勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    韓国は、輸出依存経済である。これが影響して、韓国経済は製造業の雇用まで減少する事態へ追込まれている。製造業雇用は、質の高い安定したものとされているだけに、韓国経済へ大きな影響を与えている。

     

    輸出上位6カ国のうち、韓国、中国、ドイツの輸出が昨年第4四半期から減少傾向に転じている。その中で、韓国の輸出減少幅が最も大きかった。韓国の輸出は、昨年第4四半期に対前年同期比9.%と減少した。中国(-6.%)、日本(-4.%)、ドイツ(-1.%)は、いずれも韓国より減少が小幅に止まった。一方、米国は8.%、イタリアは3.%もの増加になった。このように、韓国の輸出減は他国よりも大きいことから、国内製造業の雇用へ大きな影響を与えている。

     

    『wowkorea』(2月19日付)は、「韓国で製造業の就業者が減少…輸出不振で民間雇用減る」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で製造業の就業者数が15か月ぶりに減少した。輸出を中心に製造業景気が悪化し、雇用にも影響を及ぼしている。

     

    (1)「製造業就業者数は雇用指標の核心といわれている。全産業就業者数の16.%が製造業就業者だ。その上、製造業の就職先はいわゆる「質の良い民間の働き口」とみられている。製造業の雇用が回復しなければ、量・質の雇用がともに好調を示すのは難しい。輸出景気の寒波が本格的に雇用の指標に影響を与えている。成長の核心である輸出が折れ、政府も経済危機に対する警告の水位を公式的に高めた」

     

    韓国では、製造業の雇用が安定しければ、経済が成長できない関係にある。それだけに、製造業雇用の落込みは痛手だ。

     

    (2)「製造業就業者数が減少したのは昨年10月(0.%減)以降初めて。21年11月(1.2%増)から製造業就業者数は増加傾向を続けてきた。昨年8月には5.%増加。しかし、その後次第に増加幅が小さくなり、1月に減少へ転換した。減少幅は21年9月の1.%減以来で、最大になっている。製造業の就業者は働く時間も減っている。主要産業別で週当りの平均就業時間を前年同月対比の増減で調べてみたところ、製造業は1月に41.2時間をで、前年同月比0.9時間(2.%減)のマイナスになった」

     

    製造業の雇用は、今年1月から減少に転じた。雇用は、景気の遅行指標であるから、韓国経済がいよいよ「暗闇」へ突入したことになる。

     

    (3)「統計庁のソ・ウンジュ社会統計局長は「製造業就業者数が15か月ぶりに減少に転換した。これは、産業活動動向統計内の電子部品生産などが減少した影響だ。今後も産業活動動向統計内に明らかになった部分が持続的に反映される可能性がある」と説明した。企画財政省も2023年1月、雇用動向の分析資料を通じて「生産・輸出減少などが時間を置いて雇用市場に反映され、電子部品などを中心に15か月ぶりに減少に切り替わった」と分析した」

     

    製造業の雇用減に影響を与えた要因は、輸出減である。中国の電子機器産業は、春節後の求人においてかつてない小規模に止まっていることが判明している。これは、韓国の対中輸出が停滞することを予告する。

     

    (4)「製造業就業者数の減少は、青年層の雇用に直接的な悪影響を与える。高齢層の就職先、政策による就職先とは意味が違う。実際、1月の青年層就業者数は前年同月比5万1000人減った。減少幅が昨年12月(2万5000人)の2倍以上だ。景気鈍化による製造業の不況が原因になっている」

     

    製造業の雇用減は、青年層の失業問題へ直結している。韓国の今年の新規雇用増は、約10万人という信じ難い予測が発表されている。

     

    (5)「実際、昨年の製造業在庫率は7か月連続120%を上回った。国家統計ポータルの「鉱業製造業動向調査の製造業在庫率」によると、昨年の製造業在庫率は126%を記録した。製造業の在庫率は、昨年6月の124.%を皮切りに、7か月連続で120%を上回っている。韓国にこれほど在庫が長期間蓄積されたのは、90年代の通貨危機前後以来初めてだ。新型コロナが流行しはじめた20年でも、製造業の在庫率が120%を超えた月は、たった1か月だけだった」

     

    在庫率は、120%台になっている。月間売上高を上回る在庫を抱えているのだ。1990年代の金融危機以来の高水準の在庫率である。これだけ、金利負担が増えることになる。

     

    (6)「政府の景気判断は、1月まで8か月間続いたものより、さらに否定的になっている。グリーンブック1月号で、「景気鈍化の憂慮が拡大している」と表現してきたのである。昨年6月から似たような水準で評価であった。ところが2月は、「憂慮」という言葉が消えた。景気の減速がすでに始まっているという意味に受け取れるのだ」

     

    政府の景気判断には、警戒感が強まっている。景気減速が、本格的になってきたのだ。

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    電気自動車(EV)の普及スピードを巡って、自動車メーカーはその判断で苦悩している。電池の素材供給に問題があるので、電池コスト低下に限界があり普及のネックになるからだ。他社の動きを見ながら手探り状態がつづく。 

    こういう中で、トヨタ自動車は社長交代を機にEV目標を発表した。2025年にも米国でEVの生産を始める。車載電池の工場も設け、基幹部品から車の組み立てまで一貫してEVを造れるようにするとしている。インドなどでも製造し、26年に世界で年100万台まで生産台数を増やす計画だ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月24日付)は、「自動車メーカー悩ます難題:EV普及のスピード」と題する記事を掲載した。 

    電気自動車(EV)への移行は不可避というのが自動車メーカー幹部のほぼ一致した意見だ。だが、キモは「どれほどのペースで移行するか」であり、これをどう判断するかで経営戦略も変わってくる。

     

    (1)「従来の自動車メーカーは段階的にガソリン車からEVに移行する方針を表明しているが、各社の予定には開きがある。自動車メーカーにとっては、消費者に先行してEV投入を急げば、コストが膨らみ、ガソリン車の販売が落ち込みかねない。ガソリン車の売上高はEV投資への原資として不可欠だ。一方で、EV投入でライバル勢に後れをとれば、今後数十年の大きな成長分野とみられる市場で、自社ブランドを確立する機会を逸してしまう恐れがある、と幹部らは話す」 

    伝統的な自動車メーカーは、EV移行時期を巡って頭を悩ませている。早すぎればコスト負担が大きいこと。遅れれば市場を失うという問題である。「最適解」を探しているのだ。

     

    (2)「スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーのジム・ローワン最高経営責任者(CEO)は今月の決算電話会見で「(EVの)市場を見逃す危険は冒したくない」と述べた。ボルボ・カーはEV専門メーカーへの転身を急いでおり、2030年までにすべての製品をEVとする目標を掲げている。昨年のボルボ・カーの販売実績のうち、EVが占めた割合は全体の11%だった」 

    ボルボは、EV専業へと割り切った。すべての車種が、2030年までにEVとする目標を掲げた。 

    (3)「調査会社EVボリュームズ・ドット・コムによると、昨年の世界自動車販売のうち、EVは全体の約1割で、テスラなどEV専門メーカーがけん引した。伝統的な自動車メーカーの多くにとっては、EVが事業に占める割合はさらに小さい。テスラの利益が急拡大する半面、従来のメーカーはバッテリーの初期開発コストが圧迫要因となり、総じてEV販売で赤字を出している。化石燃料を軸とする事業モデルからどれだけ迅速に脱却するかを巡っては、産業全般でジレンマが存在する。長年「グリーン革命」を旗印にしてきた英石油大手BPは今月、低炭素事業への移行スピードを緩め、石油・ガスの生産を増やすと明らかにした」 

    従来メーカーは、EVで赤字を出している。それを、ガソリン車でカバーしているのだ。「低酸素」の響きはいいが、経営面ではEVへの全面移行期を巡って厳しい決断が必要になる。

     

    (4)「従来メーカーの幹部は、EVバッテリー原料である重要鉱石の確保など、自社で完全には管理できない要因がEV移行を遅らせる可能性があると指摘する。EVへの移行スピードを正確に判断することは、SUBARU(スバル)など比較的規模が小さいメーカーにとっては大きな問題だ。スバル・オブ・アメリカ(SOA)のトム・ドールCEOは、EVが最終的にどこまで浸透するか、見極める必要があると話す。ドール氏は今月、「われわれは圧力を感じている」と述べた。「市場が本格的にそちらに(EV移行へと)傾いていると確信する必要がある」 

    比較的規模の小さい自動車メーカーにとっては、EVへの全面的移行期の選択が経営へ大きな影響を与える。

     

    (5)「業界幹部やアナリストによると、とりわけ米国の顧客の間では、航続距離への懸念が強い。また米国では、インフレ抑制法により公共インフラ投資が進んでおり、いずれは自宅ではなく外出先で充電できるようになるだろうが、現時点では充電施設の整備は不十分だ。これまで自動車メーカーやサプライヤー企業はEV移行に向けて、2026年末までに世界で合計5250億ドル余りを投じる方針を表明している。コンサルティング会社アリックスパートナーズが分析した」 

    世界では、2026年末までにEV関連で合計5250億ドル余りが投じられるとの分析も出て来た。こうなると、EVへの障害がより低くなるわけだ。いかに、この波を上手く利用できるかがポイントだ。 

    (6)「大手メーカーの中でも、GMと大手フォードはEVへの移行で最も野心的な目標を掲げる。フォードは2020年代末までに自社の販売台数の半分が純EVになると想定。GMは2035年をめどに、大型車を除き、内燃機関エンジン車の販売を段階的に廃止することを目指す」 

    米国のGMやフォードは、EVで積極的である。GMでは、2035年をメドに大型車を除きガソリン車を段階的に生産廃止にする計画だ。

     

    (7)「販売台数で世界トップのトヨタは、豊田章男社長は先月、41日付けでトップを交代し、執行役員の佐藤恒治氏が社長兼CEOに就任する。後任の佐藤氏は、将来の製品ラインアップを構築していく上で「EVファースト」の方針を掲げている人物だ。それでも、EV一辺倒にはならない戦略を追求する意向を示している」 

    世界トップのトヨタの次期社長は、EVに積極的である。26年に世界でEV年100万台計画を発表した。時流に遅れない構えだ。

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    韓国左派の安全保障政策は、中朝ロと友好を保つという非現実路線である。だが、右派(保守派)は日本と協力して日米韓三ヶ国の共同歩調を強調している。日本が、韓国の安保戦略で一役買うという韓国側の狙いには、率直に言って同意しがたいものがある。

     

    長年にわたる日韓の角逐を考えると、感情的にもにわかに賛同し難いものがあるのだ。「困ったときの日本頼み」であり、いずれ喉元過ぎれば元の高姿勢へ戻るリスクを感じ取るからだ。文政権による5年間の反日ぶりを振り返ると、最近の韓国側の日本接近シグナルには要注意である。

     

    『中央日報』(2月23日付)は、「韓日米ミサイル防衛訓練を韓日関係正常化のきっかけに」と題する社説を掲載した。

     

    韓日米3カ国が昨日、東海(トンヘ、日本名・日本海)で北朝鮮ミサイル防衛訓練を実施した。北朝鮮が突然弾道ミサイルを発射する危機状況を想定し、探知から追跡および迎撃するすべての過程を実戦のように訓練した。昨年10月に続いて2回目のミサイル防衛訓練だ。最近、北朝鮮のミサイル挑発の頻度と強度が高まり、北朝鮮のミサイル防衛は最も緊急な3カ国の安保懸案に浮上している。

    (1)「韓国軍の合同参謀本部によると、今回の訓練では北朝鮮が発射した仮想のミサイルを最も近いところに配置された韓国海軍のイージス艦「世宗大王」がまず探知し、その情報を米海軍イージス艦が受け、米軍データリンクシステムの中継で日本海上自衛隊に伝えた。米海軍は東海で作戦中のイージス艦に搭載されたSM3ミサイルで北朝鮮のミサイルを迎撃し、日本はミサイルの破片が落下する状況に対処するというのが訓練の核心内容だ」

     

    北朝鮮が、ミサイル実験を強行しているのは、米国へ直接交渉を呼びかけている面が大きい。無論、朝鮮有事になれば、米韓軍が対応すべきであり、日本はせいぜい在日米軍による基地利用を認める程度であろう。自衛隊が、米韓軍へ加わることなど想定外だ。韓国のために、日本人の血を流すことなどあり得ないことである。国民感情が許さないであろう。


    (2)「今年初めて実施した今回のミサイル防衛訓練は、すべて仮想のシナリオとシミュレーションで進行されたが、その意味は大きい。文在寅(ムン・ジェイン)政権が韓日関係を政治的に利用したことでふさがった両国の軍事協力が再開されているという点だ。特に破棄直前だった韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が今回の訓練を通じて事実上復元されたという」

     

    GSOMIAは、軍事情報収集に不可欠なシステムである。この問題を巡っても韓国は、日本へ圧力を掛けるべく機能停止を弄ぶという非常識な振る舞いをした。愚かなことをやったものだ。こういう韓国の本質が変るとは思えないのである。

     

    (3)「韓日両国の安保協力は正常化を越えて、より一層拡大されるのがよい。北朝鮮が韓国と日本、米国本土に到達する核ミサイルを保有しているという点で、韓日の軍事協力はいつよりも至急で重要だ。さらに在日米軍基地は国連軍司令部の重要な後方基地であり、北朝鮮のミサイルの標的となる。朝鮮半島有事の際、日本が直接・間接的に関与するしかない理由だ。今回の訓練をきっかけに韓日両国はGSOMIAを通じて情報交流をより一層拡大する必要がある」

     

    日本は、朝鮮有事に関わってはならない。韓国は「クアッド」に参加していないのだ。この区別は、はっきりさせておくべきであろう。

     

    (4)「さらに日帝強制徴用賠償問題も一日も早く解決し、過去から続く感情を払拭しなければいけない。18日の独ミュンヘン安全保障会議で朴振(パク・ジン)外交部長官は林芳正外相との会談後の記者会見で「日本側に誠意のある政治的決断を促した」と述べた。日本政府も誠意を尽くして賠償問題解決に取り組むことを期待する。いま国際状況は世紀的な安保転換点に近づいている。ウクライナ戦争は戦争拡大と共に長期化する余地が大きい。中国が2027年ごろ台湾に侵攻する可能性が言及され、北朝鮮も遠からずICBM(大陸間弾道ミサイル)と戦術核を完成させて韓日米を持続的に脅かすと予想される」

     

    徴用工賠償は、解決済みの問題である。韓国大法院の国際法違反判決に、日本が付合う必要はない。日本は、毅然と対応すべきであって妥協すべきでない。

     

    (5)「欧州と台湾、朝鮮半島で同時に危機が憂慮される状況だ。その過程で自由民主主義国家と権威主義国家の間に新冷戦の構図が形成される可能性も排除できない。したがって韓国政府は韓日関係を早期に復元し、近づく複合的安保危機に積極的に対処する時だ」

     

    韓国は、クアッドで参加するかどうか意思表示すべきである。この問題を曖昧にして、日本に防衛して貰いたいなどという虫の良い考えは捨てることだ。

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    韓国野党は、国会で絶対多数を握っていることから、支持基盤の労組にさらなる力をつけようと法案を準備している。現状ですら、「貴族労組」と揶揄されるほどの力を振るい、自由自在に政治ストまで行なっている。韓国は、合計特殊出生率が「0.78」と史上最悪記録を塗りかえている中で、労組だけ「厚遇」を受けられればそれで由とする姿勢は、韓国を滅ぼす危険な動きであろう。

     

    『中央日報』(2月22日付)は、「巨大強硬労組の改革なしに未来はない」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「二大労総の逸脱行為が韓国社会を病ませている。国民の住居安定と直結する建設現場が一つの事例だ。国土交通部の調査によると、タワークレーン運転士438人が建設会社から1人あたり平均5600万ウォン(約580万円)の月例費を受けていたことが明らかになった。その大半が全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)に所属する組合員だ」

     

    韓国のタワークレーン運転士438人が、建設会社から毎月1人あたり平均5600万ウォン(約580万円)の不明朗金を、月給とは別に受け取っていたという。労組の圧力で得た金だ。

     

    (2)「月例費とは月給とは別の一種の「上納金」だ。上位20%は平均9500万ウォンを受けたが、2億2000万ウォンを受けたケースもあった。摘発された総額は243億ウォンにのぼる。銀行口座で確認された数字がこの程度であるため、実際の上納はさらに広範囲で根深いとみられる。金額も金額だが、労働組合の形態はさらに驚く。月例費を出さなければ怠業し、非労働組合員には仕事を任せないよう会社に圧力を加え、さらには労働組合に加入させなかったという。これによる工事遅延、工事費増加などの被害はそのまま国民が負う。他の勤労者の働く機会を封じながら裏金を受けて民生を厳しくする横暴だ」

     

    下線部は、労働組合が圧力を掛けていることを証明している。建設会社が「月例費」を出さなければ、怠業で対抗したのだ。つまり、ストライキだ。建設会社が、非労組員にタワークレーン運転をさせないように圧力を掛けて建設会社へ損害を与えてきた。これは、暴力団と同じ振る舞いである。

     

    (3)「二大労総は、組織的に政府の会計資料提出要求を拒否した。民主労総所属の労働組合は25%、韓国労総は39%だけが資料をまともに提出した。権性東(クォン・ソンドン)国民の力議員室によると、二大労総は過去5年間、政府・広域地方自治体から1500億ウォン以上の支援を受けた。さらに労働組合の会費に対して相当な規模の税額控除を受けてきた。すべて国民の税金だ。にもかかわらず最小限の会計透明さえも拒否するのは巨額の用途に問題があることを自認するようなものだ」

     

    韓国の労組は、政府や自治体から補助金を受けている。公金の支給を受けている以上、公的な監査を受けることは義務である。それすら拒否しているというから驚きである。第一、労組が公的な補助を受けること自体、間違っている。これでは、形式的にも政治から独立性を保っているとは言い難い存在になる。韓国労組は、甘やかされているのだ。大人になりきれない存在である。

     

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、「既得権の強硬労働組合の弊害が終息しなければ大韓民国の青年の未来はない」と述べた。韓国社会の未来のための労働改革は巨大労働組合の違法・脱法解消で第一歩を踏み出さなければならないという主張には説得力がある。

     

    (4)「野党の『共に民主党』と『正義党』が昨日、国会環境労働委でいわゆる「黄色い封筒法」を強行処理した。労働組合法第2・3条改正案だが、労働組合のスト可能範囲を拡大し、ストで損害が生じた企業の損害賠償訴訟を以前より厳格に制限する内容だ。政府と財界が「スト万能主義を招く」として反対してきたが、巨大野党が数の優位で強行した」

     

    最大野党は、韓国労働組合をさらに強い存在にすべく新たな立法を目指している。与党は、絶対反対の姿勢だが、「多勢に無勢」で強行されるだろう。

     

    (5)「改正案は、労働争議の定義で「勤労条件の決定」という表現を「勤労条件」に変えた。現在は団体協約締結の過程でのみストが可能だが、法が通過すれば団体協約締結後にもいつでも勤労条件の解釈をめぐりストができる。労使間の隔たりをストで解決しようとする傾向が強まれば深刻な問題だ。最も大きな問題は違法ストに対する企業の損害賠償請求を事実上禁止する効果が生じる点だ。改正案はスト労働者相手の損害賠償請求に関連し、裁判所が賠償義務者別の帰責事由と寄与度に基づき個別的に責任範囲を定めるようにした。ストは集団行為だが、組合員別に立証しろというのは請求自体を難しくする可能性が高い」

     

    この法案が成立すれば、労組はいつでも勤労条件の解釈をめぐりストができることになる。現在でも「貴族労組」と呼ばれて自由自在にストを行なっている。新法が成立すれば、さらにその頻度が高まるのだ。「貴族労組」から「皇帝労組」へ権力アップになろう。しかも、違法ストへの賠償を免じると言うのだ。これが成立すれば、韓国経済は滅びるであろう。

     

     

    テイカカズラ
       


    中国は、3年間のゼロコロナが終わって経済回復に向け期待を膨らませてきた。だが、「春風」どころか厳しい風が吹き付けている。春節(旧正月)後の工員募集は小規模なもので済んでしまった。人材派遣会社は、求人数が少なくて拍子抜けの状態である。 

    『東洋経済オンライン』(2月22日付)は、「中国の電子機器工場で『求人減少』の背景情 春節明けの採用を早々と切り上げ、賃金も低下」と題する記事を掲載した。中国『財新』記事の転載である。 

    中国では元宵節(旧暦の115日。新暦では今年は25日)を過ぎると、春節(旧暦の正月)を故郷で過ごした出稼ぎ労働者が続々と都市部に戻り、働き口を探し始める。企業もそれに合わせて求人活動を行うが、今年は様子が違う。スマートフォンなどのエレクトロニクス製品やその部品を生産する工場の多くが、求人活動を早めに切り上げているのだ。

     

    (1)「浙江省の人材派遣会社で採用責任者を務める徐さんは、「今年の活動のピークは6日間で終わった。1月24日から27日まで連日300人を面接した後、2月1日から3日まで200人余りを追加募集しただけだった」と、財新記者の取材に対してそう語った。徐さんの会社は華東地区の工場に(専門技術を持たない)一般工員を派遣しており、顧客リストには太陽光パネル大手の晶科能源(ジンコソーラー)、電子機器大手の聞泰科技(ウィングテック・テクノロジー)などが名を連ねる。例年なら大手企業の求人数は膨大で、人材派遣会社は4月まで労働者集めに忙しいのが常だった」 

    人材派遣会社は例年なら、春節後から4月までは労働者集めに忙しかった。今年は全く様相が異なり、2月3日までで求人活動を終えたほど。何か、異変が起こっているようだ。 

    (2)「徐氏は、「新型コロナウイルスの防疫措置が緩和されたため、今年は(春節明けの)顧客の人材需要は旺盛だろうと期待していた。ところが現実は違った。求人について数百社の企業に打診したが、『(製品の)受注量が少ないので、急いで工員を雇う必要はない』という返事が大半だった」と言って肩を落とす」 

    求人について数百社の企業に打診したが、企業側は受注量が少ないので新規に工員を募集するまでもないというのだ。受注減は、内需か外需かは不明であるが、過去にない現象である。

     

    (3)「労働力需給の変化とともに、賃金水準も低下している。例えば電子機器の受託製造サービス大手、富士康科技集団(フォックスコン)の一般工員の時給は、ピーク時には30元(約579円)に達していた。それが直近では23~24元(約444~463円)で推移している。徐氏の説明によれば、中小企業の賃金は大企業に「右へならえ」で上下動する。昨年の時給の相場は17~26元(約328~501円)だったが、今はそれが17~22元(約328~424円)下がっているという」 

    受注量が減れば、時給も下がることになる。ピーク時には、大企業で30元も払っていたのが、現在は23~24元と2割も下がっている。中小企業では、17~22元という。時給は、受注動向に敏感な反応をしている。 

    (4)「華東地区だけではない。華南地区最大の一般工員の人材市場がある広東省深圳市の龍華区でも、求人状況は芳しくない。「われわれの顧客に、人手不足の工場はほとんどない。製品の受注が落ち込んでいるためだ」。現地の人材派遣会社の担当者はそう話す。この担当者によれば、なかでもフォックスコンや立訊精密(ラックスシェア)など、アップルの製品や部品を受託生産している工場の求人減少が目立つという」 

    下線部のようにアップル製品関連の受注が減っている。これは、スマホの販売減のほかに、アップルが「脱中国」でインドやベトナムへ生産を移管していることも響いているであろう。中国での肝心のスマホなどの販売は、どうなっているか。これが、芳しくないのだ。

     

    『東洋経済オンライン』(2月22日付)は、「中国半導体SMIC、『設備稼働率』が急低下の焦燥」と題する記事を掲載した。『財新』記事の転載である。 

    中国の半導体受託製造(ファウンドリー)最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の業績に黄信号が灯った。SMICの説明によれば、昨年10~12月期の売上高が、7~9月期より落ち込んだ主因は、設備稼働率の低下と半導体の販売量の減少だ。設備稼働率は2022年通期では92%だったが、10~12月期に限れば79.5%へ低下した。 

    (5)「SMICの説明によれば、10~12月期の売上高が79月期より落ち込んだ主因は、設備稼働率の低下と半導体の販売量の減少だ。設備稼働率は2022年通期では92%だったが、10~12月期に限れば79.5%に低下した。10~12月期の売上高が79月期より落ち込んだ主因は、設備稼働率の低下と半導体の販売量の減少だ。設備稼働率は2022年通期では92%だったが、10~12月期に限れば79.5%に低下した。低迷が目立つのがスマートフォン向け半導体だ。10~12月期の総売上高に占めるスマホ向け半導体比率は28.6%と、前年同期比2.6ポイント低下した。「通常ならスマホ向け比率は35~45%であり、深刻な落ち込みだ」と、趙氏はコメントした」 

    SMICの10~12月期の不振理由は、操業度が80%割れになったこと。また、スマホ向け半導体が、28.6%と3割を切ったことだ。通常ならば、全体の35~45%あるものが急激な落込みである。中国の半導体自体が落込んでいるように、電子機器の需要は低迷を予告している。

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