勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    旧徴用工賠償問題は、日韓で最大の外交争点になっている。解決案として、韓国政府の用意している「第三者弁済」方式は、原告側の一部で受入れる意思のあることが分かった。「訴訟を起して20年にもなる」と振り返り、政府案に賛成を表明している。ただ、市民団体や弁護士グループが反対しており、当事者の意思が実現するか予断を許さない状況だ。

     

    『中央日報』(2月15日付)は、「『この辺りで決着』、韓国徴用被害遺家族 28日に外交部と面談へ」と題する記事を掲載した

     

    韓国強制徴用被害者が今月28日、外交部および日帝強制動員被害者支援財団(理事長シム・ギュソン)側と集団面談を行うことになった。三菱重工業・日本製鉄を相手取り、強制動員被害に対する損害賠償を請求して2018年最終勝訴した原告14人の遺族のほとんどが面談に参加する予定だ。日本被告企業が支払うべき賠償金を第三者である強制動員財団が肩代わりする案について、政府側と被害者遺族が初めて一堂に会して疎通する場が設けられることになった。

    (1)「面談成功のために残された課題は参加対象を巡る外交部と被害者側の立場の違いを調整することだ。外交部は今回の面談の対象を大法院判決で勝訴した被害者15人(原告基準14人)、すなわち賠償を受けられる法的権限を備えた者に限定するべきだとみている。反面、法律代理人団と支援団側は損害賠償請求訴訟が大法院に係留中の強制徴用被害者も面談対象に含めるべきだという立場だ。現在大法院に係留中の強制徴用訴訟は9件で、原告は合計60人余りになるものと推算される」

     

    「応援団」である弁護士や市民団体は、日本の賠償を求める立場だけに、政府案に反対である。だが、原告当事者は、早く解決したいという立場を見せている。

     

    (2)「集団面談の場合、原告側が賠償金の受領についてなど敏感な問題に対して率直な立場を言いにくくなるとの指摘もある。強制徴用問題解決のために最前線で活動した梁錦徳(ヤン・クムドク)さんと市民団体・法律代理人団は、政府解決法を「屈辱外交」と規定して批判の声を高めているためだ。このような雰囲気が集団面談にも続いた場合、一部の遺族が第三者弁済案に賛成する意志や賠償金受領の意志を持っていたとしてもこれを表現することを負担に感じる場合も出てくる」

    弁護団は、徴用工判決が国際法違反であることぐらいは知り抜いているはずだ。それでも、横車を押してきたから、政府案へ一矢報いて「反対論」を打ち上げたいであろう。

     

    (3)「実際、一部の遺族は第三者弁済案を通した賠償金受領に同意しながらも、このような立場を公の席で明らかにすることを躊躇していることが明らかになった。三菱重工業を相手取って訴訟を起こし、2018年最終勝訴した強制徴用被害者の遺族Aさんは、中央日報の電話取材に対して「20年近くやってきた。そろそろどんな形でもよいから政府が決着をつけてほしい。韓日企業の寄付金を活用した賠償であってもお金は受け取る」と話した」

     

    遺族は、複雑な立場だ。弁護団や支援団体の立場も分かるが、堂々巡りでは解決策を得られないからだ。本来ならば、韓国政府が日本の無償3億ドルから徴用工賠償金を支払うべきであった。それをせずに、インフラ投資へ流用した責任は重い。

     

    (4)「続いて、「市民団体と弁護士の方が今までどれほど苦労したのかとてもよく知っているので、そのせいで別のところへ行ってお金を受け取りたい、あるいは政府解決案に賛成するというような話を負担なくするのが難しい」とし、「だが、無条件で政府のやることに反対するからといって答えが出てくるわけではないだけに、これ以上解決を先送りせずに死ぬ前にこの辺りで一段落させたい」と話した」

     

    原告側の一部は、決着を求めている。政府案を受入れる意向である。

     

    (5)「確定判決を受けた別の強制徴用被害者遺族のBさんもやはり、「完ぺきな解決法ではないが政府が一生懸命に努力してきた事実そのものを非難したい考えはない」とし、「家族のうち1人が病院治療を受けていて内部事情が非常に厳しい状態だが、日本戦犯企業のお金でなくても賠償金をもらえるのであればこれを受け取ってそろそろ手を引きたい」と話した」

    下線のように、完璧な解決方法はない。妥協が必要である。弁護団や市民団体は、日本に謝罪と賠償させる従来方式を譲らないのだ。これは、日本の拒否しているところである。

    あじさいのたまご
       

    中国経済は、「コロナ明け」であり、これまでの溜まった消費欲が明け放れるのではないかと期待が強まっている。だが、その規模は小さく国内消費に止まるという見方が強い。コロナ下の超過貯蓄高は、対GDP比で3.5%。米国の10.7%から見ると3分の1規模だ。これを反映してか、映画観客は急増している。

     

    『ウォールス・トリート・ジャーナル』(2月15日付)は、「中国は世界経済を救う?当てにしてはいけない」と題する記事を掲載した。

     

    中国経済が立ち直れば、世界的な経済成長の原動力となり、景気後退(リセッション)を食い止めるのに役立つと、世界中が期待している。だがそれを当てにしてはいけない。

     

    (1)「中国はこれまで政府の景気刺激策と大規模な投資をテコにスランプを脱してきた。2008年の金融危機の後、世界経済をどん底から引き上げたのも両者の組み合わせだった。だが今回、中国は重い債務を抱え、住宅市場は不振にあえぎ、国内で必要なインフラの多くはもう建設されている。結果的に、最新の復活劇のけん引役となるのは消費者過去のだろう。政府のゼロコロナ政策が突然解除されたことで、彼らは約3年間の公衆衛生上の制限措置や移動禁止から解き放たれた。ただ、消費者信頼感は依然として低水準にとどまる。中国の富裕層は財布のひもを緩めているが、他の大勢の人々は消費より貯蓄を選んでいる」

     

    過去の例から、中国経済が動き出せば世界経済に貢献するものと期待している。だが、現在の中国経済にはそのような力はない。下線部のように、過剰負債・住宅バブルの崩壊・インフラ投資の一巡である。

     

    (2)「初期の兆候は、中国の景気回復による最大の効果が国外ではなく国内に表れることをうかがわせる。企業調査や売上高、公共交通機関のデータなどの公式統計から分かるのは、飲食店やバー、旅行といったサービス産業が最も力強く伸びるとみられることだ。それはつまり、中国経済が勢いを増すことは不安定な世界経済にとって(とりわけ米国や欧州の景気減速が見込まれる中では)朗報だが、景気刺激策が主導した過去の拡大局面に比べ、中国以外にその直接的効果が顕著に表れることはないだろうということだ」

     

    中国の「リベンジ消費」は、飲食店やバー、旅行といったサービス産業に向けられる。ささやかな消費で満足を得ようという「健全スタイル」だ。国内に限定される。海外までは、及ばないというのだ。

     

    (3)「コンサルティング会社のオックスフォード・エコノミクスのモデリングによると、世界経済成長に対する押し上げ効果はそれよりも小さい。中国の国内総生産(GDP)が今年5%成長した場合でも、世界の経済成長率は1.5%にとどまり、以前の予想を0.2ポイント上回るだけだ。たとえ中国経済が急回復しても、根底にある問題は変わらない。地方政府は負債を抱え込み、インフラ支出を賄う能力は限られている。コメルツ銀行の中国担当チーフエコノミスト、トミー・ウー氏は、家計は住宅の購入に依然慎重であるため、鉄鉱石などのコモディティー(商品)に対する中国の購買意欲は当面限定的だろうと指摘した

     

    下線部のように、中国の抱える根本的な問題は何も解決されていないのだ。早くも、「老人国経済」の様相を呈している。

     

    (4)「最終的には、中国の世界経済への貢献度は中国の消費の持続性にかかっている。中国の家計は昨年新たに2兆6000億ドル(約343兆円)を貯蓄したが、すぐ消費に回せる分は30%に満たない。残りは長期貯蓄口座にため込まれている。雇用市場は依然として弱く、住宅不況が家計資産をむしばんでいる。米調査会社ロジウム・グループの中国市場調査責任者ローガン・ライト氏によれば、消費回復は「底が浅く、短命に終わる」。4~6月期ごろに成長率が一時的に上昇するが、消費支出の回復はすぐ失速すると同氏は予想している」

     

    雇用は依然として見通せず、住宅不況が住宅値下がりで資産価値が下がっている。こういう状況では、家計の財布の紐は引き締まったままであろう。中国経済が世界経済に寄与するのは、今年の4~6月期がピークで、7~9月期以降は漸減方向と見られている。短期間で収束する模様。


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    中国は、2015年に発表した「中国製造2025」によって、半導体強国を目指してきた。だが、米国から米中対立の余波で先端半導体技術の輸出を止められた結果、半導体強国への計画は大きく狂った。工場建設もストップし、人員採用も凍結という緊急事態を迎えている。「借り物技術」の限界を露呈したのだ。 

    『日本経済新聞』(2月15日付)は、「中国半導体、工場建設遅れ 米制裁で計画に狂い」と題する記事を掲載した。 

    中国半導体大手の新工場建設が遅れている。米国による対中制裁を受け、製造装置の調達や人材の確保に支障が出ているためだ。長江存儲科技(YMTC)や長鑫存儲技術(CXMT)は新規採用の凍結などにも追い込まれた。中国政府が目指す「半導体強国」の一翼を担っていた国策企業の動きが止まれば、半導体の自給率向上はさらに遠のく。

     

    (1)「ハイテク産業が集積する湖北省武漢市の中心部から東に約40キロメートル離れた経済開発区。YMTCの本社工場を訪れると、同社の技術者や製造設備を納入する技術者は口をそろえた。「第2工場の稼働時期はいつになるのか分からない」「電力設備などの設置作業をしているが、半導体製造装置の設置はまだ始まっていない。当初計画で2022年末だった稼働時期は遅れている」。YMTCは中国・清華大学系の半導体大手、紫光集団が国策ファンドの国家集成電路産業投資基金(大基金)などと連携して16年に設立。19年にデータの長期保存に使うNAND型フラッシュメモリーの量産を始めた」 

    YMTCの第2工場の稼働は、今回の米国による技術輸出規制でストップした。YMTCは、紫光集団が国家資金を受入れ始めた国策事業だ。そこへ、米国の「爆弾投下」である。製造の大元になる技術を使えなければ、半導体をつくれるはずがない。

     

    (2)「紫光の経営破綻後は、大基金と地方政府が中心となって経営を継承。米アップルもiPhoneへの採用を検討するほど技術力を高めた。20年には1000億元(約1兆9000億円)規模とされる第2工場の建設に着手し、生産能力を3倍に引き上げる計画だった。ところが、米国の制裁対象となったことで事態が暗転した。米国は22年10月に先端半導体の技術や製造装置の輸出、人材活用を幅広くかつ厳しく制限することを表明。米半導体製造装置メーカーの大半は、中国の半導体大手から支援チームを撤退させた」 

    紫光集団は、習近平氏の母校・精華大学が関係している企業である。技術が未熟で破綻した経緯がある。習氏の「ご威光」によって再建されたものと見られる。長い間、清算を巡る裁判をしていた企業だ。

     

    (3)「工場稼働の遅れを受け、YMTCは人員削減を余儀なくされている。同社に約3年勤める技術者は「我々の部門の人員削減規模は10%で、(23年)1月から始まっている。大学院生などの新規採用も凍結した」と話す。YMTCと並ぶ国策半導体大手で、情報の記憶に使うDRAMを手掛けるCXMTも状況は同じだ。米の規制対象となった先進技術を採用していることで、事業計画に狂いが生じている」 

    YMTCは、すでに人員削減を始めており、約10%が対象になる。無論、新規採用は凍結した。CXMTも状況は同じだ。米国の先進技術に依存しているからだ。 

    (4)「安徽省合肥市にあるCXMT本社。隣接する第2工場はオフィス棟が完成していたものの、生産棟の建設は遅れていた。同社の技術者は「23年に計画していた稼働時期は早くても24~25年になるだろう」と打ち明ける。研究開発施設も工事がほとんど進んでいないようにみえた。この技術者は「大学院生らの新規採用も一時期的に止まっている」と指摘する。部門ごとに人員の削減規模は異なるが、57%の削減を進めているという」 

    CXMTは、生産棟の建設が遅延している。研究開発施設の建設も同様である。人員は5~7%の削減で新規採用はストップだ。

     

    (5)「中国は「中国製造2025」によって、半導体を重点領域に選定した。大基金が旗振り役となり、第1期の投資額は約1400億元に達した。この基金をテコに、YMTC、CXMT、福建省晋華集成電路(JHICC)の国策メモリー半導体3社が主導する形で中国の半導体産業は急成長を遂げた。だが米中対立が先鋭化するなかで、米国側は中国の技術が遅れている半導体分野を標的にした対中輸出規制を強化していった。まず19年に通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を対象とし、半導体受託生産最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)も対象に加えて勢いをそいだ」 

    中国には、もともと半導体技術がなかった。急遽、国家資金で半導体3社を旗振り役に、中国半導体事業の底上げを狙ってきた。その主導的企業のYMTC、CXMTが頓挫している。他は推して知るべしであろう。

     

    (6)「米調査会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズ(IBS)によると、15年に10%だった中国の半導体自給率は21年で24%に上昇。22年6月時点では30年に50%を超えると予想した。米規制の強化を受けてIBSのハンデル・ジョーンズCEOはその後、3割にとどまる可能性を指摘している」 

    中国の半導体自給率向上目標は、大幅に遅れる見通しだ。昨年6月は、30年に5割超とみていたが、現状では3割程度という。この状態で、中国が台湾侵攻を始めると、西側の経済制裁で「第二のロシア」になるリスクを抱えよう。開戦は無理に見えるのだが。

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    韓国は、対中輸出の落込みから韓国経済の進むべき道について方向感覚を失っている。韓国経済に関する構造的な分析をしないで、あちこち探し回っている感じが強い。その一つが、これから取り上げる「アイデア登録」という提案である。これは、典型的なソフト化経済への模索である。

     

    そうではなく、ハード産業(製造業)の見直し強化によって韓国経済の再構築を進めることが必要だ。世界経済は、ソフト産業から再びハード産業へ回帰している。その切り札は、先端半導体の開発競争である。韓国の場合は、これに加えて雇用構造の改革なくして、新産業は生まれないであろう。年功序列・終身雇用では、旧態依然として新しい芽を摘むだけだ。

     

    『中央日報』(2月14日付)は、「『全国民アイデア登録制』でまた成長の奇跡を起こそう」と題するコラムを掲載した。筆者は、キム・セジク ソウル大経済学部教授である。

     

    韓国の経済が生存するために進むべき方向は明確だ。創意的なアイデアが経済成長を率いる新しい資本主義体制を確立することだ。このために人工知能との競争で全く勝算がない模倣型知識暗記教育から換骨奪胎し、創意的アイデアを生み出す能力を高める創造型教育に大改革しなければいけない。また、創意的アイデアの財産権を保障する画期的な制度の確立が求められる。

     

    (1)「アイデア財産権保障のために、筆者は数年前から「全国民アイデア登録制」を提案してきた。この制度はあらゆる種類の新しい創意的なアイデアを非代替性トークン(NFT)などを利用して「全国民アイデア登録制プラットホーム」に電算で登録し、アイデア原作者の名前を付けて名誉とともに10年間の所有権を付与し、経済的インセンティブも提供する制度だ。この制度の核心の一つである経済的報酬のために、政府は登録されたアイデアをR&D予算を利用して一定の金額(例えば1000万ウォン)を支払って購入する。国民は誰でも「全国民アイデア登録制サイト」に入り「独創性」「実現可能性」「有用性」ボタンを押してアイデアの相互主観的評価に参加できるようにし、国民の評価点数に比例して政府は各アイデアに追加のボーナスも支払う」

     

    いくら立派なアイデアが集まっても、それを企業化しなければ果実(成長)は生まれない。韓国の労資関係は、敵対的な関係にある。新規事業を始めて規模拡大の過程になると、年功序列・終身雇用がネックになって、容易に事業化できないという本質的な欠陥を抱えている。これを解決しない限り、いかなるアイデアもアイデアのままに終わるであろう。

     

    (2)「この制度はこのように強力な経済的報酬を与えることで全国民が新しいアイデアの創出に挑戦するよう誘導できる。政府が研究開発(R&D)予算30兆ウォン(約3兆1200億円)の30分の1の1兆ウォンを使って登録されたアイデアを1件あたり1000万ウォンで購入すると仮定してみよう。このインセンティブに反応して国民がみんな参加することになれば、毎年10万件にのぼるアイデアが創出される」

     

    政府が、アイデアを購入する案だが、財政の無駄使いになろう。財政資金を使わず、民間資金によって事業化できて初めて結果が出る。結果が出ないものに資金を出すのは、財源のバラマキになる。良いアイデアも集まるまい。

     

    (3)「特に少数の企業や専門家だけでなく、老若男女多くの国民がアイデア生産に挑戦することで「大数の法則」を作動させることになる。ビットコイン級のアイデアが出てくる確率を10万分の1とすれば、今のように少数が挑戦していればそのようなアイデアはなかなか出てこない。しかし「全国民アイデア登録制」に10万件のアイデアが登録されれば、その中の1つはビットコイン級アイデアが出てくる可能性がある。韓国のGDPの半分である1000兆ウォンの所得を10年にわたり創出するすビットコイン級アイデアが毎年1件ずつ出てくれば、長期成長率が5%ポイントもジャンプする奇跡のようなことが非常に高い確率で起こるかもしれない」

     

    ビットコイン級アイデアを想定している。だが、こういうソフトはすでに時代を終わっている。ソフトからハードへの時代転換が始まっているからだ。


    (4)「経済学を創始したアダム・スミスの「国富論」はピンを作る工場の話で始まる。この話を通じて、ピンを一人が作るのではなく複数の人が工程を分ければ生産性が数百倍も高まる可能性があることを見せた。分業による途方もない生産性上昇効果はアイデアの生産にもそのまま適用される。全国民アイデア登録制は金融や政策のアイデアを含むあらゆる種類の創意的アイデアを保護することで、こうしたアイデア分業を可能にしてくれる」

     

    韓国の産業構造は、日本の模倣である。半導体も日本技術を窃取したものであり、自らつくり上げた産業はない。こういう現状を考えれば、先ず、製造業の深化・進化によって新しい分野が切開かれるだろう。素人の思いつきによって生まれる産業に永続性があるだろうか。技術の連続性がないからだ。

     

     

    テイカカズラ

    中国は、3年にわたるゼロコロナが終わって、経済活動再開へ熱を帯びている。米中対立激化で、企業誘致できる相手国は日本に限られる。そこで、地方政府は日本企業に的を絞って訪日に力を入れている。

     

    一方で、中国の台湾侵攻という地政学的リスクが増している。中国軍が、台湾と尖閣諸島を攻撃するような事態になると、日中関係は最悪事態に陥る。中国政府から、日本企業の資産没収という事態も考慮しなければならないだろう。こうなると、日本企業は丸損になりかねない。難しい選択である。

     

    すでに中国へ進出している企業は、地政学的リスクを折り込んで行動を始めている。中国からの輸出部門は、ASEAN(東南アジア諸国連合)へ移転しており、輸出に影響が出ないように対策を取っている。こういう緊急体制を必要とする国へ、新規の進出は難しいであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月14日付)は、「中国地方政府『相次ぎ訪日』ゼロコロナ後の投資に期待」と題する記事を掲載した。

     

    中国の地方政府幹部による日本訪問が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ」政策が終了し、国外を訪れやすくなったためで、上海市や遼寧省大連市などが訪問団を派遣している。コロナ禍で傷んだ地元経済の立て直しに向け、新規投資の呼び込みを狙う。

     

    (1)「大連の冷雪峰副市長らは今月7〜11日、東京や京都、神戸などで日本電産やオリックスといった企業を訪問した。大連は日本電産など日系企業の拠点が集積する。市政府は「大連にとって日本は最大の貿易相手国かつ、最大の外資導入国だ」としている。陳紹旺市長は訪日していないが、5日に市内で日本など外資企業の幹部らを招いた新年会を開催。「23年は外資の誘致と活用に一層力を入れる」と表明した」

     

    大連は、戦前から日本とは深い関係にあり、対日感情は極めて良いとされる。それだけに、日本企業へラブコールを重ねているのであろう。

     

    (2)「日本国際貿易促進協会によると、中国政府がゼロコロナ政策を緩和した2022年12月以降、深圳市、広東省広州市、上海市、天津市などが幹部らを日本に派遣。現地に進出する企業への表敬訪問に加え、新規投資や技術協力を求める説明会も開いた。2月以降も広東省仏山市や遼寧省瀋陽市なども「日本詣で」を計画している。訪日ラッシュのきっかけは、22年11月下旬から12月上旬に江蘇省蘇州市などの幹部が他都市に先駆けて日本を訪問したことだ。これを中国メディアが報じ、「他地域に負けられない、となった」(日中貿易筋)。中国政府が今年1月に入国時の隔離を撤廃したことも後押しした」

     

    深圳市、上海市、天津市など中国の主要都市が、日本詣でを始めている。台湾侵攻というリスクさえなければ、日中間の経済交流は一段と強化されるべきだ。だが、その背後には企業レベルでは解決不能な「地雷原」があるとすれば、深い考慮が必要になろう。

     

    (3)「日本財務省によると、日本からの対外直接投資(22年、実行ベース、速報値)のうち、中国向けは1兆8796億円と21年比で2%減った。東南アジア諸国連合(ASEAN)が17%、欧州が15%、米国が9%それぞれ増えており、中国の落ち込みが鮮明だ。ゼロコロナ政策による景気低迷などが、企業の投資意欲を減退させた可能性がある。金融関係者は、「中国の日系企業では、電気自動車(EV)など成長分野で投資が目立つ」とする一方、「不動産・建設などの分野では撤退の動きもある」と指摘する」

     

    中国は、日本企業の中国進出により技術移転という重要なメリットを享受できる。米国からの技術移転は不可能になっているので、一段と日本へ接近せざるを得ない局面だ。

     

     

     

     

     

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