勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年05月

    テイカカズラ
       

    韓国主催で5月末に、複数国が参加する海軍の訓練が行われる。これに参加する日本の海上自衛隊護衛艦が、旭日旗を掲揚して釜山港に入港する方向だ。韓国国防部(省に相当)は26日、自衛隊艦艇が自衛隊の旗を掲げて韓国に入港することについて「通常の国際的な慣例だ」との立場を示した。

     

    文政権時代は、旭日旗掲揚を認めなかったが、ユン政権では「国際的な慣例」に従うという。当然の結論だが、文政権の幼児性がひときわ強く浮き彫りになっている。

     

    『ハンギョレ新聞』(5月27付)は、「日本の自衛隊艦艇、今月末に『旭日旗』を掲げ釜山港に入港の見込み」と題する記事を掲載した。

     

    5月末に韓国が主催する多国間訓練に参加する日本の海上自衛隊の護衛艦が、「旭日旗」を掲げ釜山(プサン)港に入港するものとみられる。韓日軍事協力の拡大を推進する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が、前任の文在寅(ムン・ジェイン)政権とは違い日本帝国主義が犯した「侵略戦争の象徴」とみなされているこの旗を容認したかたちだ。

     

    (1)「国防部のチョン・ハギュ報道官は25日の定例会見で、31日から開かれる多国間海洋阻止訓練である「アジア太平洋循環訓練」に参加する日本の海上自衛隊の護衛艦が、旭日旗を掲げて釜山に入港するのかを問う記者団の質問に、「通常通りに艦艇が外国の港に入港する際、その国の国旗とその国の軍隊または機関を象徴する旗を掲げる」としたうえで、「これは全世界的に通用している共通の事項であると認識している」と述べた。さらに、日本の艦艇が「自衛隊艦旗(旭日旗)を掲げて入ってくるのかどうかは今申し上げるわけにはいかないが、(掲げて入ってくることが)通常の国際慣例」だと述べた。韓国は旭日旗を「戦犯旗」「日本帝国主義の侵略の象徴」と考え、使用の自制を要求しているが、日本は国旗である日章旗と同様に自国の象徴だとする立場を守っている」

     

    文政権が、海上自衛隊の旭日旗を拒否したのは国際慣例を無視した行為である。海上自衛艦は、自衛隊法で日章旗と旭日旗を掲揚する決まりだ。文政権はそれを拒否したのだ。

     

    (2)「読売新聞はこの日、複数の韓日政府関係者の話を引用し、「海自護衛艦はこの訓練の前後に、自衛艦旗を掲げて釜山港に入り、海自幹部が各国関係者と交流する計画」で、「尹錫悦政権との間での日韓関係改善の流れを受けたもの」だと報じた。さらに「対日関係の立て直しを進める韓国の尹政権は、政治色がにじむ一連の経緯や対北朝鮮での連携の必要性を踏まえ、掲揚を認めるのが妥当と判断した」と付け加えた。今回の訓練は31日に済州東南の公海上で始まる。韓国が主催し、米国・日本・オーストラリアが参加する。日本の海上自衛隊は、今回の訓練に護衛艦「はまぎり」を派遣する予定だ」

     

    文政権は、ずいぶんとひどい決定をしたものである。左派へこびる決定をしたのだ。政治ではなかった。他国の軍旗まで口出しをしてきたのだ。

     

    (3)「文在寅政権時の2018年10月には、韓国政府が済州国際観艦式に参加しようとしていた海上自衛隊の艦艇に旭日旗掲揚を自制するよう要請し、日本が強く反発して不参加を通知したことがある。スポーツ競技でも、韓日戦がある場合、旭日旗が登場すると両国の国民感情が激化したりもする。旭日旗は、日本政府が1870年5月に日本陸軍の正式な旗に定めた。その後、日本政府は1954年に自衛隊を作り、自衛隊法の施行令を通じて、過去の日本海軍の「軍艦旗」と同じ形の旭日旗を「自衛艦旗」に採択した。自衛隊法によって、自衛隊の船舶は、自衛艦旗を日章旗とともに掲揚しなければならない。海上自衛隊の艦艇が旭日旗を掲げざるをえない理由だ

     

    この左派の『ハンギョレ新聞』も、旭日旗掲揚が国際慣例であると指摘されれば、「反対論」を書けないのだ。文政権時代は、「我が世の春」で反対論を掲載していた。

     

    (4)「これに先立ち、1998年の金大中(キム・デジュン)政権の時と2008年の李明博(イ・ミョンバク)政権の時にも、海上自衛隊の艦艇は韓国海軍が主催した国際観艦式に旭日旗を掲揚して参加した。旭日旗を掲揚した日本の艦艇が釜山に入港するとなると、韓日軍事協力はよりいっそうはずみをつけるものとみられる。読売新聞は「6月初旬には、シンガポールでの国際会議に合わせた日韓防衛相会談が予定される。残る懸案のレーダー照射問題について、早期収拾を目指す方針を確認する見通しだ」と報じた」

     

    下線を引いた部分を読んでいただきたい。この幼児的な主張が、堂々と掲載されている。仮に、北朝鮮が38度戦を突破して攻込んできたら、何と書くのか。「民族統一で歓迎」とでも書くであろう。左派は、こういう体質である。

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    中国は、一人っ子政策のために大混乱に陥っている。一部の若い夫婦は、自分たちの子供に加え、8人の祖父母と4人の親の面倒をみなければならないケースも出ている。人口統計は、経済統計の中で最も確実に将来推計が可能である。習近平氏には、こういう事態の到来を読めなかったのだ。この調子で、台湾侵攻を始められたらどんなことになるか。身震いするほどである。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月24日付)は、「中国で高齢化率が最も高い県 小学校が老人ホームに」と題する記事を掲載した。 

    中国東部の豊かな江蘇省に位置する如東県のケースだ。1960年代後半には人口が極めて多かったため、一人っ子政策の実験の場に選ばれた。それから60年近くたった今、如東は中国で最も高齢化が進んだ県となり、人口のほぼ39%が60歳以上と、全国的な比率18.%の2倍以上に上っている。その結果、学校が閉鎖され、県内の綿花、コメ農家が働き手を見つけるのに苦労する一方、高齢者は微々たる額になりがちな年金で何とか暮らしている。

     

    (1)「如東の窮状は、中国が抱える人口動態上の課題の前兆だ。中国の人口危機はその規模とスピードにおいて、日本やイタリアといった国が抱える危機を凌駕するのは間違いない。中国政府は人口危機によって、中国を世界第2位の経済大国に発展させた成長モデルに痛みを伴う改革を迫られている。支出をインフラと不動産から年金、医療へシフトさせたり、工場で働く若手労働者を探したりすることが求められる。また、都市部の多くの住民が大半の出稼ぎ労働者や地方在住者より格段に高い年金を受給している年金制度の深刻な格差にも対処する必要がある」 

    中国は、現在の軍拡路線を続けて世界覇権などという「戯言」の前に、国内が崩壊する危機を抱えている。それは、下線部によって示される。人民解放軍の兵士を増やすより、労働者が必要になっているのだ。中国を侵略しようという「物好き」な国家はいない。旧日本軍の二の舞になるからだ。

     

    (2)「習近平国家主席は今月、最高幹部に対して「人口の発展は重大な問題だ」と語った。保育と教育の質の向上と、家族を養う負担の軽減の必要性を強調する「質の高い人口発展」という中国共産党の新たなモットーを強調した。「如東で目にする光景は、ほんの始まりにすぎない」。中国グローバル化研究センター(CCG)上級研究員の黄文政氏はこう語る。「如東はいつの日かゴーストタウンになるかもしれない」と指摘する」 

    「一人っ子政策」を最初に始めた如東は、中国最初のゴーストタウン候補地になっている。 

    (3)「高齢者はそれ以上に困窮している。如東の多くの高齢者は、年金の受給額が月間300元(約6000円)以下だと話している。住民はこれでは十分ではないと言うが、国際通貨基金(IMF)が21年に地方部の平均年金受給額だと発表した月間170元(約3400円)をまだ上回っている。170元という金額は、中国政府が定めた月間192元(約3840円)の地方の絶対貧困ラインを下回っている」 

    中国の年金は、全国一律ではない。地方政府によって異なる。これがくせ者だ。年金財源を横流しされたりしており、わずかな年金もいつ打ち切られるか分からないほど不安定である。日本のTVは最近、月3000円の年金で暮らすおばあさんの買い物実態を放送した。お米と肉を少々だ。見かねたTVディレクターが、「安心して好きなものを買ってください」と言い支払った。そのおばあさんは、曲がった腰をさらに曲げて丁寧な謝礼の言葉を述べたのが印象的であった。お気の毒な話だ。

     

    (4)「地方在住の貧しい高齢者の大半は、中国の生活費が上昇していることから、子供に仕送りを求めようとしない。その結果、多くの高齢者は何とかして生計を立てようとしている。1200年前に建立された如東の国清寺の仏塔の陰で線香を売っていた77歳の女性は、国からわずかな年金を受給しているものの、息子の「重荷」になりたくないために働いていると語った。三輪車に乗っていた64歳の男性は、かつて職業としていた大工をやるには年を取りすぎたと言い、「誰からも求められていない」とこぼした」 

    上記のおばあさんの例でも、都会で働く息子は失業しているので、子どもの世話にはなれないとしていた。低年金と高い失業率で、中国の庶民生活は破壊されている。 

    (5)「シンガポール国立大学の東アジア研究所長のバート・ホフマン氏は、現在のペースが続けば、中国では今世紀末までに高齢者1人につき現役の労働者が1人しかいなくなると指摘する(現在は現役4人で高齢者1人を支えている)。同氏によると、これを相殺するためには、政府は女性50歳、男性60歳となっている現在の定年退職年齢以降も働くように徐々に動機づけする必要がある。さらに、まだ数が多い地方の人口が、より生産性の高い都市部の仕事を求めて移住することをさらに促す必要がある。政策立案者は私的年金を拡大し、医療全体を刷新する必要もある。「こうしたものをすべて一緒に成し遂げる包括的な改革パッケージが必要だ」とホフマン氏は言う」 

    中国の定年は、女性50歳(管理職55歳)、男性60歳である。これを引き上げるのは至難の業だ。年金支給率(年金所得代替率)が、現役時代の90.60%(2020年:税引き前)である。農村の年金は「雀の涙」だが、企業や公務員は別天地である。これだけの高い年金をもらえれば、定年延長に「絶対反対」となる。強権の当局も、国民の反対を恐れて定年延長ができないのだ。中国は、矛盾の坩堝へはまり込んでいる。

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    韓国に、米韓同盟の真価が問われる事態が起こっている。中国は、米国への報復でマイクロン製半導体の輸入禁止を発表した。その肩代わり策として、韓国のサムスンやハイニックスへ要請するのでないかとの観測が立っているのだ。米議会が、早くもこれに対して「販売拒否すべき」と主張している。

     

    韓国の真意は、できれば「肩代わり」したいのだ。残念なのは、韓国にこれが同盟国としての信義に反する行為という認識に欠けることである。「ビジネスになれば」という根性では、米国の信頼を失うであろう。G7は、中国の報復に対して同盟国が共同で対処することになっている。抜け駆けは、だめなのだ。「ロシア制裁」と同じスタイルになる。

     

    『東亜日報』(5月25日付)は、「米議会、韓国の半導体『中国への販売を増やせば規制』」と題する記事を掲載した。

     

    米議会で「(米政権の韓国企業に対する中国内の)半導体装備の搬入の猶予が、マイクロンの中国市場の空白を埋めるために使われてはならない」という主張が出た。中国が米最大メモリ半導体メーカーであるマイクロンの中国国内の販売を部分的に禁止した状況で、サムスン電子とSKハイニックスがその穴を埋める場合、これらの企業に対する規制の猶予を撤回すべきだということだ。米中の先端半導体競争が激化する中、韓国は米国の対中規制への参加圧力と中国の経済報復の可能性の間で二者択一を迫られている。

     

    (1)「米下院の対中問題を扱う「中国共産党に関する特別委員会」のマイク・ギャラガー委員長(共和党)は23日(現地時間)、ロイター通信に、「米商務省は、中国で工場を運営する外国のメモリ半導体企業に付与された米国の(装備)輸出許可がマイクロンの空白を埋めるために使用されないようにしなければならない」と述べた。さらに、「我々の同盟国である韓国は中国共産党から直接(マイクロンと)全く同じ経済的強圧を経験した。(韓国企業がマイクロンの)空白を埋めることを阻止しなければならない」と主張した」

     

    韓国は、目先の利益だけを求める行為が、同盟国の信頼を失うということに気づかねばならない。韓国が、米国によって防衛されている現実を忘れてはならないからだ。

     

    (2)「サムスン電子とSKハイニックスは、中国でメモリ半導体工場を稼働している。米商務省は昨年10月、先端半導体装備の中国搬入規制を発表し、これらの企業に規制を1年間猶予した。ギャラガー氏の発言は、マイクロンの中国販売シェアを獲得しようとする韓国企業には、米商務省が「不利益」を与えるという意味で規制の猶予を撤回すべきということのようだ」

     

    米国は、韓国半導体にはすでに中国に関する規制を1年間猶予する恩典を認めている。韓国はこれだけでは満足せず、種々の「異議申立」を行っている。「韓国企業の半導体供給制限が、中国企業だけを育てる結果になる状況は米国も望まないだろう」としている。だが、半導体は軍用に使われる危険性もある以上、中国に「弾」を送ることになりかねないのだ。日米蘭三カ国は、半導体製造設備の輸出禁止措置を取った。中国の半導体育成の芽は摘まれる。韓国は、屁理屈を言わずに米国へ協力することだ。

     

    (3)「米国が、韓国に中国に対するメモリ半導体の販売拡大の自制を公開的に求めたのは初めて。米議会では、対中規制への参加を求める声も高まっている。米民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「マイクロンに対する中国政府の規制を解決するため、財界はもとより同盟およびパートナー国と接触している」とし、「米政権が(同盟と)緊密に協力し、このような行動が容認できないことを中国政府に明確にする」と述べた」

     

    下線部は、中国の制裁に対して同盟国が一致して行動することを示唆している。韓国もこれに同調するほかない。

     

    (4)「このような中、韓国政府は米半導体法の補助金ガードレール(安全措置)条項を緩和することを米政府に要請した。補助金を受ける韓国企業が、中国内の先端半導体生産能力を拡大できる範囲を2倍に増やしてほしいということだ。23日(現地時間)の米政府の官報によると、韓国政府と韓国半導体産業協会(KISA)は3月、「米政府が規定案にある『実質的拡張』など核心用語の現在の定義を再検討するよう要請する」と意見を提出した。先端半導体の「実質的拡張」基準を従来の5%から10%に引き上げるよう要請したという」

    韓国は、中国における半導体生産能力を、10年間で5%から10%へ引き上げるよう米国へ要請している。これは、それだけ中国への供給量が増えることを意味する。ただ、日進月歩の半導体技術の世界では、生産量を増やしてコストダウンを図らねば敗北するという致命的欠陥を抱えている。米国の狙いは、韓国に中国での半導体生産を諦めさせることだ。韓国は、これに気づくべきである。

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    韓国経済は、重大局面に遭遇している。G7広島サミットでも明らかにされたように、世界は中ロ枢軸と自由陣営が対立する局面となり、グローバル化時代の終焉を告げた。もはや、自由貿易時代には戻れない状況下で、韓国の輸出依存経済も終わったのだ。 

    韓国が、輸出依存に代わって内需を振興するには、国内改革が不可決である。だが、左派による既得権益への抵抗でどうにもならないのだ。左右両派の政治的対立は、国内改革への大きな障害になっている。つぎの記事を参照していただきたい。

    2023-05-11

    メルマガ462号 尹政権、内政改革で高いハードル 韓国の未来は「あと4年で決まる」

     

    前記のような問題意識が、次の韓国メディアで取り上げられた。

    『中央日報』(5月26日付)は、「韓国産業研究院『韓国の輸出主導型成長は終わった』」と題する記事を掲載した。 

    数十年間続いた「グローバル化」が事実上終止符を打った中、韓国の輸出環境も急速に悪化している。過去とは異なり、最近10年間の輸出増加率が経済成長率を下回ったことが分かった。産業研究院は、米国・中国葛藤などで交易状況がさらに悪化する可能性が大きいとし、成長率維持のための民間消費活性化を呼びかけた。
    (1)「産業研究院は25日、このような内容の「第2次グローバル化の終焉と韓国経済」(カン・ドゥヨン上級研究委員)という報告書を公開した。報告書は半世紀以上続いた世界GDP(国内総生産)比貿易の上昇傾向が2008年世界金融危機以降消滅したと評価した。韓国の輸出主導型成長も終わりつつある。国際通貨基金(IMF)基準で、この10年間(2013~2022年)の世界貿易の年平均増加率は3.1%で、金融危機以前の1990~2007年(7%)に比べて半分以下に鈍化した。韓国の輸出増加率は同期間12.9%から2.8%へと下がり、それよりはるかに大きな下げ幅を見せた」

     

    世界貿易の成長率が低下している中で、韓国は輸出依存経済を改める努力を怠ってきた。民間消費支出の対GDP比は、40%台に止まってきたのである。この大きな理由は、大企業と中小零細企業の生産性格差がある。その主因は、大企業労組が生産性以上の賃金を獲得し、そのしわ寄せで中小企業製品を買い叩き、中小企業労働者を低賃金へ追込んできた。大企業労組こそ、韓国の既得権益集団を形成した核である。この集団が、左派勢力の中心になり政治すら動かしてきたことが、「悲劇の原点」である。 

    (2)「産業研究院が、韓国銀行の資料を分析した結果、この10年間(2013年1-3月期~2023年1-3月期)の経済成長率は年平均2.45%で、輸出増加率(2.43%)を小幅に上回った。2013~2019年に範囲を狭めれば、両者の格差はほぼ1%ポイントにさらに広がる。経済成長率6.32%、輸出増加率13.18%だった1990~2007年とは完全に変わった数値だ。産業研究院は今後、世界貿易環境がさらに悪化する可能性が大きいと指摘した。特に、激化する米中葛藤が世界経済「デカップリング」(脱同調化)につながれば、世界経済・交易停滞が加速するという見通しだ」 

    世界経済は、米中対立で自由貿易が不可能になり縮小過程へはいる。それが、西側諸国の経済安全保障にとって、やむを得ざることだという認識だ。自由貿易によって、西側の技術が中国の軍事技術に使われ、台湾侵攻という民主主義の危機を招く事態を回避する狙いである。現状は、「準戦時体制」へ移行している。ロシアのウクライナ侵攻が、世界の眠りを覚まさせたのである。韓国には、この認識が希薄である。

     

    (3)「内部的な変化の努力も欠かせない。輸出の成長寄与度の下落を補填するための内需活性化が代案として挙げられた。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の対GDP比民間消費の割合は48.4%で、米国(68.2%)、日本(53.5%)、欧州連合(EU·52.3%)より低かった。産業研究院のカン・ドゥヨン上級研究委員は「グローバル化の終焉以降、韓国経済は民間消費と輸出が成長をけん引する役割を分担しなければならない。そのためには民間消費の活性化が必要だ」と述べた」 

    企画財政部と韓国開発研究院(KDI)が25日、「韓国経済の今日と明日」をテーマに経済開発5カ年計画樹立60周年記念国際カンファレンスを開いた。前・現職の経済副首相や長官、KDI院長が参加した。

     

    秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相兼企画財政部長官は開会の辞で、次のように述べた。 

    「60年間の誇らしい成果が今後60年を保障することはない」として、「世界景気の鈍化や金融不安、輸出・投資不振、国家債務の速い増加、国際基準とかけ離れた規制、世界最低の出生率による人口減少などで成長潜在力が急速に下落している」 

    これは、韓国経済の現状を率直に述べたものだ。これを打開するには、次の田允迵(チョン・ユンチョル)元副首相兼財政経済部長官が指摘することにつきる。 

    「自分の利益にこだわって皆が損をする現実を指摘した。同時に、また「経済発展過程でやむを得ず派生した過度な規制を果敢に解かなければならない」として、「民間創意性が発揮されるように規制は廃止する一方で、公正な市場に向けた規則を作り管理するのが政府の役割」と説明した。

    韓国は、「G8」などという夢物語を忘れて危機感を持つことであろう。左派が、既得権益にこだわらず改革に協力することだ。それなしには、韓国経済が保たないであろう。

    あじさいのたまご
       

    文政権の置き土産だった不動産高騰は、急激な金利引上げによって価格は急落に転じている。だが、ローンで住宅購入した層には、予想外の金利負担をもたらし家計を極度に圧迫している。

     

    これが、建設会社の経営にまで波及している。金利引上げで住宅販売が落込み、建設会社の資金繰りを悪化させ、倒産の危機を招いているのだ。特に、不動産プロジェクトファイナンス(PF)を利用して大規模な開発事業に参加していた中小建設会社や財閥系建設会社が打撃を受けているという。 不動産PFとは、不動産開発による将来収益を担保にあらかじめ開発資金を調達する仕組みだ。

     

    金利の上昇と同時に、江原道(カンウォンド)が推進していたレゴランド開発事業で債務不履行が発生した。これがPF市場を混乱させたのだ。この結果、PFローンの金利が高騰し、新規融資も凍結されるという緊急事態を招いた。 建設会社は、借入金の返済や工事費の支払いに困難をきたし、多くのプロジェクトが未着手や売れ残りになっている。

     

    『東亜日報』(5月25日付)は、「負債比率300%の建設会社が1年間で倍増、不渡り連鎖の爆弾に備えろ」と題する社説を掲載した。  

     

    不動産景気の低迷と金利高の影響で、資金源が閉ざされた建設会社が揺れている。負債比率が財務危険水準の300%を超え、赤信号が灯った建設会社が1年間で2倍にも増えている。営業利益で利息すら払えない建設会社も少なくない。

     

    (1)「分譲住宅市場が冷え込んだ地方の中小型建設会社を中心に、相次ぐ倒産が現実化しかねないという不安が高まっている。不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良債権の炎が金融界全般に燃え移りかねないという警告も出ている。東亜(トンア)日報が請負順位で上位300位内の建設会社の昨年の財務諸表を分析した結果、負債比率(負債÷自己資本)が300%を超える建設会社は22社で、10社だった2021年に比べて2倍以上に増えた。建設会社10社のうち6社は、昨年、負債比率が前年より増えた。今年に入ってから先月までに廃業した建設会社は826社で、昨年同期より29%増加した。特に相対的に規模の大きい総合建設会社が廃業した事例は、1年間で70%近く急増した」

     

    建設会社は、マンション不況と不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良債権が重なっている。負債比率が300%という目を剥きそうな事態に陥っている。これでは当然、倒産予備軍に数えられる事態だ。不動産部門の生み出す付加価値の対GDP比は、15.4%もある。景気への影響も甚大である。

     

    (2)「建設会社が資金難に陥ったのは、何よりも分譲市場の低迷の影響が大きい。売れ残りが増え、工事代金を回収できず、資金が回らない。3月末基準の売れ残りは7万2104戸で、3ヵ月連続で危険ラインの7万戸を上回っている。年内に10万戸を超えかねないという悲観的な見方も出ている。金利高でPF融資利息の負担は大きいが、様々な開発事業が相次いで遅れていることも建設会社を締め付けている」

     

    売れ残りマンション在庫は、危険ラインの7万戸を上回っている。年内には、10万戸に達するという悲観論もある。これに加えて高利のPF借入金利がのし掛っている。建設会社経営は、危機を迎えている。

     

    (3)「建設会社の相次ぐ不渡りは、実体景気と金融に相当な負担を与えかねない。建設業は昨年、国内総生産(GDP)の15.4%を占めており、前後方産業との関連効果も大きい。韓国金融の弱い輪である不動産PF融資残高は、昨年末基準で130兆ウォンに達する。特に、証券会社のPF融資の延滞率は10.4%で二桁に上がっている。建設会社がコスト負担で事業を中断し、2~3年後には住宅供給が不足し、住宅価格の上昇を煽る可能性も排除できない

     

    下線のように、建設会社が体力を消耗して分譲マンションの建設余力を失うと、2~3年後に住宅供給不足が発生するという、別の心配事も起こっている。

     

    (4)「建設業界が資金難に陥ったのは、不動産の好況期に建設会社が無理に投資を行ったためだ。外部に手を差し伸べる前に、骨身を削る自助努力が先行されなければならない。だからといって、建設業の生態系自体が崩れる状況を、むやみに放置することはできない。自助努力を前提に不動産市場の軟着陸を誘導しながら、玉石を選り分けて不良を選別する構造調整を進めなければならない。建設会社の危機がややもすれば、景気低迷と金融危機、住宅価格不安の火種にならないよう、綿密なモニタリングと先制的対応が必要だ

     

    下線部の指摘は正しいが、業界自らが自己規制して行くほかない。政府が、干渉するわけにはいかないのだ。政策では、金利操作を早めに行うことに尽きる。

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