勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    韓国の国防白書は、これまで日本に関する記述で二転三転してきた。日韓が、和やかな時期はソフトになり、険悪化するとトゲトゲしい表現に格下げして鬱憤を晴らしてきた。今年の国防白書では、日本を「近い隣国」と正常化している。文政権時代は、冷たい扱いであった。

     

    『朝鮮日報』(2月16日付)は、「韓国国防白書、日本を『近い隣国』に格上げ 関係改善の意思反映」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の国防部は16日に公表した2022年版の国防白書で、「韓日両国は価値を共有しており、日本は共同利益に合致する未来協力関係を構築していかなければならない近い隣国」と明記し、日本との協力強化や関係改善の意思を反映させた。前回20年版では「同伴者(パートナー)」から「隣国」に格下げしていたが、今回は「近い隣国」と格上げした」

     

    (1)「韓国の国防白書で日本に関する記述はその時々の韓日関係を反映し、変わってきた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に公表した06年版では、「普遍的な価値を共有する主要な隣国」と記述。李明博(イ・ミョンバク)政権の08年版と10年版、12年版、朴槿恵(パク・クネ)政権の14年版ではいずれも「自由民主主義と市場経済の基本価値を共有している」との記述にとどめた。16年版ではそれに加え、「北東アジア地域はもちろん、世界の平和と繁栄のため共に協力していくべき隣国」と表現した」

     

    盧武鉉・李明博・朴槿恵の3政権15年間の日韓関係は、決してスムーズではなかった。それでも、一定の歯止めは掛かっていた。それが、韓国国防白書の「日本への記述」に見て取れる。

     

    (2)「文在寅(ムン・ジェイン)前政権で公表した18年版では、「韓日両国は地理的、文化的に近い隣国で、世界の平和と繁栄のため共に協力すべき同伴者」と記述。20年版では「日本は両国関係だけでなく、北東アジアや世界の平和と繁栄のためにも共に協力すべき隣国」と記述していた。18年版の「同伴者」から20年版で「隣国」に表現を変更したのは、日本の対韓輸出規制強化を踏まえた「格下げ」との見解が多かった」

     

    文政権は、日韓関係を悪化させることで国内支持を固めて、長期左派政権を継続させる計画を立てていた。北朝鮮に対する「敵対国」なる表現も取下げ、「準友好国」扱いによって南北関係を軌道に乗せようとしていた。その一方で、日本を「敵対国」扱いにし、韓国海軍艦艇から海上自衛隊哨戒機へレーダー照射するなど軌道を外れる行為をした。すべて、文政権承認の下である。こういう非常識なことまで行なった韓国が、今回は「友好ムード」である。

     

    (3)「日韓両国が、「価値を共有」するとの表現は6年ぶりに復活した。18年版が出た当時は韓国の大法院(最高裁)が日本企業に徴用被害者への賠償を命じる判決を言い渡し、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる問題などで両国関係が悪化していた。国防交流協力の国別記述の順番でも18年版と20年版では中国を最初に記述し、その次に日本を取り上げたが、22年版では16年版以降で初めて日本を最初に記述した」

     

    韓国次期政権が左派の手に戻れば、日韓関係はどのようになるか不明である。再び、「冷戦」事態に戻るとすれば、韓国は孤立するであろう。

     

    (4)「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に関しても20年版では「協定の終了通知の効力停止状態を維持している」としたが、22年版では「終了通知の効力を停止し、その後、必要な情報交流は正常に行われている」と強調した。また、「韓日の国防当局は情報分野の協力を向上させながら、その他の問題解決と関係改善のための努力を続ける」と付け加えた」

     

    GSOMIAも随分、文政権の反日手段に利用された。最後は、米国からの強い批判を浴びて、争いの手段にすることを断念した経緯がある。韓国国防省まで冷静さを欠いて、「GSOMIAは不要」と発言し、米国から顰蹙(ひんしゅく)を買ったのだ。文政権時代の5年間を振り返ると、私憤をぶちまけた政権であった。


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    儒教社会の中国は、婚外子に対して厳しい制約を設けてきたが、ようやく緩和の方向に動き出した。だが、未婚の母親は既婚の母親と同等に扱われるわけではない。例えば、政府の職に就いたり、国有企業で働いたりしている未婚女性が妊娠しても、正規の立場を得られなかったり、昇進できなかったりするなど、冷遇されているという。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月16日付)は、「人口減の中国、シングルマザー出産障壁も減少」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党は伝統的な家族の価値観と同党が呼ぶものを強調しているが、婚外子の出産について以前と比べて寛容な姿勢を見せるようになった。政府が出産を積極的に奨励し始めてからも、中国の出生数は減り続けている。こうした状況への1つの対応策として、中国各地の関係当局は、未婚の女性が子どもを持つことに対する障害を減らす取り組みを開始している。

     

    (1)「中国では長い間、シングルマザーであることは行政手続きを進める上で悪夢のようだった。未婚の女性が出産できないとする明確な国の規定はない。しかし、結婚証明書がなくても出産前ケアを受けたり、公立病院で出産するために届け出を行ったりするのが可能になったのはつい最近のことだ。シングルマザーが、産休の支援金や新生児向けの社会保障給付金を得るために国の健康保険を利用することは困難なままだ

     

    下線部のように、シングルマザーは産休の支援金などを受ける権利を大幅に制約されている。

     

    (2)「中国で人口が最も多い広東省は、2016年にすでにシングルマザーに対して既婚者と同様の権利を与え、こうした対応を行った中国初の地方政府となった。だが、婚外子の出産をめぐる社会的偏見を変えるために、このような政策の変更が果たせる役割は限られている。北京市といくつかの省も、現在は未婚女性が産休手当を受け取れるようにしている。それまでは、未婚の妊婦が手当を受け取るためには、まず結婚しなければならないと告げられることが多かった。四川省は今年1月、既婚の母親が受け取っている手当の一部について、対象をシングルマザーに拡大すると発表し、そうした省に加わった」

     

    広東省は、2016年にすでにシングルマザーに対して既婚者と同様の権利を与えた最初の地方政府になった。だが、これがモデルになって他の地方政府へ広がることはなく、現在に来ている。北京市といくつかの省も、現在は未婚女性が産休手当を受け取れるようにしている。それまでは、「ノー」であった。

     

    (3)「データは乏しいものの、婚外子は中国では依然としてまれだ。未婚女性は、国が支援する不妊治療を利用できない。中国の規則はまた、がんなど健康上の理由がない限り、未婚女性が卵子を凍結することを禁じている。研究者によると、こうした状況は日本や韓国など、他の東アジア諸国と似通っているようだ。こうした国々では、未婚の妊婦による出産の割合がわずか2~3%にとどまる」

     

    中国の婚外子は、2~3%程度にとどまっている。シングルマザーの生きづらい社会環境を証明している。

     

    (4)「中国共産党は近年、家族の世話係としての女性の役割の重要性を強調し、家庭内でより伝統的な役割を担うことを女性に促そうと努めている。多くの女性は、こうした共産党のメッセージが、結婚のタイミングをいつにするか、さらには結婚すべきかどうかに関しても、彼女らの考え方に合っていないと指摘する。先週末に発表された出産適齢期の女性に関する2020年の全国レベルの政府調査結果によると、女性の平均初婚年齢は26歳だった。これに対し、1980年代の平均初婚年齢は22歳だった」

     

    下線部は、高齢社会での介護を家庭に任せる意図がにじんいる。日本でも、かつて福田赳夫首相(1976~78年)が、こういう趣旨の発言をしてメディアから総批判受けたことがあった。中国は、1970年代の日本と同じような女性に対する認識である。

     

    (5)「昨年は、飢餓が広がっていた1960年代初頭以降では初めて、中国の人口が減少した。このデータの発表を受けて、出生率を向上させる方策を緊急に探し出さなければならないとの主張が強まった。カリフォルニア大学アーバイン校の社会学教授、ワン・フェン氏は、シングルマザーへの出産手当は、中国で国の利益と女性の利益が偶然一致した分野だったと指摘する。ワン氏は「中国での妊娠・出産以上に深刻な問題は、若い女性が個人の権利の保護と拡大に向けて、枠を押し広げようと努めていることだ」と語った」

     

    下線部が、現代中国女性の権利意識である。中国政府よりもはるかに進んでいるのだ。このギャップが、中国の出生率低下に拍車をかけているにちがいない。

     

    (6)「北京の中国政法大学で教えるチェン・ビ教授は今月、上海のオンラインメディア『澎湃新聞』に掲載された論文の中で、独身女性の出産を容易にする新たな政策は歓迎すべきものだが、これが単に、政府の優先政策の一環として計画されたものだとしたら憂慮すべき点があると指摘した。チェン氏は「国が資源危機にあるときには出産の自由を制限し、人口危機にあるときには出産の自由を与えるなら、これはあからさまな生殖功利主義だ」と述べている」

     

    国家権力が、出産という個人固有の権利にかかわる重大分野へ踏み込んできた。これが、中国の運命に大きく影響することに気づかなかったのであろう。共産主義という権威主義の抱える最大の弱点が今、世界中に開示されているのだ。

     

     

     

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    米国では、出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型の働き方が定着してきた。新型コロナウイルス禍から日常が戻っても、オフィスへの出社率はコロナ禍前の5割弱の水準にとどまるという。ニューヨーク州都市交通局は、6月から乗客が少ない平日に地下鉄の運行本数を減らすほどだ。

     

    ハイブリッド型勤務の定着化は、大都市の昼間人口減少をもたらす。ニューヨーク市のオフィスビルの評価額は、長期的4割減になるとの予測も出ている。NY市の税収減は避けられず、「住む場所や働く場所としての市の魅力にも影響を及ぼす」と見ているほどだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月16日付)は、「NY市、在宅勤務で経済損失が年1兆円超 民間推計」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米ニューヨーク市では、在宅勤務の広がりによる経済損失が、年124億ドル(約1兆6600億円)にのぼることがわかった。同市を含めた米主要都市の直近の出社率は、新型コロナウイルス流行前の5割弱にとどまる。昼間人口の減少により都市の魅力が低下するとの指摘もあり、地方政府は対応を迫られている」

     

    大都市の賑わいは、昼間人口のビジネスパーソンが支えている。その肝心の人達が、50%も出勤せず在宅勤務になった。日本でも、在宅者勤務者に飛行機利用の交通費を支給する例も出て来たから、大都市の経済的な落込みはもはや防ぎようがなくなった。

     

    (2)「米ブルームバーグ通信が、スタンフォード大の研究者らによる調査を基に、在宅勤務による経済損失を推計した。ニューヨーク市では、飲食費などの支出が労働者1人あたり年4661ドル減少すると指摘。西部カリフォルニア州サンフランシスコ市では年3040ドル、中西部イリノイ州シカゴ市は年2387ドルの減少になると予想する。全米のオフィスビルの入退出システムを管理するキャッスル・システムズの推計によると、全米主要10都市の出社率は、8日までの1週間で48.6%だった。ニューヨーク市も48.6%。米国では出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型勤務が定着し、2022年秋から50%を下回る週が大半となっている

     

    出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型勤務が、もはや時代の主流になってきた感じだ。こうなると、企業はだだっ広いオフィスも要らなくなってくる。管理コストが低下するので、社員も企業もウイン・ウインの関係になるのだ。前記のように、飛行機の運賃を払っても在宅勤務のほうがプラスなのだろう。

     

    (3)「昼間人口の減少が都市に与える影響は大きい。コロンビア大ビジネススクールのステイン・ファン・ニューワーバーグ教授は22年11月の論文で、在宅勤務を「新しい破壊的な打撃」と指摘した。長期的にはニューヨーク市のオフィスビルの評価額は4割減になると予測。市の税収減は避けられず「住む場所や働く場所としての市の魅力にも影響を及ぼす」とみている。ニューヨーク市は、経済回復のため企業に従業員の出社を求めていたが、方向転換を迫られている。

     

    ニューヨーク市のオフィスビルの評価額は、長期的には4割減になるという予測も出てきた。NYが、経済的な付加価値が下がる結果だ。このような予測が現実化すれば、大都市と中小都市のバランスが回復するきっかけになろう。住環境の良いところが、地価も上がるという変化だ。

     

    (4)「アダムスNY市長は14日の記者会見で、市職員の欠員が深刻になっているとして在宅勤務の容認を検討していることを明らかにした。人手不足により在宅勤務を求める働き手の声を無視できなくなっている。「厳しい現実を受け入れなければいけない。私たちが知るダウンタウンは戻ってこない」。

     

    NY市では、市職員自身に在宅勤務を希望する声が大きくなってきた。これでは、他の企業では当然に起こる変化だ。

     

    (5)「サンフランシスコ市のブリード市長は9日、在宅勤務の定着を前提に、市の再生に取り組む方針を表明した。市中心部ではニューヨーク市と同様に店舗やオフィスの空きが目立つ。警察予算を増やし治安の回復をめざす。市内の小売りやホテル、文化・芸術業などへの増税を一時的にやめるほか、新たに進出する企業には3年間に限り減税措置を受けられるようにする考えだ」

     

    サンフランシスコ市でも、NY市同様の変化が起こっている。在宅勤務者の増加で、店舗やオフィスの空きが目立つのだ。大都市は、生き延びるために新たな知恵が求められている。

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    EV(電気自動車)は、「半導体の塊」とされている。高級な内燃車は約150個の半導体を搭載する。平均的なEVは、3000個ものチップを搭載するとされる。それだけに、EVはハッカーに狙われやすいのだ。 

    世の中は、EV時代に向かっているが、ハッカー対策はゼロである。自動車業界は増産に夢中で安全対策を忘れている結果だ。ここら辺りで、EVに関わるハッカーについて冷静に考えておくことが必要だろう。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月16日付)は、「EVへのハッカー攻撃 想定される事態は」と題する記事を掲載した。 

    電気自動車(EV)や電動トラックはハッカーの次の遊び場になるのだろうか。サイバーセキュリティー専門家の中には、車が猛スピードで道路脇に突っ込んだり、発火したりするような不穏なシナリオを描き、警鐘を鳴らしている人もいる。

     

    (1)「今後数年間に何百万台ものEVが路上を走るとみられ、膨大なコンピューティング能力と無数のオンライン接続が組み合わさることで、デジタル反逆者に魅力的なチャンスを提供する、とサイバーセキュリティーの専門家は言う。「種々のプレーヤーと種々の技術セットで構成される極めて複雑なエコシステムだ。だからこそハッカーにとっては多くの隠れたドアが存在する」。マッキンゼーのアソシエイトパートナーで、サイバーセキュリティーが専門のベンジャミン・クライン氏はこう指摘する」 

    EVが、「半導体の塊」である以上、ハッカーに狙われる隙が生まれるのは宿命である。 

    (2)「悪夢のような可能性は、ハッカーが何千台あるいは何百万台のEVに悪意あるソフトウエアをばらまくことだ。この攻撃により、EV所有者が手数料を払うまで車は動かなくなる。それは身代金要求ウイルス(ランサムウエア)がコンピューターネットワークを人質にし、ハッカーが金を手にするまでシャットダウンするのと同様だ。さらに悪いことには、EVの充電システムを誤作動させて電池に過負荷をかけたり(発火の可能性も)、加速・ブレーキ装置を乗っ取って事故を起こしたりすることも可能かもしれない」 

    ハッカーによって引き起される事件は、身代金要求や発火事故。さらには、加速・ブレーキ装置を乗っ取るという犯罪である。推理小説に出てくるような場面が、現実化される危険性が生まれるのだ。

     

    (3)「これまでに報告されている事例は、比較的軽微なものにとどまる。だが米エネルギー省傘下のサンディア国立研究所は昨年の報告書の中で、EV業界や充電器業界には「目下、包括的な(中略)サイバーセキュリティーへの取り組みが存在しない」と指摘。サイバー攻撃がEV普及を妨げる恐れがあると警告した。一方、バイデン米政権は昨年10月にEVやEV部品、充電器メーカーとの非公開フォーラムをホワイトハウスで開催。セキュリティー管理を厳格化する必要性を強調した」 

    バイデン米政権は、EVに絡む犯罪について危機感を募らせている。昨年10月、EVやEV部品、充電器メーカーとの非公開フォーラムをホワイトハウスで開催した。 

    (4)「EVに悪意あるソフトウエア(マルウエア)を潜り込ませる方法はいくらでもあり得る。それを実行すれば、さまざまな形で大混乱を引き起こしかねない。特に懸念されるのは、EVメーカーが顧客の車に無線送信する定期的なソフトウエアのアップデートだ。もしこのアップデートにハッカーがマルウエアを仕込んだ場合、何十万台ものEVに被害を与える可能性がある。EVがハッキング攻撃を受けやすいのは、チップや通信回線、絶えず充電器に接続することだけが理由ではないと指摘。この業界が若く、多忙だからだという」 

    EVにマルウエアを潜り込ませる方法の一つは、EVメーカーが顧客の車に無線送信する定期的なソフトウエアのアップデートである。EVメーカーが、最新の注意をすれば防げる事故という。

     

    (5)「専門家は、EV充電の大部分は車の所有者の自宅で行われると想定している。だが、家庭用充電器もセキュリティー上のリスクを伴う場合がある。EVを標準的な家庭用120Vコンセントにつながる充電器ではなく、電池を高速充電できる240Vのレベル2充電器に接続すると、その車両の電池や充電レベルなどのデータが、充電器メーカーや、時には電気事業者との間で送受信される。これがマルウエアの感染経路となる可能性があると専門家は指摘する。さらに言えば、家庭用充電器の多くは所有者のWi-Fiネットワークやスマートフォンアプリ、あるいは携帯電話ネットワークにつながっており、さらなる攻撃ルートを提供する」 

    EVの充電の際に引き起されるリスクもある。EVを標準的な家庭用電源につながる充電器は安全だが、高速充電の場合にリスクが発生する。その車両の電池や充電レベルなどのデータが、充電器メーカーや、時には電気事業者との間で送受信される間にマルウエアが入り込むというのだ。

     

    (6)「充電インフラはセキュリティー対策が比較的乏しく、そのため攻撃を可能にしていると専門家は指摘する。「EV充電ネットワークの一部は非常に不安なものだ。セキュリティーを考慮して設計されていない」と指摘されている。「信頼性と安全を考慮した設計だ」。カナダのコンコルディア大学や米サンディア研究所などの研究者たちは、悪意あるソフトウエアがこれらの端末やそれを動かすネットワークに多様な方法で入り込む可能性があると話す」 

    充電インフラは、危険性が高いという。安全設計がされていないことが理由である。だが、危険性が指摘されている以上、常時点検が欠かせなくなる。

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    一挙に訪れた崩壊への序曲

    人口減が決定的な引き金へ

    孔子の民、信無くば立たず

    大衆が支持する平和統一論

     

    習近平・中国国家主席の3期目が始まったばかりである。過去10年と異なって、習氏が政治判断を誤れば中国という巨大国家の歯車に齟齬を来たすことは確実だ。最大の問題は、過去10年の治政において、中国の社会と経済に乗り越えられない矛楯の種をまき散らしていることである。習氏は、それに気づいていないのだ。

     

    習氏がこれまで指摘してきた「3つの罠」は、中国の運命は大きく傾かせる危険性を孕んでいる。米国との覇権争いを公言したことは、その中でも最も大きな災いの種になってきた。覇権争いは、軍事的勝敗を決することである。21世紀の現在、軍事的暴力によって雌雄を争うとは、国民の存在を無視する最低事態である。習氏は、これを忌避せず米国や民主主義同盟国と軍事的に対峙する構えだ。この副作用が、どれだけ大きいかを計算に入れていないのだ。

    一挙に訪れた崩壊への序曲

    先ず、習氏の上げてきた「3つの罠」について見ておきたい。

    1)トゥキディデスの罠=覇権国と新興国の衝突

    2)タキトゥスの罠=政府への国民信頼の喪失

    3)中所得国の罠=労働生産性停滞による1人当たり名目GDPの伸び率鈍化

     

    習氏は、中国にはこうした根本的な問題が存在することに言及してきた。それが、深い認識となって習氏の政治行動を律していたかと言えば、はなはだ疑問である。つまり、単なるアドバルーンに過ぎなかった。習氏は、これら「3つの罠」をより現実化させる政策を行なってきた。「3つの罠」を回避する行動は、取らなかったのだ。

     

    前記「3つの罠」について、簡単に説明しておきたい。

     

    1)トゥキディデスの罠は、紀元前5世紀のスパルタとアテナイによる構造的な争いからヒントを得た歴史的教訓である。「戦争を不可避なものにした原因は、アテネの台頭と、それが引き起こしたスパルタの恐怖心にあった」とされる。ただ、最近の研究では、新興国アテネが覇権国スパルタへ戦いを挑んだとする逆の解釈が登場。中国が、米国へ宣戦布告するリスクが指摘されている。

     

    2)タキトゥスの罠は、古代ローマ時代の歴史学者・タキトゥスの言葉である。政府に対する信頼が失われている時、真実であるか否かに関わらず、民衆はすべて嘘で悪い事と見なすという戒めである。中国で言えば、孔子の「民信無くば立たず」(たみしんなくばたたず)である。孔子は、政治を行なう上で大切なものとして軍備・食糧・民衆の信頼の三つを挙げ、中でも重要なのが「信頼」であると説いた。ゼロコロナとその後の犠牲者急増の混乱は、国民の信頼に大きな傷をつけたのだ。

     

    3)中所得国の罠は、発展途上国が豊富な労働力を使って一時的に経済発展する。だが、労働力枯渇で経済成長率は停滞する経済停滞論である。中国の生産年齢人口比率は、2011年にピークを打った。その後は、下降状況に追込まれている。労働力不足を補うにはロボットなど機械化が不可欠である。だが、米国から先端半導体の輸入禁止措置を受けている。生産性向上には、おおきな制約を受けることになった。

     

    人口減が決定的な引き金へ

    以上のように「3つの罠」を詳細に見ると、中国はすでにこの罠へ自ら踏込んでいることに気づくであろう。さらに、こうした状況を決定的にしたのが、2022年から「人口減」社会へ突入していることだ。「中国は人口世界一」という中国人の誇りは近く、インドへ移る見込みである。中国の軍事的ライバルのインドが、世界の檜舞台へ登場してきたことは中国にとって「二重の意味で」衝撃であろう。

     

    人口減は、一国経済衰退の「予兆」である。残念ながら日本、韓国、中国はこの状況へと足を踏み入れている。人口減は、日本経済で典型的に現れているが、貯蓄率の激減をもたらす。高齢者は、年金生活者になるので貯蓄を取崩すので、貯蓄率は低下の一途だ。日本の場合、高度経済成長期に企業の海外進出が始まっていたので、今や海外投資(所得収支)で稼いでいる。こうして得た経常黒字で貿易赤字を消せるという恵まれた状況になった。

     

    日中の「所得収支」(2021年:1MF調べ)比較を見ると、卒倒するような結果が出ている。日本は、1871億9700万ドルの黒字で世界ナンバーワンである。中国は、なんと1620億3100万ドルの赤字でワーストワンだ。中国は、一帯一路で発展途上国を「債務漬け」にして担保を取り上げるという国際高利貸し的な振る舞いをしてきた。中国の貸付資金は自己資金でなく、借入金を「又貸し」してきたもの。それが、債権回収の遅延も重なり結果的に、所得収支の大赤字を生んでいる理由である。

     

    こうして、中国国内の貯蓄率低下と所得収支の赤字が重なれば、中国の国際収支に異変が起こる。貿易収支の黒字は、米中デカップリングの進行で次第に減って行くであろう。中国にとっての「人口減」は、日本や韓国よりもはるかに深刻な事態を招くはずだ。貯蓄率の低下によって、恒常的な企業への補助金支給が不可能になるので、貿易黒字が減るのだ。(つづく)

     

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