勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    春節後の出稼ぎ労働者は、意外にも元の職場へ戻る人々が少なく、大都市では工場労働者不足が深刻化している。出稼ぎ労働者は、ゼロコロナで3年ぶりの帰郷になった。大都会でのゼロコロナ生活が余りにも閉鎖的であったので、故郷に近いところで職場を探す人達が増えているのだ。ここから見える構図は、中国の「世界の工場」に赤信号が灯っていることである。ゼロコロナ後遺症は、予想外の方向へ動いている。 

    『ブルームバーグ』(2月20日付)は、「ゼロコロナの傷跡、中国の優位さ損ねる恐れ 出稼ぎ組が職場に戻らず」と題する記事を掲載した。 

    中国は約3年続けた「ゼロコロナ」政策から経済がすぐに立ち直ると見込んでいる。だが、中国各地の製造拠点には傷跡が残ったままだ。厳格なロックダウン(都市封鎖)などで新型コロナウイルスを徹底的に抑え込むというこの政策は破壊的だった。

     

    (1)「中国最大の衣料品卸売市場がある広東省広州市の中心部には、出稼ぎ労働者がなかなか戻ってこない。仕事の空きがあるという段ボール製の看板を掲げている人もいれば、働いてくれそうな相手に、条件や福利厚生について数分間でいいから話を聞いてほしいと頼み込んでいる人もいる。こうした人々は工場経営者や採用担当者だ。長期にわたるロックダウンや工場閉鎖で給料が支給されなかったこと、さらに厳しいコロナ規制への反発で激しい抗議活動が起きたことが働き手の心理に影響を及ぼしている」 

    輸出企業が密集する広州では、求人のビラが壁一面に張られている。これを見れば、人手不足の深刻さが一目瞭然である。「求人呼び込み」まで現れているほどだ。

     

    (2)「広州の海珠区は昨年遅く、約1カ月封鎖された。同区で人材集めをしているタン・ニンさんは1週間で1人も働き手を確保できなかったと言う。彼女が10年余り働いている衣料品工場には今年の春節(旧正月)前、30人余りの従業員がいたが、春節連休恒例の帰省から戻ったのは10人だけだった。タンさんは2月に入ってからのインタビューで、従業員の気持ちは分かると話した。「故郷から遠く離れた大都会にいて、一生働いても家を買えず、共同トイレの古い小さな部屋に住み、1日12時間働いている。唯一の目標はできるだけ稼いで、できるだけ貯金することだ。そこにロックダウンが始まった。いつまで無給か全く分からなかった」という現実を語った」 

    出稼ぎ労働者は、共同トイレの古い小さな部屋に住み、1日12時間も働いている。だが、家を買えるほどの蓄えも不可能だ。こういう絶望的な生活に見切りをつけて、故郷で働いて人間らしい生活ができる道を選択する向きが増えている。

     

    (3)「中国の労働市場が抱える長期的な構造問題は悪化しつつある。世界製造業生産の約3割を占める中国で、出稼ぎ労働者が生産現場に戻りたくないと考えているのだ。コロナ禍前、人口高齢化で労働力はすでに縮小。若者は安い賃金で、労働集約的な産業で働きたがらなくなりつつある。中国の輸出経済を支える出稼ぎ労働者2億9600万人のうち、どの程度の人々が生産現場に復帰していないかについてのデータはない。だが、従業員や管理職へのインタビューは、軌道に戻るのに一部のセクターが直面する困難を浮き彫りにする。雇用主は働き手を確保するために昇給や何らかの奨励策を提示せざるを得なくなっている」 

    3億人弱の出稼ぎ労働者が、中国の輸出を支えている。この貴重な人材が他産業で働けば、輸出に大きな影響が出るはずだ。下記のように、出稼ぎ労働者の4割が地元での就職を希望し、すでにその15%は転職している。人手不足が、現実に起ころうとしている。

     

    (4)「中国共産党の習近平総書記(国家主席)が進めてきたゼロコロナ政策で最大級の打撃を受けたのがこうした出稼ぎ組だ。テスラやアップルなど世界的ブランドに製品を供給する工場などもロックダウンの対象となった。工場の稼働停止で何カ月も無給で過ごし、外部との接触を基本的に遮断する「バブル」方式で現場以外の誰とも連絡を取ることができず、家族に会えない厳しい状況に見舞われた労働者もいる。ジョーンズ・ラング・ラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト、龐溟氏は「ロックダウン中に不確実さを経験したことで多くの出稼ぎ労働者が、故郷で仕事をしようと決意を固めた」と指摘。「地方のインフラ整備が進んだことや当局の支援策」も地元での職探し増加に寄与していると述べた」 

    ゼロコロナ最大の被害者は、出稼ぎ労働者とされる。不安な生活を3年間も余儀なくされた以上、もはや大都会の工場へは戻りたくない、という心境になっているのだ。

     

    (5)「オンライン求人サイトの智聯招聘が実施した調査によれば、春節で帰省した労働者の4割近くが故郷での仕事を希望しており、そのうちの約15%がすでに職に就いている。広東省仏山市は出稼ぎ労働者を募るため1月下旬に貴州省に代表団を派遣。チャーター便や鉄道で働き手を連れてくる企業もある。北京市や上海市、浙江省、福建省は企業に生産再開を促すため補助金を支給している」 

    輸出企業は、チャーター便などを用意して工場復帰を促しているという。当然、賃金も上がる。 

    (6)「在中国欧州連合(EU)商工会議所のヨルグ・ワトケ会頭は、労働集約型の産業に働き手を呼び込むために必要な高い賃金は、低コストの労働力供給源としての中国の長年の優位性を損なう可能性が高いと分析。「中国は間違いなく、極めて短期間のうちに、労働集約的な分野で得ていた全ての機会を失うだろう」と述べ、バングラデシュやベトナム、インドネシアなどが有利になると予想。「中国が競争力を維持したいのであれば、出稼ぎ労働者に気を配る必要がある」と論じた」 

    中国は間違いなく、極めて短期間のうちに、労働集約的な分野で得ていた全ての機会を失うだろう、という厳しい「予告」も出てきた。事態は深刻である。

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    民族のしがらみとでも言うのか、韓国左派の外交論は日米を警戒し中国を潜在的な庇護者と見ている節がある。歴史的に言えば、1000年単位で中国の支配下に組込まれていたことが、遺伝子として「中国怖し」という心理状態を生み出しているのであろう。

     

    金大中政権(1998~2003年)で、統一部長官を務めたチョン・セヒョン氏が最近、『チョン・セヒョンの洞察―国際秩序から時代の答を探す』を出版した。このチョン氏へのインタビュー記事を取り上げてみた。節々に、習近平氏も主張する「米国衰退・中国発展」という古くさい前提で韓国外交の在り方を主張しているのだ。時代錯誤的な印象を拭えないのである。

     

    『ハンギョレ新聞』(2月20日付)は、「米国寄りから抜け出し、『骨のある』自国中心の外交が韓国には必要だ」と題するインタビューを織り交ぜた記事を掲載した。

     

    (1)「2月14日に会ったチョン氏は、「米国の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏も十数年前に『米国は衰退し、中国が浮上している』と診断したにもかかわらず、韓国の外交官や国際政治学者の中には依然として米国側に立っていればうまくいくと信じている人が多い」と残念さをにじませた」

     

    下線部は、キッシンジャー氏が「中国代理人」のように振舞っていた時代の話である。不動産バブルに塗れ人口減に陥った中国経済が、米国を追い抜くのは不可能である。10年以上も昔の思い込みで、米中を比較するのはナンセンスである。語るに落ちたと言うべきだろう。

     

    (2)「韓国は、『米国と中国をうまく活用するなど等距離外交をしなければならない』と述べた。「韓国の最大交易国である中国は2010年にすでに世界経済のナンバー2になっており、2049年には米国の国内総生産(GDP)を追い越すという目標に向かって走っています。韓国が世界経済10位になったのも中国のおかげです。にもかかわらず、尹大統領はNATOに行って『脱中国』を叫んだのだからもどかしい」

     

    韓国が、米中二股外交を仕掛けられるのは平和時だけである。現在のように、冷戦に入っている中で、二股外交は最も危険であり、中国に利用されるだけだ。韓国は、米韓同盟というしっかりした杭に繋がっていることで、中朝ロからの侵攻リスクを避けられる環境になっている。

     

    (3)「チョン氏は、米国の言うことに従うだけのけの外交は、韓国が日本の下に置かれる結果を再び招きかねないと懸念を示した。「今、日本は米国の副将の役割を果たしています。米国の力が弱まった時『自分が出て中国と11で対抗し米国的秩序を維持する』として、米国の委任を受けようとするでしょう。実は米国中心の秩序は口実にすぎず、日本が中心となることを夢見ているのです。現在、日本の軍艦が掲げている旭日旗がそのような野心をよく示しています。米国にとって韓国は日本の下です。米国ばかり追いかけていると、日本の下に入るしかありません。しかし、中国とも良い関係を維持すれば、中国の力が強くなる時、韓国が中心国に入ることがより容易になります」と「

     

    下線部分は、妄想と言うほかない部分だ。日本は、韓国を支配して何のメリットがあるのか。ゼロ以下である。第一、米国経済は依然として世界1位をキープし続けられる「科学技術力」と「プラグマティズム」という実践哲学に裏付けられた国家である。米国を甘く見ると、「第二の習近平」になるだろう。

     

    (4)「南北関係の見通しについては、「南北関係にも四季がある」としてこのように答えた。「今は冬の時期に入っています。でも、英国の詩人シェリーが『冬来りなば春遠からじ』と詠んだように、次の政権は金大中・盧武鉉政権時代のように南北関係の春を迎える可能性があります。もちろん『金大中-イム・ドンウォン』『盧武鉉-イ・ジョンソク』のような大統領と参謀の組み合わせがあればの話ですが」と指摘する」

     

    北朝鮮は、完全に中ロ枢軸に組込まれている。北朝鮮自体に、もはや「南北融和」という発想が消えている。世界情勢は、刻々と動いていのだ。20年前の発想法で考えていては危険である。

     

    (5)「チョン氏は著書の最後に、北朝鮮は核を放棄したウクライナが侵攻されるのを見て、「絶対に核を放棄してはならない」と考えただろうとし、「今後、米国が北朝鮮の核保有を既成事実とする交渉に韓国を追い込み、不意打ちを食らう恐れもある」と述べた。「核保有国であることを認められた北朝鮮が軽量化・小型化した核爆弾を実戦配備するのが、韓国にとって最悪の状況です」。ならば、どうすれば良いだろうか。「北朝鮮が韓国を軍事的に威嚇すれば、彼らの暮らしが脅かされるほど、南北の経済的な依存度が高まるよう構造化すべきです。今の韓中関係がまさにそのような状態ですね」と指摘」

     

    北朝鮮は、前述の通り「中ロ」枢軸に組込まれている。中国自身が、南北融和を望んではいないのだ。北朝鮮は、中国の安全保障にとって緩衝地帯であるからだ。

     

    (6)「チョン氏は、北朝鮮との関係を統一でなく、欧州連合(EU)のような国家連合を目指すべきという持論も示した。「事実上、南北が二つの国家になって久しい。なにより、経済力の差が大きすぎます。南北の所得の差は28倍にもなります。この状態では連合も容易ではありません。統一は北朝鮮体制に変化が生じ、南北の類似性と同質性が高まった時点で、南北の住民が決める問題です」

     

    (5)で、私が指摘した理由で、南北の国家連合はあり得ない。もし、実現するとすれば、中国共産党が崩壊した後であろう。韓国左派が、このような前提を立てることは不可能だ。中国世界一論を信じているためである。

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    中国で最近、数万人の高齢者が街頭に繰り出して医療保険改革に抗議した。高齢者までがデモをする背景には、深刻な地方政府の財源難問題がある。これまでの莫大な費用を伴った「ゼロコロナ」政策の後、各都市の政府が財政支出引き締めへと動いているのだ。デモは、中部の湖北省武漢市と北東部の港湾都市である遼寧省大連市で行なわれた。高齢者中心の群衆が、数百人の警察隊とにらみ合う様子が動画に捉えられている。

     

    『ウォール・トリート・ャーナル』(2月20日付)は、「国の高齢者デモ、山積する問題を象徴」と題する記事を掲載した。

     

    中国で医療手当の削減を巡り最近発生した退職高齢者による抗議デモは、同国が抱える複雑に絡み合ったさまざまな問題を象徴している。高齢化や地方財政の逼迫、社会保障制度の不備、多額の債務などの問題だ。

     

    (1)「デモの直接的なきっかけとなったのは、武漢市などの地方政府が推進する、医療補助の減額につながる医療保険改革だ。改革では、強制加入の貯蓄制度で個人口座から拠出された資金の一部が、公的な保険基金と一緒にプールされる。個人口座の余剰分の一部が公的な医療保険のために使われることになるが、高齢のデモ参加者は政府に貯蓄を奪われると感じている。中国では昨年、数十年ぶりに人口が減少に転じた。高齢化は急速に進んでおり、政府は政治や財政面でますます厳しい選択を迫られることが予想される。中国では強固な社会的セーフティーネットが構築されていないため、なおさらだ。個人が負担する医療費の割合は高く、多くの年金は微々たる額しか受け取れない」

     

    高齢者は、政府の医医療保険改革で高齢者の個人口座の余剰分の一部が、公的医療保険に使われることに反対している。高齢者には、自分の貯蓄が他人の医療保険に使われるという感覚である。高齢者は、わずかな年金を貯めて大事に使っている。それだけに、怒りは大きいのだろう。

     

    (2)「地方政府では厳しい財政状況が目立つ。土地売却収入は2022年に前年比23%減少し、ここ数年は新型コロナウイルス対策に絡む支出が膨らんだ。広東省では昨年のコロナ対策費が710億元(約1兆4000億円)に達した。中国は感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策をあきらめ、不動産分野では締め付けを緩和している。ただ、当面は土地売却収入が以前の水準に戻ることはないとみられる」

     

    地方政府は、財源難に陥っている。土地売却収入は、2022年に一昨年より23%も減少した。その上、ゼロコロナ経費が莫大な額に上っている。こういう懐事情により、「取れるところから取る」という当局の恣意性が、高齢者の個人口座を狙ったものだ。

     

    (3)「地方政府傘下の投資会社「融資平台(LGFV)」を巡っては、国内発行の債券のうち約4兆5000億元が年内に満期を迎えるか、早期償還の対象となると格付け会社ムーディーズはみている。LGFVは地方政府が簿外で資金調達する仕組みだが、財務状況は常に不安定だ。LGFVによる土地購入が昨年は急増し、状況悪化を招いたとみられる。調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスによると、LGFV債発行体の平均総資産利益率は22年前半に約0.4%となり、21年の0.75%から低下。だが、発行体が支払わなければならない金利は平均で4.3%になるという。ギャブカルによると、LGFVの民間債権者に対するデフォルト(債務不履行)は過去1年間に約166回起きている」

     

    地方政府は、投資会社の「融資平台」(LGFV)に莫大な簿外負債を抱えている。1000兆円にも達すると推計されている。LGFV発行体の平均総資産利益率は、22年前半に約0.4%。発行体が、支払わなければならない平均金利は4.3%だ。0.4%の平均総資産利益率で、平均金利4.3%を支払える筈がない。かくてデフォルトになる運命だ。

     

    (4)「今後も同様のことが繰り返されるかもしれない。S&Pグローバル・レーティングのシニアディレクター、ローラ・リー氏は「債務再編が少なからず発生する可能性がある」とし、「財政基盤が脆弱な地方政府と関連したLGFV」で特にその傾向が強まるとした。こうした「隠れ債務」に対し中国政府は監視や財政規律の強化を進めてきた。大規模な救済措置は避ける考えだが、成長を重視した以前のような政策に軸足を戻す姿勢を強めている。LGFVの間で破綻が起きれば、政府は難しい選択を迫られることになる」

     

    地方政府は、隠れ債務の返済が不可能な事態に立ち至っている。こういう状況だけに、地方政府は、まさに「生きるか死ぬか」の境に来ている。高齢者の個人口座の余剰資金を狙う裏には、こういう財政切迫感があるのだ。

     

    (5)「住宅市場では長期にわたり同じような力学が作用しており、状況は似ていると言える。昨年の不動産債務危機に匹敵する大規模な崩壊は起こりそうにない。それでも政府は今年、難しい判断が迫られそうだ。財政規律は重要なものの、住宅所有者だけではなく、増え続ける年金受給者を突き放すことは得策とは言えない。中国の消費拡大や「常態への復帰」に対する国内外企業の期待が大きいだけに、なおさらだろう」

     

    住宅市場が回復して、地価も再び値上りに転じることは予想もできないことだ。不動産バブル崩壊とは、こういう惨憺たることを指す。中国でいま、それが始まっているとみるべきであろう。

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    1980年代に大学生活を送った「86世代」は、反日チャンピオンである。皮肉にも、この世代が監督・製作した反日映画は、興行成績が振るわず苦境に立たされているという。「韓国は善・日本が悪」という構図の映画では、観客を引きつけられないのだ。

     

    韓国の20代・30代の意識では、「最も遠く感じる国」を尋ねる質問に対して、北朝鮮(29.1%)に次いで中国(25.3%)、ロシア(24.5%)が上がった。日本(18.5%)は朝中ロの後である。米国(2.6%)の人気は圧倒的である。『朝鮮日報』(1月29日付)が報じた。この調査によれば、若者による日本への嫌悪感は大きく低下している。いつまでも、反日がビジネスになる時代は終わろうとしているのかも知れない。

     

    『朝鮮日報』(2月19日付)は、「『何が何でも反日』にNO、韓国で興行不振続く抗日映画」と題する記事を掲載した。

     

    映画興行を助ける材料とされてきた「抗日(反日)」が、最近の映画館街では今ひとつになりつつある。

     

    (1)「李舜臣(イ・スンシン)将軍が主人公の『ハンサン -龍の出現-』は観客726万人を集めたが、その前編に当たる2014年の映画『バトル・オーシャン 海上決戦』(1761万人)に比べると観客動員数が半分にもならず、興行的には振るわなかった。安重根(アン・ジュングン)義士の最期の1年を描いた映画『英雄』=原題=は公開されてから2カ月近くになるが、損益分岐点(340万人)をいまだに超えられていない。ソル・ギョングとイ・ハニの主演で朝鮮総督暗殺作戦を描いた『幽霊』=原題=、認知症の高齢者が60年ぶりに親日派に復讐(ふくしゅう)するという映画『リメンバー』=原題=は惨敗した。抗日映画は昨年夏からずっと興行不振に陥っているのだ」

     

    下線部は、ユン政権が登場して日韓関係修復に動いていることも影響しているであろう。政治家が、「反日」を叫ぶかどうかが空気を変えるのだ。

     

    (2)「新型コロナウイルス感染拡大前の2010年代は『バトル・オーシャン 海上決戦』『暗殺』『密偵』『鳳梧洞戦闘』=原題=など、日本を敵と設定した映画のほとんどが大きな収益を上げた。例外は『軍艦島』と『隻眼の虎』だけだった。ところが、最近の抗日映画は相次いで無残な興行成績となっており、「映画館街で『無条件の反日』や『ノージャパン(日本製品不買運動)』が通用した時代は終わった」という見方が出ている」

     

    文政権の異常な反日が終わって、韓国の雰囲気は変わってきたのであろう。

     

    (3)「映画市場アナリストのキム・ヒョンホ氏は、「商業映画がよく使っていた従来の抗日テーマは、今後の市場をリードする20~30代の観客たちには訴える力があまりない」「かつては『日本に勝ちたい』という心理がヒットの助けとなったが、最近の若い観客たちはその段階を通り過ぎて『克日』を達成し、今は日本を見る目に余裕ができているためだ」と分析した。「製作費100億~200億ウォン(約10億~20億円)の映画を作る監督・プロデューサー・投資家はほとんどが40~50代なので、過去の慣性から抜け出せないでいることが問題だ」という指摘もあった」

     

    韓国の若者は、日本旅行で実情を理解するようになっている。何よりも、日本旅行が最大のレジャーの彼らにとって、日本を悪し様に叫ぶ映画と距離を置いているのだ。

     

    (4)「『ハンサン -龍の出現-』は、韓国歴代興行成績ランキング1位『バトル・オーシャン 海上決戦』の続編ということで、観客動員数1000万人を達成できるかどうかに関心が寄せられていた。ところが、新型コロナの防疫措置が解除された夏のかき入れ時に公開されたものの、興行成績は『バトル・オーシャン 海上決戦』より1000万人も少なかった。今年末に公開予定の「李舜臣三部作」最終作の『露梁(ノリャン):死の海』=原題=も興行を楽観できなくなった。『英雄』はミュージカル映画という違和感や、主人公たちが歌う時の動機付けが不十分な点などが問題視されて興行不振だ」

     

    李舜臣は、秀吉の時代に朝鮮で活躍した英雄である。その映画に、これだけの期待を寄せることが理解を超えている。日本でいえば、「加藤清正」の映画三部作ができたとしても、興行的に成功することはない。韓国人の愛国心は熱狂的であるが、それも冷めてきたのだろう。

     

    (5)「映画評論家のユン・ソンウン氏は、「『ハンサン -龍の出現-』と『英雄』は実在の人物を取り上げているからいいとしても、『幽霊』や『リメンバー』のように悲壮感でアプローチする抗日映画は時代錯誤的だ」「動画配信サービスの時代になり、コンテンツの国籍を問わず『面白ければ見る』という実用主義が大勢になっている。無条件に『反日』や『クッポン(盲目的な愛国心)』を強調する映画は以前ほどのパワーがない」と評した」

     

    韓国の「反日」は、民族主義の発露としても、いずれ消えるであろう。日本で戦後、「反米」を叫んでいた革新政党もその声は聞えない程度になっている。日本で今、「反米」を叫べば、中国の回し者かという目で見られる。時代の変化とは、こういうことを指すのであろう。

     

     

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    中国は、住宅ローンの下限を撤廃して新規住宅需要につなげる方針であった。現実は、想定外の借換による金利負担減や、前倒し返済に拍車を掛ける事態になっている。消費者は、住宅の値上り期待を持たず堅実な見方になっている。利下げすれば、新規の住宅需要を喚起できる時代でなくなってきたようだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月19日付)は、「中国の住宅ローン、金利低下で借り換えや前倒し返済増加」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国で住宅ローンの前倒し返済が増加している。マンション取引を活性化させたい政府の方針でローン金利が大幅に下がり、家計が借り換えで金利負担を減らそうとするためだ。銀行は金利収入の落ち込みを警戒し、前倒し返済の受け付けを制限。手続き完了まで半年かかる例もあり、社会問題となっている。「昨年末あたりから、住宅ローンの借り換えや前倒し返済を希望する顧客が一気に増えた」。北京市にある大手行の支店で働く男性は語る。こうした動きは、北京や上海のほか省都クラスの大都市で目立つという。住宅ローンの金利が大きく下がったためだ」

     

    住宅ローン金利の引下げが、新規貸出需要に結びつかず、借り換えや前倒し返済に拍車が掛かっている。皮肉な現象である。

     

    (2)「中国人民銀行(中央銀行)によると、昨年12月に新たに適用した金利は全国平均で年4.26%となり、調査を始めた2008年以降で最低を更新した。前年同月からの低下幅は1.37ポイントで、7年ぶりの大きさとなった。23年に入っても金利の引き下げが続く。人民銀行などがマンション販売の不振が長引く地域に限って、1軒目で現在年4.%と定める下限金利より低い金利の設定を認めたためだ。不動産調査の貝殻研究院が1月末に調べた主要103都市のうち、30都市で年4.%を下回り、最低は年3.%となった

     

    1月末の調査では、30都市で最低金利が3.7%まで下がっている。ここまで下がると、借換や前倒し返済の需要を増やすのだろう。同時に、こういう層は2軒目の住宅を持っていない層だ。銀行との関係が悪化すれば、さらなるローンを借りる上で障害になるからだ。

     

    (3)「住宅市場を刺激したい当局の思惑とは別に、住宅費の負担を軽くしたい持ち家世帯が借り換えなどに動いた。中国メディアによると、21年に年5%台後半で住宅ローンを借りてマンションを買った人が借り換えた場合、毎月の返済が1200元(約2万3000円)減るケースもある。22年は新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策で中国景気は低迷が続いた」

     

    毎月の返済が2万3000円も下がったケースも出てきた。利下げ効果は大きいが、それでも、新規需要に結びつきにくいのは、経済環境の悪化が原因である。

     

    (4)「家計が株式や不動産の投資で稼ぐ収益も悪化した。富裕層のなかには、手元資金を割高となった住宅ローンの前倒し返済に充ててバランスシートを縮小する動きもある。22年末の住宅ローン残高は38兆8000億元で、前年末比1.%増だった。増加率は初めて1ケタにとどまった。住宅ローンが大半を占める家計向けの中長期融資は減少が続く。返済分を差し引いた23年1月の純増額は前年同月を7割下回った。いずれも新たな貸し出しが伸びないうえ、前倒し返済が増えた影響が見て取れる」

     

    今年1月の新規貸出増加分は、昨年の3割減である。金利が下がっても、新規貸出が減っているのは、先行きの経済見通しの付かない結果だ。

     

    (5)「金利収入が減少しかねない銀行は警戒する。前倒し返済の手続き受け付けを絞り込む店舗も少なくない。インターネット上では、銀行から「希望者が殺到しているため、8月まで待たないと前倒し返済の手続きができない」と通告されたという書き込みも見られた。このほか手続きを始める条件として、銀行が違約金の支払いや理財商品の購入を求める事例もあるという。急いで借り換えをしたい消費者に対して、貸出期間が短い経営者ローンの融資を仲介して手数料を取る違法事業者もおり、金融監督当局の中国銀行保険監督管理委員会が警鐘を鳴らすほどだ」

     

    銀行が、借換や前倒し返済を渋っているのは、利ざや圧縮による減益を忌避したいためだ。銀行経営が、守りの姿勢に変っているのは、新規顧客が得にくい結果である。

     

    (6)「そもそも銀行の収益も景気悪化で伸び悩んだ。同委員会によると、22年の商業銀行の純利益は前年比5.%増えた。伸び率は21年の12.%から縮まった。貸出残高の2割近くを占める住宅ローン関連の収入が落ち込むと、収益全体に影響を及ぼす。ただ金利低下の恩恵を受けられない住宅購入者が不満を募らせて社会問題になる恐れもある。中国の民法典は「債権者(銀行)は債務者(住宅購入者)による前倒しでの債務返済を拒める。ただし債権者が損害を受けない場合は除く」と規定する。前倒し返済で銀行が被る金利収入の減少という機会損失を「損害」と見なすかどうかが議論を呼びそうだ」

     

    22年の商業銀行の純利益は、5.4%増に止まった。21年は、12.%増もあったので、増益率は半減している。住宅ローンの伸び率が鈍化した結果である。住宅ローンは、商業銀行にとってドル箱。今後、住宅販売が落込めば、商業銀行の利益も減ることになる。

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