勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

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    反企業を吹き込む教育界

    銀行と通信の両寡占体制

    労組の既得権益へ斬込む

    低い支持率が改革の壁に 

    韓国社会の「自己評価」は、極めて高いものがある。「漢江の奇跡」によって、朝鮮動乱後の経済が一躍して成長発展したこと。この裏には1965年に、日本からの無償・有償・借款で10億ドル超の経済支援があった。もう一つ、軍事政権を民主化運動によって退陣させたことだ。 

    この二つを成し遂げたという誇りが、韓国人のメンタルティを支えている。ただ、左派は高度経済成長が軍事政権によって実現したので、「漢江の奇跡」をことさら軽視している。文政権は、社会科教科書での扱いを極端に減らさせるという「経済軽視」姿勢を取った。 

    韓国左派は、高度経済成長を軽視しているのだ。一方で、韓国GDPは世界10位になったことから、「先進国の仲間入りした」と宣伝した。軍事政権を否定するが、その経済的成果だけを受入れる左派政権は、複雑な対応を見せている。韓国国論の分裂には、こうした歴史に対する左派の「ご都合主義」が深い影を落としているのだ。

     

    反企業を吹き込む教育界

    韓国の教育界は、左派によって支配されている。反日教育もその一環として強化されている。同時に、「漢江の奇跡」を軽視することに表われているように、「反経済成長主義」「反企業主義」を生徒に吹き込んでいる。具体的には最近、次のような現象が起こった。 

    韓国は今年の大学入試で、延世大学、高麗大学、西江大学、漢陽大学が企業と採用契約を結んで運営する「半導体学科」の学生募集を行なった。だが、合格者の過半は入学を辞退し、追加合格者を発表する事態に追込まれた。受験生は、サムスン電子やSKハイニックスのような大企業への就職が保障されているにもかかわらず、半導体学科への入学を辞退した。医学部や薬学部へ入学手続きをしたという。 

    入学は、個人の選択であるから部外者がとやかく言うべきことではない。ただ、医師や薬剤師を目指すとしても、韓国の人口がこれから急減するということをどこまで知っているだろうか。すでに、小児科医はほとんど要らない時代になっている。こういう韓国の危機を救うには、結婚適齢期の若者が経済的な豊かさを得なければならないだろう。それには、韓国が唯一世界で存在を主張できる半導体に、人生を賭ける若い人たちがぜひとも必要である。

     

    こういう別の視点から自分の人生を考えられなかった裏に、韓国教育界の「反企業主義」が巣食っていると考えられるのだ。多感な10代の若者が、韓国の抱える潜在的危機について考えないのは、これだけでも「コリア・クライシス」が差し迫っていることを示唆しているように思える。 

    韓国で、若者に危機感の共有を希薄にさせている裏に、ポピュリズム(大衆主義)の存在が指摘できる。具体的に言えば、「政治的部族主義」の登場である。「陣営の論理」で仲間内の政治に終始することだ。典型的には、文政権の5年間がそうであった。「政治の司法化」と「司法の政治化」を行い、中立であるべき司法を政治の「僕」にしたのである。こうした過程をへて、韓国教育界は純粋な若者から冷静に未来を判断する機会を奪っているのであろう。「反企業主義」を吹き込んでいる結果だ。 

    銀行と通信の両寡占体制

    韓国は、前述のように「政治的部族主義」がまかり通っている。縄張りの既得権益を守ることである。この政治的部族主義は、韓国経済を極めて硬直化させている。尹(ユン)政権によって、改革対象に取り上げられることになった。

     

    尹大統領は2月15日、「寡占体制である銀行と通信業界の実質的な競争システムを強化するための特段の措置を作って報告せよ」と、関係省庁に指示した。これは、5大銀行と3大通信社が寡占状態によって高利益を上げ、国民の利益に反するという指摘である。 

    昨年末以降、大手銀行の早期退職者が1人当たり6億~7億ウォン(約6220~7260万円)の退職金を受け取ったと推定されているという。新韓、KB国民、ハナ、ウリィ、NH農協の5大銀行における早期退職者は、約2200人にも達した。これは、銀行が政策金利の引上げで自動的に拡大した利ざやによる利益を早期退職金として支払った結果だ。 

    一方で、銀行から融資を受けている者は、高利の支払に窮して食事も満足に取れないと言う「ローン地獄」の人々も出ている。こういう事態を見ると、5大銀行の「高利潤」は寡占によるものという判断が出てくるのであろう。そこで、新しい大銀行を作るように道を開く方向性を模索するとしている。競争原理の導入である。

     

    3大通信社としては、SKテレコム、KT、LGユープラスが事実上の寡占状態である。この寡占状態に競争条件を入れるべく、第4のモバイル通信会社の市場参入を誘導する案も話し合われるという。また、通信料金の区間を細分化し、通信料金の負担を軽減させるとしている。日本では、菅政権時に一律で1割以下の料金引き下げを誘導した経緯がある。韓国も同様な手法を用いるのであろう。 

    尹政権が、5大銀行や3大通信社の寡占体制をヤリ玉に上げた背景に、韓国財閥という大きな寡占体制が存在する。韓国財閥は、戦前の日本が採用した経済システムを導入したものだ。日本は、戦後改革で財閥制度を放棄した。「経済民主主義」に反するという理由からである。韓国は、この古くさい制度を敢えて導入して現在に至っている。それだけに、反国民的な問題を引き起すのは当然であろう。非競争体質が根を張っているのだ。(つづく)

     

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    中国は、習近平氏の発案で始めた「一帯一路」事業で大きくつまずく結果になった。貸付資金は、多くが自己資金でなく借入金の「又貸し」である。相手国の債務返済の遅延によって、中国自身の国際収支の「所得収支」は、1620億ドルの赤字(2021年)で世界ワースト・ワンという不名誉な事態に陥っている。所得収支の赤字は、2020年から1000億ドル台へと急増している。一帯一路事業の失敗を裏づけるものだ。 

    『日本経済新聞』(2月19日付)は、「一帯一路『看板事業に逆風』関連投資6割減 中国『左派』南米を開拓」と題する記事を掲載した。 

    中国の広域経済圏構想「一帯一路」の看板事業に逆風が吹いている。インドネシアの高速鉄道事業では初の死亡事故が発生し、開業がさらにずれ込む観測がある。パキスタンでは港湾整備事業で抗議活動が広がった。一帯一路の投資急減や反中感情の高まりが背景にあるとみられる。

     

    (1)「インドネシアの高速鉄道は首都ジャカルタと主要都市バンドンを結ぶ。中国が日本に競り勝って受注したが、SNS(交流サイト)では「高速鉄道に乗るのが怖くなった」との声が上がる。きっかけは2022年12月中旬に起きた事故。中国人技術者2人が死亡、4人が重軽傷を負った。事業主体に出資するインドネシア国鉄社長は1月末、記者団に開業が1カ月ずれ込み7月になるとの見通しを示した。未敷設の線路が残り、最高時速での試運転も5月末からを予定する。日本が海外で鉄道建設する場合、1年は試運転する。ある日本政府関係者は「客観的にみて7月の開業も難しい」と話す」 

    インドネシアは、高速鉄道建設を中国に任せたことで次々と難題を背負い込んでいる。中国は、不十分な事前調査で請け負った事業ゆえに、工事の遅延や建設コスト増加の事態に陥り、その上人身事故だ。改めて、日本へ任せれば良かったという愚痴が増えている。

     

    (2)「インドネシア中部のスラウェシ島では1月、中国系企業が運営するニッケル製錬所で労働争議が暴動に発展、中国人とインドネシア人の労働者2人が死亡した。争議では22年末に構内で起きた火災事故に関し、会社側に安全対策を求めていた。ニッケルは車載電池の原料で同国政府は外資を呼び込む。中国は最大の投資家だが、地元紙は社説で「インドネシア人の雇用に必ずしも結びついていないとの疑念がある」と指摘した」 

    中国は、インドネシアのニッケル製錬所でも問題を起している。中国だけが利益を上げれば良いという主旨だから、混乱が起こって当然だ。「ウイン・ウイン」という認識が、最初からない結果だ。 

    (3)「中国が一帯一路の「最重要国」とみなすパキスタンでもトラブルが起きる。南西部の港町グワダルでは、22年10月から地元住民らが座り込みの抗議活動を始め、現地の中国人の退去などを求めた。「中国の投資が地元の利益になっていない」との反発があるという。中国にとってグワダル開発は死活的に重要だ。約3000キロメートル離れた新疆ウイグル自治区まで石油やガスの輸送管を敷設する計画がある。米中衝突で仮に南シナ海が封鎖されても、中東産の原油やガスをグワダル経由で運ぶ構想だ。当局が関係者の逮捕に乗り出したものの、工事は抗議活動の影響を受けているとみられる」 

    パキスタンでも問題を起している。南西部の港町グワダルでは、過激派によって中国人が襲撃される事態まで発生している。中国が、グワダルを植民地化するのでないかと危惧されているからだ。

     

    (4)「深刻な欠陥が指摘される事業もある。北東部カシミール地方で中国企業が建設したニーラム・ジェラム水力発電所は水を運ぶトンネルに亀裂が見つかり、当局指示で昨年7月から稼働を停止したままだという。出力は原発1基分の96万キロワットと巨大で、中国では「パキスタン版三峡ダム」とも呼ばれる。パキスタンは恒常的に電力不足に悩まされており、同発電所の停止は無視できない。当局によると、発電コストを月4400万ドル(約59億円)押し上げる」 

    パキスタンの北東部カシミール地方では、水力発電所の「導水トンネル」で亀裂が発生。発電をストップしており毎月、約59億円が無駄なコストになっている。 

    (5)「中国マネーの息切れが、トラブルの背景にある。仏投資銀行ナティクシスの調査では、20~21年の一帯一路関連投資は15~19年と比べて年平均で62%減った。最大投資先のアジアは210億ドル(約2兆8000億円)から70億ドルに落ちた。新型コロナウイルス禍が主因だが、スリランカやザンビアなど融資先が債務不履行になり、貸し出しに慎重になった面もありそうだ。資金不足では安全対策や労働環境改善まで手が回りにくい」 

    中国は、あたかも自己資金を貸付けている形だが、現実は借入金の「又貸し」である。一帯一路事業の資金コストは、商業銀行並みの金利である。長期返済の建設資金の金利が、商業銀行並みでは、債務国が支払遅延に陥って当然である。 

    (6)「米ウィリアム・アンド・メアリー大の調査によると、東アジア・太平洋地域では、一帯一路が始まった13年前後から中国に否定的な人が急増。20年には5割近くに達し、好意的な人の約2倍になった。南アジアでも13年以降に否定的な人が急増し、足元では好意的な人の2倍を超す」 

    東アジア・太平洋地域では、反中国意識が高まっている。一帯一路事業のほかに、南シナ海の領有化が反発を受けている結果だ。

     

     

    あじさいのたまご
       

    中国は、土地国有制を利用し土地売却益を地方財源に組込む「便法」を編み出した。だが、これは新たな「アヘン」になって、中国経済を蝕んでいる。地方財政は、もはや収拾の付かないほど土地売却益へ依存する放漫財政になっている。その土地は、不動産バブルの終焉でもはや高値にもどることもなくなった。隠れ債務の約1000兆円を抱えて、地方政府は二進も三進も行かぬ事態へ落込んでいる。

     

    こうなると、中国は旧ソ連型の権力集中型へ回帰するだろうという見方が出てきた。権力によって吹き出す矛楯を止めるというもの。ソ連は、内部矛楯の激化で最後はあっけない崩壊になった。中国にはこれを回避する秘策はあるのか。それが今、問われている。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月16日付)は、「習近平は『支配を正当化するための経済発展すら放棄』突き進む『ソ連化』の道」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国経済の持続的エネルギーは、土地と銀行部門の国家による独占、司法の独立性欠如、民間部門に対する差別、内需不足によって常に脅かされている。08年の世界金融危機は、党による完全支配を再び推進する口実となった。党=国家は膨大な債務を積み上げてインフラ整備を推し進め、少なくとも当面は高い経済成長を実現した。しかし、投資のほとんどは非効率で、中国は過剰借り入れと過剰設備の悪循環に陥った。さらに問題なのは、借金に頼った巨額の公共投資が民間部門を素通りしたことだ」

     

    土地をアヘンにした。「土地本位制」(学術用語でない)によって、いくらでも財源をつくり出し、軍事費へ注ぎ込むことができた。この便法が、遂に賞味期限切れになって逆回転を始めている。これで、軍事費にもブレーキがかかるだろう。

     

    (2)「土地の国有制と銀行の国家独占は、直接・間接的にGDPの約3分の1を占める不動産部門に深刻な問題を引き起こした。98年に始まった不動産の「市場化」は、国有地を地方政府の収入源に変えるのが狙いだった。この年の土地管理法改正の柱は、地方政府を管轄域内で唯一の土地所有者とすることにあった。しかし、地方政府は土地から得られる利益を最大化するため、不動産の供給を絞って価格つり上げに走った。その結果、中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ」

     

    中国の土地売却益を地方財源に組入れる方式は、中国が最初で最後となろう。英国が、イングランド銀行(中央銀行)創設の際、何を担保にして通貨を発行するか議論になった。そのとき、「土地担保論」が出たが、インフレを招くリスクから否定された。1694年の話だ。結局、商業手形を担保にしたが、中国は320年前の英国の知識にも及ばなかった。

     

    (3)「土地と銀行の国家独占は金融・財政システムも不安定化させた。地方政府が土地を担保に国有銀行から巨額の借り入れを続けたこともあり、中国全体の対GDP比債務残高は19年第1四半期には300%に達した。さらに深刻なのは、その大半が土地や金融商品を担保にした住宅ローンであることだ」

     

    中国全体の対GDP比債務残高は、正確には295%(2022年6月末)だ。日本の平成バブル後と匹敵する。日本は塗炭の苦しみに遭った。中国は別、というおとぎ話はない。同じ運命になろう。これが、経済の原則というものだ。

     

    (4)「経済が減速している今、景気の波を増幅させる効果があるこの種の債務の担保価値低下は経済システム全体の重荷になり始め、金融・財政危機を誘発しかねない。こうした問題に拍車をかけているのが内需の弱さだ。かつての中国は輸出収入でそれを補えたが、先進国との関係が悪化している現在、輸出頼みの経済成長はもはや望めない。中国の民間消費の対GDP比は21年の時点で38.5%(アメリカは70%近く、日本は58%)。依然として世界最低レベルにとどまっている」

     

    中国の民間消費は対GDP比で38.5%に過ぎない。この少額の民間消費が、中国の経済成長を支えて過剰債務を返済できるはずもない。前途遼遠である。

     

    (5)「党大会を見る限り、今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう。1950年代、共産党の有名なスローガンの1つに「ソ連の今日は私たちの明日」というものがあった。現在の党指導部は今日の中国を昨日のソ連に変えようとしている」

     

    結局、過剰債務の処理は上からの統制強化で抑えつけるほかあるまい、としている。旧ソ連型に戻って有無を言わせない方式で処理するにしても、国民が黙ってついて行くだろうか。ここが大きな岐路になろう。

     

     

     

     

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    現代自は、17~20年まで営業利益率が5%を割込み、風前の灯火だった。かつては、サムスンと並んで韓国経済を支える柱になっていたほど。その現代自が、電気自動車へシフトして浮上した。昨年の販売台数は傘下の起亜自とあわせ685万台を達成し、世界3位の自動車メーカーになったのだ。

     

    これには、現代自がコロナ禍で減産が遅れたので、業界で余った半導体が現代自へ自然に集まったというフロックがもたらした結果とも言える。運が良かったのだ。経営手腕とは別問題であり、これからの経営が気になるところである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月18日付)は、「現代自動車、世界3位に15年の計 会長主導で開発刷新」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の現代自動車グループが2022年の世界販売台数で3位に浮上した。685万台を販売し、仏ルノーと日産自動車、三菱自動車の連合を抜いた。かつて「日本車の二番煎じ」と冷やかされた現代自を根底から変えたのが、創業家3代目の鄭義宣(チョン・ウィソン)会長だ。躍進の底流には地道な15年の変革がある。

     

    (1)「ここ数年の半導体不足によって他社が生産停止を迫られる中でも、現代自は部品の共通化と分散調達によって被害を最小に抑えた。ルノー・日産自動車・三菱自動車の日仏3社連合が22年の販売台数を前年比20%落とすなか、現代自Gは3%減にとどまった。サプライチェーン(供給網)問題への耐性が現代自を世界3位に導いた。サプライヤーによると、20年の新型コロナウイルスの拡散期に車大手が相次ぎ減産する中、現代自の減産の動きは遅かったという。売り先を失った部品類が現代自に集まり、半導体の在庫が豊富になった事情もあるようだ

     

    下線部は、「フロック」そのものだ。自動車メーカーはコロナ当初、一斉に自主的減産に入ったが、現代自は減産が遅れたのだ。そこで、引き取り手を失った半導体が、どっと現代自に流れ込み「半導体長者」になったのが真相。経営手腕ではない。

     

    (2)「鄭会長主導で収益が拡大するなか、課題も顕在化している。特に大きな問題は中国市場の低迷だ。16年のピーク時に年113万台あった販売台数は、現地メーカーの台頭を受け、22年に25万台にまで急減した。中国内の過剰設備が重くのしかかっている。さらにロシアでもサンクトペテルブルク工場が稼働停止のままで、過去の拡大戦略の「後始末」が急務となっている。自動車業界では販売台数を追わない傾向も強まる。産業構造が変化する中で規模が必ずしも収益拡大につながらなくなっているためだ」

     

    中国市場では、完全に失敗したケースである。自動車の品質まで問題にされる程で、中国では大きく信頼を失った形だ。

     

    (3)「自動車産業の大変革期のなか、現代自動車は電気自動車(EV)への転換で一定の成果をあげている。ただ、自動運転技術など車の付加価値を左右するソフトウエア分野にでは、備えが十分とは言いがたい。製造業に偏重する韓国産業界において、ソフトウエアの技術者不足という難題が待ち受けている。そこで重要となるのが半導体とソフトウエアだ。鄭会長は23年1月3日の従業員との対話集会で「自動運転車には現在のおよそ10倍の2000個の半導体チップが搭載される。我々の企業文化に、新たに電子企業を上回る『緻密さ』を加えて製品品質を高めていく必要がある」と語った」

     

    自動車に必要な半導体は、汎用品のメモリーでなく、非メモリーのシステム半導体である。韓国での調達が難しいのだ。もう一つ、ソフトウエアの技術者も韓国では不足している。これが、現代自の泣き所になっている。

     

    (4)「現代自は外部提携にソフト開発の活路を見いだす。22年9月には韓国通信大手KTと相互に7500億ウォンずつ出資し合う資本・業務提携を結んだ。自動運転技術のための通信技術の共同開発のほか、データセンター運用などでも協力する。ロボットや都市航空交通(空飛ぶタクシー、UAM)分野での協業も今後協議するとしている。鄭会長は「パートナーとの協力関係を築き、協業関係を高める文化を社内に根付かせることが未来の成功要素となる」と社内に呼びかける。この言葉には、社内の人材不足への焦燥もにじむ。自動車産業の地殻変動に対応する上で、人材流動性の低さや強硬労組を抱えることが思わぬ落とし穴になる恐れもある

     

    社内の人材不足は、外部のパートナーに依存するほかない。下線部は、韓国が年功序列・終身雇用に執着しており、転職市場が育たないことを意味している。韓国経済そのもののウイークポイントだ。

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    習近平氏にとっては、台湾統一が最大の政治課題である。最終的には武力統一の方針を示して、台湾へ揺さぶりを掛けている。中国の武力行使は、米国シンクタンクによる机上演習によると中国海軍の全滅という結果になった。こうなると、ますます台湾との話し合い路線が必要になろう。 

    当面のカギは、来年1月の台湾総統選である。ぜひとも中国との話し合い路線を主張する国民党を勝たせねばならない。その布石に、先に中国と国民党の間で会談が行なわれた。 

    『毎日新聞』(2月18日付)は、「中国、台湾分断工作か 国民党を優遇 来年1月の総統選にらみ」と題する記事を掲載した。 

    来年1月に見込まれる台湾総統選を見据え、中国の習近平指導部が働き掛けを強めている。中国と協調すれば平和と利益が得られるとのメッセージを積極的に発信しつつ、「台湾独立勢力」とみなす民進党の蔡英文政権への強硬姿勢は緩めていない。台湾社会の分断を図りつつ、有権者を対中融和路線の野党・国民党の側に引き寄せる狙いがあるとみられる。

     

    (1)「国民党の夏立言(かりつげん)副主席が17日までの日程で訪中。中国側は10日、共産党政治局常務委員の王滬寧(おうこねい)氏(党序列4位)が会談に応じる形で夏氏を厚遇した。王氏は「台湾同胞の平和と安寧を我々ほど重視している者はいない。できる限り早く両岸(中台)交流を正常化させたい」と強調し、融和ムードを演出。夏氏は「交流と対話によって相互信頼を積み重ね、台湾海峡の平和を促したい」と応じた」 

    国民党は、中国との融和路線を取っている。だが、台湾市民の感情を逆なでするような中国接近は反発を呼ぶ難しい立場だ。台湾市民は、「中国人」意識よりも、「台湾人」というアイデンティティを重視している。 

    (2)「その3日後、早くも動きがあった。中国で対台湾政策を管轄する国務院台湾事務弁公室(国台弁)の朱鳳蓮報道官が13日に、台湾の農水産物の禁輸措置について解除を示唆したのだ。中国は2021年以降、安全性などを理由にパイナップルや特産果実「釈迦頭」、高級魚ハタなど台湾産の農水産物を相次いで禁輸し、蔡政権に対する事実上の制裁措置とみられてきた。15日には国台弁トップの宋濤(そうとう)主任が台湾の農漁業団体幹部と面会し、禁輸問題について「関係部門と調整し、積極的に解決する」と解除の意向を表明した。国台弁は「台湾の農漁民は国民党などのルートを通じて輸入再開を望む声を表明した」(朱報道官)とも述べており、解禁表明は、国民党に花を持たせた形だ」 

    中国得意の経済制裁で相手を屈服させる戦術は古い。国民党は、中国へ膝を屈したイメージを与えると反発を受けるだろう。

     

    (3)「習指導部は武力行使による台湾統一の選択肢を放棄していないが、基本路線は平和統一だ。中国と台湾の窓口機関が「一つの中国」で合意したとされる「1992年コンセンサス」を認めることを台湾との交流の前提条件にする。これを認めない民進党が16年から政権を握っており、容認の立場の国民党が政権に返り咲くことは習指導部としても歓迎だ」 

    中国にとって、平和統一が最もコストの安い手法である。だが、「一国二制度」は香港で馬脚を現している。中国は、新しい「手法」をつくり出さねばならない。妙案はあるか。 

    (4)「中国の融和姿勢の背景には、20年総統選での「失敗」がある。習氏は19年、台湾政策についての演説で「12制度」による統一を目指すと強調し、香港では民主派を弾圧した。こうした強硬な対応が台湾の幅広い層に「反中」の世論を生み、蔡総統の再選につながった。再び強硬な発言や不用意な圧力の強化で台湾の民衆を刺激すれば、民進党の支持拡大につながりかねない」 

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支持しているだけに、「次は台湾」というイメージをまき散らした。これが、台湾を必要以上に刺激している。

     

    (5)「政権奪還を目指す国民党は、台湾海峡の現状を踏まえ「戦争のリスクを減らす」(朱立倫主席)などと有権者に対し「平和」を訴える戦略を取る。夏氏も王氏との10日の会談で、国民党が共産党との交流によって「平和と安定、繁栄と発展の黄金時代」をもたらしたと強調。対話を通じて台湾海峡の緊張緩和につなげる姿勢をアピールした」 

    現実問題は、米中対立の激化で台湾が翻弄されていることだ。中国は、台湾を足がかりにして米国へ軍事対決するという構想を西側諸国へ植え付けてしまった。こうして、台湾問題は、米中覇権争いのコマになっている。先ず、中国が変わらなければ、台湾問題の平和解決はないであろう。カギは、中国の変化である。 

    (6)「中国と国民党の動きに、民進党は神経をとがらせる。党主席の頼清徳副総統は15日、党の幹部会合で「(中国軍が台湾周辺に)侵入して騒ぎを起こしている今の情勢下で(中国との)対話は慎重にすべきだ。中国や国際社会に誤ったメッセージを伝えることになる」と国民党を批判。「台湾海峡の平和と安定を守ることは我々の主張だ。台湾人が子々孫々にわたり自由と民主主義の中で暮らせるよう、全力を尽くす」と訴えた」 

    民進党は、中国従属ではなく台湾人の独立意識を重視している。国民党は、中国へ傾けば台湾人から見捨てられるという危うい立場だ。

     

    (7)「総統選の行く末に影響を及ぼすのは中国の出方だけではない。中国と対立する米国の動きも重要だ。マッカーシー米下院議長が春に台湾を訪問するとの観測も出ており、仮に実現すれば反発した中国が台湾周辺での軍事活動をさらに強める恐れもある。連続2期目の蔡氏は憲法の規定で24年台湾総統選に出馬できず、民進党からは頼氏の立候補が有力視されている。国民党では侯友宜・新北市長や朱主席らの名が挙がっている」 

    米下院のマッカーシー議長は、訪台へ強い意向を見せている。中国が、今回も大軍事演習を行なえば、来年の総統選は民進党候補に有利となろう。

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