勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    韓国は、22年の合計特殊出生率が0.78まで低下して、企業も深刻に受け止めている。生産年齢に数えられる15年後の労働力不足が、現実にイメージできるようになったからだ。何と言っても、文政権5年の間に低出産対策を何ら取らなかったことが、事態を深刻にさせている。もはや対策としては、「ツー・レート」(遅すぎる)である。

     

    『wowkorea』(2月25日付)は、「韓国経営界、高齢化が深刻『15年後の連鎖倒産』を懸念」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の産業現場では、「低出産」による若い労働者減少のため「高齢化」が急速に進んでいる。「今よりも働く人がいなくなる場合、企業の連鎖倒産が現実化するおそれもある」という懸念の声が出ている。

    (1)「韓国貿易協会のチョン・マンギ副会長は最近、韓国の新聞社『ヘラルド経済』とのインタビューで「『低出産問題に大韓民国の存亡がかかっている』という状況まで迫っている」とし「問題を問題として認識するレベルではなく、ただちに解決法を見出さなければならない状況だ」と診断した。つづけて、「社会的に出産できる雰囲気と環境が築かれなければ、これからは働く人がいなくなるしかない」とし「若い世代の出産忌避(きひ)現象を回復させるため、企業は共に立ち上がらなければならない」として、変化を求めた」

     

    韓国は、今になって大騒ぎしているが10年遅かった。合計特殊出生率が、ここまで低下すると打つ手がないのだ。最大の問題は、年功序列・終身雇用を労組が頑として譲らずに来たことだ。労働市場の流動化が進んでいれば、雇用も改善されていたはず。労組のエゴが、韓国を破滅に導いているといっても過言でない。


    (2)「企業による「出産率引き上げ」のための対策も、次々と打ち出されている。「ESG(環境・社会・支配構造)経営」の重要性が台頭する中、大企業を中心に「持続可能」という脈絡で社員の福祉制度を支援しようとする試みが注目されている。韓国最大の鉄鋼メーカー「ポスコ」は最近、職場内の保育園のうち2か所を自社ではなく協力企業の職員のこどものために開放した。授業料から食費までの全額支援は基本である。現在51か所の協力企業の職員が、ポスコグループの保育園を利用している」

     

    企業が、保育所を無料にしている。美談であるが、労組の主張する年功序列・終身雇用を破棄しなければならない。ユン政権は、年功序列・終身雇用を打破した企業にインセンティブをつける方針である。20代で結婚できる賃金を得られるようにするには、年功序列賃金を破棄して、賃金を押上げなければならないのだ。

     

    (3)「現代自動車グループは昨年8月、現代自動車グループ本社の保育園を増築した。2つの建物を連結し、これまでの収容人数であった62人から約1.7倍の計107人まで園児数を増やした。さらには柔軟勤務制と育児休職の使用も、積極的に奨励している。これらは「仕事と家庭両立」のための努力である」

     

    下線のような小手先のことでは、出生率は改善しない。雇用制度自体を変えて、20代で結婚・出産できる経済的な環境を整えなければ、出生率は改善しまい。

     

    (4)「雇用労働部(省)が発表した「雇用形態別労働実態調査」によると、韓国の全労働者の平均年齢は2021年43.4歳まで上昇した。2009年の38.5歳から2019年には42.6歳と、毎年上昇している。統計庁が集計した2023年度1月(末日基準)の求職可能年齢(満27歳)の人口数は、70万5763人であった。これは、1999年に満27歳で現在52歳である人口数91万6319人より、20万人以上少ない数値である」

     

    韓国の平均年齢は、2021年で43.4歳まで上がっている。2009年は、38.5歳であった。この間11年で4.9歳の上昇である。22年の合計特殊出生率が0.78であったことから言えば、これからの10年は、駆け足の上昇になろう。

     

    (5)「『低出産』により、『高齢化』はより深刻化するものとみられる。実際、2035年に満27歳となる現在満15歳の人口数は49万9150人と観測された。さらに2047年に満27歳となる現在、満3歳の人口数は30万4481人で、これは現在満27歳の半数にも満たない数値である。KDB未来戦略研究所は「人口高齢化の進行速度が加速していることにより、企業労働者の平均年齢も急速に上がっている」とし「高齢化が急速になるほど、企業としては賃金負担が一層加重され、これは経済・社会的に大きな衝撃として迫ってくるだろう」と分析した」

     

    下線のような問題が起こる以上、韓国では年功序列賃金を継続不可能になる。早く、成果給にして生産性に見合った賃金体系に変更することだ。年功序列・終身雇用では、定期的に希望退職を募るという不合理な結果を招く。頭を切換えることだ。

     

     

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    ロシアのウクライナ侵攻が1年経った。和平への動きはあるのか。ロシア軍は、さらに大軍を戦線へ投入する構えだ。ウクライナ軍は、西側諸国から戦車の供与を受けて奪回作戦への準備中である。こうした中で、英独仏が和平への動きを見せている。 

    終戦は、戦場で決まるとされる。ロシア軍が継戦しても「無駄」という認識を持つには、どうすべきかが焦点だ。その具体策が、NATO(北大西洋条約機構)とウクライナとの防衛協力協定である。ロシアは、ウクライナ側に実質的なNATOという大きな壁を認めれば、戦いの矛を収めるであろうという狙いである。
     

    米国のデビッド・ペトレイアス退役陸軍大将は、終戦の条件として次の点を上げている。『CNN』(2月21日付「米陸軍退役大将に聞く、ウクライナでの戦争はどのように終結するか」 

    「交渉による解決で終わると思う。それはプーチン氏がこの戦争について、戦場においてもロシア国内においても持続不可能だと悟る時だ。ロシアが1年目の戦闘で被った損害は、ソ連時代の約10年間、アフガニスタンで被った水準の何倍にも達する公算が大きい。国内では各種制裁と輸出規制の悪影響が重くのしかかる。一方でそれは、ウクライナがミサイルとドローン攻撃に耐え得る限界に達する時でもある。その際、米国と主要7カ国(G7)はかつてのマーシャルプランのような計画を策定して、ウクライナの復興を支援する。安全保障上の枠組みも鉄壁のものとなる(NATOへの加盟か、それが不可能なら米国主導の同盟がそれを保証する)。安全保障の確約は、復興の取り組みを成功させ、外部からの投資を引き付ける上で極めて重要になるだろう」 

    下線部の指摘は、NATOなどによってウクライナの安全保障を恒久的に行なうことが、ウクライナを納得させる、としている。この構想が、現実に動き始めているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月25日付)は、「ウクライナ・NATO防衛協定構想 独仏英が提案」と題する記事を掲載した。 

    独仏英3カ国は、ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)との関係強化に向けた協定締結を模索している。ロシアがウクライナの一部領土を占拠し続ける中でも、和平協議に着手するようウクライナを促す狙いがある。独仏英の当局者が明らかにした。 

    (1)「英国のリシ・スナク首相は先週、ウクライナが戦争終結後、国防目的で最新鋭の軍事機器、兵器、砲弾をより幅広く入手できるような協定を交わす計画を示した。その上で、この提案を7月のNATO年次会合の議題にするよう呼びかけた。フランスとドイツもこの構想を支持している。3カ国は、ウクライナの自信を高め、ロシアとの和平協議を促すとみている。ただ、これら当局者は和平協議の開始時期・場所、条件は完全にウクライナ次第だと述べた。スナク氏は24日、西側諸国は戦場でウクライナを「決定的に有利」にする戦闘機などの兵器を提供する必要があると語った」 

    英独仏の3ヶ国が、ウクライナとロシアの和平準備に取りかかるろうとしている。その前に、戦場でウクライナ軍が徹底的に有利になることを前提にしている。戦争終結後、NATOはウクライナへ国防目的で最新鋭の武器で供与する協定を結び安全を保障する。これが、和平案である。

     

    (2)「この3カ国の当局者によれば、こうした表向きの発言とは裏腹に、2014年以降ロシアの支配下に置かれているクリミアとウクライナ東部からロシア軍を駆逐できるかとの疑念が英仏独の政治家の間でひそかに強まっている。特に紛争が膠着状態に陥った場合は、ウクライナへの軍事支援をいつまでも継続できないとの見方がある。あるフランス当局者は「われわれはロシアを勝たせてはならないと繰り返しているが、それはどういう意味だろうか。これほど激しい戦争が長く続けば、ウクライナも損害に耐えがたくなる」とし、「クリミアを奪還できると考えている人は皆無だ」と話した」 

    英独仏は、ウクライナによるクリミア半島奪回を困難視している。クリミア半島奪回まで戦えば、戦争が長引くからだ。

     

    (3)「こうした論調は、ロシアの侵略に対する結束を呼びかけたジョー・バイデン米大統領をはじめとする今週の西側首脳の公式発言とは著しい対照をなす。ウクライナが近くロシアと協議を開始するという見込みに触れた西側の首脳はいなかった。米当局者はNATOの安保協定についてのコメントを避けた。米政府は、ロシアによる将来の攻撃を十分抑止できるよう、ウクライナが戦争終結後に防衛力を強化することが望ましいとの考えを示してきた。ドイツ政府はコメントを拒否した。英仏政府の報道官は現時点でコメントの要請に応じていない」 

    米国は、侵略者に利益を与えてはならぬという立場である。英独仏とは、この点で、食い違がっている。

     

    (4)「複数の関係者によると、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相は今月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談で、ロシアとの和平協議の検討を促した。マクロン氏はパリの大統領官邸(エリゼ宮)での夕食会で、フランスとドイツのような旧敵同士でさえも戦後は和解したと、ゼレンスキー氏に冷静なメッセージを伝えた。また、ゼレンスキー氏は戦時下の優れた指導者だが、ゆくゆくは政治家として難しい判断をする必要があると伝えた 

    下線部は、意味深長である。ウクライナが、どの時点で戦いを終わらせるか、という政治判断を強調している。 

    (5)「ある英当局者の話では、NATOとの協定のもう一つの狙いは、ロシア政府の想定を変えることだ。ウクライナへの軍事支援を長期的に強化する用意が西側にあると見れば、ロシアも自国の軍事目標の達成は難しいとの結論に至るとの読みがある」 

    NATOが、ウクライナと防衛協力協定を結べば、ロシアも長期の戦いの無益を悟るであろうとしている。ただ、ロシアはこれをどう捉えるかだ。

     

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    韓国経済の支柱である半導体は、輸出の4割が中国向けである。サムスンとSKハイニックスが、中国で半導体を生産しているが、米国からの大きな圧力が掛かってきた。それは、米国が昨年10月に発表した中国向け半導体輸出規制措置である。18ナノ(ナノメートル=10億分の1メートル)以下のDRAM、16ナノ以下のロジックチップを製造できる装置と技術を中国に販売する場合、米商務省の許可を取るよう定めているためだ。

     

    韓国半導体メーカーは、この米国の半導体輸出規制措置によって、いずれは中国での生産が不可能な事態になりかねない状況だ。韓国にとっては、経済的にも厳しい状況である。

     

    韓国がこのような状況に追込まれているのは、日本・米国・韓国・台湾による米国主導の半導体同盟「チップ4」が2月16日に最初の本会議を開催したことだ。チップ4は、中国の「半導体崛起(くっき)」をけん制するため、米国が・日本・韓国・台湾に提案した半導体同盟だ。韓国は、今回の会議へ出席したことで「韓国のチップ4参加も本格化するのでは」との見方が浮上しているほど。

     

    『朝鮮日報』(2月25日付)は、「韓国の半導体、『中国工場撤退』という最悪の事態まで想定せよ」と題する社説を掲載した。

     

    サムスン電子とSKハイニックスが中国にある工場で製造している半導体に関して、韓米経済安保フォーラムに出席した米商務省の産業安全保障担当次官が「製造できる半導体の水準に限度を設ける可能性が高い」と発言した。米国は昨年、半導体製造装置の中国輸出を禁止する際、サムスン電子・SKハイニックスの中国工場に対しては1年間の猶予措置を取った。担当次官のこの発言は、同フォーラムで「猶予期間が終了したら、その後はどうなるのか」という質問を受けてのものだ。

     

    (1)「サムスン電子は現在、NAND型フラッシュメモリの40%を中国・西安工場で、SKハイニックスはDRAM半導体の40%を中国・無錫工場で製造している。今は米国が提示した基準以下の製品を製造しているが、問題は今後のことだ。半導体産業の特性上、製造装置をアップグレードし続けなければ製品競争力が維持できず、収益も上がらないためだ。専門家らは「今後3~5年以内に中国工場での半導体製造を中止しなければならない状況になる」と考えている」

     

    下線部のように、韓国は中国での半導体製造の中止に追込まれる懸念が強まっている。半導体が支える韓国経済だけに、その影響力は無視できない。1980年代後半、日本は米国との半導体紛争に巻き込まれ結局、その後の半導体が斜陽に向かった。この苦い経験を振り返ると、韓国も厳しい将来が待ち構えている。

     

    (2)「米政府は、同国の補助金を受け取っている半導体製造企業に対して10年間、中国に半導体製造ラインを新設・増設できないようにする方針だ。米国に170億ドル(約2兆3200億円)を投資してファウンドリ(半導体受託製造)工場を建設するサムスンと半導体研究開発センター、先端パッケージング工場を推進中のSKハイニックスが補助金を受け取れば、この規制の対象となる。既に日本やオランダも半導体製造装置の中国輸出について中止を決めている」

     

    日本の半導体製造装置は、中国輸出が止ってもさしたる影響を受けない。中国が未だ、日本製半導体装置を必要とする段階になっていない結果だ。それよりも、日本製の中古半導体製造装置が引っ張りだこの状況という。

     

    (3)「韓国の半導体は、40%が中国に輸出されている。政府と企業は、対米通商外交チャンネルを総動員し、中国工場の稼働年限を最大限延長する解決策を模索しているが、中国工場撤退に備える「プランB(代替案)」も用意しなければならない。韓国政界は半導体支援法を一日も早く通過させ、半導体製造企業の国内新規投資を最大限支援すべきだ。半導体産業の競争力維持は企業の生き残りはもちろん、韓国経済の生き残り、ひいては大韓民国の安泰にかかわる問題だ」

     

    韓国半導体は、「製造技術」というノウハウ部分に特化している。半導体の設計・製造装置・素材という他の分野はゼロ同然である。こういう状況だけに、中国での製造が不可能になれば大きな痛手だ。もはや、「半導体強国」とは言えなくなる恐れが出てきたようだ。

    テイカカズラ
       

    アリババは、傘下の金融企業「アント」の上場問題にからみ、中国政府の強い管理下に置かれてきた。アントの株主に、習氏の政敵である江沢民一派が潜んでいたことを発見されたからだ。習氏にとって、政敵に利益を与えることは絶対に許せないことである。政治的問題から、IT関連企業は全て政府の監視下にある。こういう状態で、自由なビジネスが可能か、が問われる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月24日付)は、「アリババ、再成長阻む『統制』 ネット通販頼みに限界」と題する記事を掲載した。

     

    中国ネット通販最大手のアリババ集団が再成長へ険しい道を歩み始めた。中国当局による統制が常態化するなか、中国共産党や政府との関係強化が必須になり、屋台骨を支えるネット通販事業には逆風が吹く。クラウド事業と海外事業に再起を託すものの、新領域の競争環境は厳しく、縮小均衡に陥るリスクもある。

     

    (1)「8日、お膝元の浙江省杭州市の余杭区と結んだ協定の調印式に、張勇(ダニエル・チャン)会長兼最高経営責任者(CEO)が出席した。張氏は「アリババは今後10年、常に杭州と中国に根ざし、国際競争力のある中国企業に成長して貢献する」と宣言。区との協定にトップの張氏が出席することで、地方政府との関係を重視する姿勢を示した格好だ。足元では同様の動きが相次ぐ。2022年12月にアリババが浙江省トップである易煉紅・党委員会書記の訪問を受け付けたと報じられたほか、23年1月には杭州市と10年ぶりに協定を交わした。ここ2年ほど、アリババと地方政府との連携は目立たなかっただけに接近ぶりが目を引く」

     

    アリババは、再出発にあたり地方政府との関係を強化している。これは、アリババが、地方政府の「財布」になることを示唆する。「融資平台」の救済などで、アリババが一役も二役も義務を背負っていることであろう。

     

    (2)「中国当局は巨大IT(情報技術)業界に関し、成長を促す姿勢を示し始めた。「基本的に是正が完了した」。中国国営の新華社通信は1月、中国の金融監督トップである郭樹清氏が巨大ITの金融業務に関し、見解をこう示したと報じた。「プラットフォーム企業の健全な成長を促す」とも述べ、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏による政府批判とも受け取れる発言で始まった監督強化が、節目を迎えたとの受け止めが広がった」

     

    アリババの金融会社アント・グループは、馬氏が関連会社を通じて保有する議決権比率を下げて実質支配株主から外れ、集団指導体制に移行すると発表した。馬氏は、アントの議決権の53%を握っていたが6%まで低下したという。アント・グループは、馬氏の手を離れて政府の管理下に入ったことを示唆する。

     

    (3)「政府が成長支援に転じたのは、いわば「禊(みそぎ)」が終わったことが一因だが、それだけではない。中国経済の回復を進めたい意図もあったとされる。新型コロナウイルスの感染を封じ込める「ゼロコロナ」政策で経済の活力は失われ、深刻な打撃をもたらした。税収の減収や雇用環境の悪化に見舞われるなか、巨大IT企業をけん引役に苦境を打開したい狙いがあったとみられる。今後は中国国内で自由に事業展開し、再び成長軌道に戻るような印象もあるが、そう単純ではない。政府による「統制」という本質には何ら変化がないからだ」

     

    中国政府は、巨大IT企業を徹底的に調べ上げ、反習近平派が潜り込めないように手を打ったのであろう。だが、IT企業を支配下に収めても、企業の発展が止れば、成長の果実に預かれないというリスクを抱える。

     

    (4)「アリババのグループ企業の1社に1月、中国政府機関系の企業が株主に加わった。出資比率は1%だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、通常の議決権よりも強い権限を持つ「黄金株」に似ているという。新たに就任した取締役は、中国当局の職員と同姓同名で、取締役の選任など経営に大きな影響を及ぼす可能性があるとする。21年秋にデータ安全法と個人情報保護法が、22年夏にはネット大手の統制強化を盛り込んだ改正独占禁止法が施行された。政府の意向に沿わない動きがあれば処罰を受ける恐れがあり、強権化が進んだといえる」

     

    アリババのグループ企業の1社に、中国当局の職員が取締役に就任した。企業内部から、アリババを操縦する意図であろう。ここまでIT企業に対して疑心暗鬼になっているのだ。これは、「金の卵」を踏み潰すに等しい行為であろう。

     

    (5)「習近平(シー・ジンピン)指導部が「共同富裕(共に豊かになる)」を掲げるなか、アリババなどに対して「もうけすぎ」との批判は根強くあった。ネット通販市場での独占的な地位を武器に、取引先に競合との取引を制限していたことで罰金処分も受けた。かつて四半期ごとに2桁の売上高成長率を誇ってきたアリババだが、足元では成長鈍化が鮮明だ。22年10〜12月期の売上高は前年同期比2%増の2477億元(約4兆8000億円)にとどまった。政府の統制に加えて重荷になっているのが、競合大手の攻勢だ」

     

    今後のアリババは、どのように成長できるのか。翼をもぎ取られ、足かせをはめられた格好だ。中国経済を象徴するケースになろう。

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    2020年1月のパンデミック襲来以前、想像もできなかった事態が発生している。米国では、コロナによる在宅勤務が普及して、出社率が50%以下になっている。つまり、全社員に対して平均出社率が5割という時代になったのだ。残り半分は、在宅勤務である。出勤と在宅を組み合わせた勤務状態が一般化しているものである。 

    米国では、この在宅勤務の時代になったことを背景に、オフィス用の商業ビルが空室になるリスクが高まっている。この結果、商業用ビルの新築計画が見直されている。この流れは、必ず日本へも「上陸」する。日本では、都心の一等地にビルを持つ不動産会社にとって、聞き捨てならぬニュースになる。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月22日付)は、「米オフィス『1億平米余剰に』 ハイブリッド勤務定着」と題する記事を掲載した。 

    出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型勤務の普及を受け、2030年までに米国のオフィス空室面積が過去最高の11億平方フィート(約1億平方メートル)に達し、コロナ禍前を55%上回る見通しが不動産関係企業の試算で明らかになった。働き方の変化が商業不動産業界にもたらす影響の大きさを浮き彫りにしている。

     

    (1)「米不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、在宅勤務やハイブリッド型勤務の直接的な結果として、20年代末までに3億3000平方フィート分の余剰オフィススペースが発生するとするリポートを発表した。これはワシントンDCを中心としたワシントン首都圏にあるオフィススペースの合計にほぼ相当する。その他に、「自然、ないし通常」と定義される余剰スペースが7億4000フィートに上ると見込んでいる」 

    2030年までに、ワシントン首都圏にあるオフィススペースの合計が余剰になるという驚くべき予測が出て来た。 

    (2)「クッシュマンは、全米のオフィススペースの約4分の1が既に需要の実態にそぐわなくなっており、60%が陳腐化のリスクに直面していると見ている。そうした物件は、ニューヨークで再開発が進むように、改装や用途変更のための「相当な投資」が必要になる可能性があると結論づけた。この傾向は北米で最も顕著だが、欧州やアジアでも見られるという。クッシュマンのアンドリュー・マクドナルド社長は「『陳腐化』というのが現状を最もよく表す言葉だろう」と話し、今回のリポートは、現状をおそらく「転換点」であるとみていると述べた」 

    現在が、オフィスビルにとって転換点になると見られる。サービス経済化の波に乗って、オフィス需要が増え続けたが、今回のパンデミックがこの流れを変えると言うのだ。

     

    (3)「クッシュマンが示した予測は、同社が商業不動産業界をリードする企業の1つであることもあり、相当な衝撃度をもっている。同社はつい最近まで、他の多くの不動産関連企業と同様に、ハイブリッド型勤務が不動産市場に及ぼす長期的な影響について、もっと楽観的な見方をしていた。だがクッシュマンはここにきて、市場は継続的な構造変化に見舞われており、その流れは今後も強まる可能性が高いという見方を受け入れるに至った。20〜30年に更新時期を迎える賃貸契約のうち、既に更新期を迎えたのは3分の1にすぎず、今後、賃貸面積を縮小したり撤退したりするテナントが増える可能性がある」 

    20~30年に賃貸契約の更新期を迎える企業で、契約を更新したのは3分の1に過ぎない。今後は、撤退するテナントが増える可能性が強いという。

     

    (4)「米国では、コロナ禍からの景気立ち直りに伴って雇用が堅調で、失業率は再び過去最低の水準となっている。しかし、クッシュマンのチーフエコノミストのケビン・ソープ氏は、雇用拡大と企業のオフィススペース需要の相関は「崩れた」と指摘している。コロナ禍後の雇用増が、空室を埋めるオフィス需要につながっていないという。テナント企業が必要とする従業員1人あたりのスペースは縮小してはいるが、具体的な変化の程度ははっきりしない。「縮小傾向にはあるが、減少の程度は依然として流動的だ」とソープ氏は語った」 

    これまで、雇用拡大と企業のオフィススペース需要の相関が成り立っていた。だが、この相関関係は、パンデミックによる在宅勤務の普及で崩れたという。

     

    (5)「クッシュマン以外にも、金利の上昇がオフィス需要の減少傾向に拍車をかけているとみて、厳しい市場予測に転じる不動産開発業者が増えている。米不動産投資信託(REIT)のボルネード・リアルティ・トラストを率いるスティーブン・ロス最高経営責任者(CEO)は、2月中旬のオンライン決算説明会で、ハイブリッド型勤務が一過性の現象ではないとの見方を示した。「金曜はもうなくなった。月曜日はすれすれだ」と指摘」 

    「金曜はもうなくなった。月曜日はすれすれだ」という指摘は、ニューヨークの地下鉄乗降客の減少に現れている。地下鉄では、月・金の運航本数を減らす予定だ。 

    (7)「高級オフィスビル群は依然として例外的に高い需要を誇り、一般的な物件とは一線を画している。クッシュマンはリポートで、このカテゴリーに入るオフィス物件は30年までに米国の全賃貸オフィスのわずか15%になると予測した」 

    在宅勤務の影響を受けない全米の賃貸オフィスは、わずか15%程度という。凄い時代が来る。日本もこの影響が出てくるであろう。

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