勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年03月

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    韓国経済が大揺れである。頼みのサムスン半導体は、1~2月の経常損益で3兆ウォン(約3000億円)の営業赤字が出るという。業界関係者によれば、サムスン電子の内部で1~3月期にメモリー半導体事業で最大4兆ウォン(約4000億円)の営業赤字とみられている。「常勝将軍」サムスン半導体が赤字になれば、韓国財政に大きく響く。

     

    今年1月の国税歳入は1年前より7兆ウォン近く減少した。国税歳入が1月基準で史上最大の減少幅を示し、税収進捗率は18年ぶりの低い水準となった。国内景気が減速局面に入っただけに、今年の財政赤字が現実味を帯びってきたと懸念されている。

     

    『東亞日報』(3月1日付)は、「1月に過去最大幅7兆ウォンの税収減財政赤字への懸念高まる」と題する記事を掲載した。

     

    企画財政部(企財部)によると2月28日、今年1月の国税歳入は42兆9000億ウォンだった。1年前より6兆8000億ウォン減ったもので、1月基準で史上最大の減少幅だ。新型コロナウイルス感染拡大で納付を延期した税金が、昨年1月に殺到したベース効果を考慮しても、今年1月の国税収入は1兆5000億ウォン減った。

     

    (1)「今年目標とした歳入総額に対して、実際に徴収された歳入割合を示す税収進捗率は10.7%だった。2005年1月(10.5%)以来の低水準だ。最近5年間の平均進捗率と比べても1.8ポイント低い。酒税と総合不動産税を除いたすべての税目の進度率がこの5年間の平均値を下回った。企財部のチョン・ジョンフン租税総括政策官は「今年は昨年や一昨年と違って税収条件が非常に厳しい状況にある」とし、「第1四半期(1~3月)には税収の流れが引き続き良くないだろう」と話した」

    1月の歳入進捗率は、最近5年間の平均進捗率と比べても1.8ポイント低い結果になった。この遅れは今後、回復できるだろうか。肝心要の企業業績は不振である。

     

    『中央日報』(3月1日付)は、「『サムスンのメモリー事業』2月だけで2兆ウォンの赤字、『最悪の半導体寒波』」と題する記事を掲載した。


    サムスン電子がメモリー事業で2月に2兆ウォン(約2000億円)台の営業赤字を出したことが分かった。昨年下半期からの「半導体寒波」で20年ぶりの最悪の赤字が懸念されている。

    (2)「中央日報の取材を総合すると、サムスン電子メモリー事業部は今年1、2月に3兆ウォンほどの営業赤字が出ていると推定される。匿名を求めた複数の業界関係者は「サムスン電子の内部で1-3月期にメモリー事業で最大4兆ウォンの損失が出るという報告があったと聞いている」と話した。関係者らは「ファウンドリー(半導体委託生産)で収益が出ているが、まだ規模は小さく、メモリー事業の大規模な赤字をカバーするレベルでない。半導体(DS)部門で1-3月期に2兆ウォン以上の営業損失が避けられないという声が出ている」と伝えた」

     

    下線部のように、サムスンの半導体事業部のメモリーは、1~3月期に最大4兆ウォン(約4000億円)の赤字になる見込みという。営業損失としては、2兆ウォン(約2000億円)以上は不可避だ。


    (3)「DRAMとNAND型フラッシュメモリーの価格は今年に入って下落が続いている。代表的なDRAM相場のパソコン用DRAM汎用製品(DDR4 8Gb)の平均固定取引価格は今月1.81ドルと、4年前(6.74ドル)に比べて4分の1水準に落ちている。目の前には暗雲が垂れ込めている。市場調査会社トレンドフォースによると、DRAMの価格はさらに今年1-3月期に20%、4-6月期に11%下落すると予想される。NAND型フラッシュメモリーも同じ期間にそれぞれ10%、3%落ちる見込みだ。DRAM価格は昨年下半期に34%急落した」

    DRAM価格は、昨年下半期に34%急落したが、さらに今年1~3月期に20%、4~6月期に11%もの下落予想である。下半期に底入れするとしても急反発とはなるまい。本格回復は、24年に入ってからと予測されている。

     

    (4)「サムスン電子では今年1-3月期は、20年来の最悪「アーニングショック(業績衝撃)」が現実化しそうである。サムスン電子が、メモリー事業で年間赤字となったのは1990年代を除いて2001年と2008年だけだ。2001年10-12月期には情報技術(IT)バブル崩壊後に半導体で2120億ウォンの赤字を出した。グローバル金融危機当時の2008年10-12月期には6900億ウォンの営業赤字となった」

    メモリー事業が年間赤字となったのは、1990年代を除いて2001年と2008年だけ。これに2023年が加わるであろう。2009年以降、実に15年ぶりの赤字になる。

     

    先行きの韓国経済はどうなるか。OECD(経済協力開発機構)が発表している、韓国の先行指標によれば、2021年5月以降20カ月連続で下落、今年1月は98.36まで低下した。100以下は不況局面である。この先行指標から言えば今後、少なくも数ヶ月は不況局面にあることを示唆する。前記の98.36は、世界金融危機直後、深刻な景気低迷を見せた2009年1月(97.75)以来14年ぶりの最低値である。事態の深刻さを示唆しているのだ。

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    韓国政治の腐敗ぶりが、世界の前にさらけ出されている。最大野党「共に民主党」代表の李在明氏への汚職を巡る逮捕請求に対して、李氏は離党することもなく野党の「多数票」にたよって逮捕を免れた。「共に民主党」は、169人の国会議員を擁しているが、138人が逮捕拒否に一票を投じたが、31人は逮捕賛成・棄権に回った。これで、共に民主党の空中分解が避けられないとの見通しが出ている。

     

    『朝鮮日報』(2月28日付)は、「共に民主党内から『李在明代表への政治的不信任』との見方も出た離反票」と題する社説を掲載した。

     

    共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する逮捕同意案が27日、国会で否決された。しかし、民主党議員169人のうち少なくとも31人が李代表の逮捕に賛成、棄権、または無効票を投じたとみられる。民主党からは「李代表への政治的不信任」という言葉も出ているという。

     

    (1)「李代表は大庄洞開発の民間業者に7800億ウォン(約800億円)もの利益を与え、城南市に4800億ウォンもの損害を与えた疑いが持たれている。李代表の側近らが民間業者から428億ウォンを受け取る約束を交わしたとの供述もある。企業から城南FC後援金133億ウォンを受け取る見返りとして、土地用途変更、容積率引き上げなどの利益を供与した疑いもある。民主党議員の大半はそんなことがあったかどうかも知らない個人の不正疑惑だ。それをかばうのに民主党が丸ごと動員されたのだから、党内の反発も当然だ」

     

    この事件に関わった者は、全て裁判に付されている。中心人物の李在明氏が、1人で無実を訴えるという奇妙な事件だ。「共に民主党」を総動員して、逮捕を免れたという構図である。国民の政治不信は沸点に達している。これは、来年の総選挙に悪影響を及ぼすであろう。

     

    (2)「李代表はこの日も「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の司法による狩りだ」と述べた。しかし、大庄洞事件の捜査は文在寅(ムン・ジェイン)政権が始めたものだ。文政権でさえ捜査せざるを得ないほど内容が深刻だったのだ。李代表が大統領選で敗れた最大の理由も大庄洞を巡る不正だ。こうした状況で李代表が政治を続ける考えならば、不逮捕特権に頼らず、堂々と捜査に応じるべきだった。そうしてこそ、本人と民主党の両方に希望があった。しかし、それとは裏腹に不逮捕特権の裏に隠れる道を選んだ。民主党指導部は熱狂的支持層の視線ばかり気遣い、この1年近く「李代表擁護」にばかり熱中した」

     

    この事件は、文政権時代から捜査されてきたもので、現政権が取り上げたものではない。それにも関わらず「検察弾圧」と言い募って騒ぎ立てている。韓国社会の縮図を見る思いがする。絶対に自分責任を認めず、他者に転嫁するのだ。

     

    (3)「逮捕同意案の否決で、李代表の逮捕状請求は自動的に棄却された。しかし、今後柏ヒョン洞土地用途変更、サンバンウル事件などで改めて逮捕状が請求される可能性が高い。逮捕同意案をすべて否決しても、結局法廷で裁判を受けなければならない。これほど多くの容疑で裁判を受け、党務を担えるのかという声も少なくないが、李代表は党代表を辞めないという。党レベルでの擁護なしには持ちこたえられないからだろう。民主党は逮捕同意案が否決されると、議員総会を開き、尹大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏に対する特別検事導入などを推進することを決めた。文在寅政権当時、隅々まで調べても証拠が見つからなかった事件だ。李代表を擁護するための対抗戦という指摘を受けても仕方ない」

     

    李氏に関しては、未だ二つの事件が残っているという。サンバンウル事件とは北朝鮮への違法送金に関わる問題だ。李氏が、関わっているとされている。共に民主党は、李代表の逮捕請求への意趣返しで、大統領夫人への特別検事導入を推進するという。文政権時代にも捜査されて証拠がなかった事件である。国会でこういうやり取りをするとは、もっと大事な法案審議に時間を使うべきだろう。

     

    (4)「党内の非李在明系は最近の報告書で、民主党の「李在明私党化」に懸念を表明した。そして、「民心が民主党を離れた。改革を望む国民にとってはビジョンも戦略もない無能な党になった」と自評した。民主党は68年の歴史を持つ党だ。三度も政権に就いた。今は国会で圧倒的多数を握る。そんな主要政党が一個人の私党に転落し、民心を失ったまま違法行為をかばおうと奔走するならば、韓国憲政史の汚点と言わざるを得ない」

     

    韓国は、早く正常な審議を再開して「国難」に対処すべきだろう。私憤をぶつけ合っている時間はないはずだ。

     

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    米国議会は、与野党を問わず中国への関心が極めて高い。これまで米国企業が、どのように中国で投資や活動をしているかを理解するために公聴会を開くことになった。焦点は、中国の投資先企業が防衛とどのような関係があるかを調べるのが狙いだ。

     

    米国のベンチャーキャピタルは、利益が上がるかについて精査するが、投資先企業が軍事面と関係があるかどうかについては関心を持たずにきた。公聴会ではその点を糺すとしている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月27日付)は、「米議会、公聴会で中国テック企業への投資を検証」と題する記事を掲載した。

     

    中国の脅威に集中的に取り組むために立ち上げられた米議会の特別委員会が、プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドやベンチャーキャピタル(VC)、ウォール街の金融大手が中国で果たしている役割を検証する。28日に公聴会を開く準備を進めている。下院の中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和、ウィスコンシン州選出)は、委員会として企業がどのように中国で投資や活動をしているかを理解するため「著名な最高経営責任者(CEO)や業界の代表者に話を聞く」と述べた。

     

    (1)「ギャラガー氏によると、24人で構成する委員会(共和党議員13人と民主党議員11人)は「中国軍とつながっている可能性のある現地のテック企業に多額の投資をした」PEファンドやVCから情報を得たいと考えている。「リスク低減や選択的な経済のデカップリング(分断)」の複雑さについて理解を深めるため、ウォール街の金融大手とも話したいと述べた。専門家からは、中国の防衛当局と関係がある企業に投資する米企業に対し、精査が増えることを期待する声が聞かれる」

     

    従来、米国は中国に対して経済的な視点で接して来たが、今後は安全保障の面から精査する必要があるという。中国企業は、「軍民共通」という認識に立っており、民と軍を区別しないからだ。

     

    (2)「元海兵隊員でイラクでの任務経験があるギャラガー氏は、委員会では初めは一部の経営者が非公開の場で証言することを認めるかもしれないが、委員会の目的は米国の一般市民が中国共産党の脅威を理解しやすくすることにあると強調した。「過去30年間、すべての人がこうなると考えた方に賭けた企業の見解を本気で聞きたいと思っている。つまり『中国が世界経済に統合されたから、中国事業の可能性を追求しようではないか、きっと良いことが起きる』という考え方だ」。「この賭けは多くの投資家と企業には文字通り利益を生んだが、政治的には見返りがなかった。我々にとっても中国の国民にとっても地政学的、あるいは政治的に成功しなかった」と指摘する」

     

    米国の投資家や企業は、中国との接触で利益を上げられたが、一方では安全保障(政治)の面では取返しの付かない失敗をしている。重要技術が、中国に渡っているからだ。これが、米国の安全保障を危うくしているのだ。

     

    (3)「ギャラガー氏は、一部の企業が中国のプロパガンダ政策に「引き込まれている」ことを心配しているという。中国の経済司令塔である劉鶴(リュウ・ハァ)副首相が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で登壇したことを引き合いに出した。劉氏は会議で聴衆に「ゼロコロナ」政策のロックダウン(都市封鎖)が終わり「中国は復活した」と語りかけた。「彼らは中国で金もうけがしたい。だから劉鶴氏が『中国はもうビジネス活動を始めている、われわれは台湾を侵略したりはしない』などと言えば、その言葉を信じたがる」とギャラガー氏は言う。「それは考えが甘い」と指摘」

     

    中国の究極の狙いは、米国の覇権を奪うことである。この厳然たる事実を忘れると、大きな災難が訪れるという警戒論である。中国は、「100年計画」で覇権奪回を狙っていることは紛れもない事実である。軍備増強がその証拠である。

     

    (4)「ギャラガー氏は「台湾国防部長(国防相)の申し出を受け、一緒に様々な軍事施設を訪れ、どのような準備がなされているか見てみたい」と述べた。台湾訪問により、すでに承認された武器を送るうえで米国が直面している課題が明らかになると考えている。「委員会のメンバーが問題を間近に感じることは非常に有益だ。台湾側にしても、要人が訪問した時とは違ってジレンマを抱えることはないだろう」。ギャラガー氏は中国軍が前代未聞の反応を示した(22年8月の)当時のペロシ下院議長の訪台に間接的に触れた」

     

    米下院特別委員会は、台湾を訪問予定である。台湾の防衛実態を視察する予定という。これによって、新たな提案がされるであろう。

     

    (5)「ギャラガー氏は、大半の米国人は中国が経済的な脅威であることに気づいているが、軍とスパイ活動の脅威については認識が足りないと指摘する。「米国人はMSS(中国政府の情報機関の国家安全省)と聞いても、かつての冷戦時代のKGB(旧ソ連国家保安委員会)と同じようには捉えない」と同氏は言う。「だが人々は徐々に中国共産党が米国の主権に与える脅威に目覚め始めている」と強調する」

     

    中国の経済脅威は、トランプ政権時代に強調された。現在は、これよりも先に進んでおり、安全保障問題が緊急課題になっている。中ロの一体化が危機感を強めているのだ。

     

     

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    トヨタ自動車は、HV(ハイブリッド車)の特許を無料公開して、中国での普及の後押しをしたが今、その成果が出ている。中国はEV(電気自動車)の普及を進めているが、給電設備が不足しているので、ガソリンと電気を併用するHV人気が高い。HV普及で、トヨタの読みが当った形である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「EV超えのハイブリッド車 中国で人気加速」と題する記事を掲載した。

     

    米電気自動車(EV)大手のテスラに次いで価値の高いEV企業は、米国内のリビアン・オートモーティブでもルーシッド・グループでもない。2020年に米国預託証券(ADR)を上場した中国メーカーの理想汽車(リー・オート)だ。時価総額は約260億ドル(約3兆5400億円)で、先にADRを上場した蔚来汽車(NIO)の200億ドルやリビアンの170億ドル、ルーシッドの150億ドルをいずれも上回る。

     

    (1)「中国のEV新興企業の時価総額が、米国の競合社よりも高いのは驚くに当たらない。理想汽車と蔚来汽車は、米国よりも成熟した中国EV市場の高級ブランドであり、製造でも先を走っている。第4四半期に理想汽車は4万6319台を納車し、蔚来汽車は4万52台だった。一方、リビアンは8054台、ルーシッドは1932台だった」

     

    理想汽車は、販売台数でも他社を圧倒している。HVの売行きが好調な結果だ。

     

    (2)「理想汽車は27日の通期決算発表で、今四半期(1~3月期)に5万2000~5万5000台を出荷する見込みだとした。米国の同業者と比較して、中国勢のADRは生産台数が多い割に価格が安い。驚くべきは理想汽車が蔚来汽車を追い抜いて、新世代の中国新興勢の中でトップに立ったことだ。理想汽車は、テスラが世に広め、他の新興企業や従来型自動車メーカーの技術的な焦点となってきた純粋なEVを製造していない。同社は、発電用ガソリンエンジンを搭載し、バッテリーが足りなくなった際に使用するレンジエクステンダーEV(航続距離延長付き電気自動車)を専門としている」

     

    理想汽車は、HVである。HVは、技術的に難しいモノとされるが、トヨタが基本特許を無料公開しているので、新しい企業でも製品化できるのであろう。トヨタの狙いは、HVの普及とEVへ取り組みを促進することにあった、HVは、EVとガソリン車の両機能を持つので、EV特化が可能である。

     

    (3)「理想汽車はこの技術を利用して昨年、スポーツ多目的車(SUV)「L9」と「L8」の2車種を発表した。今週に納車を開始した小型版「L7」は、発電機を使用せずに約210キロ走行できる。発電機を使用すれば航続距離はほぼ1130キロまで延長できる。先進性はあるものの、実質的にはプラグインハイブリッド(PHV)である車種の人気は、多くの点でEVへの移行を主導した中国市場の特筆に値するところだ」

     

    HVでは、航続距離はほぼ1130キロまで延長できるメリットがある。中国のような広大な土地では最適であろう。

     

    (4)「政府の奨励策が長年行われたことで、純粋なEVは昨年、中国の全ての乗用車の約21%を占めるようになった(調査会社EVボリュームズ・ドット・コムのデータによる)。これは欧州の13%、米国の5.5%と比較してはるかに多い。だが中国の充電インフラは貧弱で、電気自動車の運転者はバッテリー切れの不安を抱えている。バーンスタインは、中国で今年、PHVの販売台数が65%増加すると見込んでいる。対して、純粋なEVの増加率は25%だ」

     

    中国で今年、PHV(家庭で給電可能)の販売台数が65%増加すると見込んでいる。対して、純粋なEVの増加率は25%という。PHVは、自宅で給電できる利便性を買われて高い普及を見込んでいるのであろう。

     

    (5)「欧州ではPHVは苦戦しており、2022年には販売台数が3%減少した。PHVは過渡期の技術で、従来型自動車から純粋なEVに移行する隙間を埋めるものに過ぎないとして切り捨てられることが多い。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、フォルクスワーゲン(VW)などの自動車メーカーは、ハイブリッド技術を重視せずにEVで先に進もうとしている」

     

    欧州は、HVに否定的である。技術的にHVの開発に失敗し、トヨタが最初に技術開発したことへの「ジェラシー」があるとも言われる。

     

    (6)「中国での理想汽車の成功は、この「全てかゼロか」戦略が近視眼的だというリスクを浮き彫りにする。それぞれの市場は独自の道を進むが、中国のパターンを欧米が踏襲する可能性もあると考えるのが妥当だ。EV販売の最初の波の後には、充電インフラで劣る地域の人々や長距離の運転を望む人々などがニーズに合ったハイブリッド車を取り入れる第2の波がやって来るかもしれない。それはEVへの投資を避ける理由にはならないが、トヨタ自動車のように産業の移行期に微妙なアプローチを採る自動車メーカーのほうが、将来的には賢く見えるようになるかもしれない

     

    EVが、いつガソリン車に取って代わるのか。世界中で誰も予測できずにいる。EVは、電池のコストと耐久性が普及のカギを握っている。自動車会社は、ガソリン車からEVへの切り変えのタイミングを間違えれば、経営は左前になるリスクと隣合わせだ。

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