勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年03月

    テイカカズラ
       

    中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を巡って、米議会は中国のスパイ機能を果たしているのでないかと熱い議論が交わされている。ファーウェイの「5G」(次世代通信網)が、バックドアを仕掛けているとして、西側諸国が閉め出したのは最近である。TikTokは、これに次ぐ高い情報漏洩リスクが取り上げられている。

     

    だが、TikTokは、米国の若者から圧倒的な支持を受けている皮肉な現実がある。仮に、米国でTikTokを禁止すれば、若者が騒ぎ出すという指摘も出ている。こうなると、解決策は一つになろう。情報漏洩リスクを切断させるために、TikTokを中国の本社から切り離し、米系企業にすることである。実際、この方向で事態は収拾されそうだ。

     

    『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「TikTokは中国の『トロイの木馬』、米国家安全保障局サイバー責任者」と題する記事を掲載した。

     

    米国家安全保障局(NSA)のサイバーセキュリティー部門責任者ロブ・ジョイス氏は27日、人気の中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は中国の「トロイの木馬」であり、長期かつ戦略的なサイバーセキュリティー上の懸念をもたらしていると指摘した。

     

    (1)「同氏は差し迫った「戦術的」な脅威というより、「5年、10年、20年」後のセキュリティー上の問題を回避するため、TikTokの親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)を米政府が監視することが不可欠だと述べた。ジョイス氏はカリフォルニア州ナパで開催された会議で、「なぜ要塞(ようさい)にトロイの木馬を引き入れるのか」と問いかけ、「中国側は米市民に見せたいものを加え、米市民に知られたくない自国に不利なものを削除するというデータの操作ができる。なぜそうした能力を米国に持ち込むのか」と語った」

     

    中国は、米国覇権にとって代わろうというのが「国是」である。そのためには手段を選ばない主義で、まさに「勝てば官軍」意識である。こういう中国を、西側の常識で判断すると大きな間違いを起こす。ファーウェイの「5G」がそれを証明している。要するに、価値観が異なる国家という意味だ。

     

    (2)「政治家やサイバーセキュリティーの専門家は、バイトダンスが月間1億5000万人の米ユーザーを把握し過ぎているとの懸念を繰り返し示しており、TikTok側がデータ分離のため講じた措置では、情報入手を試みる中国政府の関与を防ぐには不十分だと主張している」

     

    「5G」のバックドアは、中国の地方で名も知らないような小工場でセットされていた。米国人が突き止めたのである。インドでは、ファーウェイに中国での組み立てをさせず、インド国内で監視の下で作業させると徹底的マークである。中国企業は、政府の指示で情報収集に協力させられているのだ。

     

    英議会は3月24日、TikTokのローカルネットワークと職員用デバイスでの使用を禁止した。セキュリティー上の懸念が高まる中で、情報自衛策が進めている。英議会は「サイバーセキュリティーは議会の最優先事項」であり、「上下両院で委員会がTikTokの遮断を決定した」とする声明を発表。スナク英首相は先週、中国のTikTokを政府の公用電話で利用することを禁止していた。 

     

    『ブルームバーグ』(3月23日付)は、「TikTokは中国共産党の支配下にない-CEOが23日に米議会で主張」と題する記事を掲載した。

     

    「TikTok」の周受資最高経営責任者(CEO)は23日の米議会証言で、若年層ユーザーの保護に向けライバルのソーシャルメディアよりも多くの取り組みを行っているほか、中国当局はティックトックのデータに対する権限を持っていないと主張する方針だ。

     

    (3)「周氏は証言冒頭で「ティックトックの親会社バイトダンスは中国の起業家によって創業されたが、創業以来グローバル企業に発展している」とし、「この構造の下では、中国政府がアクセスすることも、アクセスを強制することもできない」と指摘する。ブルームバーグが米下院エネルギー商業委員会で予定している証言の原稿を確認した」

     

    周氏は、型どおりの答弁をするほかない。だが、中国民間企業は安全保障に関して政府の要請に応えなければならない義務を負っている。仮に、現在は政府の要請がなくても、今後もそれが保証されない点が中国の弱点なのだ。

     

    『ブルームバーグ』(3月16日付)は、「米、TikTokの中国オーナーに持ち分売却しなければ禁止と通告-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米国は「TikTok」を運営する中国のバイトダンスに対し、株式持ち分を売却しなければティックトックが米国で禁止される可能性があると通告した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。関係者によれば、米財務省が対米外国投資委員会(CFIUS)を通じて審議を主導しており、最近になってバイトダンスに要求を伝えたという。審議は非公開だとして、関係者が匿名を条件に語った」

     

    TikTokが、米国企業として経営されるならば情報漏洩リスクは消える。TikTok生き残り策は、バイトダンスの米国での出資分を米企業へ売却して、純然たる米国企業として根を下ろすことになろう。

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    中国外交が方向転換した。これまでの「戦狼外交」が、嘘のように変わって「仲裁外交」へ衣替えしようとしている。この裏に何があるのか。米国の中国包囲網を突破するには、「戦狼外交」では行き詰まることを認識したのであろう。そこで、得意の「ニーハオ」戦術に切り替え、「平和の使徒」を演じて、中国包囲網の緩みを待つ。そういう戦略転換も考えられるのだ。 

    『ハンギョレ新聞』(3月28日付)は、「『平和仲裁者』に生まれ変わろうとする中国、米国の選択は?」と題する寄稿を掲載した。筆者は、文正仁(ムン・ジョンイン)延世大学名誉教授である。文政権で、大統領特別補佐官を務めた。反日米的言動で物議を醸した経緯がある。 

    私は2月21日、中国公共外交協会と北京大学が共同主催した「藍庁」(ブルールーム)フォーラムにオンラインで参加した。藍庁とは、中国外交部記者室の会議場を指す言葉だ。秦剛外相は、昨年4月に習近平国家主席が提案した「グローバル安全保障イニシアチブ」(GSI)の概念文書を発表し、6つの原則と20の具体的な協力方向を示した。秦氏は、GSI構想が世界の安全保障問題に関する中国の代案であり、世界の紛争地域の問題を解決するための青写真になると強調した。

     

    (1)「筆者は、藍庁フォーラムで二つの問題点を提起した。一つは普遍的なルールと国際法に基づく構想を「中国特有」のものとして示すのは適切でないという点。もう一つは、実行可能性の限界だった。過去に習近平主席が出した「アジア安全保障構想」など様々な提案のうちきちんと実行されたものがなかったため、今回の提案は実行可能なのかという問いだった。中国側の関係者は前者に関しては答えなかったが、後者についてはまもなく可視的な措置があるから見守ってほしいと述べた」 

    中国は、美辞麗句を並べ立てるが、南シナ海の不法占拠の現実を覆い隠すことはできない。中国が他国の島嶼を奪っておきながら、「アジア安全保障構想」を説いても説得力はないのだ。 

    (2)「3月10日、その「可視的な措置」が姿を現した。中国政府の仲裁でイランとサウジアラビアの国家安全保障担当高官が北京で会合し、「両国が外交関係を修復し、2カ月以内に相手国に大使館を再び開くことで合意した」という共同声明を発表した。2016年にサウジ政府がシーア派聖職者の死刑を執行したことを機に両国の国交が断絶して以来、7年ぶりのことだ。イスラムスンニ派の宗主国であるサウジとシーア派の宗主国であるイランは、地域覇権をめぐって敵対的な競争を繰り広げており、イエメンやシリアなどで代理戦争を行ってきた。今回の妥結は中東和平に大きな好材料となるだろう。1978年のキャンプ・デービッド協定以来、中東和平の仲裁者であることを自負してきた米国を困惑させた一手だった」 

    イランとサウジアラビアは、両国が和平を望んでいたところの最終部分で中国が乗り出したもの。その意味では、「一番おいしい」ところを頂いた感じだ。米国は、サウジアラビアから事前情報を得ていた。米軍が、サウジアラビアには駐留しているのだ。

     

    (3)「北京のこのような動きは中東にとどまらない。ウクライナ戦争から1年目の2月24日、中国は事態の政治的解決に向けた12の要求が盛り込まれた和平案を公開した。各国の主権の尊重、即時休戦と終戦要求および平和交渉の開始、人道主義的危機解決、一方的な制裁の中断、戦後再建などを含むこの和平案は、ウクライナ事態でも平和の仲裁者としてのイメージ確保を狙う中国の野心をうかがわせる。このため習近平主席は3月20日にロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を開き、ウクライナ側とも意思疎通を続けていると明らかにした」 

    中国は、ウクライナ和平提案をしたものの、初めから実効性はゼロ。ロシア寄りが明白であったからだ。西側諸国は、初めから全く相手にしていなかった。中国は、中ロ密着をカムフラージュするために、あえて「煙幕」用に使ったともいえる。現実に、ウクライナ側は、中国の宣伝したウクライナとの首脳会談について、「何も知らない」と答えているのだ。

     

    (4)「領土の返還、戦犯の処理、戦後復旧と戦争賠償問題に関する十分な議論なしには、休戦の実現は難しい。実際、今回の中ロ首脳会談も平和仲裁よりは両国の戦略的密着に帰結した。しかし、国連が無気力な状態に陥り、米国と欧州連合(EU)が仲裁の役割を果たせていない中、中国が素早く仲裁者を買って出た。休戦と終戦の突破口は見出せなかったものの、中国GSI外交の新たな姿を示しているといえる」 

    和平提案は、いったん戦火が拡大すると簡単にその糸口はつかめないものである。中国は、そういう「タイミング」を見る眼もなかったのであろう。ただ、アドバルーンを上げて、「平和国家」というイメージがほしかったに違いない。

     

    (5)「中国外交はよく「戦狼外交」と呼ばれている。荒々しく攻撃的な外交の形態からついた異名だ。しかし、バイデン政権がインド太平洋戦略と価値観同盟を掲げて陣営構築を試みている最近の隙を狙って、北京はむしろ世界平和と安定のための仲裁外交を積極的に打ち出し始めた。世界は、米国の同盟と友好国だけで構成されているのではなく、紛争と対立は主に米国の影響圏外で発生している。中国のGSI外交の動きが、米国の外交的指導力に対する大きな挑戦になりうるのもそのためだ。米国もこれを他山の石にして、新たな外交的発想を模索しなければならない」 

    中国が、戦狼外交から和平外交へ転じたように見せているが、それは台湾侵攻を放棄するときに初めて実証できるであろう。現在は、米国の対中包囲をいかに緩めさせるか、という戦術に利用しているにすぎまい。すべては、台湾侵攻がその真贋をテストするはずだ。結論は、それまでお預けだ。

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    岸田首相は3月21日、ウクライナを電撃訪問した。中国の習近平国家主席が訪ロして、プーチン大統領と会談と同日であった。岸田氏のウクライナ訪問は、訪印後に行われたもので警護の関係でこの日しかないという選択だ。中国は、そのように受け取らず、日本があえて周氏の訪ロの日程に合わせたと見ている。日本外交が、中国へ対抗しているというのだ。 

    『中央日報』(3月28日付)は、「なぜあえてあの日にウクライナへ行ったのか、岸田首相の野心 中国は不安だ」と題する記事を掲載した。 

    「岸田文雄首相は『アジアのライバル』である習近平中国国家主席と『外交的決闘』を行った」。21日、岸田首相の電撃ウクライナ訪問を巡り外信からはこのような評価が出た。この日はロシアを訪れた習主席がプーチン大統領と首脳会談を臨む日だった。今年5月に広島で開催される主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)を控えて「幅広外交」を繰り広げている岸田首相。中国がこのような岸田首相の動向に不安を感じているという外信報道が26日(現地時間)、出てきた。

     

    (1)「香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)は専門家の言葉を引用して「岸田首相のこのような外交的行動主義の主な動力は、ここ数カ月間、地域勢力の戦略的再編成過程で大きく浮上した中国要因がある」と分析した。特に中国とロシアの関係強化は、G7首脳会議を控えて日本が中国に焦点を合わせて外交的活動を強化し、インド太平洋地域の地政学的再編成を行うことを加速させていると診断した。中国が外交的存在感を強めて中露が密着すると、すぐにこれを牽制(けんせい)するために積極的な外交活動に乗り出したという意味だ」 

    中国は、尖閣諸島で日本領海を常時、侵犯しているという事実を棚に上げている。日本が、中国を安全保障上で警戒するのは当然である。

    (2)「岸田首相は16日、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と東京で首脳会談を行った後にインドを訪れて新たなインド太平洋戦略を発表したことに続き、中露首脳会談当日にウクライナ・キーウ(キエフ)を電撃訪問した。また、27日の参議院本会議でウクライナ戦争に関連して中国の責任感ある対応を促した。中国人民大学の時殷弘教授は「当初、岸田首相は中国政府から対中穏健派と認識されていたが、中国からの認知された脅威を阻止しようとする取り組みの中でウクライナの電撃訪問をはじめとして、具体的に、時には攻撃的措置を取った」と話した。また「岸田首相のこのような歩みは西側と中国の間の不和が深まる中で西側同盟の間で主導権を握ろうとする日本の野心を見せている」と診断した」
    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支持する立場を取っている。正確に言えば、「中立を装いながらのロシア支持」である。これは、中国の台湾侵攻の際に、ロシアの支援を受けたいという狙いとみるべきだ。当然、尖閣諸島への侵攻も想定しなければならない。

     

    (3)「このような状況で日本の外交的足場を広げるために岸田首相は、G7議長国の地位を十分に活用しているという分析がある。今年G7議長国資格で首脳会議に出席する招待国を決めることができる日本は、韓国・インド・ブラジル・インドネシア・ベトナムなどの各首脳を招いた。また、ウクライナのゼレンスキー大統領も画像を通じて参加することにした。中国清華大学現代国際関係研究所の劉江永・副所長は、「岸田首相が中国に対抗した連合構築という自身の外交政策に対する支持を糾合するためにG7議長国の地位を利用している」と話した」 

    日本は今年、G7の議長国である。安保問題では中ロが話題の焦点になろう。となれば、日本が、インドや韓国を招待国に選ぶのは当然である。
     

    (4)「岸田首相が、対中牽制程度を高めると中国は不満を隠さないでいる。岸田首相のウクライナ訪問を契機に、日本とウクライナは共同声明で「両国首脳は東・南シナ海の現状を変えようとする一方的な試みに強く反対することを表明し、台湾海峡の平和安定、両岸(中国と台湾)問題の平和的解決重要性を強調した」と明示した」 

    欧州でのウクライナ侵攻は、アジアの台湾侵攻につながる可能性を持っている。中ロの一体化がそれを示唆しているのだ。中国自身が、日本外交を対中牽制へ持ち込んでいると見るべきだろう。 

    (5)「これに対して中国一部では岸田首相が「ウクライナで今起きていることが明日は西太平洋と東シナ海で起きる可能性がある」というメッセージを出しているという解釈が出てきた。これに関連し、中国の汪文斌外交部報道官は「我々は日本が情勢安定に資する仕事を多くするように望む。その反対になってはいけない」と述べた。中国官営『グローバルタイムズ』は「ウクライナの今日は台湾の明日という岸田の主張は危険だ」と批判した」 

    中国が尖閣諸島へかけている圧力が、日本を警戒させている理由だ。南シナ海も不法占拠している。こういう一連の行動から見て、中国が軍事的膨張策に出ているのは紛う方なき事実である。

     


    (6)「SCMPは中国を特に不安にさせているのは、日本とインドの密着だと指摘した。メディアは両国首脳が20日に首脳会談を開催し、エネルギー・食糧などの分野で協力を拡大していくことにしたとし、インドは中国に対抗するためには日本と利害関係を共有すると伝えた。インドは中国と長い間国境紛争中であり、日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)の加盟国でもある」
    日印関係は、安倍首相(当時)が強固なものに築き上げ、さらに「クアッド」へ発展させるきっかけになった。この原因も中国が日印双方へ軍事的圧力をかけた結果である。すべて、中国の身から出たサビと言うほかない。

     

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    中国の1~2月工業利益は、前年同期比で22.9%減と大きく落ち込んだ。喘いでいる製造業の姿を浮き彫りにしている。製造業はまだ、新型コロナウイルス禍に伴う不振から回復していないのだ。生産者物価の下落も響いている。依然として、お先真っ暗な状態である。

     

    これでは、製造業が新規採用に乗り出すはずもなく、2月の都市部失業率は5.%と前年同比で0.1ポイントも高くなった。人々は、仕事を求めてネット配車運転手への求職に殺到している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月27日付)は、「中国でネット配車運転手に求職者殺到 雇用の弱さ映す」と題する記事を掲載した。

     

    中国でネット配車業界のドライバーになろうとする人が増えている。新型コロナウイルスの厳格な感染対策「ゼロコロナ」が事実上終わって市民の移動が活発になるなか、若者らは気ままな稼ぎ口としてネット配車に期待している。ただ裏には製造業などでの雇用の回復遅れがあり、経済全体を薄雲が覆っている。

     

    (1)「ネット配車のドライバーになるためには、一般的な運転免許証に加えて自治体が発行する資格が必要になる。その上で車を用意してネット配車プラットフォームに登録し、業務を始める。使用する車は既に保有している自家用車のほか、リース会社から調達することも多い。直近でこのリース料が上昇している。広東省広州市のある業者は、国産EV(電気自動車)の貸出料を従来、月3300元(約6万3000円)としていたが、1月の春節(旧正月)連休明け後、3500元に引き上げた。リース会社の担当者は「需要が急回復している。車が足りなくなりそうだ」と話す」

     

    ネット配車のドライバーになるには、EV(電気自動車)が必要である。自前かリースに頼る。リース料は月3500元(約6万7000円)だ。

     

    (2)「多くの人が、ドライバーに就こうとしている背景には配車予約の増加がある。交通運輸省によると全国の予約件数は2月、前年同期比18%増の6億5200万件に達した。12月でみれば同2%減だが、昨年12月までの推移と比較すると底入れ感が出てきた。ゼロコロナが終わり、仕事や行楽でのネット配車の利用が上向いているようだ」

     

    配車予約件数は、順調に伸びている。中国では、数少ない好調組である。新規参入者が増えて当然の環境である。

     

    (3)「ネット配車の利用増は消費回復の兆しを示すが、業界への労働力流入を傷んだ経済の復調とみるのは早計だ。国家統計局によると2月の都市部失業率は5.%と前年同月と比べ0.1ポイント高い。工業生産が伸び悩んでいることから製造業の雇用が振るわず、ドライバー増加の一因となっている構図が浮かぶ」

     

    2月の都市部失業率は5.%である。遊んでいる訳にはいかないから、すでにEVを持っている者は、手頃に参入可能な仕事である。

     

    (4)「近年、ネット配車のドライバーやネット出前の配達員などギグワーク(単発・短時間の仕事)を選ぶ若年層が増えている。中国都市公共交通協会のネット予約車分会によると主要都市のドライバーの4割が1980年代生まれで、3割が90年代生まれだ。勤務の自由度のほか、「週ごとに給与が受け取れる」ことや「煩わしい職場の人間関係がない」といった点に魅力を感じる人が多い」

     

    中国では、「寝そべり族」という言葉があるほどで、自由に生きたいという若者が増えている。彼らには、ネット配車のドライバーは向いている職業であろう。

     

    (5)「足元では予約数が上向き、働き手の流入が続くネット配車業界だが、行きすぎれば当然、供給過剰に陥る。ドライバー1人当たりの実入りが減れば、リース料の負担感が増す。車の返却が増えればリース会社の経営は逆回転し、金融機関の債権回収に問題が生じる恐れもでる」

     

    人気の高いネット配車ドライバーであるが、新規参入者の急増は需要と供給のアンバランスをもたらす原因だ。すでに、その兆候が出ている。

     

    (6)「ドライバー歴4年の50代男性、徐さんは「時間を消耗することで成り立っている仕事だ」と嘆く。かつて1日8時間だった勤務時間が今は10時間になった。配車プラットフォームが値引きを頻発するようになって運賃単価が下がっていることに加え、乗客の獲得競争が激化し、長く働かなければ収入を維持できないという。新規参入のドライバーが増え、「共倒れ」になることを危惧する」。

     

    勤務時間が、かつては1日8時間だった。今は10時間になっているという。これは、過剰供給の状況になっている証拠だ。

     

    (7)「政府はネット配車業界が雇用の受け皿として機能している一方、リスクも抱えていることを認識している。ネット配車業界が、雇用が本格回復するまでの調整弁としてうまく機能するか、金融システムを傷める事態を引き起こすかはまだ分からない。中国経済が力強さを取り戻すのが遅れれば、多くの人がドライバーとして苦しい日々を過ごさざるを得なくなる」

     

    多くの人がEVをレンタルしている。月額約6万7000円である。この支払いが滞るようになると、「将棋倒し」となって金融不安が起こるであろう。難しい局面に来た。

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    日本の総合商社が、国内のビジネスチャンス発掘に動いている。長年、培われてきた技術が国内で花を開き始めているからだ。地政学的リスクと為替変動リスクがゼロ。そういう、安全度の高い国内ビジネスに目を向けている。 

    エネルギー資源のない日本では、いかに自前のエネルギー源を作り出すかが課題である。原発は、地震大国の日本では主力になれない以上、それに代わるものとしてアンモニア発電が脚光を浴びている。IHI(石川播磨重工業)が、世界初のアンモニアガスタービンの試験運転をIHI横浜事業所(横浜市)で進める。3000〜4000世帯の電力をつくる2000キロワット級だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月27日付)は、「アンモニア 脱炭素の『伏兵』IHIが世界初タービン」と題する記事を掲載した。 

    再生可能エネルギーや原子力に続く二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギー源として、アンモニアが脚光を浴びている。脱炭素の切り札とされる水素よりも保管や輸送が容易で、現実的な実用化を見込める「伏兵」として注目される。2030年ごろには生産から燃焼に至る一連の技術が出そろう見通しで、普及期に向け着々と技術を磨く。石炭や天然ガスを燃やす火力発電の一部を置き換えそうだ。 

    (1)「IHIは、(営業)発電所用に大型化も狙う。23年1月には米ゼネラル・エレクトリック(GE)と数十万キロワット級の開発で提携した。数基分で大型原発に匹敵する発電能力で、30年に発売を目指す。同社の阿波野主幹は「30年にはアンモニア発電の利用が本格化する。脱炭素社会の実現に役立つ」と期待する」 

    IHIは、30年にアンモニア発電機を商用化する。その実証運転が始まった。数十万キロワット級の開発も視野に入れている。

     

    (2)「アンモニアに先行して脱炭素の切り札とされたのは、燃やすと水になる水素だった。00年代末から家庭用燃料電池や燃料電池車(FCV)が登場した。だが、保管や輸送に使うタンクを大気の数百倍の高圧にするか、零下253度の極低温の状態にする必要がある。インフラ整備が難しく発電分野への普及が遅れた。その水素に代わって注目されるのがアンモニアだ。数気圧か零下33度で保管でき、通常のガスタンクで扱える。今後は発電量が天候に左右される再エネの普及が進む。現在は補助電源として石炭や天然ガスが担う出力調整の一部をアンモニアが代替する期待が高まる」 

    水素発電も脚光を浴びているが、水素は零下253度の極低温の状態にする必要がある。一方、アンモニアは、零下33度で保管でき通常のガスタンクで扱えるという。これが、アンモニアへの期待を高める。

     

    (3)「三菱重工業も40000キロワット級の開発を目指し、22年夏に中核部品の燃焼器の試験を始めた。25年にも実用化する計画だ。排熱を使い発電効率を高めるなどして、シンガポールの発電所への納入も検討する。谷村聡技監は「化石燃料や再エネの資源が乏しい国ではアンモニア発電は重要になる」と話す」 

    三菱重工業も40.000キロワット級アンモニア発電開発を目指す。25年にも実用化する計画だ。IHIの実証機は2.000キロワット級である。 

    (4)「燃料のアンモニアは現在、北米や中東で産出する天然ガスなどを現地で改質してつくる。今後普及が見込まれる、再エネの電力で水を分解する「グリーンアンモニア」も安くつくれる南米などが供給源だ。日本政府は発電用途の拡大に伴い、アンモニアの需要が30年に21年比で3倍の300万トンに、50年に同30倍の3000万トンに増えるとみる。三菱商事三井物産は、米国で20年代後半にアンモニアの生産を始める計画だ。三菱商事幹部は、「脱炭素の実現へ向け、アンモニアの導入を含むあらゆる手段を追求する」と話す」 

    下線のように、燃料のアンモニアは北米や中東で天然ガスから生産する見通しである。三菱商事や三井物産がこの事業化を進めている。

     

    (5)「大きな障壁はアンモニア製造法だ。アンモニアの生成は化学産業の中でも最もエネルギーを消費する製造工程の1つとされる。何より製造時のCO2排出量の大きさが見逃せない。アンモニアは生産量1トンあたり約2.4トンのCO2を出し、IEAによれば粗鋼生産の約2倍(直接CO2排出量ベース)に相当する。それでも脚光を浴びるのは、水素の輸送時の液化コストが高いためだ。最終的な発電コストを下げられる。資源エネルギー庁などによると100%燃やす「専焼」の場合、1キロワット時あたり発電コストは水素が97.3円、アンモニアが23.5円と弾く。試算はいずれも天然ガス由来で出るCO2の分離回収を条件とした」 

    アンモニア製造法の大きな障壁は、化学産業の中でも最もエネルギーを消費することだ。それでも水素より総合コストが安くなるのは、水素が輸送時に液化コストで高くなるためだ。1キロワット時あたりの最終発電コストは、水素が97.3円、アンモニアが23.5円とされる。アンモニア発電は、水素発電の4分の1で済む計算だ。

     

    (6)「再生可能エネルギー由来の水素でアンモニアをつくれば、国産調達も可能になる。日揮ホールディングスと旭化成などは2024年度にも国内で製造実証を始める。ただ、現実には日本に太陽光や風力発電に向く大規模な適地が少ない。国内需要を賄うには中東や南米など日射量が豊富な地域で製造し、輸入する将来像を政府は描く。資源エネルギー庁燃料アンモニア担当の渡翔太氏は、「いずれ欧州も直接のアンモニア利用に乗り出す可能性がある」と指摘し、「今のうちに日本企業の技術を国際標準化すれば勝機がある」と展望を語る」

    国内でのアンモニア生産も始まる。まさに、国を挙げての一大プロジェクトだ。アンモニア発電技術は、世界最先端を行くもので、国際標準化すれば「世界のビジネス」になる。


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