勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年05月

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    韓国は2022年、14年ぶりの貿易収支の赤字に転落した。この状況は依然として続いている。最近は、旅行収支まで赤字が拡大しており対策に頭を痛めている。韓国市民が、済州へ旅行するよりも費用面でさして変わらない日本へ向かっていることも赤字幅を拡大している。日本は、「2021年世界経済フォーラム」の旅行・観光産業調査レポートの最新版で世界1位である。日本の魅力が引き寄せるのであろう。 

    『中央日報』(5月31日付)は、「同じ費用なら済州より日本」、韓国の旅行収支赤字 3年半ぶり最大」と題する記事を掲載した。 

    会社員のパク・ジイェさん(32)は先月、友人と日本東京を旅行した。3年近く続いた新型コロナの影響で海外旅行にずっと行けなかったからだ。円安で旅行費用が抑えられる点も考慮の対象になった。実際、パクさんは2泊3日の東京旅行に航空料と宿泊料で60万ウォン(約6万3500円)ほど使った。済州(チェジュ)旅行と比較して大きな差はなかった。パクさんは「国内の宿泊料などが新型コロナ以降あまりにも高くなり、同じ費用なら海外旅行がよいと思って日本に行くことになった」と話した。

     

    (1)「爆発的に増えた海外旅行のため、旅行収支の赤字が3年半ぶりの最大規模となった。韓国銀行(韓銀)によると、今年1~3月期の旅行収支は32億3500万ドル(約4520億円)の赤字で、これは新型コロナ拡大前の2019年7~9月期(-32億7960万ドル)以来の最大赤字幅。1~3月期基準では2018年1~3月期(-53億1400万ドル)以来5年ぶりの最大だ」
    韓国人の海外旅行が急増している。1~3月期の旅行収支の赤字は、32億3500万ドルと5年ぶりの大幅になった。当局は、貿易収支の赤字も重なって神経過敏になっている。 

    (2)「韓国人が海外旅行で使用した金額を意味する「一般旅行支給」金額は今年1-3月期56億750万ドルと、新型コロナ拡大前の2019年10-12月期(73億9590万ドル)の75.8%まで回復した。韓国を訪問する外国観光客が国内で使用する金額はそれほど増えていない。外国観光客が国内旅行でする消費を意味する「一般旅行収入」は今年1-3月期30億2110万ドルと、新型コロナ拡大前の2019年10-12月期(53億1470万ドル)の56.8%にすぎない」 

    韓国人は、海外旅行で支出を増やしているが、外国人の訪韓旅行ではそれほど支出が増えず、これが旅行収支の赤字幅を拡大している。対策は、韓国の国内旅行の魅力をアップすることに尽きる。韓国は、ソウル周辺は魅力的でも地方の観光施設の整備が「今ひとつ」という状況だ。ここを改善しなければ旅行収支の赤字は減らないだろう。

     

    (3)「これは海外に行く国内観光客数と韓国を訪れる外国観光客数の差にも表れている。今年1~3月期に海外を訪問した人(498万人)は前年同期(41万人)比で1114%増えた。半面、韓国を訪れた外国人観光客数は同じ期間28万人から171万人へと510%増にとどまった。特に新型コロナで急減した中国人観光客の回復が遅い。外国系の経済予測機関CEICによると、今年3月に韓国に入国した中国人の数は2019年同月の15%にすぎない」 

    1~3月期の海外への旅行客は、前年同期比1114%増、つまり11倍強である。逆に、韓国への旅行客は、同510%増で5倍強に止まった。これまで主力の中国人旅行客が不振であることも響いている。 

    (4)「旅行収支の悪化は経常赤字の増加につながる。1~3月期の経常収支は輸出不振の影響などで44億6000万ドルの赤字となった。経常収支だけでない。新型コロナ以降の「報復性消費(リベンジ消費)」が国内でなく海外で急増し、内需回復も期待を下回る。企画財政部が発表した「5月の最近経済動向(グリーンブック)」によると、先月のデパートの売上高は前年同月比で0.8%減少した。内需の動向を表すカード国内承認額も先月は前年同月比5.6%増と、3月の増加率(9.0%)を大きく下回った」 

    韓国人は、国内消費を削って海外旅行している点で、国内経済にマイナスの影響を与えている。国内消費も増やし、余裕をもって海外旅行をしていない「懐事情」が明らかになった。これは、見過ごせない事態だ。

     

    (5)「延世大の成太胤(ソン・テユン)経済学科教授は「内需回復が期待ほど続かず、下半期の景気反騰も厳しいかもしれない」と述べた。専門家らは政府が海外旅行などで抜ける消費を国内に戻すための対策が必要だと指摘している。短期的に地域旅行などに使用できる消費クーポンなどを拡大し、中長期的には国内サービス分野の競争力を高めるべきだと助言した」 

    韓国は、海外消費分を国内消費へ戻さなければ、国内景気の回復がおぼつかない。と言っても妙案があるわけでない。構造的には、サービス業の強化が必要である。ただ、韓国サービス業は、「低生産性」という宿命を負っている。
    (6)「統計庁によると、今年1~4月の個人サービス物価上昇率は前年同月比で5.7~6.1%と高い水準を維持している。同じ期間、個人サービスのうちホテル宿泊料は前年同月比最大13.5%、外食物価は7.7%、休養施設利用料は8.3%上昇した。高麗大のカン・ソンジン経済学科教授は「政府は貿易収支ばかりに目を向けるよりも、長期的には国内サービス業の競争力強化に注力しなければいけない」と指摘した」 

    高い国内物価を敬遠して、海外で消費していることが判明した以上、韓国のサービス業をいかに強化するかが問われる。こうなると、韓国経済論の領域まで話が広がるのだ。

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    年初来、中国株に大挙して押し寄せた外国人投資家が、景気回復の見通しは暗いと見て今度は一斉に脱出している。習近平体制にリスクを読み取っている証拠であろう。投資のピークだった2021年でさえ、公式統計によると外国勢が保有していた人民元建ての中国株・債券は8兆元(1兆1000億ドル)強と、米国上場株・債券の27兆ドルに遠く及ばなかった。人民元建ての中国株・債券は今、7兆元を割り込んでいるのだ。完全な人気離散である。

     

    『ロイター』(5月30日付)は、「漂流する中国株式市場、最後の望み個人投資家も敬遠」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス後の上昇に陰りが見える中国株式市場では最後の希望も消滅しつつある。景気回復が失速する中、大量の個人投資家が株式に弱気になり、安全資産に資金を移しているためだ。

     

    (1)「市場関係者は今年、巨額の余剰貯蓄が株式市場に流れ込むと予測していた。景気の回復ペースが増す一方で、不動産市場の霧が晴れず、投資先は株式しかないとの見立てだった。ところが、海外からの資金流入は実現せず、警戒した個人投資家も株式市場に背を向け、債券や預金に殺到。株式市場は漂流している。中国本土の株式市場は昨年10月から今年1月にかけて20%高騰したものの、足元では年初から1%下落。香港株式市場も年初来安値で取引されており、中国国債の利回りは低下している。値上がり確実とされていた市場が失速し、資金流出が続いている」

     

    中国株を囃し立てたのは、米国投資銀行である。今年の中国GDPを5.5%以上と大いに話を盛ったのだ。今や、いつこの過大予測を修正するのか、皮肉な目で見られているのだ。

     

    (2)「中国証券監督管理委員会(証監会)の易会満主席によると、中国では個人投資家の取引が市場全体の約6割を占める。JPモルガンの推計によると、米国では25%未満だ。個人投資家の株式離れは市場のデータにも表れている。リスク選好度の指標である信用取引残高は約1カ月ぶりの低水準。A株市場の取引高は3月初旬以来の水準に落ち込んでいる。中国証券預託決済機構によると、証券会社の口座開設も2~3月は勢いがあったものの、4月は減少。投資信託の設定も減っている」

     

    中国では、個人投資家が市場全体の6割も占めているという。米国は25%未満。日本は2割未満である。50年前は、3割以上あったが長期の株価低迷で人気離散した。中国の6割が個人投資家とは、機関投資家の比率が極めて低いことを示している。それだけに、相場のアップダウンが激しくなるのだろう。

     

    (3)「グロウ・インベストメント・グループのチーフエコノミスト、ホン・ハオ氏は「株式市場は中国の景気回復というテーマに不信感を抱いているようだ」と述べた。投資家の熱狂が冷めた背景には、国内経済指標の悪化、政治的緊張の高まり、世界経済の減速といった悪材料がある。中国の4月の鉱工業生産と小売売上高は予想を下回り、銀行融資も予想外に急減。西側諸国は中国製造業への依存を減らす動きを加速している」

     

    中国の株式市場が低迷するのは当然だ。余りにも悪材料が山積している。

     

    (4)「もっとも、悪い兆しばかりではない。一部では、市場が将来大きく反転し、国内投資家が戻ってくるとの見方も出ている。BNPパリバ・アセット・マネジメント(香港)のシニア・インベストメント・ストラテジスト、チー・ロ氏は「一部の市場関係者の推計によると、余剰貯蓄の10%が資産市場への投資に充てられる可能性がある。これは8000億元前後に達する」と指摘UBSアセット・マネジメントのアジア太平洋マルチアセット・マネジメントを統括するヘイデン・ブリスコー氏も、こうした投資家が市場を押し上げると予想。最近、銀行以外の融資が増えており、経済にお金が回り始めた初期の明るい兆しだとの見方を示した」

     

    余剰貯蓄の10%に当たる8000億元(約16兆円)前後が、株式市場へ流入する期待もあるという。だが、貯蓄を貯蓄以外へ振り向けるリスクが怖いという萎縮した心理が正常化するのはいつかだ。


    (5)「そうはいっても、本格的な動きが始まっているわけではない。国有企業株が好調という明るい話題も、投資家のリスク選好が高まったというより、債券投資のような配当狙いの側面が強い。ミニバブル気味のAI(人工知能)関連株を除いては、魅力的なリターンは見つからない」

     

    現在の中国市場には、魅力的な投資テーマがないのだ。不動産バブル崩壊後の日本株がどうなったか、日本の歴史を見ておくべきだろう。

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    エヌビディアの時価総額が、半導体メーカーとして世界で初めて1兆ドル(約140兆円)に達すれば、一握りの限られた企業の仲間入りを果たす。5月25日の米市場で24%余りも急騰し、史上最高値を更新した。AIブームが追い風となり、コンピューティングの新時代が想定よりも速いペースで到来していることが好感されたものだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月27日付)は、「エヌビディア、生成AIの勃興見抜いた先見性」と題する記事を掲載した。

     

    米半導体大手エヌビディアは2022年、最先端の画像処理半導体(GPU)「H100」を発表した。同社史上最も有力な製品の一つで、単価も約4万ドル(約560万

    円)と最高水準だった。インフレが進行するなか、企業が支出を削減しようとしていた矢先の発表は、タイミングを見誤ったように思われた。そして同じ年の11月、対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が発表された。

     

    (1)「エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「22年はかなり厳しい年だったが、一夜にして好転した」と振り返る。米新興企業オープンAIが大ヒットさせたチャットGPTは「ひらめきの瞬間」をもたらし、「即座に需要を生み出した」という。チャットGPTの人気が急激に高まったことを受け、世界のテクノロジー大手や新興企業の間でH100の争奪戦が繰り広げられている。ファン氏によると、H100は「生成AI(自然なテキストや画像を即座に作成できるAI)向けに設計された世界初のコンピューターチップ」だ」

     

    最先端の画像処理半導体(GPU)「H100」は発売当初、荷動きは低調であった。それが、チャットGPTの発表でで一気に人気商品となった。

     

    ‘(2)「エヌビディアは、爆発的な広がりを見せる生成AIの黎明(れいめい)期に成功をつかんだ。この技術は産業を作り替え、生産性の大幅な向上をもたらし、数百万人の雇用を奪う可能性がある。この技術的飛躍はH100によって加速するとみられる。H100は米プログラミング界の先駆者であるグレース・ホッパー氏にちなんで「ホッパー」と名付けられたエヌビディアの新しい半導体設計思想に基づいており、米シリコンバレーでにわかに注目を集めている。「ホッパーに基づいた生産に乗り出すタイミングで全てが動き出した」とファン氏は述べ、大規模な製造が始まったのは、チャットGPTが発表されるわずか数週間前だったと明らかにした」

     

    H100が、生成AIの流れを作った。インターネット登場以来、最大の技術革新とも言われ始めている。生成AIは今や、世界の流れを変えようとしている。

     

    (3)「ファン氏は、利益の継続的な確保に自信をにじませる。その理由の一つは、米マイクロソフトや同アマゾン・ドット・コム、同グーグルといったクラウド事業者や同メタ(旧フェイスブック)などのインターネット企業、法人顧客からの爆発的な需要を満たすうえで、半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC)と協力してH100の生産規模を拡大できることにある。AIに特化したクラウドインフラを手がける米スタートアップ「コアウィーブ」のブラニン・マクビー創業者兼最高戦略責任者は「(H100は)地球上で最も希少な技術資源の一つだ」と語る。同社には23年初めにいち早くH100が納入された。膨大なデータモデルの訓練に必要なH100を数千単位で手に入れるのに、最長6ヶ月待たされる顧客企業もある。新興AI企業は、需要が本格化した途端に供給が不足するのではないかと懸念を表明している」

     

    エヌビディアCEOのファン氏は、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、グーグルといったクラウド事業者やメタ(旧フェイスブック)などのインターネット企業からの受注に自信をのぞかせている。世界は、生成AI時代へ突入する。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月30日付)は、「エヌビディアとTSMC 生成AIに専用半導体 年内投入へ」と題する記事を掲載した。

     

    半導体設計大手の米エヌピディアと半導体受託生産首位の台湾積体電路製造(TSMC)が、生成AI向けの専用半導体を年内に投入する。AIが回答を導き出す過程の速度を前世代品に比べて最大12倍にする。半導体は「新型コロナウイルス特需」の反動で市況が悪化するなか、米台の2強が次の成長分野でリードを固める。

     

    (4)「エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は5月30日、台北市内で記者会見し、「(AI向け半導体の)需要は非常に強い。サプライチェーン(供給網)のパートナーとともに増産を急いでいる」と生成AI向け市場の成長性を強調した。台湾出身のファン氏は同日開幕したIT(情報技術)見本市「台北国際電脳展」(コンピューテックス台北)に合わせて訪台した」

     

    ファンCEOは、台湾出身である。生産や、TSMCが担当する。

     

    (5)「エヌビディアは、AI分野で広く使われる画像処理半導体(GPU)を手掛け、AI向け半導体で世界シェア8割を握る。「Chat(チャット)GPT」に代表される対話型の生成AIの急速な進化を受け、AIデータ処理に特化した専用半導体を年内に投入する。エヌビディアが設計した半導体をTSMCが量産する」

     

    AIデータ処理に特化した専用半導体を年内に投入する。エヌビディアが、設計した半導体をTSMCが量産する。期せずして台湾にゆかりのある企業が、生成AI時代を切り開くことになった。

    あじさいのたまご
       

    中国は、荒れた山野に植林して緑を増やす運動をしていたが、再び農地を増やす運動を始めている。食糧自給率が、70%台前半まで低下してきたからだ。台湾侵攻となれば、米国の経済封鎖は当然起こる。中国のトウモロコシの最大輸入国は米国だ。2035年には食料自給率が65%近辺まで低下するという指摘もある。すでに、大豆にいたっては15%まで低下しているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)は、「米・ウクライナが牛耳る中国人の胃袋 習近平氏の不安」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。

     

    造林をやめて畑に戻せ――。中国のインターネット言論空間で今、最もホットな言葉である。中国語のスローガンとしては「退林還耕」という四字熟語になる。各地で始まった公園をつぶしての耕地化、林伐採が映像付きで出回り、「税金の無駄遣いではないのか」といったシビアな声を含む賛否両論が巻き起こっているのだ。

     

    (1)「2012年、習近平(シー・ジンピン)が中国共産党総書記、続いて国家主席に就くと、自らの時代を特徴づける政策として「緑色運動」の旗を大々的に振ったのだ。温暖化防止という世界の潮流にも合致する環境重視は、習時代の「一丁目一番地」の政策だと誰もが思っていた。中国全土で上意下達式の「政治運動方式」によって緑化が進んでいたのだから」

     

    習氏は、国家主席就任と同時に、大々的に緑化運動を始めた。あれから10年経って、食料自給率向上を叫ぶという巡り合わせになった。

     

    (2)「ところが、ここ数カ月で様相が変わってきた。主な原因は、習がよく口にする「百年に一度しかない大変局」である。「(中国内では)既に『退耕還林』は、口にしにくい時代になった。皆、トップの一挙手一投足に敏感になっている」「我が中国は、食糧増産に転換する兆しがある。理由は、ウクライナでの戦争、そして米国が主導する中国包囲網だ。そこには、インド太平洋経済枠組み(IPEF)だって関係している」。これらは、中国の学者、知識人らが、内外のインターネット空間上を含めて発信している声である」

     

    中国包囲網の進行によって、中国は食料自給率低下を認識するほかなくなった。中国にとって最大の食料供給国は、ほかならい米国である。中国は、その米国の覇権を奪うという野心をたぎらせている。誰が見てもムリであることは明確である。

     

    (3)「もっと切実に中国人民の生活に直結する問題が浮上している。それは、ロシアによるウクライナ侵攻で一気に顕在化した。実は、中国人民のおなかを直接、間接的に満たしていたのは、世界の穀物庫といわれる農業大国、ウクライナのど真ん中の穀倉地帯で育つトウモロコシでもあった」

     

    戦乱の坩堝になっているウクライナは、中国にとって重要な食料供給国である。中国は、本来ならウクライナの国益を配慮する立場に立つべきだが、ロシア側に付いている。ここら当たりにもムリがあるのだ。

     

    (4)「かつて、全輸入量に占めるウクライナの割合は8割強だった。その後、米トランプ政権時代の米中貿易戦争の妥協策として米国産が急増。21年には米国産が7割、ウクライナ産が3割になった。既に中国の需要の1割以上を占め、さらに増加傾向だった輸入トウモロコシを牛耳っていたのは、米国・ウクライナ両国なのだ」

     

    従来、中国の輸入トウモロコシは、米国・ウクライナ両国に大きく依存していた。今後、この両国との関係はどうなるか分らないという不安定な状態にある。

     

    (5)「中国政府は「自給率は十分、高い」と主張してきた。だが、1人に供給される食料全品目の熱量に占める国産の割合を示すカロリーベースの食料自給率を国際統計から計算すると、70%台半ばにすぎないとの推計もある。ここには中国の食の米欧化による肉類の輸入急増も関係している。ウクライナ侵攻1年を経て、中国のトウモロコシ輸入はどうなったのか。中国側報道によれば、23年1〜3月のトウモロコシ輸入先ビッグスリーは、米国ブラジルウクライナの順になった。輸入先シフトでブラジル産が急増したが、3位のウクライナ産との差は大きくない

     

    トウモロコシは、飼料にもなるが重要な食糧でもある。その3大輸入先は最近時でも、米国・ブラジル・ウクライナである。こういう構成を見ると、中国は米国とは争いをしてはならない重要な国と言うことになろう。

     

    (6)「なんだかんだ言っても、中国は食べ物を米国に頼っている。これから急速に「退林還耕」に動き、小麦、大豆、トウモロコシを増産したとしても、胃袋を米国に握られている構造は当面、変えられない。万一、台湾海峡を巡る緊張などがさらに激化したとき、習が頻繁に口にしてきた「戦いへの備え」は十分なのか。「長期戦」にも耐えうる食糧を確保できるのか。国家指導者にとって最大の不安が、すぐに解消されることはない」

     

    中国にとって最大の弱点は、食料自給率の低下である。これをカバーしつつ、米国と覇権争いをするとは、なんとも解せない行動に映るのだ。

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    韓国社会は今日も、「福島原発処理水」と「旭日旗」が話題を独占している。よく飽きもせずに同じことを続けていると不思議で、ここから脱する突破口はなさそうだ。社会全体が、噂や風評に惑わされ、自分の頭で判断することが少ない結果である。合理的に判断する基準が、確立していないのだろう。

     

    このことは、経済面によく現れている。合理的に判断すればあり得ないことが、韓国では起こっているからだ。家計債務は、対GDP比で102%とOECD(経済開発協力機構)でワーストワンである。企業の営業利益が、支払金利をカバーできない「利子補償倍率1以下」が、22.1%と警戒水準を超えている。

     

    『中央日報』(5月30日付)は、「緊縮でも防げなかった『家計負債1位の韓国』、企業負債増加速度も世界4位」と題する記事を掲載した。

     

    韓国銀行が2年近く金融引締め基調を継続しているが、韓国の家計負債は依然として国の経済規模を考慮すると主要国のうち最も多い水準と現れた。

    (1)「国際金融協会(IIF)の「世界負債報告書」によると、1~3月期基準で韓国の国内総生産(GDP)比の家計負債の比率は102.2%で、調査対象34カ国(ユーロ地域は単一統計)で1位だった。調査対象国のうち家計負債規模がGDPを超える国は韓国が唯一だ」

     

    韓国国民の「借金好き」は、昔から変わることがない。計画性のない支出が債務を増やし続けているからだ。朝鮮李朝時代も「宵越しの金を持たない」浪費癖が指摘されていた。民族特性であろう。韓国が一番比較したがる日本は、65.2%である。

     

    韓国は、「一攫千金」の夢を追いたがる特性を持っている。株式投資でも貯蓄を振り向けるのでなく、借金して株式を買うという常識を外れた行動をとる結果、株価下落の際に受ける痛手は強烈である。債務が丸々残る事態に見舞われるのだ。


    (2)「企業負債も増えた。GDP比の非金融企業の負債比率は1~3月期基準で118.4%。香港の269.0%、中国の163.7%、シンガポールの126.0%に続き4番目に高かった。1年前と比較すると3.1ポイント増えたが、上昇幅も34カ国中4位と高い方だ。世界的な金融緊縮基調にも関わらず、この1年間で企業負債が高まった国は韓国をはじめ10カ国だけだ。政府部門負債のGDP比の割合は44.1%で22位と中位圏だった」

     

    不動産バブル崩壊に直撃されている中国企業は、163.7%である。これに対して、韓国企業は118.4%である。輸出不振で債務が増えた結果である。これでは、設備投資は抑制されるので景気は悪化する。韓国経済は、こういう悪循環過程へ嵌まっている。

     

    『東亜日報』(5月30日付)は、「IMF、韓国などアジア企業の負債の不良債権化を警告」と題する記事を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)は、金利高の中、アジア企業の負債負担が急増しているとして負債が不良債権化する可能性を警告した。韓国も、企業負債全体でデフォルト(債務不履行)の可能性が高い負債割合が世界平均をはるかに上回り、危機の警報が大きくなっている。

     

    (3)「IMFは最近、独自のブログに「金利高の中、アジアは企業負債の上昇をめぐり、モニタリングをしなければならない」という指摘し、「アジア企業は、低金利の時期に負債の割合を高めてきて、2008年の金融危機時より負債のレベルが高くなっている」とし、「これは、金利引き上げと高まった市場変動性に負担を加重させている」と指摘した。韓国も、2021年7月~2022年6月まで、利子補償倍率(ICR)が1より少ない企業負債が企業負債全体の22.1%と現れた。世界平均(16.8%)やアジア平均(13.95%)より高い数値だ

     

    営業利益で利子を払えないのは、利子補償倍率(ICR)が1以下と定義される。韓国は、そういう企業負債が全負債の22.1%も占めている。これでは、税金を払えないから法人税も減って、財政にはマイナス要因だ。日本は15.8%で世界平均を下回っている。

    (4)「IMFは、5月初めに発表したアジア太平洋地域の経済予測報告書で、金利が急激に上がる場合、韓国やシンガポール企業の不良債権を懸念した。企業負債の金利が1.5ポイント上がる小幅の下降シナリオで計算しても、利子補償倍率が1未満の限界企業が続出することが分かった。不動産分野では、韓国とベトナムが不良債権の割合が高いとIMFは警告した

    韓国では、不動産企業の不良債権増加が警戒されている。建設会社が、不動産開発プロジェクトで行き詰まっているので、IMFの警戒は現実味を帯びている。

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