中国経済が泥沼に喘いでいる。6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、好不況の分岐点50を割り込んだ。3ヶ月連続である。中国は、すでに膨大な過剰債務を抱えており、これ以上の債務による景気刺激策をとることも不可能な事態になっている。打つ手はない。
『ブルームバーグ』(6月30日付)は、「中国経済の勢いが一段と鈍化、PMI示唆ー支援策強化の声拡大」と題する記事を掲載した。
中国経済の勢いが6月に一段と鈍化した。製造業のPMIが再び縮小を示し、非製造業の指数も予想に届かず、政策支援の強化を求める声は高まっている。
(1)「国家統計局が30日発表した6月の製造業PMIは49。前月の48.8から若干改善したものの、活動拡大・縮小の境目である50を引き続き下回った。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値(49)とは一致した。建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは53.2。5月は54.5、エコノミスト予想は53.5だった」
6月製造業PMIが、3ヶ月連続の50割れ状態になっている。輸出不振など需要不足が大きな要因だ。非製造業PMIは50を上回るものの低下している。雇用面で大きな影響を与える製造業の停滞が、中国経済の足取りを重くしている。
(2)「オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は6月のPMIについて、「持ち直しには至っておらず、中国経済が減速しているとの見方を裏付けている」と指摘。「もはや問題は政府が景気刺激策を講じるかどうかではない。政府はそうしてきており、尋ねるべき正しい問いは刺激策の質だ」と語る。中国の景気回復ペースが鈍化する中、政策支援の可能性を巡る観測が広がっている。個人消費が減速し、住宅の回復は息切れ気味。輸出は低調で、インフラ投資も抑制的となっている」
下線のように、中国経済が切迫した状況にあることを示唆している。だが、大規模な景気テコ入れは不可能な事態に陥っている。目立った利下げは、さらなる人民元相場安をもたらす危険性が高い。同時に、利下げしても新規の資金需要が増える見通しがないことだ。借入よりも返済して金利負担を減らす方向に向かっている結果である。不動産バブルという壮大な「宴」が終わって、手元に膨大な借入金が残り経営を圧迫している。日本が、平成バブル崩壊後の長期泥沼に嵌まり込んだと同じ状況が始まるはずだ。
『ブルームバーグ』(6月30日付)は、「中国の預金者 収入減と住宅値下がり見通しで悲観強まるー人民銀調査」と題する記事を掲載した。
中国人民銀行(中央銀行)の調査で、住宅が今後3カ月で値下がりすると予想し、収入が減っていると答えた預金者が増えていることが示された。
(3)「人民銀の4~6月期預金者調査によれば、人々が自身の収入についてどのように感じているかを測る指数が49.7に低下し、回答者の約6分の1が1~3月期と比べ収入が減ったと答えた。同指数は昨年、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)の影響で低迷していたが、今年1~3月期には回復していた」
4~6月期の収入が前の期に比べて減っている。雇用環境悪化が主因である。
(4)「中国の住宅価格が次の四半期に下落するとの予想は17%近くに上り、1~3月期調査の14.4%を上回った。住宅値上がりを見込んでいるのは約16%で、1~3月期の18.5%から低下。変わらずと考える人は54.2%で、基本的に前期と同じ割合だった。住宅建設は経済にとって極めて重要なセクターだが、価格も建設も低迷し、ここ2年ほどは危機的状況に陥っている」
住宅価格の見通しでは、値下がりが増えている。値上がりは逆に減っており、住宅を買うムードがさらに冷えていることが窺える。これでは、住宅も売れなくて当然であろう。
(5)「不動産デベロッパーがデフォルト(債務不履行)に陥り、多くの集合住宅が売れ残る中で、住宅ローンの返済を拒む住宅所有者も出ている。人民銀と地方政府は現在、金利引き下げや購入制限緩和で下支えを図るが、新築住宅の需要が回復する兆しはまだほとんどない。不動産業界は1~3月期にわずかに回復し、1.3%成長と、ここ1年余りで初めて拡大。ただ、銀行が家計に昨年融資した長期ローン総額は約10年ぶりの低水準で、借り入れは今年1~5月も13%減った」
住宅購入ローンは昨年、10年ぶりの低水準になった。今年1~5月もさらに低迷し13%減である。不動産バブルは終わったのだ。