勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年03月

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    「バンクデミック」登場

    止まらない海外拡大志向

    自ら世界金融不安の渦中

    最大の所得収支赤字国へ

     

    中国は、習近平氏が国家主席に就任以来、「強国路線」を歩んできた。対外的には、一帯一路政策によって、中国の政治的・経済的な影響力を一気に拡大するという路線だ。この裏には、膨大な資金投入を必要とした。IMF(国際通貨基金)や世界銀行という国際機関は、発展途上国向け融資では、厳しい条件がつく。中国の「一帯一路」は、融資の金利は高いものの簡単に融資し、中国企業に建設を担わせる方式を取ってきた。

     

    これが今、世界的金融不安の中で、不良債権化の恐れが強まっている。100%回収できなければ、中国の負担になって跳ね返るのだ。中国の復旦大学グリーン金融開発センターの「2022一帯一路投資報告書」によると、中国は2013年から22年までに、一帯一路事業に総額9620億ドルも投じた。

     

    一方、2008年から21年にかけて発展途上国22カ国に総額2400億ドルの救済資金支援を行ったことが、3月28日に公表された世界銀行などのリポートで明らかになった。「一帯一路」のインフラ建設に充てた融資の返済に苦しむ国が増えたためで近年、救済支援金額が急増している。


    救援支援融資の2400億ドルが、一帯一路事業の総額9620億ドルに含まれているのかどうかは不明である。仮に別とすれば、中国は一帯一路で実に1兆2020億ドルもの融資をしたことになる。インフラ投資であるから、長期返済のはずだ。この膨大な融資の返済が滞れば、中国経済にとって重大な事態になろう。

     

    「バンクデミック」登場

    冒頭から、中国が一帯一路事業で金融面から大きな障害に直面している現実を取り上げた。さらに、ここへ来て事態を悪化させる世界的な金融不安が生まれている。米国から始まった銀行危機の恐怖が、スイスを経て、ドイツ最大手の投資銀行であるドイツ銀行まで襲ってきたのだ。ドイツの首相まで乗り出し、問題はないと鎮火に乗り出したほどである。

     

    特別な危険な兆候がない大型銀行までが、こうしたターゲットになったのは、金融市場での恐怖が強いことを示している。この恐怖が、伝染病のように広がるという意味で、「バンクデミック」(銀行とパンデミックの合成語)という新造語が登場しているという。過去に問題を起こした銀行は、市場の不安心理でバンクデミックに襲われているのだ。

     

    一つ気がかりなのは、米国で2008年9月のリーマンショックが突然、起こったのでないという点だ。その前に、サブプライム住宅ローン危機が発生していたのである。金融危機への「火種」は、ずっと潜伏していたわけで、それを誰も認識しなかったのである。こういう前例から見ると、今回の一件は「バンクデミック」として警戒すべきであろう。

     

    米国の金融混乱は今後、世界的なリセッション・リスクを高めるとの警戒感が出ている。当面のリスクは、米銀が資産内容の健全性を確保し預金者を安心させるために、米国の家計や企業に対する融資を抑制すると見られる。それが、需要減となって世界中へ波及することだ。


    世界の貿易と金融システムは、米ドルによって支えられている。米国が金融引き締め状態になると、融資が抑制されるので、借り入れコストが上がる。その結果、株式やその他の資産の相場が下がる形で、他国の経済へ影響を与えるのだ。

     

    世界経済で最も底辺に位置するのは、中国が「一帯一路」事業で接近した国々である。この構図から言えることは、「バンクデミック」が否応なく襲うであろうという点だ。前述のように、中国は発展途上国22カ国に総額2400億ドルの救済資金支援を行った。救済支援の約80%が、2016~21年に集中している。対象国の多くをアルゼンチン、モンゴル、パキスタンなど中所得国が占めている。これは、「一帯一路」のインフラ建設に充てた融資の返済に苦しむ国が増えたので、やむなく救済支援を行った結果である。

     

    『ロイター』(3月28日付)によれば、支援額が最も多かったのはアルゼンチンの1118億ドルである。以下、パキスタン(485億ドル)、エジプト(156億ドル)となっている。9カ国は支援額が10億ドルより少なかった。リポート執筆陣は、中国の救済支援は「不透明でまとまりがない」と指摘した。

     

    これは、中国のずさんな融資の一端を示している。経済合理性に基づく融資でなく、政治的思惑が先行しているだけに、不良債権化するのはごく自然の流れとなろう。


    止まらない海外拡大志向

    中国は3月26日、中米ホンジュラスと国交を樹立した。これに先立ちホンジュラスは、台湾と断交した。ホンジュラスが、台湾と断交して中国と国交を樹立した理由は、GDPの55%を占める債務の返済で中国に緊急融資を仰ぐ目的だ。ホンジュラスは、親中の左派政権に交代したばかりである。 

     

    ホンジュラスは2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、2度の大型ハリケーンの被害に遭い、GDPは9%も減少した。ホンジュラスのレイナ外相は、ホンジュラスは台湾に対し、年間5000万ドル(約67億円)の援助の倍増と、6億ドル(約800億円)の債務の「再調整」を求めたが、前向きな回答を得られなかったという。以上、AFPが伝えた。台湾側は、この報道を否定しており「交渉中であった」としている。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

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    ブリンケン米国務長官は3月28日、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの停戦協議について「表面的に魅力的に見えることが皮肉にもワナである可能性がある」と述べた。ブリンケン氏は、中国が「一見、善意でやっているように見える取り組みも、注意しなければならない」と指摘。「停戦の呼びかけで紛争を凍結させ、ロシアが再び攻撃するために時間を使えるようになるおそれがある」と話した。

     

    ブリンケン氏は、ウクライナ停戦がロシアの時間稼ぎと警戒している。一方、中国は米国と対抗するためにも長期的にロシアを必用としているとの指摘が出てきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月29日付)は、「やがて訪れる中国の衰退と混乱、ジャック・アタリ氏と題する記事を掲載した。アタリ氏は、ミッテラン大統領の特別顧問。91〜93年、欧州復興開発銀行(EBRD)の初代総裁を務めた。経済学者である。

     

    中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はロシアのウクライナ侵攻に対する仲裁案を提示した。自国が直接関与しない国際的な政治問題に中国が口出しするのは異例で、中国の懸念の表れだろう。中国にとって今回の事態は自国の中期的な利益を自問する機会となった。

     

    (1)「中国は、米国に世界のリーダーと主張するため「弱いロシア」を望んでいるかもしれない。豊富な天然資源が眠るシベリア全土を掌握するために、ロシアの崩壊を願っているとの見方もある。だが私の感覚では、中国の指導層は今後30年、政治的に強固で安定したロシアを望んでいる。米ロ対立の間に軍事力を米国と同等にまで引き上げ、対等になりたいからだ」

     

    中ロは、枢軸になって米国へ対抗する道を進んでいる。プーチン氏のウクライナ侵攻も米国への対抗策である。その意味で、中国にとってロシアは盟友である。

     

    (2)「中国はいくつもの難題を抱えている。第一に台湾問題だ。中国は台湾を強引に征服するのではなく、経済統合を通じた平和裏の併合を望むはずだ。だが、米台の一部の政治家が台湾の独立と民主主義を強硬に主張すれば、武力行使に踏み切るかもしれない。米国は中国に対し、これまで以上に敵対的な態度をとるはずだ。米国は戦略的分野に素材や部品を供給している中国企業を徹底的に排除しようとするだろう」

     

    米国は、中国が武力で台湾侵攻を狙っていると断定している。この前提から「中国排除」へ直線的に動いている。中国は、こういう米国に対してどのように対応するかだ。平和統一が犠牲もなく理想的だが、習氏の3期目は「武力統一」が既定方針のようになっている。習氏は、3期目を目指して「スパイス」を効かせすぎたのである。

     

    (3)「経済面でも大国になりつつある中国だが、中国共産党が最近発表した経済成長率の目標値は5%であり、数十年来で最低の数値だ。直面する困難は途方もなく大きく、この控えめな目標値でさえ達成できるか疑わしい。人口の急減で労働市場が逼迫する。若い女性は経済的に自立してきているが、子育て支援策が不十分で合計特殊出生率の上昇は期待できない。社会は豊かになる前に高齢化し、介護・医療費の急増に悩まされる。急成長してきた中国経済は失速するだろう」

     

    中国経済は今後、多くの失速条件を抱えている。一つは、労働力人口の急減が大きな理由だ。

     

    (4)「さらに中国共産党の企業支配の姿勢が明らかになるにつれ、中国国内だけでなく外国の投資家も中国での投資に消極的になっている。既に多くの中国の起業家は活動拠点を外国に移し、西側諸国の多数の企業は中国から撤退して生産・販売に適した土地を探している。この動きは今後も継続する」

     

    共産党支配が、企業にも及んでいる。企業はこれを嫌って、国外へ企業を移している。これも二つ目の理由で、中国経済を失速させる。

     

    (5)「以上が、中国は米国に代わる超大国にはならないとみる根拠だ。そして本質的な問いに行き着く。中国共産党の長期的な統治は可能か、というものだ。共産党が統治を続けるには、大企業の成長を制御し、起業家の発意を抑制しなければならない。こうした介入は、経済成長、雇用の増加、社会的な安定を阻害する。汚職がはびこる現状では、今日の中国に一党独裁型からインド型民主主義への円滑な移行は期待できない」

     

    前述の二つの理由から、中国経済は失速するほかない。よって、中国が米国に代わって世界支配することはあり得ない。それよりも、中国共産党は経済失速によって国民の信頼を失うだろう。

     

    (6)「共産党の権威が失墜すれば、1990年代のロシアのように政治的な混乱を招き、似た道をたどるだろう。中国は数多くの内戦を経験してきただけに、大混乱に陥る可能性が考えられる。だが、党の権威失墜で大混乱に陥るかどうか。それは習氏の「極権」をどの程度、制御できるかにかかっている」

     

    中国共産党は権威失墜から、その責任を巡って、習派と反対派が対立するだろう。ただ、習氏が、自らに与えられた権力に使用にブレーキをかければ、その対立はセーブされる。習氏が目一杯、権力を行使する事態になれば、大混乱に陥る懸念が強く内戦となろう。

     

     

     

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    環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国は、英国の加盟を認める方針を固めた。3月31日にオンラインで閣僚会議を開き合意する見通しという。

     

    日本が主導するTPPは、世界で最も自由な貿易協定とされている。英国は、TPPから離脱した米国が再交渉に前向きになる可能性もあると見ているほどだ。EU(欧州連合)から離脱しただけに英国は、TPP加盟にかける期待が大きい。英国が、TPP加盟を求めた理由は明らかである。インド太平洋は、世界で最も急成長している地域であり、経済安全保障の観点からも最も重要な地域であるからだ。英国は、ブレグジット戦略の中核にインド太平洋への傾斜を据えている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月29日付)は、「英国がTPP加盟へ 発足国以外で初めて 31日に閣僚会議」と題する記事を掲載した。

     

    環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する11カ国は英国の加盟を認める方針を固めた。31日にオンラインで閣僚会議を開き合意する見通しだ。発足時の11カ国以外で加盟を認めるのは初めて。日本やオーストラリア、シンガポールなどインド太平洋地域が中心だったTPPが、欧州も含めた経済圏に発展する。

     

    (1)「TPPは、2016年2月に米国を含めた12カ国で署名したが、米国のトランプ前政権が17年に離脱を表明した。18年に11カ国が参加する自由貿易協定(FTA)として発効した。英国が21年2月に加盟国以外で初めて参加を申請し、6月に加入交渉の開始を決めた。協定の細部などを詰め、閣僚級が参加するTPP委員会を23年7月に開いて協定への署名を目指す。その後、各国が自国の議会での承認手続きなどをとることで、英国の加盟が実現する」

     

    英国は、EU離脱によって通商政策の独立を維持できるという考えである。EUの過度に保守的な考えや厳格な規制の束縛から解放されたというのだ。英国は、主要7カ国(G7)の一員であり、自由貿易で大きな利益を得られるとしている。

     

    政治的な意味から言えば、日英関係が一層、深まることになろう。日英伊三カ国の次世代戦闘機の共同開発によって、少なくも数十年間の濃密な外交関係樹立の基盤が整ったと指摘されている。日英同盟の復活のような濃密な関係が樹立されると期待されているのだ。

     

    (2)「英政府によると同国の加盟により、世界全体の国内総生産(GDP)に占めるTPP加盟国の合計額は12%から15%に拡大する。英国にとってTPP加盟は、欧州連合(EU)離脱後の外交方針である「インド太平洋地域への関与強化」の目玉政策の一つだった。英国の加盟が認められればTPPの拡大に弾みがつく。21年9月には中国と台湾が参加を申請した。エクアドル、コスタリカ、ウルグアイも申請している」

     

    アジアには、英国の旧植民地が多い。地の利を知り尽くしている訳だ。こういう経緯から言えば、欧州の英国がアジアのTPPへ加盟するのも突飛なことではない。

     

    (3)「今後は、中国と台湾の申請をどう扱うかが焦点になる。中国は不透明な政府補助金や進出企業への技術移転強制などの問題も指摘される。日本やオーストラリアなどは新たに加わる英国とともに、TPPの協定の水準を高いまま維持できるよう中国を厳格に審査する構えだ」

     

    英国は、香港問題で中国に「一国二制度」を破棄された関係上、中国をTPPへ加盟させることに強い感情的な反発を見せている。最近は、そういう反発を隠しているが、TPP加盟が決定すれば、そろりと「中国反対」へ動き出そう。

     

    こういう問題を抜きにしても、中国のTPP加盟は、補助金問題と国有企業の二点で加盟は「アウト」である。審査するまでもないのだ。

     

    (4)「英貿易統計によると、英国の総貿易額に占めるTPP加盟国とのモノ・サービスの貿易比率は7%(21年)で、EU(44%)や米国(17%)と比べると大きくない。英政府は今後のアジアの経済成長を取り込み、得意とする金融や法律サービスの輸出が増やせれば英経済の成長への貢献度が増すとみている」

     

    英国は、ビジネスで欧州からアジアへ引っ越してきたようなものである。これは、アジアの潜在的な経済成長力に注目している「先物買い」といえる。老大国のEUよりも、伸び代ははるかに大きいという判断だ。

     

     

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    ロシアの22年GDP成長率は、マイナス2.1%にとどまった。ウクライナ侵攻直後は、二桁のマイナス成長率予測であったから、予想外の「健闘」と言えた。だが、今年に入って状況はがらりと変わっている。 

    今年1~2月は、政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が、前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増したのだウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定す。現状では、50ドルを割り込んだ状況だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月29日付)は、崩壊し始めたロシア経済 来年は資金枯渇か」と題する記事を掲載した。 

    ロシアによるウクライナ侵攻開始当初は、石油・ガス価格が跳ね上がり、ロシアに思わぬ巨額の利益をもたらした。だが、こうした局面は終わった。戦争が2年目に突入する中、西側の制裁による打撃が広がり、ロシア政府の財政は厳しさを増している。経済は低成長軌道へとシフトし、長期的に脱却できない可能性が高まっている。 

    (1)「短期的にロシアの戦費調達を脅かすほど、経済への打撃が深刻であることを示す兆候はまだ見られない。だが、財政収支は赤字に転落しており、ウラジーミル・プーチン大統領が市民を生活の困窮から守る一助となってきた補助金や社会保障向けの支出と、膨らむ軍事支出との間でどう折り合いをつけるか、ジレンマが深まっている状況を示している。ロシアの富豪オレグ・デリパスカ氏は今月の経済会議で、ロシアの財政資金が枯渇しつつあると警鐘を鳴らした。「来年には資金が尽きるだろう。われわれは外国人投資家を必要としている」と指摘する」 

    ロシア経済が、ウクライナ侵攻による経済制裁効果と軍事費増額で、確実に破局に向かっている。来年には、資金が枯渇するという暗い予測も出てきた。

     

    (2)「見通し悪化の大きな原因は、エネルギーを武器に使えば、西側諸国によるウクライナ支援を抑制できるとのプーチン氏の読みが外れたことだ。欧州諸国の政府はウクライナへの支援を縮小するどころか、ロシア産エネルギーへの依存脱却に向けて代替調達先の確保に迅速に動いた。ロシア産ガスの欧州への供給がほぼ止まると、価格は当初、急騰したものの、その後急落した。ロシアは現在、石油生産を6月まで従来レベルから5%減らす意向を示している。同国の石油価格は国際指標を下回っている」 

    プーチン氏の読みは、ことごとく間違った。エネルギーを武器に使えば、欧州は音を上げてウクライナを長期支援できまいと見てきたのだ。現実は逆になった。欧州が、ロシア産エネルギー購入を止め、ロシア産原油上限制60ドルの枠をはめてしまったのだ。これで、ロシア産原油は欧州という需要先を失い、価格が暴落している。

     

    (3)「ロシアのエネルギー収入は今年12月に前年比でおよそ半減し、財政赤字も膨らんだ。1~2月の財政赤字は340億ドル(約4兆4600億円)と、国内総生産(GDP)比1.5%余りに達した。そのため、ロシアは危機時の財政緩衝材である政府系ファンド(SWF)から赤字の穴埋めを余儀なくされている。ロシア政府は依然として国内で借り入れすることが可能であるほか、侵攻前から280億ドル減ったとはいえ、SWFはなお1470億ドル相当を保有する。行き場を失った石油についても、中国やインドが新たな受け皿になった」 

    ロシア財政の緩衝材役を果たすSWFは、1470億ドル相当を保有するに過ぎない。今後、これは減る一方である。軍事費と国民生活をどのようにバランスさせるかだ。

     

    (4)「国際通貨基金(IMF)はロシアの潜在成長率について、ウクライナからクリミア半島を強制併合した2014年より前の段階では約3.5%だと推定していた。だが、生産性の低下や技術的な後退、世界からの孤立といった要因が重なり、今では1%程度まで下がったと指摘するエコノミストもいる。前出のプロコペンコ氏は「ロシアのような経済にとって、1%はないも同然で、維持する水準にすら届かない」と話す」 

    ロシアの潜在成長率は、すでに1%程度にまで下がっている。この程度の成長率では、ロシア国民の生活を守れないという。これは、日本で経験済みである。

     

    (5)「今年12月は政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増したウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定している。ロシア財務省によると、同国の代表的な油種であるウラル原油の平均価格は2月、バレル当たり49.56ドルとなった。これは同月に80ドル程度で取引されていた国際指標の北海ブレントに対して大幅なディスカウント水準だ。ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「ロシアは石油の販売先が限られるため、今では世界の市場で価格交渉力が弱まっている」と指摘する」 

    ロシア財政を維持するには、原油価格が1バレル100ドルでなければ無理という。現状は、その半分にすぎない。財政赤字は膨らんで当然であろう。

     

    (6)「IMFは2027年までには、ロシアの成長率がウクライナ侵攻前の予想から7%程度切り下がると想定している。「人的資本の喪失、国際金融市場からの孤立、先端技術の入手困難などの要因がロシア経済を損なう見通しだ」としている。 ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「われわれは1年や2年の危機を言っているのではない」と述べる。「ロシア経済は異なる軌道を歩むことになるだろう」と指摘する」 

    ロシア経済は、ウクライナ侵攻の長期化で異次元へ進むという危機感が表明されている。

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    福島原発の処理水は、無害状態にして海洋放流する。韓国文政権は、これを政治利用して反対姿勢を取ってきた。中国もこれに同調したのだ。だが、福島原発処理水は韓国や中国の原発が放流するトリチウム排出よりも比較にならないほどの超微量であり、人体に全く影響しないとされている。日本が、こういう科学データを提出しても受け付けなかった。

     

    韓国原子力安全委員会は2020年、専門家懇談会を7回開き、「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題がない」との判断を下していた。また、国際標準と認められる原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の手法を使い、日本海岸近隣地域の放射線影響を評価した結果、放射線数値が「妥当だ」とも評価していたのだ。文政権は、これをひっくり返して反日に利用した。中国も同じだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(3月27日付)は、「韓国水産業界、福島第一原発汚染水放出に「言えない悩み」理由は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府の福島第一原発汚染水の海洋放出が秒読みに入り、韓国の水産業界の懸念が高まっている。太平洋沿岸国である米国と国際原子力機関(IAEA)も日本政府の方針をかばっている中、韓日関係改善に必死な韓国政府まで緩い態度を取っているためだ」

     

    このパラグラフこそ、韓国左派の反日姿勢を表している。科学データに基づかず、盲目的に反日を扇動しようという魂胆が現れている。こういう左派が政権を取れば、日韓関係は破綻するはずだ。

     

    (2)「済州島(チェジュド)や南海(ナムヘ)など日本と接する水域の漁業者たちは、汚染水放出反対集会を計画するなど強く反対している。 現地の漁業者の反発にもかかわらず、韓国の代表的な水産団体は意外にも静かだ。日本政府を糾弾し、政府の強い対応を求めた昨年とは全く違う雰囲気だ。韓日関係改善を最優先の外交目標に設定した政府が、汚染水放出に対しても一歩引いた態度を示しているからだ。韓国水産業経営人中央連合会のキム・ソンホ会長は、最近の本紙の電話取材で「すでに日本がこれを承認して放出を防ぐことができない状況に至り、海流上の汚染水が最初に到着する米国などでも反対する動きがないため、私たちが先に積極的に乗り出すのは難しい」と話した」

     

    ユン政権は、科学データを重視しているはずだ。冒頭の韓国原子力安全委員会は2020年、無害としている。それを覆そうとするのが、左派の反日勢力である。

     

    (3)「水協中央会のイム・ジュンテク前会長も「(最近の水産団体長らとの懇談会で)汚染水を放出したら、我々が先制的に放射能検査を実施し、水産物の安全性を宣伝しなければならないという話だけが交わされた」とし、「汚染水放出は水産物の安全には大きな問題を引き起こさないというので、ひとまず見守るべきではないかという雰囲気だ」と語った。イム前会長は今月24日に水協中央会長の任期を終えた。韓国水産貿易協会のペ・ギイル会長も先月24日の定期総会で「水産団体が汚染水放出に強く反対すれば、それがブーメランになって返ってくる。汚染水問題については専門家が話すべきであり、(我々が先に乗り出せば)韓国の水産物消費が減る」と述べ、言及を控えた方がいいという意見を明らかにした」

     

    下線部分は、韓国水産業界が冷静になってきた証拠であろう。理由もなく騒げば、韓国水産物需要を減らすことになる。日本へ一矢報いたいが、そのブーメランも恐ろしいという心境なのだろう。

     

    (4)「主な水産団体の反応の変化に、現場の水産業従事者たちは不満を吐露する。仁川(インチョン)地域のある韓国水産産業総連合会の会員は「昨年12月の臨時総会で2023年事業計画に『福島第一原発汚染水放出阻止』を明文化した」とし、「突然、今になって尻尾を下げる理由が理解できない」と強く不服を唱えた。実際、同協会は汚染水海洋放出阻止活動に2000万ウォンの予算を立てた。仁川地域の他の会員たちも「水産団体の役員たちが突然、日本政府の論理に歩調を合わせはじめている。この調子では、今後の被害をそのまま韓国国民が被ることになるだろう」と警告した」

     

    下線部分には、科学データに基づく議論が皆無である。あるのは「反日感情」だけという状態だ。文政権は、罪作りなことをしたものである。

     

     

     

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