韓国の前政権は、反日を煽って中国へ接近した。だが、米中対立という局面では、中国依存リスクの大きいことから、尹政権は経済安保で日本との連携強化に大きく舵を切り替えた。韓国左派は、こうした国際情勢の急変に気づかず、「日本屈服」として政権批判に没頭している。「親の心 子知らず」という状態である。
『日本経済新聞 電子版』(3月31日付)は、「経済安保が動かす尹錫悦外交 日本に供給網での連携期待」と題する記事を掲載した。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が経済安全保障を念頭に、外交や法整備を急いでいる。同国経済の屋台骨である半導体産業は米中対立に翻弄されやすい。日本との関係改善に積極的なのは、サプライチェーン(供給網)を安定させ、安保と経済の「複合危機」に備えたいと考えるからでもある。
(1)「尹大統領は3月21日の閣議で、「半導体などの先端産業で韓国と日本の企業が連携し、安定したサプライチェーンが構築できる」と、なぜいま日本との関係改善が必要なのかを20分間にわたり説明した。強調したのは経済協力によるメリットだ。岸田文雄首相と合意した日韓の「経済安保対話」や、対立していた輸出管理問題の解決を成果に挙げた。協力事例も列挙した。韓国のサムスン電子が総額300兆ウォン(約31兆円)を投じて建設する新たな半導体拠点に日本の装置や材料のメーカーを誘致するほか、液化天然ガス(LNG)をはじめとするエネルギー調達で日本側と協力する構想に言及した」
韓国企業は、日本の技術と資本で発展の基礎をつくった。こういう状況から見ても、日本との協力は不可欠な構造になっている。尹大統領は、日韓経済構造の相互補完性を深く認識したのであろう。
(2)「経済安保の連携とは何を意味するのか。対外経済政策研究院の延元鎬(ヨン・ウォンホ)経済安保チーム長は「韓国と日本は経済で競合するが『経済安保』ならば協力の余地が広がる。供給網の弱みを補完し、制度面で参考にしあえる部分がある」と話す。経済安保の目的は、半導体などの戦略物資を特定の国に依存しない体制づくりだ。日本は米中対立の深まりを踏まえて法整備に着手し、供給網の構築や基幹インフラの安全確保などを柱とする経済安保推進法を2022年5月に成立させた」
韓国企業は、日本から中間財の供給を受け、それを加工して発展してきた。現在も日韓の貿易収支では、韓国が圧倒的赤字を計上している理由だ。文政権は、こうした現実を見落として反日に突進した。日本が仮に、対米貿易の重要性を忘れて、反米活動を始めたらどうなるか。韓国は、これと同じことに気づいたのであろう。
(3)「文在寅(ムン・ジェイン)前政権は中国を経済協力の重要なパートナーと位置づけたこともあり、経済安保という言葉をほとんど使わなかった。文前政権が脱却を目指したのは中国依存ではなく「日本依存」のリスクだった。19年7月には当時の安倍晋三政権が半導体生産に不可欠なフッ化水素など3品目の輸出管理を厳格化した。その後、韓国を優遇対象国から外した。韓国政府は半導体やディスプレーなど強みを持つ分野の100品目を戦略品目に指定。調達先の拡大や国産化を進めると宣言し、特別法を制定した」
日韓対立の発端は、徴用工と慰安婦という過去の問題である。韓国が、決着済みの問題をほじくり返して、民族主義に火をつけたのである。日本が対抗上、半導体3素材の輸出手続き規制に踏み切ったのは当然のこと。文政権は、これで中国依存を深めた。この選択が間違っていたのだ。
(4)「韓国の国民が中国依存のリスクを認識したのは、21年秋の「尿素水パニック」がきっかけだった。ディーゼル車の排ガスを浄化する尿素水が、中国の輸出規制で不足した。トラックが運行できずに物流が停滞したり、ガソリンスタンドで尿素水の買い占めが起こったりした。資源の乏しい韓国の経済は貿易に支えられている。半導体生産を支える物資や資源の供給網が滞ると、致命的な混乱をもたらす。韓国の国会ではいま、供給網の管理や危機時の政府対応を統括する司令塔をつくるサプライチェーン基本法案や、石油や重要鉱物の安定確保に関する司令塔を設ける資源安保特別法案の審議が進んでいる」
下線のように現在の韓国は、サプライチェーンの見直しを始めている。これによって、日本との連携強化という結論になるであろう。
(5)「政権発足から10ヶ月余り、尹氏は経済安保を意識した外交を展開してきた。就任12日目で臨んだ米韓首脳会談後の共同記者会見で、尹氏が「私たちは経済が安保、安保がすなわち経済である時代に生きている」と語ったのは象徴的だ。尹氏は日韓首脳会談後の記者会見で「韓国と日本の国益はウィンウィン(双方に利益)の関係にできる」と語った。長く続いた対立の末、日韓が経済安保という戦略的な側面で距離を縮められる機会が訪れた」
「家出した」韓国が、元の日韓関係に戻りたいということだ。韓国が、「反抗期」を過ぎたとするならば、いかに日韓において「大人」の関係を築き上げるかである。尹氏は、その難しい作業を始めたと言えよう。