勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

    テイカカズラ
       

    アップルの高級機種iPhoneは、若者世代で圧倒的な支持を受けている。サムスンのお膝元ソウルの大学生も、多くがアップルに乗り換えているという。iPhoneは、使い勝手が良くiPhone同士の画像送信機能「AirDrop(エアドロップ)」などが決め手になったとユーザーは話す。この画像には、ソニーの半導体が使われているのだ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「iPhoneがZ世代に浸透、高級スマホの王座盤石に」と題する記事を掲載した。 

    世界のスマートフォン市場でアップルの「iPhone(アイフォーン)」が首位の座を不動のものにしつつある。若者の間にじわり浸透しており、圧倒的なシェアを誇る米国内の市場動向が世界にも広がってきた。

     

    (1)「アップルは、欧州からアジアまで、高級スマホ市場でシェアを伸ばしている。また調査によると、10代~20代前半の「Z世代」の間でiPhoneは生活に欠かせない「マストアイテム」との認識が浸透していることも分かった。他メーカーのスマホから乗り換えた消費者はiPhoneのデザインやカメラ、iPhone同士の画像送信機能「AirDrop(エアドロップ)」などが決め手になったと話している」 

    若者の代表であるZ世代は、iPhone同士の画像送信機能が決め手という。前述の通り、ソニーの半導体が主役である。ソニーは現在、熊本で新工場を建設中だ。昨秋、アップルのCEOがわざわざ訪日して、この新工場建設工場を視察するほど力を入れている。さらなる、新製品を出す予定なのだろう。

     

    (2)「こうした流れは、アップル最大のライバル、韓国サムスン電子にとっては脅威であり、世界スマホ市場全体でサムスンが握る首位の座を脅かしかねない。サムスンの「裏庭」である韓国では、グーグルのモバイル端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したサムスン製スマホが大きな影響力を持っている。だが、アップルが初の直営店を出店した2018年以降は、iPhoneの存在感がじわり高まってきた。アップルは現在、韓国に直営店を4店舗展開しており、モバイル決済サービス「アップルペイ」も近く同国で開始する予定だ」 

    アップルは、サムスンの牙城ソウルで若者をターゲットに販売戦略を展開し成果を上げている。直営店を4店舗展開中だ。

     

    (3)「調査会社ギャラップコリアが行った2022年時点の調査では、韓国の18~29歳の層でiPhone利用者は全体の約52%と、2年前の44%からシェアが拡大した。対照的に、この年齢層におけるサムスンのシェアは同期間に45%から44%に下がった。これよりも年齢が高い層では、すべてサムスンがトップだった。ソウルの大学生、チャン・キョンリムさん(22)は友人のほぼ全員がiPhoneを使っていると話す。サムスン製スマホも見た目が洗練されてきており、最新の旗艦スマホもカラーが豊富で好きだが、アップルのデザイン性や写真の品質の高さはかねて高く評価されていたと言う」 

    韓国の18~29歳の層では、iPhone利用者が全体の約52%である。2年前の44%からついに過半になった。サムスンは45%から44%へと微減。

     

    (4)「若者の心をつかんでいることで、アップルは高級スマホの王座の地位を固めることになりそうだ。800ドル(約11万円)以上のスマホの世界出荷台数で、アップルの市場シェアは昨年、2018年の65%から76%に拡大する一方、サムスンは27%から17%に低下した。テック市場専門の調査会社カナリスが分析した。アップル躍進の大きな原動力となったのが中国だ。背景には、アップルのもう一つの競合相手である華為技術(ファーウェイ)が、米国の制裁措置により大きな打撃を受けたことがある」 

    若者のアップル・フアンを増やしているので、高級機種(800ドル以上)へと誘導できる基盤が整った。高級機種シェアでは昨年、世界でアップルが76%へ上昇、サムスンが17%へ後退している。アップル躍進の原動力は、中国でファーウェイが米制裁により撤退したシェアを、アップルがそのまま獲得した結果だ。これは、採算面で大きく寄与する。

     

    (5)「サムスンは2012年以降、スマホ市場全体では世界トップの座を維持している。ただ、ここでもアップルは差を縮めつつある。カナリスによると、サムスンの市場シェアは過去5年に約21%でほぼ一定しているのに対し、アップルは18年の15%から22年には19%までシェアを広げた」 

    サムスンは2012年以降、スマホ市場全体で世界トップの座にある。だが、21%で頭打ちである一方、アップルは19%にまで急迫している。アップルの逆転が視野に入ってきた。 

    (6)「メーカーにとって高級スマホ市場は極めて重要だ。利益が最も大きいことに加え、技術面での優位性や市場のリーダーとしての存在感を存分にアピールできるためだ。カウンターポイント・リサーチのディレクターでソウルに拠点を置くトム・カン氏はこう指摘する。さらに、高級スマホは市場全体が急激に落ち込む中でも底堅さをみせている。昨年のスマホ全体の世界出荷台数は12%減となる中でも、800ドルを超える高級スマホに限っては1%増と、プラスを維持した(カナリス調べ)」 

    アップルが、高級機種でサムスンをリードしたことは、アップルが名実共に「世界一」というイメージを打ち立てることになった。これは、ブランド価値を一段と引上げユーザー訴求力を高める。アプルは完全に優位に立った。その裏方が、ソニーであることを忘れてはいけない。

     

     

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    中国は、昨年下半期(7~12月)の対内直接投資が73%減という厳しい落込みになった。これは、資本流入減と同時に技術革新を停滞させるので、中国経済にはマイナス要因である。昨年下半期は、ゼロコロナ真っ盛りという混乱期であったので、対内直接投資が減るのは当然としても、73%減とは驚くほかない。

    『日本経済新聞 電子版』(2月27日付)は、「外資の中国投資18年ぶり低迷、22年下期 最大の73%減」と題する記事を掲載した。

    外資の中国投資が低迷している。2022年下半期(7〜12月)の対中直接投資は18年ぶりの低水準だった。米中対立の激化や改革後退の懸念が投資リスクを高め、急速な少子高齢化で国内の消費市場も成長が鈍る恐れがある。資本流入の停滞が続くようなら技術革新が鈍り、将来の経済成長に影を落とす。

    (1)「中国国家外貨管理局がまとめた国際収支統計によると、外国企業が中国で工場建設などに投じた対内直接投資は22年7〜12月に425億ドル(約5兆8000億円)にとどまった。20年7〜12月から22年1〜6月までは平均で1600億ドルを超えていた。前年同期からの減少率は73%と、確認できる1999年以降で最大を記録した。中国企業による対外直接投資は同21%増の842億ドルだった。海外に向かう資金が国内に入ってくる資金を417億ドル上回り、5年半ぶりに流出超過となった」

    昨年下半期の対内直接投資は、劇的な減少になった。ゼロコロナを巡るあの大混乱を見れば、外資企業も投資に二の足を踏んで当然だろう。一度、傷ついた信用はなかなか回復しないものだ。外資は、必ず安全策を取る。習政権の本質を見せつけられた思いであろう。

    (2)「米調査会社ロジウム・グループによる欧州企業の過去10年の対中直接投資の分析では、近年新たに中国に進出する企業はほとんど無かった。投資を継続する自動車大手なども技術流出を防ぐため、部品調達先を中国以外に広げる「社内デカップリング(分断)」を進めている。国際収支の統計で対内直接投資のマイナスとなる中国事業の縮小や撤退も目立った。製造業など工業分野では、2022年末時点の外国企業数が前年末を0.5%下回り、3年ぶりに減少した。先端技術をめぐる米中の対立で中国を世界のサプライチェーン(供給網)の中核に据えるリスクが高まった。ソニーグループは22年末までに、日米欧で販売する大半のカメラの生産を中国からタイの工場に移した」

    下線部は、外資が中国に技術盗用されないように「自衛手段」を取っている。部品調達先を「脱中国」に変えている。中国は、ここまで信用を失っているのだ。ソニーは、輸出製品をタイ工場へ移して、地政学リスクを回避する。

    (3)「中国政府は23年にゼロコロナ政策を撤廃し経済の正常化を急ぐ。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に向けて新たな景気対策への期待も膨らむ。商務省によると1月に実際にお金が動いた直接投資は前年同月比20%の増加に転じた。それでも対中投資が戻ってくるかは不透明だ。経済コストを度外視した防疫措置を取った習近平(シー・ジンピン)指導部に対する外国企業の不信感は拭えない。米大手企業が加盟する米中ビジネス協議会が22年6月に実施した調査では、会員企業の44%が「新型コロナの政策が修正されても、中国市場への自信を取り戻すのに数年かかる」と答えた」

    習氏が、突然の政策変更を行なうリスクは極めて大きい。事前の予測ができないからだ。事業では、予測できないリスクを最も嫌うもの。習氏への権力集中は、これに比例してリスクを高めるのだ。

    (4)「中国に代わって外資の受け皿になっているのが東南アジアの新興国だ。22年のタイへの外国企業の直接投資の新規申請は前年比36%増の4339億バーツ(約1兆7000億円)だった。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は11月に電気自動車(EV)の完成車工場を着工した。米穀物大手カーギルが、バイオプラスチック工場を計画するなど環境関連の投資も目立つ」

    中国リスクが高まれば高まるほど、ASEAN(東南アジア諸国連合)にはプラスだ。「脱中国」企業が、ASEANへ移転するからである。

    (5)「ベトナムは22年の外国企業による直接投資(認可件数ベース、出資除く)が15%増えた。韓国サムスン電子は2億2000万ドルを投じて首都ハノイに研究員ら約2200人が常駐する研究開発センターを開設した。スマートフォンの主力工場を構えるグローバル戦略拠点としてベトナム事業を強化する」

    サムスンが、ベトナムで研究開発センターを開設する。スマホ主力工場も運営しており、中国に代わる生産基地にしている。サムスンは、いずれ中国の半導体工場も米国の規制によって撤退を迫られるであろう。研究開発センター開設は、その布石と見られる。

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    韓国の20~30代の対日意識は、好感度が否定の2.4倍になっていることが、最近の世論調査で分かった。折からの、日本旅行解禁も手伝って日本への好感度が上がっている。文政権時代では、こうした世論調査自体がタブー視されたであろう。

     

    韓国左派は、今なお「反日路線」に立っている。日米韓三ヶ国の軍事演習に対して、自衛隊が韓国を占領する前兆と妄想を振りまいている。韓国青年層は、こういう妄言とは一線を引いており、日韓関係に冷静な見方をしているのだ。

     

    『中央日報』(2月27日付)は、「韓国若者世代の日本に対する好感度、否定よりも圧倒的に高く」と題する記事を掲載した。

     

    韓国20~30代若者の日本に対する肯定的認識が否定的よりも圧倒的に高いことがアンケート調査結果を通じて明らかになった。

     

    (1)「韓国の全国経済人連合会(全経連)は2月16~21日、青年626人(20代331人・30代295人)を対象に実施した韓日関係関連オンライン認識調査の結果を27日、発表した。日本に対する印象について尋ねる項目で、全体回答者の42.3%が肯定的、17.4%が否定的だと回答した。肯定的な印象が否定に比べて2.4倍高く、普通と答えたのは40.3%だった。回答者の半分以上である51.3%が日本訪問の経験があり、このうち96.4%が観光・旅行が目的と回答した」

     

    肯定的 42.3%

    否定的 17.4%

    普 通 40.3%

    この比率を見ると、日本に対して「肯定的+普通」が82.6%にもなっている。「否定的」は17.4%だ。「反日」は、圧倒的に少数になっている。青年層は、冷静に日本を見ているのであろう。

     

    (2)「71.0%は、韓日関係改善が必要だと診断した。韓日関係改善が必要な理由としては「両国協力を通した相互の経済的利益拡大」(45.4%)、「相互協力を通した中国の台頭牽制(けんせい)」(18.2%)、「北核対応など北東アジア安全保障協力の強化」(13.3%)などが挙げられた。関係改善のために優先的に考慮するべき価値については、過去(45.6%)よりも未来(54.4%)だと考える青年が多かった。48.9%は未来を追求する一方で歴史問題は長期的な観点から解決していくべきだと意見を出した」

     

    日韓関係重視の理由は、次の通りだ。

    日韓の経済的利益拡大     45.4%
    中国の台頭牽制        18.2%

    北朝鮮などアジア安保協力強化 13.3%

     

    これを見ると、左派の立場を超えている。第1に、経済利益の拡大を強調していることだ。左派にはない視点である。韓国の潜在的経済危機を認識している証拠であろう。中朝への警戒は、計31.5%になっている。左派には見られない危機感を示している。


    (3)「強制徴用問題の解決案として最近議論されている第三者代位弁済(両国民間および企業が自発的に出す寄付金で被害者に賠償する案)については、52.4%が韓日関係に肯定的な影響を及ぼすだろうと評価した」

     

    徴用工賠償問題は、韓国政府が推進している「第三者代位弁済」を半数以上が賛成している。これは、日韓関係改善のために優先的に考慮するべきとして、「未来」(54.4%)がトップに上がっていることで裏づけられる。文政権は、「過去志向」であった。青年層は、「未来志向」になっている。ユン政権が、来年の総選挙で青年層の支持を得られることは確実であろう。

     

    韓国青年層が、日本を冷静に見ている裏には、日本旅行で現実の日本を知っていることが影響している。韓国の若者は、海外旅行した10人中7人が日本旅行を経験済みという。「百聞は一見にしかず」であろう。

     

    『聯合ニュース』(7月27日付)は、「不買運動の勢いどこへ、訪日韓国人が急増『政治と文化は別』認識定着」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府が新型コロナウイルスの感染拡大以降、約2年7カ月ぶりに水際対策を緩和した昨年10月には、約12万3000人の韓国人が日本を訪れた。その後も11月に31万5000人、12月に45万6000人と着実に増加し、先月は56万5000人を上回って訪日外国人客の37.7%を占めた

     

    (4)「格安航空会社(LCC)のティーウェイ航空によると、2月最後の週末である25日から3月1日までの5日間は、韓日路線の航空券の平均予約率が93%を記録した。ジンエアー、チェジュ航空も同期間の平均予約率は90%以上で、夏休みシーズンに迫る勢いだ。旅行大手、ハナツアーの関係者は「最近売れたパッケージツアーと航空券の3分の1が日本行きの旅行商品だ」として、三・一節(朝鮮独立運動記念日)の前後も同様の水準だと説明した」

     

    日本旅行が、大人気である。パッケージツアーと航空券の3分の1が、日本行きの旅行商品である。反日不買運動が、始まった2019年7月以来コロナ禍も重なって、日本旅行は抑えられてきた。その反動が出ているのであろう。

     

    (5)「ソウル郊外の京畿道・華城に住む20代の会社員は、3月5日まで4泊5日で東京を訪れる予定だが、航空券とホテルを予約してから出発日が三・一節だということに気付いたという。この会社員は「そのようなこと(韓日問題)のせいで日本に行かない人がいるだろうか」としながら、「周りでも近ごろ海外旅行をした10人中7人は日本に行った」と話した」

     

    「三・一節」は、反日運動の原点である。それにも関わらず、若者は日本旅行を楽しむ時代になったのだ。未来志向になっている証拠である。

    次の記事もご参考に

    2023-02-27

    メルマガ441号 「混迷する韓国」救うのは誰か、早くて20年後 MZ世代に期待する

     


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    中国が、ロシアへ接近する姿勢を強めている。このことから、世界的に台湾有事へのリスクを警戒する姿勢が高まった。中国は、これを打ち消すべくウクライナを巡る和平案を発表するなど、ハト派ぶりを演じている。

     

    先の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアのウクライナ侵略を巡る意見対立から共同声明の採択が見送られた。議長国のインドが代わりに発表した議長総括では、反対した国がロシアと中国だったことを名指しする異例の措置を取ったほどだ。こうして、中国の地政学リスクは、いやが上にも高まる事態になっている。

     

    『ロイター』(2月27日付)は、「海外勢が懸念する中国の地政学リスク、中長期資金に変化」と題する記事を掲載した。

     

    多くの大手資産運用会社が中国資産を敬遠し、「ポスト・コロナ」の株高で得られる収益をあえて見逃しつつある。目先のリターンの妙味よりも、地政学的な懸念が大きいからだ。

     

    (1)「香港株の指標となるハンセン指数は1月末までの3カ月間で50%上昇したものの、外国人の資金流入は鈍化。ブローカーの分析結果に基づくと、こうした株高の大部分は、手早く稼ごうとするヘッジファンドの仕掛けが原動力とみられる。もっと長い目で考える投資家にとっては、米中の競合関係が強まる中で、ウクライナにおける戦争や中国が習近平国家主席の権力基盤のさらなる強化を進めているという要素が、中国投資を考え直す誘因となっている」

     

    中国のゼロコロナ打ち切り直後は、中国株へ熱狂的な買いが入った。だが、中長期資金は慎重姿勢である。中国に地政学リスクがつきまとっているからだ。

     

    (2)「何人かの投資家は、台湾海峡で米中が軍事衝突する危険が高まっていると警告する。別の投資家は、ウクライナの戦争で外交関係や貿易面での結びつきが強固となり、中国と西側は互いにますます反対の立場に位置するようになったと説明する。これら全ての材料が、中国に資金を振り向ける上で新たなリスクをもたらしている格好だ。富裕層や財団などの資産95億ドルを運用するベル・エアー・インベストメント・アドバイザーズのパートナー、ケビン・フィリップ氏は、「米国投資家としては、敵対陣営の政府が経済を発展させるのを後押ししているのではないか、と考える必要がある。そのような懸念を持つかもしれないわれわれの投資家にとっては、中国以外に数多くの機会が存在する」と語った」

     

    米国の投資家は、中国への投資が「敵対国への投資」という位置づけになる危険性を指摘している。目先の値上り利益に惑わされないという意味である。

     

    (3)「月次データを見ると、中国株ファンドへの資金流入額は昨年12月に154億ドルと8カ月ぶりの高水準を記録したが、今年1月には43億ドルまで縮小した。1月は640億元だった株式相互接続制度経由の外国人による中国本土株の買い越し額も、2月は約200億元(約30億ドル)にとどまっている。ゴールドマン・サックスのアナリストチームは、米国と中東における投資家との会合を踏まえたノートで「長期資金の運用担当者は、中国に新規資金を投じるのを幾分ためらっている」と記し、その理由として米中の地政学的環境の不確実性を挙げた」

     

    長期資金は、中国へ新規資金として投じることに慎重になっている。米中対立が、激化するというニュースはあっても、米中接近というニュースがないことも投資環境を悪化させている。

     

    (4)「中国本土株の代表的指標となる上海総合指数は昨年10月終盤から今年1月終盤までに15%上がっており、投資していれば得られるリターンは大きい。それにもかかわらず投資家が消極的になっている事実が、より根深い問題を提起している。アビバ・インベスターズのシンガポール駐在ポートフォリオマネジャー、ウィル・マルコム氏は、これは中国資産の構造的な評価が下がる流れの一環なのではないか、との不安が一部から聞こえてきていると指摘した

     

    下線部は、誰かが中国株を売り抜ける機会をねらって、一時的に買い煽って売り場を作っているという意味だろう。投機家が、よく使う手である。

     

    (5)「政府系ファンドや年金基金、財団などの資産運用を手掛けるマン・ニューメリックも、一部の機関投資家が良好な投資環境にあっても中国への資産配分を見直していると明かした。グレッグ・ボンド最高経営責任者(CEO)は「顧客の間で新興国市場を考える際に、中国を含めた地域と中国以外に分ける見方が出てきている」と述べた」

     

    政府系ファンドや年金基金、財団などの資産運用は、堅実投資を基本とするので、中国への資産配分を見直しているという。これは、中国市場に致命的な損害を与えるであろう。

     

    (6)「中国の経済データが消費と需要が力強く回復していることを示し始めれば、急速な資金流入が起きてもおかしくない。ただ、足元までの海外の大手投資家の態度を見る限り、資金フローに根本的な変化が生まれるには、市場心理自体が大きく改善する必要があるとみられている」

     

    中国の電子商取引大手、アリババに期待した投資家は、現実の厳しさに引き戻されている。アリババ株は、この1カ月間で30%も下落したのだ。中国の経済正常化を巡る過剰な期待は、早くも冷めつつある証明だ。中国経済にエンジンが掛かるのは、そう簡単でないのだ。これから、不動産バブル崩壊という大きな代償を払わされるのである。

     

    ムシトリナデシコ
       

    韓国は長い間、米中「二股外交」に慣れてきた結果、最近の米国からの厳しい要求に戸惑っている。米国で、韓国企業が半導体とEV(電気自動車)充電器生産で補助金を受けるには、それに伴う条件があるのだ。韓国は、これまで無条件で補助金を受けられると見てきただけに、対応に苦慮している。韓国は、米国へ甘えていたことで目を覚まされたと言えそうだ。

     

    米国は、国内で半導体投資する企業に対し国籍を問わず補助金を支給する。その場合、中国で一定規格以上の半導体生産を禁じる内容だ。補助金支給は、一般論としては政策目的遂行で行なうものだ。「無条件給付」を期待する方が、世間知らずという非難を浴びるであろう。

     

    米政府高官は、こうした背景から次のように発言した。中国内に生産施設を持つ韓国半導体企業は今後、「半導体装備の中国輸入が難しくなるかもしれない」とした。この発言は、米国への投資計画を明らかにしたサムスン電子とSKハイニックスの補助金申請手続きが始まる2月28日(現地時間)を控えて出た点で、注目を集めている。韓国企業に米国への投資を促すと同時に、中国での生産に制限を置く可能性を示唆するもので、圧力をかけている格好だ。

     

    韓国にとっては、半導体輸出の40%が中国向けである。それだけに将来、中国でより微細な半導体生産ができなくなれば、最終手段としては工場閉鎖という最悪事態が待ち受けている。これは、中国からの撤退を意味するだけに痛手になる。

     

    一方で、米国におけるEV充電器生産の補助金でも、部品の55%以上は「米国製」という条件が付いた。韓国企業は、対応に大童である。

     

    『東亞日報』(2月25日付)は、「米国でEV充電器のIRA、『使用部品の55%以上は米国製に』」と題する記事を掲載した。

     

    米国の自国優先主義を意味する「アメリカファースト」の戦略が、韓国産業界をますます強く締め付けている。韓国半導体企業の中国内での生産を制限できるという米政府関係者の一言に、半導体業界は不確実性がさらに大きくなっている。バッテリー業界では、インフレ削減法(IRA)の細部ガイドラインの発表を1ヶ月後に控え、「充電器のIRA」まで登場した。企業の間では、「米国が韓国の主力成長産業である半導体とバッテリーを両手に握って揺さぶっている」という話が出ている。

     

    (1)「26日、連業界によると、バイデン政権が2月15日(現地時間)に発表した「バイ・アメリカ」法案の細部規定により、韓国国内企業は大きな混乱に陥っている。政府が約10兆ウォンを投入して、全米に電気自動車(EV)の充電スタンド50万台を建設することにした同法案は、2021年に可決された。ところが細部規定で充電器の補助金を受けるためには、米国産鉄鋼を使い、米国で最終的に組み立てなければならないという但し書きを付けた。特に来年7月からは、部品の55%以上を米国で製造しなければならない。事実上、充電器のIRAということになる」

     

    米国が、充電器生産に補助金をつけるのは、米国鉄鋼業への支援と新たな雇用を増やす目的である。米国民の税金を使う補助金だけに、当然つけられる条件だ。そうでなければ、米国民の反発を受けることになろう。韓国は、こういう意味で外交に疎い。外国企業が、無条件で補助金を受けられるという「甘え」に浸っていたのだろう。そういう「棚ぼた」ビジネスは存在しない。もはや、「自由貿易」時代は終わったと言うべきだろう。

    (2)「米国への輸出を狙っていた国内メーカー各社は、突然、現地工場の設立を悩まなければならない状況となっている。米国での現地生産の準備をしていた企業も、米国産資材の確保に赤信号が灯っている。充電器メーカーのA社の関係者は、「米国産資材は質が落ちる場合が多いだけでなく、今になって急いで供給先を確保するためには、現地のメーカーより相対的に高い価格で契約するほかはない」と話した」

    この問題は、在米韓国大使館の情報収集能力の低さを示している。韓国大使館員は常時、米国務省へ顔を出していないという。必要な時しか現れないのだ。その点、日本大使館員は用事があろうとなかろうと、米国務省へ出向いている。そのたびに、「メイアイ・ヘルプユー」(用事はありますか)と言うのだという。こういう密接な接触から、米国の動きを知ることができはずだ。今回は、韓国大使館の情報収集能力の問題を示している。

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