巨人軍の王貞治選手は、「1本足打法」でホームラン756本の世界記録を残している。現在も、この記録は破られず燦然として輝く。韓国経済は、半導体の「1本足打法」で支えられているが、世界経済の落込みで大きな影響が出ている。
韓国は、世界経済の逆境に弱い経済構造である。輸出依存度が36.14%(2021年)と高い結果だ。輸出が減ればガクンと腰折れする構造ゆえに、来年のGDP成長率が1%台と見積もられている理由である。
『中央日報』(12月27日付)は、「半導体と金利に足を引っ張られた韓国証券市場、外国人投資家4兆ウォン売り越しと題する記事を掲載した。
外国人投資家の「セルコリア」は進行形だ。今年だけで有価証券市場で4兆ウォンを超える株式を売り払った。半導体に偏っている上に金利引き上げと為替相場などに弱い構造、グローバルスタンダードに逆行する各種政策と規制が、外国人投資家が韓国市場を冷遇する要素に選ばれる。
(1)「12月26日の韓国取引所によると、外国人投資家は12月に入りこの日までで1兆3221億ウォンを売り越した。年間で見れば外国人投資家は4兆1823億ウォン相当を売り越した。外国人投資家は新型コロナウイルスが本格化した2020年に22兆1808億ウォン、韓国総合株価指数(KOSPI)が過去最高を記録した昨年25兆9984億ウォンを売り越したのに続き今年も売り攻勢を続けた」
韓国株が売られている。外国人投資家は、今年に入って4兆1823億ウォン相当(約4200億円)を売り越した計算だ。2020年には、22兆1808億ウォン(約2兆3000億円)も売り越しているので、来年が売越しのピークとなろう。
(2)「『セルコリア』は『セル半導体』の同義語だ。KOSPIで占める割合はサムスン電子の18.9%とSKハイニックスの3.1%で20%を超える。半導体銘柄を売買する外国人投資家の動きに市場は泣いて笑った。外国人投資家は9月まで10兆2111億ウォン相当のサムスン電子株を売った。だが10月には1兆5059億ウォン相当、11月には7393億ウォン相当を再び買った。この期間にKOSPIは14.71%上昇した。だが今月に入り再びサムスン電子が4076億ウォン売られ、KOSPIもやはり6.28%下落した。今年1年間に外国人投資家がサムスン電子を売り越した金額は8兆3737兆ウォンに達する」
「セルコリア」は、「セル半導体」でもある。韓国輸出の支柱は、半導体である。半導体市況が悪化すれば、韓国輸出が落込む構造になっている。半導体輸出比率は、約20%と首位を占める。それだけに、市況急落の影響が輸出額全体に大きな影響を及ぼす。
(3)「韓国の証券市場が金利引き上げ、為替相場、景気低迷など対外変数に弱いことも外国人投資家の立場では投資をためらわせる要因だ。金利引き上げ期には韓国など新興国に対する投資心理が悪化する状況で、IT関連ハイテク株など成長株を中心に将来の実績に対する疑問が大きくなり大幅な調整を受ける。未来アセットメディアコンテンツ本部長のソ・サンヨン氏は「韓国の証券市場は、ネイバーやカカオなどのIT業種と二次電池などのハイテク株が多いため外国人投資家の立場では金利引き上げ期に魅力が落ちる」と分析した」
韓国の政策金利は、すでに3.25%にもなっている。昨年7月には、0.5%だったからこの間の引上げがいかに急激であったかを物語っている。韓国企業の業績が悪化して当然であろう。消費者物価指数が5%台に高止まりする結果だ。来年、米国がさらに利上げに走れば、米韓金利差拡大を阻止すべく、追随利上げが予定されている。
『中央日報』(12月27日付)は、「サムスン電子にSKハイニックスまで 韓国企業「業績寒波」に震える」と題する記事を掲載した。
(4)「サムスン電子に寒波が押し寄せている。10~12月期の業績に「冷たい風」が吹くと予想され大々的なコスト削減に入った。全社的に「海外出張50%縮小」の指示が下されたためだ。法人カードでのゴルフ費用決済を控えるよう命じたほか、オフィスの暖房温度をこれまでより1度低くするなど大々的に乾いたタオルを絞っている」
サムスンが、「海外出張50%縮小」やオフィス暖房を1度下げるなどの経費削減を始めた。
(5)「SKハイニックスは役員に割り当てられた予算を50%、チーム長は30%削減した。社内イントラネットには自己啓発費用と車両支援費など福利厚生費と活動費、業務推進費などを減らすという公示が上げられた。LGエレクトロニクスは最高財務責任者(CFO)主導でウォールーム(戦時状況室)の稼動を本格化した。社内の各種非効率を除去し費用を節減するのが目標だ。
SKハイニックスは、役員予算を50%、チーム長は30%削減するという。
(6)「韓国の大企業がこのようにベルトをきつく締めるのは、今後不況の谷間がさらに深まると予想するためだ。金融情報会社のFnガイドが26日に明らかにしたところによると、サムスン電子の10~12月期の営業利益コンセンサスは7兆3968億ウォンで前年同期と比較して半分近い46.6%の減少となった。一部では6兆ウォン台と予想したりもするが、これは新型コロナウイルス流行初年度である2020年4-6月期以降初めてだ。10-12月期の予想売り上げは74兆324億ウォンで前年同期比3.31%減少した。
サムスンの10~12月期は、営業利益が前年同期比46.6%の減益見通しだ。売上は、同3.31%減に止まる。営業利益が半分近い減益になるのは、損益分岐点が高くなっている結果である。これを避けるためには、固定費の切り詰めが必須課題になるほど厳しくなっている。今後、減益幅の拡大は不可避だ。