中国は、台湾侵攻への前提条件として、戦時経済体制である「双循環経済モデル」を前提にしている。台湾へ侵攻すれば、西側諸国からの経済制裁は確実である。「第二のロシア」になるのは目に見えている。そこで、「一帯一路」で関係を深めたグローバル・サウスと貿易を強化すれば、経済制裁によるマイナスをかなり帳消しにできると踏んでいる節がある。「双循環経済モデル」には、こういう意味合いもある。
ここには大きな盲点が二つある。
1)グローバル・サウスの代表格は、中国のライバルであるインドである。インドは、先の米印首脳会談で兵器の共同生産を行う協定を結んだ。いずれ安価な兵器が、ロシアに代わってインドが輸出するようになれば、グローバル・サウスはインドの影響が深まる。こうして、中国が期待するように「一帯一路」路線は希薄化する。
2)先進国との貿易からグローバル・サウスへの貿易へシフトシフトすれば、先進国の技術が入らないことから、中国の生産性向上にブレーキが掛ることだ。これは今後、労働力の不足が顕著になる中国にとって致命的な欠陥になろう。
『ハンギョレ新聞』(6月19日付)は、「中国『双循環戦略は期待薄か、サプライチェーン分離で成長に打撃』」と題する記事を掲載した。
中国経済の急成長をけん引してきた生産性は構造的、長期的に低下しつつあるとの分析が発表された。全国経済人連合会傘下の韓国経済研究院(韓経研)は、16日に発表した「中国の政治・経済リスクと韓国経済に対する示唆点」と題する報告書で「中国経済の生産性が急激に低下しつつある」と主張した。
(1)「韓経研の分析によると、2015年から新型コロナウイルス禍前の2019年までに、中国の総要素生産性は1.15ポイント低下した。同期間の経済協力開発機構(OECD)平均の総要素生産性は0.67ポイントの上昇。総要素生産性とは、労働・資本・技術などの生産に投入されるすべての要素が創出する付加価値であり、社会の経済的効率性と長期の成長率を占う指標となっている」
2015~19年の総要素生産性では、次のような変化があった。
中 国 マイナス1.15%
OECD マイナス0.65%
中国のマイナス幅が大きく、ざっと2倍の格差である。この差が、どこから生まれたかだ。
(2)「韓経研は、「その国の所得水準が高くなるほど総要素生産性の上昇率は次第に低下する傾向があるが、中国の総要素生産性の上昇率は平均のすう勢線の下の領域に属し、似たような所得水準の国と比較しても非常に低い」と分析した。中国の成長をけん引してきた総要素生産性の絶対水準はまだ先進国グループより高いものの、金融危機の時期だった2011年より後の上昇がみられなくなり、その後は急激に低下しているというのだ」
中国は、2012より生産性が急激に低下しているという。無駄なインフラ投資を急増させたことも響いているはずだ。
(3)「報告書の診断によると、中国が新たな経済戦略として掲げた「双循環戦略」(内需と輸出の同伴成長)は生産性の向上にとって効果的ではない。韓経研の分析によれば、1980年以降、中国の国内総生産(GDP)に対する輸入額の比重が1ポイント低下すれば、総要素生産性は約0.3ポイント低下した。報告書では「中国の総要素生産性の上昇率の決定には輸入の比重が主な役割を果たすと分析された」とし、「輸入は貿易収支の面ではマイナス要因だが、技術優位国からの輸入は知識波及効果などを通じて総要素生産性を上昇させる」と明らかにされた。中国経済の自立化戦略は技術輸入の障害となり、かえって生産性を低下させる要因として作用するだろうとの診断だ」
中国は、総要素生産性の上昇率の決定に輸入比率が主な役割を果たすという。これは、先進国からの輸入増加が国内産業への刺激を与えている結果であろう。
(4)「イ・テギュ先任研究委員は、「中国は内需経済を基盤としてロシアや中東などの友好国とサプライチェーンを構築しようとしているが、米国や欧州中心のサプライチェーンとは質的に差が非常に大きいため、生産性向上効果は限定的だと考えられる」とし、「韓国としては長期的・構造的リスクに直面する中国への依存度を低下させることが合理的な選択」だと語った」
中国は、先進国経済圏から離れる意図で「双循環経済モデル」に依存し始めている。だが、中国の生産性向上には支障を来す恐れが強いとしている。韓国の輸出相手国としては、ふさわしくないという「切り捨て論」である。





