勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年02月

    テイカカズラ
       

    韓国政府は2月17日、公式見解としてコロナ感染症の拡大後初めて、国内景気の減速を表明した。輸出の減少傾向が深刻化しているうえ、消費の冷え込みが顕著化しているためだ。一方で、物価高が続く見込みで経済はスタグフレーション入りが確実な情勢である。

     

    『東亞日報』(2月18日付)は、「物価高続くのに『景気減速の始まり』、目前に迫ったスタグフレーション」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「政府は昨日、韓国が置かれている経済状況を「景気減速」と公式診断した。企画財政部は、「2月の経済動向」で、「物価が高い水準を継続する中で、内需回復の速度が緩やかになり、輸出の低迷や企業心理の冷え込みが続くなど、景気の流れが減速した」との見解を示した。昨年6月から使ってきた「景気減速への懸念」という表現から「懸念」を削除した。物価高と景気低迷が重なった「スタグフレーション」の入り口に韓国経済がぐっと近づいたことを意味する」

     

    韓国の今年の経済成長率が、IMF(国際通貨基金)予測では日本を下回るという結果が出て、韓国は「日韓逆転」として話題になっていた。現在、韓国経済の置かれている状況は、さらに悪化していることだ。「スタグフレーション入り」が、現実問題になってきたのである。

    (2)「すべての指標は、すでに景気低迷を示している。半導体と対中輸出が激減し、1月の輸出額は1年前より16.6%減少した。一方、輸入は増え、今年に入って今月10日までの約40日間、貿易赤字は昨年の年間赤字の37%である176億ドルに達した。物価高による実質所得の減少や過度な家計負債、金利引き上げによる仮処分所得の縮小で消費まで冷え込んでいる。膨大な在庫が積もった大企業の稼働率は、80%を下回った。企業の景況感は、2年4ヵ月ぶりに最悪となっている」

     

    韓国の輸出では、半導体が主力である。この半導体は目下、世界的な在庫調整期に入り、市況回復は今秋以降とみられる。だが、最大の輸出先の中国は、メモリー半導体の自給率向上に力を入れているので、対中輸出は先細り傾向にある。主要半導体輸出市場の中国のウエイトが下がれば、韓国は最大のピンチになろう。

     

    (3)「対外環境も尋常ではない。米国は予想外の雇用・消費好調で物価高が持続する可能性が高くなり、連邦準備制度理事会(FRB)が基準金利の引き上げを近いうちに止めるという期待が折れている。ドルは再びドル高に転じ、対ドルウォン相場は取引中に1ドル=1300ウォンを突破した。ウォン安ドル高は原油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー輸入価格を引き上げ、公共料金をはじめとする国内物価を刺激するだけでなく、貿易収支までさらに悪化させる。韓国政府と企業は、中国のリオープニング(経済活動の再開)で輸出に息抜きができることを期待しているが、中国経済も不動産景気の低迷や米中対立などで、早い回復は容易ではない状況だ」

     

    ウォン相場を左右するのは、米国の金融政策である。米国経済は、予想を上回る堅調ぶりで、消費者物価が高位に張り付いたままである。最近では、米国経済は「ノン・ランディング」でないかという予測も出ている。つまり、金融引締め状態のまま景気の中折れがないという強気の見方だ。韓国は、ドル相場が下がらなければウォン安が続いて輸入物価が高止まりだ。インフレは沈静化しない。

     

    (4)「さらに大きな問題は、差し迫ったスタグフレーションに構造的要因が大きいという点だ。1月の全体輸出で対中輸出が占める割合は19.8%で、20%台を割り込んでいる。内需を強化している中国に対する輸出の割合は、2018年以降減少し続けている。半導体など主力輸出品目のグローバル市場構造も、急速に変わっている。物価上昇を牽引した原油高と大国の衝突もやはり定数になっている」

     

    1月の対中輸出比率は、20%を割込んでいる。一昨年までは、25%を維持していた。これは、韓国にとって大きな節目になることを示唆する。「ドル箱」市場の中国に、異変が起こっているという認識である。これは、重大な変化である。

     

    (5)「今こそ、政府主導の国家産業戦略に一大変化が必要な時だ。目の前の景気減速や貿易赤字だけにこだわるのではない。10~20年後、韓国を食べさせる産業構造の青写真を描き直さなければならない」

    韓国は、半導体以外に目立つ産業がない。下線のような悩みは当然である。韓国の左派陣営が、この現実をどれだけ理解しているか不明だ。従来通りの「反企業主義」では、行き詰まることになろう。



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    中国の産業構造は、「川上」の素材部門は国有企業、「川下」の加工部門が民営企業という区分けができていた。国有企業は、国の「お抱え企業」であるのに対して、民営企業は「効率経営」を旗印に厳しい競争を繰り広げてきた。こうした背景から、国有企業の低生産性と民営企業の高生産性が顕著になっている。 

    ところが、22年は低生産性の国有企業が増益になり、高生産性の民営企業が減益というチグハグナな結果になった。この背景は、国有企業が国有銀行から優遇金利を受けたのに対し、民営企業は厳しい金融環境やゼロコロナが災いしたとみられる。
     

    『日本経済新聞 電子版』(2月17日付)は、「中国、『国進民退』鮮明 民間企業初めての減益」と題する記事を掲載した。 

    2000年代以降の中国の経済成長を支えてきた民間企業の利益が2022年、初めて減少に転じた。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策で景気が低迷し打撃を受けた。対する国有企業は前年比3%の増益。政府の景気対策の恩恵が国有企業に偏っているとみられる。国有企業が幅をきかせて民業を圧迫する「国進民退」は、将来の経済成長に影を落としかねない。 

    (1)「国家統計局がこのほど22年の工業経済収益報告を発表した。調査対象は主要業務の売上高が2000万元(約3億9000万円)以上の製造業や資源採掘業、発電会社などだ。民間企業の利益総額は7.%減少した。前年を下回るのは、確認できる1997年以降で初めてだ。国有企業は2年連続で増益を確保したが、外資企業なども含めた全体でみると4.%減少し、3年ぶりの減益となった」 

    民営企業は7.2%減益、国有企業は3%増益になった。全体では、4.0%の減益である。

     

    (2)「民間企業が減益となった主因は、コロナ対応の厳しい移動制限にある。上海市のロックダウン(都市封鎖)などが経済活動を阻害した。民間企業は産業構造の川下に多い。資源高で原材料が値上がりしても、内需が停滞し競争も激しいなか、コストを転嫁しにくく利益をむしばんだ。赤字に陥る民間企業も増えている。赤字企業の割合は2022年末時点で18.%と、年末ベースでの最高を更新した。5年前の8.%から2倍に跳ね上がった」 

    民営企業は、「川下産業」であるのでロックダウンの影響を強く受けた。原料高のしわ寄せも受けている。 

    (3)「一方の国有企業は、資源や原料加工など川上に多く、資源高が利益を押し上げた。国有石油大手3社の香港上場子会社の22年1〜6月期決算は原油高が追い風となり、過去最高の純利益となった。国有企業は国家の信用力を生かして低利で資金を調達しやすいという利点もある。またゼロコロナ政策で悪化した景気を立て直すためのインフラ投資などの受注も国有大手に集中しやすい」 

    国有企業は、川上産業で資源高を転嫁して高収益を上げた。国有銀行から優遇金利で融資を受けるメリットもプラスしている。

     

    (4)「米ピーターソン国際経済研究所は中国トップ100社の時価総額を分析した。国の支配が50%を超す国有企業のシェアは22年末時点で44.%となり、同10%未満と定義した民間企業(42.%)を3年ぶりに上回った。政府によるIT(情報技術)大手への締め付けなども影を落とした」 

    時価総額の分析では、国有企業のシェアは44.8%、民営企業は42.8%で「国進民退」の現実を裏づけた。 

    (5)「国進民退の傾向は工業分野に限らない。代表例が、関連産業を含めて国内総生産(GDP)の3割を占めるとの試算もある不動産業だ。政府が20〜21年に強めた不動産向け金融規制で、民間の開発大手は軒並み資金繰りが悪化した。新たなマンション建設に必要な用地の取得を見合わせる動きが広がった。例えば最大手の碧桂園は、22年の土地取得額が前年の20分の1に縮小した。中国の証券会社、中銀証券はかつて7割あった民間不動産の販売シェアが、将来は12割に下がるとみる。金融当局も国有大手が民間の開発案件を引き継ぐことを促した」 

    不動産開発では、国有が主導権を握り、民営は1~2割のシェアに低下するとみられる。不動産バブル崩壊後の業界再編成の結果だ。すでに、ここまで青写真ができている。

     

    (6)「習近平(シー・ジンピン)指導部にとって、国有企業のシェアが増大すれば経済全体を管理しやすい。問題は国有企業に残る非効率さだ。製造業などの赤字比率は22年末時点で24.%に及び、民間企業(18.%)より高い。国際通貨基金(IMF)は3日に発表した中国経済の年次報告で、国有企業の肥大化に懸念を示した。生産性で劣る国有企業が焼け太りすると「先進国との生産性格差がさらに広がりかねない」と指摘した」 

    中国は、生産性の低い国有企業のシェアが高まると一層、先進国との格差が広がる。習氏が力説する「中国式社会主義」の行き着く先は、こういう形になろう。 

    (7)「米政府系の『ラジオ自由アジア』(RFA)などによると、中国政府系シンクタンク、国務院発展研究センターの魏加寧研究員は22年12月の講演で「中国経済はゾンビ化のリスクに直面している」と語った。そのなかで、国有企業の肥大化や民間企業の萎縮という国進民退に警鐘を鳴らした。人口の減少が始まり急速に少子高齢化が進むなか、国進民退による生産性の低下を放置すれば、将来の経済成長力に対する下振れ圧力が強まりかねない」 

    「国進民退」は、習氏が掲げた目標である。皮肉にも、これが中国経済の寿命を縮めるのだ。中華再興は、遠のくばかりだろう。

    あじさいのたまご
       

    中国は、3年間のゼロコロナという「封鎖経済」を解いて慌てている。米中対立で、もはやグローバル経済は昔のことになったからだ。中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支持していることから、米国はもちろん、これまで親中的であった欧州まで敵に回している。こうして、中国の地方政府は日本企業へ猛烈なアッタクを繰返している。もはや、企業誘致できる相手国がなくなったのだ。 

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月15日付)は、「政府が『経済成長せよ』、と叫ぶだけの中国が根本的に分かっていないこと」と題する記事を掲載した。 

    中国政府の「経済成長」愛に再び火がついた。ゼロコロナ政策の長い闇から強引に、少なくとも数万の命を犠牲にして抜け出した今、あの国の指導者たちは異口同音に、いざ力強い経済を取り戻すぞと叫び始めた。だが号令だけでは何も変わらない。

     

    (1)「昨年末に開かれた共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた。こうした党中央の固い決意を受け、地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている。コロナの時代には見られなかった光景だ。こうした変化の政治的動機は明らかだ。国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。大事なのは行動だ」 

    中国の地方政府が日本へ殺到している理由は、経済成長を政府の最優先課題と定めた結果である。地方政府は、米中対立の一環で日本も中国へ警戒姿勢を取っていることを知らないのだろう。日本企業も脱中国路線を敷きはじめているのだ。

     

    (2)「停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい。ゼロコロナ政策は中国経済に深い傷痕を残した。それ以前には中小零細企業が4400万社もあった。登記された民間企業の約98%を占め、国内の雇用(公務員を除く)の8割前後を支えていた。ほかに、自営業者も9000万人以上いた」 

    中国の底辺では、自営業など民営企業が経済を支えている。3年間のゼロコロナで、この層が大きな痛手を負っている。「コロナ明け」で、庶民が消費急増に走るような余力もない。これが、中国経済最大の弱点である。

     

    (3)「ゼロコロナ政策で事情は一変した。ロックダウン中も中小零細業者への資金援助はなかったから、多くが廃業に追い込まれた。そこへ、地政学的な圧力が成長の阻害要因としてのしかかる。アメリカは中国が半導体を入手できないよう、これまで以上に力を入れている。オランダ企業ASMLが半導体製造装置を中国に売らないよう、同国政府に圧力をかけてもいる。米議会の下院で多数派となった共和党が、新たな経済制裁を打ち出す可能性もある」 

    中国製造業も、米国から先端半導体技術の輸出規制の措置を受けて「大恐慌」状態だ。二つの半導体工場の建設はストップ状態に追込まれている。 

    (4)「ウクライナでの戦争に関して、今も中国はロシアを非難していない。当然、EUは腹を立てており、アメリカと同様に経済的なデカップリング(切り離し)を急ぐべきだとの声も上がっている。こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる。どうすればいいか。プーチン政権下のロシアに対する支持を取り下げるのもいい。台湾に対する軍事的な威嚇をトーンダウンするのもいい。それだけでも投資家の心理は変わるだろう」 

    米欧は、はっきりと中国と一線を引き始めている。同じ価値観を持つ国々と連帯するとして、「中国拒絶」姿勢を見せているのだ。この状況で、中国は経済を軌道に乗せるのは困難であろう。何らかの打開策がない限り、西側は門戸を開けまい。

     

    (5)「一方で中国は、投資家の信頼を得られる改革に乗り出さねばならない。習近平(シー・チンピン)政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない」 

    習氏は、「中国式社会主義」を宣伝し過ぎて、今さら後へは退けない立場だ。これは、習氏が国家主席3期目を確実にする「選挙用アドバルーン」としても、西側諸国を警戒させるには十分なインパクトを残した。習氏は、鄧小平を仇のように扱っているが、政治家としての力量は習氏をはるか上回っている。鄧小平には偉大なる実践活動があった。習氏は、神輿に乗っているだけで自らつくり出したものはないのだ。鄧小平に学ぶべきだろう。

     

    (6)「経済政策では、非効率な国有企業を民営化し、企業に優しい規制環境を整えること。中小零細企業に対する支援策も、成長の回復軌道を維持するには欠かせない。しかし今のところ、中国政府がこうした改革に乗り出す気配はない。成長を口にするだけで、1979年に毛沢東の階級闘争理論と決別した鄧小平のような気概で国の進路を変える兆しは見えない。党の甘言に乗せられてはいけない。この先も当面は、中国経済の息は上がったままだ」 

    鄧小平路線で、中国経済の立直しをしなければ、中国経済は一段と追込まれる。すでに、人口減に陥っており、労働力不足が拍車を掛けるのだ。この状況で、米中デカップリングが進行すれば、中国経済に未来はない。

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    韓国最大野党「共に民主党」代表の李在明氏へ、検察から国会へ逮捕状請求が出された。現在は、国会開会中であり「議員の不逮捕特権」によって国会の議決が必要だ。国会の議席で56%を占める「共に民主党」は、不当逮捕を声高に主張しており、却下と見られる。だが、多くの罪状を抱える「疑惑のデパート」の観がある李氏だけに、風当たりは厳しいものがある。来年4月の総選挙は、今から野党不利を予測させている。

     

    李氏は、「反日」を売り物にしのし上がってきた政治家である。だが、韓国の若者は「反日」よりも「反中」へ大きくシフトしている。李氏は「親中派」であるだけに、自らの疑惑のほかに「反中ムード」の高まりの中で、苦しい状況に置かれるであろう。

     

    『中央日報』(2月17日付)は、「韓国で初めて野党代表に逮捕状、特権手放して真実究明を」と題する記事を掲載した。

     

    検察が16日、最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する逮捕状を請求した。京畿道城南(ソンナム)市長当時、大庄洞(デジャンドン)・慰礼(ウィレ)新都市開発過程で民間事業者に数千億ウォン台の利益をもたらしたという容疑(背任と利害衝突防止法違反など)だ。その過程で地方公企業の城南都市開発公社に4900億ウォン(約510億円)の損害を与えたという容疑も含まれた。李代表はプロサッカーチーム城南FCのオーナーでありながら、企業の後援金を誘致する見返りに各種許認可の特恵を与えたという容疑(第三者賄賂)も受けている。

     

    (1)「野党第1党の代表に対する逮捕状請求は憲政史上初めてだ。最多議席数の野党の代表が拘束されて捜査を受ける可能性がある状況だけでも極めて遺憾だ。大韓民国憲法第11条は「すべての国民は法の下に平等」と規定する。いくら権力者であっても法を犯せば相応の処罰を受けるのが当然だ。李代表は検察の逮捕状請求に対し「独裁政権が検察権の私有化を宣言した日」と反発した。支持者を扇動して政争に向かわせようという意図が見える極めて不適切な発言だ。万が一、彼の主張のように潔白であるのなら、検察の捜査と裁判の過程で証拠と法理で容疑に反論するべきだ。これまで3回の検察の取り調べで、李代表は書面陳述書だけを提出し、事実上陳述を拒否する非協調的な態度を見せた」

     

    「共に民主党」は、野党弾圧という名目で「断固反対」姿勢を見せている。だが、李氏が民主党代表になってから持ち上がった事件ではない。大統領選挙の前からくすぶっていた事件である。その意味では。共に民主党は、犯罪容疑者を大統領選候補者にし、さらに党代表に選んだ点で、憲政史上で初めてである。常日頃、韓国の道徳性は高いと自画自賛してきた左派が、こういう醜態を演じているのは遺憾と言うほかない。

     

    (2)「現役議員の李代表は、会期中に国会の同意なく逮捕されないという不逮捕特権がある。軍事政権時代に野党議員に対する不当な弾圧を防ぐために設けられた装置だ。不正容疑者が「防弾国会」に隠れて逮捕を免れる手段として作られたのではない。李代表は大統領選候補当時、国会議員不逮捕特権を廃止すると公約した。今からでも特権を手放して国民とした約束を守らなければいけない。そのようにせず、民主党議員を並ばせて逮捕同意案の否決を図ろうとすれば、責任ある政治家の姿勢とはいえない」

     

    李氏が逮捕を免れるには、通年国会にしなければならない。だが、来年4月には総選挙になる。そのときも、被容疑者の李氏が党代表として全国を遊説することは不利であろう。どこかで、区切りをつけるほかないであろう。無駄な「抵抗」は止めることだ。

     

    (3)「民主党は、李代表個人に対する司法手続きを「野党弾圧」「政治報復」のフレームにはめてはいけない。李代表に提起された容疑は過去の城南市長時代に発生した。現在の民主党とは直接関係がない。個人的な事案を党の問題に引き込むほど、いわゆる「司法リスク」は高まるだけだ。昨年末の盧雄来(ノ・ウンレ)議員逮捕同意案否決以降、民主党の支持率が下落傾向にある現実を重く受け止めるべきだろう。そうでなくても物価高・高金利で庶民経済が厳しい中で、国会を「防弾基地」にする愚を繰り返してはいけない」

     

    下線部の指摘は正しい。今回の一件は、李氏が市長時代の疑惑である。共に民主党には関わりがない話である。総選挙で議席を減らせば、それこそ次期の大統領選も不利になろう。

     

    (4)「検察も捜査の公正性に慎重でなければいけない。大統領選挙の候補だった野党代表が来年の総選挙を控えて司法処理の対象になったのは非常に深刻な局面だ。透明で公正な捜査だけが政治的な誤解と論争を避けることができる。できるだけ迅速に捜査を終えて起訴するかどうかを決めるのが望ましい。真実は結局、法廷で究明されるだろう。今後、李代表が起訴されれば裁判所も証拠と法理で迅速な判決を下すことを望む」

     

    最大野党の代表に逮捕状請求が出るとは、これ以上ない不名誉はことだ。日本の政治家であれば即刻、離党するのが常識である。日本の常識は、韓国に通用しない好例がここにある。

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    中国では、住宅関連需要がGDPの約3割という「住宅建設国家」である。人口減が始まっている国家で、住宅需要が無限に続くはずもない。こういう常識が、現在の中国には当てはまらないのだ。資本自由化を認めない中国では、海外の金融商品投資は不可能である。そこで、住宅投機に向かっている。しかし、肝心の人口が減る中で、住宅投機は萎む運命だ。 

    『日本経済新聞』(2月17日付)は、「中国住宅販売価格 14年ぶり下落 昨年 見えぬ不況出口 景気回復の重荷に」と題する記事を掲載した。 

    中国の住宅不況の出口が見えない。2022年の新築物件の販売価格は14年ぶりに下落した。雇用などの先行き不安が拭えず、資金不足でマンション建設を中断した開発企業への不信から住宅購入をためらう人も多い。中国の国内総生産(GDP)のおよそ3割を占める不動産業の不振が続けば、中国経済の回復を遅らせかねない。

     

    (1)「全国の新築住宅価格をみると、22年の平均単価は1平方メートルあたり1万185元(約19万9000円)で21年比2.%下落した。08年以来のマイナスとなり、下落率は遡れる1992年以降で最も大きい。中国国家統計局が16日発表した1月の主要70都市の新築価格も単純平均で前月比0.004%下落した。全体の51%にあたる36都市で値上がりしたが、平均価格は17カ月連続でマイナスとなった。1月に値上がりした都市が増えたのは2022年12月が落ち込んだ反動もある」 

    新築住宅価格の平均単価(1平方メートル)は、22年に08年以来のマイナス2.0%になった。今年1月の平均単価はさらに下落している。住宅需要回復への手がかりはまだない。

     

    (2)「住宅価格が下落してきた要因は主に3つある。

    1つ目が、景気悪化による先行き不安だ。22年はゼロコロナ政策が経済活動を抑圧し、都市部の新規雇用は21年を5%下回った。失業率も5.%と政府目標の5.%を上回った。

    2つ目が、不動産開発企業の資金不足が招いた混乱だ。政府の金融規制で資金繰りが苦しくなった民間開発企業が工事を中断し竣工が遅れる例が続出した。新築物件の9割近くを占める予約販売への不安が強まり、住宅取引が減少した。

    3つ目が、値上がり期待の弱まりだ。中国人民銀行(中央銀行)の預金者向けアンケート調査では「今後3カ月で住宅価格は上がる」との回答割合は14%と、確認できる09年以降で最低となった。販売不振に伴う価格下落が長引き「マンションは値上がりする」という神話が崩れつつある 

    人口減社会で、住宅価格が上がり続ける前提条件が消えている。下落して当然である。その意味では、3つ上げてある値下がり要因のうち、マンション値上り神話崩壊の影響が大きいであろう。

     

    (3)「販売不振でマンション在庫は積み上がった。新築物件で売れ残った在庫は22年末時点で前年末比18%増の約270平方キロメートルとなった。5年ぶりの高水準で、増加率も8年ぶりの大きさだ。15年に約450平方キロメートルまで膨らみ、圧縮に苦しんだ過剰在庫のリスクも頭をもたげつつある」 

    マンション在庫は、22年末で約270平方キロメートルもある。これだけの在庫を捌かなければならない。これにメドが立たない限り、新規着工を控えるであろう。 

    (4)「中国の不動産業は関連産業も含めてGDPの3割を占めるとの試算がある。不動産用の鉄鋼は国内需要の3割に達する。住宅市場の回復が遅れれば、建材や家具、家電の生産にもマイナスだ。新規の住宅開発の低迷は、開発企業に国有地使用権を売る地方政府の財政にも打撃となる。22年の売却収入は前年から23%落ち込んだ。15年(24%)以来の減少率だ。21年の売却収入は地方税収を上回っていた。地方政府の歳入の柱が傷んだことで、景気対策や社会保障の充実に向けた機動的な財政出動もハードルが高くなる」

     

    中国は、住宅販売に動向に大きな影響を受ける。鉄鋼・建材や家具・家電のほかに、地方政府は土地売却益を主要財源にするという「土地本位制」(学術用語でない)になっている。中国が、ここから脱却するのは不可能であろう。土地が「アヘン」になっているのだ。不動産バブルが組込まれた経済構造である。 

    (5)「政府は住宅市場を刺激しようと、住宅ローン金利を下げてきた。22年12月の平均金利は4.26%と過去最低を記録した。さらに販売不振が長引く地域では、1軒目の購入で現在4.%と定める下限金利より低い金利の適用を容認。一部都市は3.%に下げた。今のところ需要刺激の効果は限定的だ。急激な金利低下で持ち家世帯による前倒し返済や借り換えが急増した。安定した金利収入を確保したい銀行は借り換え手続きなどの受け付けを渋り、社会問題になりつつある」 

    住宅ローンの下限撤廃も、新規需要に繋がっていない。前倒し返済や借り換えを増やす結果になっている。合理的に考えれば、住宅需要が増える要因がないことに留意すべきであろう。 

    (6)「資金不足に陥った民間の不動産開発企業への不信も根強く残る。頭金を支払ったり住宅ローンの返済が始まったりしたのに引き渡しが済んでいない物件は全国に2600件以上あり、対象の住民は188万人に上るという。政府は開発企業への資金支援で早期竣工を促すが、開発企業の信用回復で市場が正常化するには時間がかかりそうだ」

     188万人の人達が、住宅ローンを支払続けているものの、未だに住宅を引き渡されていない状況だ。これは、一種の詐欺行為であろう。こういう状況が改善されない限り、安心して住宅を購入できるはずもない。中国は、順序を間違えている。

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