米国は、中国へ対して半導体の厳しい輸出規制を行っている。本来なら、中国国内で使用されるべき半導体がロシアへ流出していることが判明。そのやり玉に、ファーウェイが上げられている。こうしたことから、ファーウェイへの輸出許可をすべて取消すとの推測も流れている。
このように、米国では半導体の対中輸出規制問題が大きく浮上しているが、肝心の米国内の輸出規制手続きに問題があるとの報道が出てきた。米企業は、米商務省の「エンティティーリスト(禁輸リスト)」に掲載されている企業へ輸出できないが、その子会社へは「木戸ごめん」で輸出が可能というのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月27日付)は、米輸出規制に抜け穴 「中国への技術移転なお可能に」と題する記事を掲載した。
米政府は今月、中国のIT(情報技術)複合企業に対する輸出規制を発表した。西側の技術製品へのアクセスを遮断する狙いだったが、元当局者らは、同社は米国の輸出管理制度の抜け穴を利用していまだに製品を調達することができると指摘している。
(1)「米企業は、商務省の「エンティティーリスト(禁輸リスト)」に掲載されている企業への輸出は許可を得ない限り禁止されている。ところが、禁輸対象企業はリストに掲載されていない子会社を通じて米国製品を購入することができるという。現・元政府関係者や業界関係者が明らかにした。業界関係者によると、こうした方法によって、一部の米企業は中国企業への高度な技術製品の販売を継続する考えだという」
下線部分は、米国の輸出規制の「大穴」である。中国は、古来「上に政策あれば、下に対策あり」ということで、抜け穴探しでは「裏技」の持ち主である。今回は、まんまとこの部分を突かれた感じだ。米商務省官僚は、中国にしてやられた感じである。ルール通りに解釈すればその通りであろう。子会社といえども、親会社とは別法人であるからだ。
(2)「米国の輸出規制には、中国やロシア、イランなどの敵対国が西側の先端技術を利用して軍事力や経済力などを強化することを防ぐ目的がある。ところが規制をすり抜ける方法があるため、この目的が損なわれていると関係者は指摘する」
西側によるロシアへの半導体輸出規制は、本来であれがすぐに大幅な減少になると見られていた。それが、計算通りに減らなかったのは、こういう子会社を通す形の輸出ルートがあったからだろう。西側は、親会社=子会社と理解していたのだ。ここが、盲点であった。
(3)「米商務省の産業安全保障局(BIS)は今月6日、中国の軍近代化の取り組みを支えている疑いがあるとして、中国のIT持ち株会社インスパー(浪潮)をエンティティーリストに追加したと発表した。インスパーには多数の子会社があり、米企業との取引規模は合計で数十億ドルに達する。米エヌビディアや米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)からは半導体を調達する。業界関係者によると、一部の米企業は、商務省からのガイダンスがない限りはインスパー子会社への製品販売を継続する予定だという。エヌビディアはコメントを控えた。AMDはルールの明確化を求めていると述べた」
米国は、中国のIT持ち株会社インスパー(浪潮)を禁輸リストに加えた。だが、インスパーは多数の子会社を持っているので、子会社名義の輸入であれば輸入可能だ。通関OKである。通関はコンピュータ処理であるから、背後のからくりを理解できるはずがない。
(4)「商務省のエンティティーリストに関する法令では、禁輸対象として具体的に指定されていない企業への販売は認められている。関係者によると、BISは現在、インスパーの子会社をリストに加えることを検討している」
米商務省は、インスパーの子会社も一括してエンティティーリストへ加えることを検討しているという。粗雑な「お役所仕事」という批判を免れないであろう。