韓国は2022年、14年ぶりの貿易収支の赤字に転落した。この状況は依然として続いている。最近は、旅行収支まで赤字が拡大しており対策に頭を痛めている。韓国市民が、済州へ旅行するよりも費用面でさして変わらない日本へ向かっていることも赤字幅を拡大している。日本は、「2021年世界経済フォーラム」の旅行・観光産業調査レポートの最新版で世界1位である。日本の魅力が引き寄せるのであろう。
『中央日報』(5月31日付)は、「同じ費用なら済州より日本」、韓国の旅行収支赤字 3年半ぶり最大」と題する記事を掲載した。
会社員のパク・ジイェさん(32)は先月、友人と日本東京を旅行した。3年近く続いた新型コロナの影響で海外旅行にずっと行けなかったからだ。円安で旅行費用が抑えられる点も考慮の対象になった。実際、パクさんは2泊3日の東京旅行に航空料と宿泊料で60万ウォン(約6万3500円)ほど使った。済州(チェジュ)旅行と比較して大きな差はなかった。パクさんは「国内の宿泊料などが新型コロナ以降あまりにも高くなり、同じ費用なら海外旅行がよいと思って日本に行くことになった」と話した。
(1)「爆発的に増えた海外旅行のため、旅行収支の赤字が3年半ぶりの最大規模となった。韓国銀行(韓銀)によると、今年1~3月期の旅行収支は32億3500万ドル(約4520億円)の赤字で、これは新型コロナ拡大前の2019年7~9月期(-32億7960万ドル)以来の最大赤字幅。1~3月期基準では2018年1~3月期(-53億1400万ドル)以来5年ぶりの最大だ」
韓国人の海外旅行が急増している。1~3月期の旅行収支の赤字は、32億3500万ドルと5年ぶりの大幅になった。当局は、貿易収支の赤字も重なって神経過敏になっている。
(2)「韓国人が海外旅行で使用した金額を意味する「一般旅行支給」金額は今年1-3月期56億750万ドルと、新型コロナ拡大前の2019年10-12月期(73億9590万ドル)の75.8%まで回復した。韓国を訪問する外国観光客が国内で使用する金額はそれほど増えていない。外国観光客が国内旅行でする消費を意味する「一般旅行収入」は今年1-3月期30億2110万ドルと、新型コロナ拡大前の2019年10-12月期(53億1470万ドル)の56.8%にすぎない」
韓国人は、海外旅行で支出を増やしているが、外国人の訪韓旅行ではそれほど支出が増えず、これが旅行収支の赤字幅を拡大している。対策は、韓国の国内旅行の魅力をアップすることに尽きる。韓国は、ソウル周辺は魅力的でも地方の観光施設の整備が「今ひとつ」という状況だ。ここを改善しなければ旅行収支の赤字は減らないだろう。
(3)「これは海外に行く国内観光客数と韓国を訪れる外国観光客数の差にも表れている。今年1~3月期に海外を訪問した人(498万人)は前年同期(41万人)比で1114%増えた。半面、韓国を訪れた外国人観光客数は同じ期間28万人から171万人へと510%増にとどまった。特に新型コロナで急減した中国人観光客の回復が遅い。外国系の経済予測機関CEICによると、今年3月に韓国に入国した中国人の数は2019年同月の15%にすぎない」
1~3月期の海外への旅行客は、前年同期比1114%増、つまり11倍強である。逆に、韓国への旅行客は、同510%増で5倍強に止まった。これまで主力の中国人旅行客が不振であることも響いている。
(4)「旅行収支の悪化は経常赤字の増加につながる。1~3月期の経常収支は輸出不振の影響などで44億6000万ドルの赤字となった。経常収支だけでない。新型コロナ以降の「報復性消費(リベンジ消費)」が国内でなく海外で急増し、内需回復も期待を下回る。企画財政部が発表した「5月の最近経済動向(グリーンブック)」によると、先月のデパートの売上高は前年同月比で0.8%減少した。内需の動向を表すカード国内承認額も先月は前年同月比5.6%増と、3月の増加率(9.0%)を大きく下回った」
韓国人は、国内消費を削って海外旅行している点で、国内経済にマイナスの影響を与えている。国内消費も増やし、余裕をもって海外旅行をしていない「懐事情」が明らかになった。これは、見過ごせない事態だ。
(5)「延世大の成太胤(ソン・テユン)経済学科教授は「内需回復が期待ほど続かず、下半期の景気反騰も厳しいかもしれない」と述べた。専門家らは政府が海外旅行などで抜ける消費を国内に戻すための対策が必要だと指摘している。短期的に地域旅行などに使用できる消費クーポンなどを拡大し、中長期的には国内サービス分野の競争力を高めるべきだと助言した」
韓国は、海外消費分を国内消費へ戻さなければ、国内景気の回復がおぼつかない。と言っても妙案があるわけでない。構造的には、サービス業の強化が必要である。ただ、韓国サービス業は、「低生産性」という宿命を負っている。
(6)「統計庁によると、今年1~4月の個人サービス物価上昇率は前年同月比で5.7~6.1%と高い水準を維持している。同じ期間、個人サービスのうちホテル宿泊料は前年同月比最大13.5%、外食物価は7.7%、休養施設利用料は8.3%上昇した。高麗大のカン・ソンジン経済学科教授は「政府は貿易収支ばかりに目を向けるよりも、長期的には国内サービス業の競争力強化に注力しなければいけない」と指摘した」
高い国内物価を敬遠して、海外で消費していることが判明した以上、韓国のサービス業をいかに強化するかが問われる。こうなると、韓国経済論の領域まで話が広がるのだ。