加動員の布石とみる向きが多い。プーチン氏が9月に部分動員令を発した際は社会が大きく動揺した。独立系調査機関レバダ・センターが発表するプーチン氏の支持率は7割台に低下。動員令後、出国したロシア人男性は70万人に達したとの推計もある」

     

    23年早々に、新たな動員令が出るとの情報も見られる。また、出国者には課税するというニュースも出てきた。ロシアが、人的補充で苦しい局面にあることを覗わせている。

     

    (5)「ロシアでは市民の生活水準も悪化し続けている。国際通貨基金(IMF)は、ロシアの22年の実質経済成長率をマイナス3.%と予測する。景気後退は鮮明で、欧州ビジネス協議会によると1~11月のロシアの新車販売台数は前年同期比60.%減だった。プーチン氏はこれまで、ソ連崩壊直後の貧困を知る高齢層に生活水準の向上をアピールし、政権基盤を保ってきた。生活水準の悪化に加え、大規模動員という第2次大戦以降で初めての事態に市民が直面すれば、抗議活動は一気に広がる可能性がある」

     

    ロシアは、原油価格がEU(欧州連合)によって価格上限制が引かれた結果、大幅に値下がりしている。1バレル=42~45ドルである。国際価格の45%引きという捨て値相場だ。これでは、ロシア財政に大きく響く筈。年金財政も厳しくなる。

     

    (6)「米国はウクライナ支援を増やす一方、プーチン氏を追い詰めて偶発的な核戦争のリスクが高まる事態を懸念する。21日には18億5000万ドル(約2400億円)の軍事支援を表明したが、戦局打開のためウクライナが望んだ最新鋭戦車、戦闘機、長距離ミサイルの供与は控える方針を維持した。ロシア本土や同国が併合を宣言したクリミア半島への攻撃に対し、ロシアが核兵器で報復し、北大西洋条約機構(NATO)を巻き込むリスクがあるためだ」

     

    ロシア軍は苦境に立つと、核問題を持出して威嚇している。ウクライナ軍は、核投下がないという前提で作戦計画を遂行している。米国もNATOも厳重にロシアへ核投下について警告しているところだ。ロシアが核を使えば自滅の運命である。

     

     

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    中国の23年乗用車販売戦線は、ゼロ成長と言えそうだ。今年、有力な販促手段になった減税措置が来年はないこと。また、混乱の極にある「ウイズコロナ」が、どのように終息へ向かうか見当がつかないことだ。中国汽車工業協会は、建前上1%増と見ているが、実現の可能性は低いようだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月30日付)は、「中国の23年新車販売、乗用車ゼロ成長も 減税終了などで」と題する記事を掲載した。

     

    中国の広東省広州市で12月30日、自動車の国際展示会「広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)」が開幕した。自動車大手各社が電気自動車(EV)などの最新車両を披露した。業界団体は2023年の中国新車市場は22年比3%増と見込むが、乗用車は「ゼロ成長」との見方もある。大型減税の反動や新型コロナウイルスの感染拡大など懸念材料は多く、不透明感が強まっている。

     

    (1)「中国汽車工業協会は23年の新車販売台数を、22年比3%増の2760万台と3年連続プラスを見込む。ただ、そのうち乗用車は1%増の2380万台にとどまる見通しだ。別の乗用車の業界団体からは「ゼロ成長もありうる」と、さらに厳しい見方も出ている。23年の新車販売が鈍る最大の理由は、6月に始まった乗用車の取得税の半減政策が、12月末で終了するからだ。取得税の半減は22年の新車販売を下支えした一方で、23年は反動減となる恐れがある」

     

    23年は、22年の減税の反動減が出る。複数年をならしてみれば、減税効果はどれだけあるか不明だろう。

     

    (2)「懸念される反動減を乗り越えようと、自動車各社が力を入れるのが新型EVなどの拡販だ。「22年の販売台数は(前年比2倍強の)15万台を超えるだろう。23年は海外進出を強化する」。中国合衆新能源汽車傘下で新興EV「Neta」の江峰副総裁は、モーターショーの発表会でそう力説した。14年設立の同社は約8万元(約150万円)からの低価格EV「V」などが好調だ。22年の中国新車市場は、Netaのような新興メーカー製を含むEVの販売が急増した。汽車工業協会の予測では、22年の中国新車販売は前年比2%増の2680万台の見込み。ただEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの「新エネルギー車」は、90%増の670万台に拡大する見通しだ。コロナの感染拡大と厳しい対策が響きながらも、新エネ車の好調で全体を補った格好だ」

     

    低価格のEVで売り込みを図る。EVでは、ブランド効果は薄いとされる。低価格が最大の販促ツールになっている。

     

    (3)「23年の新エネ車販売は、22年比で35%増の900万台になると見込まれる。広州モーターショーでは各社がEVなどの最新車種をアピールした。中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団は、4人乗りの小型EV「熊猫mini」を披露。若者や子育て世代をターゲットとし、限定版の価格は5万5800元に設定した。国インターネット大手の百度(バイドゥ)と、吉利が共同で立ち上げた集度汽車も、新型EV「ROBO-02」を紹介。自動運転技術の性能などをアピールした」

     

    吉利自動車は、5万5800元(約105万円)のEVを発売する。どこまで、市場を開拓できるか。

     

    (4)「トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)を含む電動車を拡充する。「23年はHVを12車種発表などし、EVや燃料電池車(FCV)も含めた全方位で電動化を進める」。トヨタの中国合弁会社「広汽トヨタ」の藤原寛行総経理は、そう力説した。20日には広州市で年産能力20万台となる新エネ車の新ラインの稼働が始まった。別の合弁会社「一汽トヨタ」も新型「クラウン」でHV2車種を披露したほか、中国比亜迪(BYD)と開発したEV「BZ3」を展示した」

     

    トヨタは、23年にHVで12車種を販売する。EVやFCVでも力を入れる。トヨタは、中国市場で好調だ。

     

    (5)「トヨタやホンダと合弁会社を運営する中国国有自動車大手、広州汽車集団の馮興亜総経理は、記者団に「(23年の中国全体の新車販売について)目標とする3%増は達成可能だ。ただし半導体不足や政府補助の終了といった不確定要素はある」と語った。自動車各社にとって22年は、コロナ感染拡大やサプライチェーン(供給網)の逼迫などに直面した一年となった。各社は23年も新たな課題に対応する必要に迫られている」

     

    半導体不足は、相変わらず続いている。トヨタは半導体確保を有利に進めたとされるが、未だ需要を100%満たせる状況ではない。

     

     

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    半導体は国家支援対象へ

    韓国は財政難に阻まれる

    台湾と水が開き日本急迫 

    韓国半導体は、静かに危険ゾーンへ向かっている。韓国半導体の市場シェアは、世界2位であるものの総合競争力が世界5位で不安定であるからだ。韓国産業研究院(KIET)が、ランキングを付したものである。総合競争力1位以下は、次の順序になっている。米国、台湾、日本、中国、韓国、EU(欧州連合)だ。 

    韓国半導体産業は、端的に言えば「加工技術」だけである。半導体設計能力、半導体製造設備、半導体素材など全てが海外依存である。2019年に日本が半導体主要3素材の輸出手続きを強化しただけで、「輸出規制」と誤解し、挙げ句の果てが「反日不買運動」にまで発展した。これこそ、韓国半導体の基盤がいかに脆弱であるかを証明した。

     

    韓国半導体の抱える脆弱性を解決するには、韓国政府の支援が最も必要な時代に転換した。世界は、米中対立やロシアのウクライナ侵攻という「きな臭い」時代へ突入し、安全保障を取り巻く状況が大きく変わった。グローバル経済という状況は消えて、経済安全保障が第一に検討される環境なのだ。半導体は、経済安全保障の切り札である。何の躊躇もなく、国家が半導体を後押しする時代へと激変したのである。 

    半導体は国家支援対象へ

    グローバル経済では、御法度であった産業の国家支援が、現在では堂々と認められ奨励されるという時代へ急変したきっかけは、中国が2015年に作成した「中国製造2025」である。米国トランプ政権(当時)は、この保護政策に強く反対し、グローバル経済の維持を主張した。だが、中国が受入れず産業保護主義を継続するとしたので、米国も対抗上で保護主義へ回帰することになった。 

    その後、中国で起こった新型コロナウイルス感染で「都市封鎖」によってサプライチェーンが大混乱し、一つの国へ生産を依存するリスクの大きさを認識させた。ここに、経済安全保障という視点が強調されて、グローバル経済が色あせる結果になった。1991年以降のグローバル経済は、2020年のパンデミックを以て終わったのである。

     

    日本が、1990年代まで世界半導体のトップでありながら、前記の国際ランキングで3位に甘んじる結果になった。これは、グローバル経済という認識が先行して、資金面で半導体企業への国家支援が断ち切られた影響によるものだ。高い技術を持ちながら、資金面が続かず泣き泣き国際競争から脱落する事態に陥った。この状況が今や一変して、経済安全保障というベクトルで、国家が支援することが当然という認識に変わってきた。まさに、「コペルニクス的転回」という状況だ。天地がひっくり返るほどの変化である。 

    韓国半導体が発展したのは、グローバル経済という「神風」が吹いた結果である。サムスンなど財閥企業は、大株主=経営者主導であるから経営リスクをいくらでも取れる体制にある。日本の経営者は、長期経営でなく数年で交代するので大規模投資を行えなかった。これが、日本半導体をして韓国にその座を譲らざるを得なかった最大理由である。

     

    現在は、経済安全保障という「新次元」になった。国家支援によって、安全保障を確かなものにする理念の登場で、状況は180度の転換である。日本政府が、半導体産業支援で手を差し伸べることは、世界共通の現象になったのである。 

    韓国は財政難に阻まれる

    韓国半導体も、政府が支援体制を組んで当然だが、実は「財政難」という大きな障害によって税制面での優遇措置が微々たる結果になった。今後の半導体産業は、国力の消長を反映する時代になる。その面で、韓国半導体は厳しい局面を迎えた。韓国経済の長期停滞が予想されるからだ。 

    韓国国会は12月23日、半導体やバッテリーなど国家先端戦略産業分野で、大企業が設備投資を行なえば、投資額の8%分を税額控除する「Kチップス法」を可決した。税額控除は、所得控除と異なって、納税額から設備投資の8%分を差し引きされるが、他国の例から見ても著しく少額である。 

    半導体設備投資は、巨額資金を投入しなければならない典型的な「装置産業」である。好不況の景気循環の大きな波が訪れる特性を持っているだけに、不況時に耐えられる「身軽さ」が求められる。そこで、政府が設備投資に対する税額控除によって、早期の減価償却を行なうメリットを与えるのだ。 

    韓国与党は当初、2030年まで大企業の設備投資に対して20%の税額控除を検討していた。一方の野党「共に民主党」は、反企業主義が根強いので10%と半分にしたが、実際に国会で議決されたのは、野党案の10%も下回る8%に値切られたのである。つまり、与野党の提案すら下回る線で決着を見たのは、奇怪な事態と言うほかない。

     

    これには、政府の企画財政部(日本の財務省)が、財源難を理由に減税率を8%に値切ってしまったという裏話が報じられている。与党の減免案20%が可決された場合、23年の法人税税収が2兆7000億ウォン(約2827億円)ほど減るという。企画財政部は、これを懸念して「8%」に切下げたとされる。この内情暴露は、韓国メディアが一斉に報じた。

    (つづく) 

    次の記事もご参考に。

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    ウクライナでの戦闘は現在、ウクライナとロシアのどちらも大きく前進できずにいる膠着状態にある。ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長は、BBCの取材でこう話した。この間、ウクライナ政府は西側各国からの先端兵器の提供を待っているところだという。

     

    英『BBC』(12月29日付)は、「戦闘はこう着状態に、ウクライナ情報総局長 BBCに話す」と題する記事を掲載した。

     

    ブダノフ少将は、「にっちもさっちもいかない状態だ。まるで動かない」と話した。ウクライナ軍が11月に南部の州都へルソンを奪還して以降、最も激しい戦闘は東部ドネツク州のバフムート周辺で行われてきた。それ以外の場所では、ロシア軍はもっぱら防戦態勢をとっている様子だ。その一方、全長1000キロにわたる前線においてウクライナ軍の地上部隊の動きは、冬の寒さの影響でペースを落としている

     

    (1)「ブダノフ局長は、かなりの被害を受けたロシア軍は「今では完全に行き止まり状態」にあると指摘。ロシア政府は今後さらに徴集兵の動員を発表すると決めたようだと話した。しかしそれでもウクライナ軍は今も、複数の場所で進軍するための物資が不足していると、局長は付け足した。「全方位で徹底的に相手を倒すことができない。それは向こうも同じだ」とブダノフ氏は言い、「新しい兵器の供給に大いに期待している。これまでより進んだ先端兵器の到着も期待している」と強調した」

     

    ウクライナ軍は、これまで以上の先端兵器の到着を待って攻撃開始と見られる。ロシア軍も塹壕を掘って防衛線を築いており、膠着状態になっている。

     

    (2)「ロシア軍の後退が各地で続いた後、ウクライナ政府は12月15日になって、ロシアが早ければ新年にもベラルーシを出発点に大規模な地上攻勢を実施しようと、計画を進めていると警告した。ロシア軍は国内で訓練中の数万人の予備役兵を投入し、再び首都キーウ制圧を目指す可能性もあると、ウクライナは見ている。しかしブダノフ局長は、ベラルーシでのロシア軍の活動は陽動作戦に過ぎないと一蹴した」

     

    ベラルーシでのロシア軍の活動は、陽動作戦に過ぎないと見ている。ロシア兵を乗せた列車は、ベラルーシ国境近くで止まり、ロシアへ引き返したという。

     

    (3)「数千の兵をベラルーシへ向かわせているのも、ウクライナが南や東に配備している部隊を、北に移動させようとしてのことだという。最近では、ロシア兵を大勢乗せた列車がベラルーシ-ウクライナ国境の近くまで来て停車し、数時間後に全員を乗せたまま、戻っていったのだという。「しかも(ロシアは)それを白昼堂々やってみせた。見たくなくても誰もが目にするように」と、ブダノフ氏は述べ、ベラルーシにいる部隊が実際の切迫した脅威だとは思っていないと話した。「ベラルーシ方面からキーウや国の北部を侵略しようと準備している様子は、現時点では見えない」と指摘」

     

    ベラルーシ方面からキーウや国の北部を侵略しようと準備している様子は、現時点では見えないという。

     

    (4)「ヘルソンを奪還して以来、ウクライナ軍は東部バフムートでロシア軍と熾烈(しれつ)な戦いを続けてきた。塹壕(ざんごう)を足掛かりにするその戦い方は、まるで第1次世界大戦のようだとも言われている。ロシアにとっては、バフムートを奪えばウクライナの補給線を寸断することができる。加えて、クラマトルスクやストヴィアンスクなどウクライナが抑える東部の重要地点へ向かって、進軍ルートが開ける。ロシアのバフムート攻略作戦を率いているのは、ロシアの雇い兵会社「ワグネル」の戦闘員だとブダノフ氏は述べた。「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、ロシア政府内の権力争いで有利になるため、バフムートを自らの政治的な獲物にしたいと考えているのだと言われている」

     

    東部バフムートで、ロシア軍は熾烈な攻撃を掛けている。その狙いは、「ワグネル」の創設者プリゴジン氏が、ロシア政府内の権力争いで有利になるため、バフムートを自らの政治的な獲物にしたいと考えているものと憶測されている。

     

    (5)「ブダノフ氏は、ロシアのミサイルやドローンを駆使してウクライナの重要インフラ攻撃は今後も続くだろうが、これまでの頻度でいつまでも維持することはできないだろうと指摘する。ロシアが持つミサイルの備蓄は減少しつつあるし、ロシアは自前でミサイルを製造して補うことができないからだと。ロシアが使う攻撃用ドローンのほとんどはイランから提供されたものだが、イランはこれまでミサイル供給については断り続けてきたのだと、ブダノフ氏は指摘する。核開発を理由にただでさえ厳しい西側の制裁を受け続けるイラン政府は、ロシアにミサイルを提供しようものなら、西側の追加制裁を受けるのは必至だと承知しているからだ」

     

    ロシアのミサイル備蓄は減少しつつある。ロシアは、経済制裁によって自前でミサイルを製造して補うことができない状態に陥っているのだ。イランは、ロシアへミサイル提供を断り続けている。西側の二次制裁を恐れているから、今後のロシアが所有するミサイル数は減少すると見ている。

     

    (6)「戦争は今、膠着しているかもしれない。しかし、究極的には、占領下にあるすべてのウクライナ領をいずれ絶対に奪還するのは確実だと、ブダノフ局長は強調する。回復するウクライナ領には、2014年にロシアが併合したクリミア半島も含まれるという。ブダノフ局長は、ウクライナの国境はいずれ1991年の状態に戻ると予測する」

     

    ウクライナ軍は、クリミア半島を奪回するまで戦い続けると宣言している。ロシアはこれを阻止すべく、核をちらつかせている。ロシアの弱みを見せつけているのだ。

    あじさいのたまご
       

    習近平氏が、「一帯一路」構想を打ち上げてほぼ10年経った。多くの発展途上国は、中国からの経済支援に期待して飛びついたが、その副作用は大きかった。過剰債務を背負い込み、外貨準備を使い果たして、財政破綻国へ追いやられている。もはや、一帯一路なる言葉は色あせてしまった。

     

    そこで中国は、新たに「アジア太平洋共同体」なる構想を発表して、局面転換を図ることにしたようだ。だが、中国の権威主義が一層高まって来た現在、近隣国は警戒姿勢を見せている。中国のこの新構想は、賛成国が出なければアドバルーンに終わる。中国にとっては最悪のケースになりかねないのだ。

     

    『大紀元』(12月30日付)は、「『一帯一路』、アジア太平洋共同体に再ブランディングか」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府の一帯一路構想が華々しく発表されてから10年近くが経過したが、その行く手には論争が絶えない。共産党政権は前例のない国内問題に直面するなか、問題の多い看板政策の再ブランディングを試みているのではないかとの見方がある。

     

    (1)「中国の国営メディアによると、2022年11月中旬に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、習近平氏は「未来を共有するアジア太平洋共同体」の構築を呼び掛けたという。 習主席は、21の加盟国からなるフォーラムは、「マクロ経済政策に関する調整を強化し、地域のサプライチェーンと産業チェーンをより密接に結びつけ、地域経済統合を着実に進める」ことなどが必要だと述べた」

     

    習氏は、APECでアジア太平洋共同体構想を呼びかけた。米国のIPEF(インド太平洋経済枠組)への対抗軸として出てきたのであろう。だが、中国は南シナ海で島嶼を占領して紛議を引き起こしている。こういう現実を棚上げして、アジア太平洋共同体構想を打ち上げても、賛同する国がいくつあるか、だ。

     

    (2)「シドニー工科大学豪中関係研究所のマリナ・ユエ・チャン准教授は2022年12月上旬、オンラインニュース誌「ザ・ディプロマット」に「アジア太平洋共同体の未来構想では、中国は『ハブ』となり個々の国家とつながり、分散型サプライチェーン・ネットワークが形成される」と書いている。こうした説明は一帯一路構想にもしばしば適用される。大陸横断計画がいくつも頓挫し、世界銀行やその他の機関が、中国の金融機関に対する致命的な債務、コスト超過、手抜き工事、汚職、環境破壊、主権の喪失といった参加国へのリスクを挙げた」

     

    アジア太平洋共同体なるものは、一帯一路に代わるものだ。10年前の中国経済への期待感と現在では大きく変化している。「ゼロコロナ」で3年間も閉じ籠もっていると思ったら、突然の「ウイズコロナ」で大混乱に陥っている。中国への評価は、大きく落ちているのだ。中国は、この事実を知るべきであろう。

     

    (3)「バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、モルディブなどのインド太平洋諸国は、こうした懸念から一帯一路プロジェクトを中止、縮小、再交渉している。2022年初頭、スリランカの経済がデフォルトに陥る中、スリランカの指導者たちは中国当局に債務支払いを再編するよう懇願した。インド洋に面したハンバントタ港は、中国の資金で建設された一帯一路プロジェクトで、スリランカが融資の支払いに窮したため、中国の国有企業の管理下に置かれた、問題のあるケースを指摘するアナリストもいる」

     

    バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、モルディブなどは、中国へ厳しい評価だ。フィリピンは、はっきりと「脱中国」を旗印に掲げている。日本、豪州、韓国も敬遠する筈だ。参加する国は、「親中国」国に限られるであろう。

     

    (4)「中国政府は一帯一路へ「Belt and Road Initiative(BRI)」と新たな名前を付けたが、この計画がトロイの木馬であるという懸念を払拭することはできなかった。開発援助の申し出は、中国の政治的・軍事的影響力を拡大するための伝達手段に過ぎず、ハンバントタ港などは地元当局の監視なしに中国海軍の艦艇がアクセスできる可能性があるという」

     

    中国は、一帯一路が悪評のために「BRI」と呼称を変えたが本質に変わりない。一度、ミソを付けた一帯一路が浮上できる機会はない。

     

    (5)「アジア太平洋共同体の構築というビジョンを、少なくともガバナンスレベルで実現することが当面不可能である理由はいくつかある」と、(前記の)チャン氏は「ザ・ディプロマット」に書いている。 同氏は、「第一に、中国の近隣諸国の多くは、米国が主導する自由と民主主義の世界秩序を受け入れている。 権威主義的な政権を持つ中国の台頭は、これらの国々にとって安全保障上の挑戦と受け止められている」と述べている」

     

    一帯一路構想は、中国の経済力に期待して盛り上がったが、現在の中国には最早そのような力はない。それは、経常収支の黒字幅の縮小が証明している。「世界の工場」も黄昏れてきたのである。米中対立の深刻化が、アジア太平洋共同体なるものの実現を阻むであろう。

     

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