中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を巡って、米議会は中国のスパイ機能を果たしているのでないかと熱い議論が交わされている。ファーウェイの「5G」(次世代通信網)が、バックドアを仕掛けているとして、西側諸国が閉め出したのは最近である。TikTokは、これに次ぐ高い情報漏洩リスクが取り上げられている。
だが、TikTokは、米国の若者から圧倒的な支持を受けている皮肉な現実がある。仮に、米国でTikTokを禁止すれば、若者が騒ぎ出すという指摘も出ている。こうなると、解決策は一つになろう。情報漏洩リスクを切断させるために、TikTokを中国の本社から切り離し、米系企業にすることである。実際、この方向で事態は収拾されそうだ。
『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「TikTokは中国の『トロイの木馬』、米国家安全保障局サイバー責任者」と題する記事を掲載した。
米国家安全保障局(NSA)のサイバーセキュリティー部門責任者ロブ・ジョイス氏は27日、人気の中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は中国の「トロイの木馬」であり、長期かつ戦略的なサイバーセキュリティー上の懸念をもたらしていると指摘した。
(1)「同氏は差し迫った「戦術的」な脅威というより、「5年、10年、20年」後のセキュリティー上の問題を回避するため、TikTokの親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)を米政府が監視することが不可欠だと述べた。ジョイス氏はカリフォルニア州ナパで開催された会議で、「なぜ要塞(ようさい)にトロイの木馬を引き入れるのか」と問いかけ、「中国側は米市民に見せたいものを加え、米市民に知られたくない自国に不利なものを削除するというデータの操作ができる。なぜそうした能力を米国に持ち込むのか」と語った」
中国は、米国覇権にとって代わろうというのが「国是」である。そのためには手段を選ばない主義で、まさに「勝てば官軍」意識である。こういう中国を、西側の常識で判断すると大きな間違いを起こす。ファーウェイの「5G」がそれを証明している。要するに、価値観が異なる国家という意味だ。
(2)「政治家やサイバーセキュリティーの専門家は、バイトダンスが月間1億5000万人の米ユーザーを把握し過ぎているとの懸念を繰り返し示しており、TikTok側がデータ分離のため講じた措置では、情報入手を試みる中国政府の関与を防ぐには不十分だと主張している」
「5G」のバックドアは、中国の地方で名も知らないような小工場でセットされていた。米国人が突き止めたのである。インドでは、ファーウェイに中国での組み立てをさせず、インド国内で監視の下で作業させると徹底的マークである。中国企業は、政府の指示で情報収集に協力させられているのだ。
英議会は3月24日、TikTokのローカルネットワークと職員用デバイスでの使用を禁止した。セキュリティー上の懸念が高まる中で、情報自衛策が進めている。英議会は「サイバーセキュリティーは議会の最優先事項」であり、「上下両院で委員会がTikTokの遮断を決定した」とする声明を発表。スナク英首相は先週、中国のTikTokを政府の公用電話で利用することを禁止していた。
『ブルームバーグ』(3月23日付)は、「TikTokは中国共産党の支配下にない-CEOが23日に米議会で主張」と題する記事を掲載した。
「TikTok」の周受資最高経営責任者(CEO)は23日の米議会証言で、若年層ユーザーの保護に向けライバルのソーシャルメディアよりも多くの取り組みを行っているほか、中国当局はティックトックのデータに対する権限を持っていないと主張する方針だ。
(3)「周氏は証言冒頭で「ティックトックの親会社バイトダンスは中国の起業家によって創業されたが、創業以来グローバル企業に発展している」とし、「この構造の下では、中国政府がアクセスすることも、アクセスを強制することもできない」と指摘する。ブルームバーグが米下院エネルギー商業委員会で予定している証言の原稿を確認した」
周氏は、型どおりの答弁をするほかない。だが、中国民間企業は安全保障に関して政府の要請に応えなければならない義務を負っている。仮に、現在は政府の要請がなくても、今後もそれが保証されない点が中国の弱点なのだ。
『ブルームバーグ』(3月16日付)は、「米、TikTokの中国オーナーに持ち分売却しなければ禁止と通告-関係者」と題する記事を掲載した。
(4)「米国は「TikTok」を運営する中国のバイトダンスに対し、株式持ち分を売却しなければティックトックが米国で禁止される可能性があると通告した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。関係者によれば、米財務省が対米外国投資委員会(CFIUS)を通じて審議を主導しており、最近になってバイトダンスに要求を伝えたという。審議は非公開だとして、関係者が匿名を条件に語った」
TikTokが、米国企業として経営されるならば情報漏洩リスクは消える。TikTok生き残り策は、バイトダンスの米国での出資分を米企業へ売却して、純然たる米国企業として根を下ろすことになろう。