勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年06月

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    中国は、台湾侵攻への前提条件として、戦時経済体制である「双循環経済モデル」を前提にしている。台湾へ侵攻すれば、西側諸国からの経済制裁は確実である。「第二のロシア」になるのは目に見えている。そこで、「一帯一路」で関係を深めたグローバル・サウスと貿易を強化すれば、経済制裁によるマイナスをかなり帳消しにできると踏んでいる節がある。「双循環経済モデル」には、こういう意味合いもある。

     

    ここには大きな盲点が二つある。

    1)グローバル・サウスの代表格は、中国のライバルであるインドである。インドは、先の米印首脳会談で兵器の共同生産を行う協定を結んだ。いずれ安価な兵器が、ロシアに代わってインドが輸出するようになれば、グローバル・サウスはインドの影響が深まる。こうして、中国が期待するように「一帯一路」路線は希薄化する。

     

    2)先進国との貿易からグローバル・サウスへの貿易へシフトシフトすれば、先進国の技術が入らないことから、中国の生産性向上にブレーキが掛ることだ。これは今後、労働力の不足が顕著になる中国にとって致命的な欠陥になろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月19日付)は、「中国『双循環戦略は期待薄か、サプライチェーン分離で成長に打撃』」と題する記事を掲載した。

     

    中国経済の急成長をけん引してきた生産性は構造的、長期的に低下しつつあるとの分析が発表された。全国経済人連合会傘下の韓国経済研究院(韓経研)は、16日に発表した「中国の政治・経済リスクと韓国経済に対する示唆点」と題する報告書で「中国経済の生産性が急激に低下しつつある」と主張した。

     

    (1)「韓経研の分析によると、2015年から新型コロナウイルス禍前の2019年までに、中国の総要素生産性は1.15ポイント低下した。同期間の経済協力開発機構(OECD)平均の総要素生産性は0.67ポイントの上昇。総要素生産性とは、労働・資本・技術などの生産に投入されるすべての要素が創出する付加価値であり、社会の経済的効率性と長期の成長率を占う指標となっている」

     

    2015~19年の総要素生産性では、次のような変化があった。 

     

    中  国  マイナス1.15%

    OECD  マイナス0.65%

    中国のマイナス幅が大きく、ざっと2倍の格差である。この差が、どこから生まれたかだ。

     

    (2)「韓経研は、「その国の所得水準が高くなるほど総要素生産性の上昇率は次第に低下する傾向があるが、中国の総要素生産性の上昇率は平均のすう勢線の下の領域に属し、似たような所得水準の国と比較しても非常に低い」と分析した。中国の成長をけん引してきた総要素生産性の絶対水準はまだ先進国グループより高いものの、金融危機の時期だった2011年より後の上昇がみられなくなり、その後は急激に低下しているというのだ

     

    中国は、2012より生産性が急激に低下しているという。無駄なインフラ投資を急増させたことも響いているはずだ。

     

    (3)「報告書の診断によると、中国が新たな経済戦略として掲げた「双循環戦略」(内需と輸出の同伴成長)は生産性の向上にとって効果的ではない。韓経研の分析によれば、1980年以降、中国の国内総生産(GDP)に対する輸入額の比重が1ポイント低下すれば、総要素生産性は約0.3ポイント低下した。報告書では「中国の総要素生産性の上昇率の決定には輸入の比重が主な役割を果たすと分析された」とし、「輸入は貿易収支の面ではマイナス要因だが、技術優位国からの輸入は知識波及効果などを通じて総要素生産性を上昇させる」と明らかにされた。中国経済の自立化戦略は技術輸入の障害となり、かえって生産性を低下させる要因として作用するだろうとの診断だ」

     

    中国は、総要素生産性の上昇率の決定に輸入比率が主な役割を果たすという。これは、先進国からの輸入増加が国内産業への刺激を与えている結果であろう。

     

    (4)「イ・テギュ先任研究委員は、「中国は内需経済を基盤としてロシアや中東などの友好国とサプライチェーンを構築しようとしているが、米国や欧州中心のサプライチェーンとは質的に差が非常に大きいため、生産性向上効果は限定的だと考えられる」とし、「韓国としては長期的・構造的リスクに直面する中国への依存度を低下させることが合理的な選択」だと語った」

     

    中国は、先進国経済圏から離れる意図で「双循環経済モデル」に依存し始めている。だが、中国の生産性向上には支障を来す恐れが強いとしている。韓国の輸出相手国としては、ふさわしくないという「切り捨て論」である。

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    日本が、半導体国策会社「ラピダス」を立ち上げ、世界の半導体競争に名乗り出たきっかけを作ったのは、自民党議員甘利氏である。甘利明氏は、ソニー勤務の経験があるので半導体知識を持っていた。これが機縁になって21年5月、甘利氏は安倍晋三・麻生太郎の元首相らとはかって約100名で半導体戦略推進議員連盟を組織。22年11月に「ラピダス」創立へこぎつけた。2027年には、「2ナノ」(ナノ=10億分の1メートル)という超微細の半導体量産化を開始する。 

    『朝鮮日報』(6月25日付)は、「自民半導体議連会長、『半導体は国家存亡のカギ』 日本には最後の機会」と題する記事を掲載した。 

    自民党の半導体戦略推進議員連盟の甘利明会長は6月16日、「半導体を支配する国が世界を支配する時代が来る。日本がその時代に挑戦もせず、そのまま退くことはない」と衆議院議員会館で取材に応じた。 

    (1)「日本は22年11月、トヨタ、ソニー、NTTなど大手企業を集め、先端半導体企業「ラピダス」を発足させた。経済産業省は、「2030年には日本の半導体の世界シェアはゼロになる」という衝撃的な報告書を発表した。 報告書には、「日本の地政学的潜在力が明らかになってきている」という点も盛り込まれた。米中対立という地政学的危機が、台湾と韓国に集中した半導体産業を日本中心に再編する機会になり得ると指摘したものだ」 

    従来は、1社単独で半導体経営に当たった。ラピダスは、内外の関連企業が出資あるいは技術協力するという点で異色だ。それだけに、基盤が安定し発展余力は極めて大きい。 

    (2)「甘利会長は、「日本は半導体で完全に韓国、台湾に後れを取っているが、希望を持って挑戦する」と述べた。韓国政界はサムスン電子、SKハイニックスだけを信じ、まともな半導体支援策も戦略も打ち出せず、世論のせいで一部半導体工場は着工もできないでいる。その間に日本は半導体復活計画を着実に実行しようとしている。以下は、甘利氏とのインタビューである」 

    日本得意の「総力戦」で臨む。産業の発展基盤になる次世代半導体で、日本は有力な地歩を得た。

     

    (3)「今までになかった半導体時代が到来している。変革期だ。昨日の王座にあった者があすも王座にいるとは限らない時代に入った。新しい半導体時代は再び同じスタートラインで始まる。日本が半導体競争に参加しないことは、最初から敗北するのと同じだ。『勝てるか』ではなく、『やらねばならない』ということだ」 

    2ナノ以下の半導体は、「未知の領域」である。日本は、先発半導体企業と同列に並ぶ。 

    (4)「日本にも希望が生まれている。 日本は回路線幅40ナノメートル程度の生産拠点(ファウンドリー)しかなかったが、2ナノメートルへの挑戦は日本としては夢のような話だ。2ナノメートル技術を保有する米IBMと技術移転契約を結び、欧州の半導体最高技術研究機関であるIMECとも提携した。オランダの先端半導体設備メーカーASMLも協力する。世界の『トップ企業』と連携する戦略だ。全世界で活躍する日本人技術者『トップ100』のリストを手に、半導体ドリームを共にしようと求め、相当数が加わった。まさにこの部屋でIBMと直接会い、彼らが本物だと感じ、挑戦することにした。最初はIBMがそんなに優れた技術を持っているなら、なぜ自分でやらないのか、だまされるのではないかという意見もあった」 

    IBMは、自ら開発して次世代半導体技術の量産化相手として日本を選んだ。IMEC(ベルギー)は、10年以上前から日本へコンタクトを求めていた関係にある。その縁が生きて、北海道へ研究所を設ける。ASML(オランダ)は、IMECの口添えもあり製造機械で優先的に日本へ出荷する。まさに、国際協調の見本のような形で「ラピダス」はスタートする。

     

    (5)「電気で動く物は全て半導体が支配する。データセンターは半導体の大きな塊であり、人工知能(AI)も半導体なしでは動かない。今後世界は「半導体供給国」と「供給を受ける国」に分かれる。供給国になれなければ、結局は敗北する。日本が(半導体競争で)勝てるかは分からないが、やらなければただ負けることになる経済安全保障は半導体にかかっている。コロナ禍で日本の自動車生産ラインは小さな半導体の供給減が原因でストップした。半導体の威力を目の当たりにして、国家のリスク要素であることも知った。経済安全保障推進法を制定した。半導体サプライチェーンは(日本のように)地政学的リスクのないところに構築すべきだ」 

    半導体は、無限の発展性を秘めている。過去の鉄や石油のような機能を果たす。「電気で動くものは半導体が制す」とは名言である。難点は、コンピューターの使用が増えれば増えるほどエネルギー消費が増えることだ。これを解決するのが、次のパラグラフで取り上げる「光半導体」である。NTTが開発した「日の丸半導体」だ。これが、世界を制する。 

    (6)「日本の未来へのジャンプはNTTが保有している『光半導体』技術だ。2ナノメートルより先の半導体微細化を議論する際、回路に電気を通す現在の方式の限界が問題になる。今後は光と電気を融合する半導体を作っていく。ラピダスにNTTが出資した理由がそれだ。この分野では日本のNTTが最高の技術を持っている」 

    「光半導体」が、次世代半導体のトップを行く。今後の日本は、これに賭けるのだ。戦後日本は、ソニーのトランジスタによってラジオを小型化して世界中へ売りまくった。再び、チャンスが訪れる。

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    欧州は、中国との経済的結びつきが強いことから、米国のように中国へ「一刀両断」的な行動を取りにくい。中国は、この米欧間の隙をついて離間策を練るのが基本戦略だ。米中対立が激化するほど、中国は欧州へ接近する構図になっている。だが、欧州は米国と価値観で一体である。それだけに、中国に対して本質的には、「異教徒」という立場だ。欧州は、この視点から中国へ二つの外交課題の解決を迫っている。台湾侵攻とロシアへの武器供与についてそれぞれ抑止することである

     

    『ロイター』(6月22日付)は、「欧州の対中国・台湾政策、ウクライナ戦で一層複雑化」と題する記事を掲載した。

     

    昨年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、フランスやドイツなど欧州の主要国はロシアと対峙するため軍事力を強化しようとしている一方、米国との対立を深める中国政府への向き合い方を巡っては意見が分かれている。今月は台湾の呉釗燮(ジョセフ・ウー)外交部長(外相)も欧州を訪問し、チェコの演説では台湾が独立を維持するには「欧州の友人」が必要だと訴えた。欧州にはバチカン以外に台湾と正式な外交関係を結んでいる国はないが、非公式な接触は急増しており、特に東欧諸国でこうした動きが目立つ。

     

    (1)「バルト三国、ポーランド、チェコを含む東欧諸国は近年、意図的に台湾との関係改善に取り組んでいる。これは欧州委員会のフォンデアライエン委員長、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長がともに進める対中強硬路線の一環だ。EUとNATOはいずれも水面下で、太平洋地域の米同盟国との関係を強化している。今年初めにはNATO国防大学の学長が密かに台湾を訪問したと報じられた。また韓国は東欧、特にポーランドにとってますます重要な兵器供給源に浮上しつつある」

     

    東欧諸国は、中国が一帯一路で経済支援すると約束しながら履行しないことで「立腹」している。その反動で、台湾へ接近している。台湾は約束を守るからだ。欧州諸国の国会議員が相次いで訪台している背景でもある。

     

    (2)「欧州の当局者が明かしたところによると、欧州諸国の政府は経済関係の維持以外に2つの点を最優先課題に据えている。ひとつは中国政府に失うものが大きすぎると分からせて台湾侵攻を断念させること、もうひとつは中国がその工業力を駆使して武器を供給し、ウクライナ戦争でロシアを支援するのを阻止することだ。この2つの目的は米政権も共有しており、今週ブリンケン国務長官を中国に派遣した。ブリンケン氏は習氏と会談し、気候変動などの課題で協力することに合意したが、実質的な事態打開には至らなかった」

     

    欧州は、中国が「軍事国家」になって侵略しないことに外交政策の力点を置いている。台湾侵攻抑止とロシアへの武器供与抑止だ。これが、世界平和実現の必須になっている。

     

    (3)「(欧州では、)中国と米国がアジアで、台湾を巡って大規模な戦争に突入するのではないかとの懸念は今も浮上し続けている。そうした中、ドイツと欧州の指導者は「経済的デカップリング」ではなく、中国への依存を減らす「デリスク」を語っている。ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデンなどは何年もかけて中国政府と緊密な関係を築き、中国企業にインフラやその他企業への出資を働き掛けてきた。例えば中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ)がハンブルクの港湾ターミナルの持ち分24.99%を購入することも認めた。同港が扱うコンテナ輸送の3分の1は中国向けだ」

     

    欧州は、旧ソ連崩壊による「平和の配当」に最も浴してきた。中国とも深い経済関係を樹立している。それだけに、ウクライナ侵攻と台湾侵攻予想は青天霹靂である。平和への希求は極めて強い。中国が、このタブーに触れることは「敗北」を意味する。

     

    (4)「ドイツのショルツ首相は今週、中国の李首相と会談後、中国政府が核兵器による威嚇に反対し続けていることに「感謝する」と述べた上で、「この戦争において、ロシアに対してさらに強い影響力を行使すべきだ」と訴えた。中国がロシアに武器を供給しないことが「重要だ」とも付言した。ロシアからの脅威を死活的なものと考えている東欧諸国にとって、中国がロシアに接近し過ぎないようにすることは、それ自体が国家安全保障上の優先事項だ」

     

    ドイツは、中国にロシアへの武器供与をせず、ウクライナ戦争の早期解決に尽力するように圧力を掛けている。

     

    (5)「中国の産業力が味方に付いていなければ、ロシアは消えゆく帝国のようなものだ。一方で、西側諸国間の足並みが乱れるあまり、習氏とプーチン大統領、あるいはその後継者たちの同盟関係がさらに緊密化するようなことがあれば、脅威はずっと高まるかもしれない。中国政府との対話の道を開き続けるなど人が良過ぎる、という見方もあるだろう。しかし少なくとも現状では対話こそが、中国という大砲がウクライナ戦争の力関係を変えてしまうのを防いでいる

     

    中国が、孤立して疑心暗鬼状態にならぬよう、欧州を初めとする国々は中国と「対話」する必要がある。この単純なことが、抑止力を強くすることともに、平和を守る最低条件となる。

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    中国経済は、ゼロコロナ中の3年間ですっかりその立ち位置が変わった。経済的には、不動産バブル崩壊で地方政府の財政構造が一段と悪化していること。習近平氏の国家主席就任3期目で軍事国家の色彩が強まっていること。ロシアのウクライナ侵攻で、台湾侵攻リスクが高くなっていることなど、中国はもはや従来の尺度で評価することが困難になっている。

     

    『ロイター』(6月23日付)は、「中国の大規模景気刺激策はいつか、『今は我慢』の投資家」と題する記事を掲載した。

     

    この数カ月、中国経済の減速を確認する経済指標が相次いでいる。当局は利下げなど、景気支援に向けた対策を打っているものの、市場には「小粒」と映る。投資家は、回復ラリーに賭けるのは、大規模な景気刺激策が打ち出されてから、というスタンスだ。

     

    (1)「一時、長期上昇相場入りが期待された中国株も景気減速に伴い失速した。今も投資する世界の運用担当者の間では「我慢」「警戒」「刺激」が先行き見通しの合言葉になっている。BofA証券の世界の機関投資家を対象とする調査で6月は、中国株のショート(売り)が、ハイテク株のロング(買い)に次いで2番目に活発な取引だった。モルガン・スタンレーによると、6月は短期筋のヘッジファンドが主要な買い手となっており、回復のもろさを浮き彫りにする」

     

    世界の機関投資家は6月、中国株を「売り」でハイテク株が「買い」という流れ一色になった。これは、中国への失望が噴出した結果だ。

     

    (2)「中国本土の優良株は年初から0.2%下落。2021年初頭に付けた最高値からは約34%下落している。香港株式市場のハンセン指数は1月から15%下落。1月の急騰後、海外からの資金流入はほぼ止まっている。人民元も7カ月ぶり安値を付けた。中国人民銀行(中央銀行)の利下げが予想を下回り、当局の景気浮揚への「本気度」に疑問符が付いたためだ」

     

    中国は、景気浮揚へ向かって大幅な利上げができない限界にぶつかっている。「流動性の罠」と人民元相場下落への懸念である。なぜ、こういう根本的な部分について考察しないのか。むしろ、それが不思議である。

     

    (3)「強気派は、一段の支援措置が打ち出され、それが傷ついた心理を修復するという期待を持ち続ける。ピクテ・ウェルス・マネジメントのアジア・マクロ経済調査責任者ドン・チェン氏は、最近の貸出基準金利などの引き下げはそれ自体、大した効果はないとするものの、「重要なのは政策シグナルだ。政策措置がさらに出てくれば、非常に慎重なセンチメントを好転させられるだろう」と述べた」

     

    最も効果的な「イベント」は、米中対立の緩和への兆しが出ることだ。それがなくて、中国株の回復は期待薄であろう。中国に代わって、日本が新たな投資受け皿になっているという現実認識を持つべきであろう。世界は、急速に動いている。中国は、国際情勢で追込まれているのだ。

     

    (4)「割安感を受けた反発を期待する向きもいる。チャイナ・ルネッサンスの株式部長、アンディ・メイナード氏は、「これ以上、悪いニュースが続くとは思えない。市場はすでにネガティブ要因を全て織り込んでいるようだ」と述べ、年末に向け押し目買いなどが入ると予想する。公式データによると、海外勢は今月、中国株を230億元(30億ドル)と小幅に買い越している。年初来では1900億元の買い越しだが、その大半は1月に積み上げたものだ」

     

    中国が、不動産バブル崩壊という歴史的局面にあることと、米中対立がのっぴきならないところへ来ているという事実認識が必要だろう。

     

    (5)「消費や生産、不動産市場に関する経済指標が予想を下回り続け、大手金融機関は相次ぎ今年の成長率予想を下方修正した。信頼回復は長期戦の様相を呈している。比較的ポジティブなアナリストは、悲観的見方が株価を異常に低位にしていると指摘する。モルガン・スタンレーによると、MSCI中国指数は、12カ月予想株価収益率(PER)が9.3倍と魅力的な水準にある。「緩和が一段と進み、マクロ経済の回復が拡大し、地政学が安定すれば、中国株は(下半期に)再びアウトパフォームする」とモルガン・スタンレーのアナリストは指摘した」

     

    習氏が、国家主席であり続ける限り、台湾侵攻リスクはつきまとう。これは、中国株が地政学リスクから逃れられない宿命である。

     

    (6)「楽観論は失望リスクもはらむ。M&Gインベストメンツのアジア太平洋債券部門責任者、グアン・イー・ロー氏は「投資家が求めているのは、金融政策対応だけではないと考える。アニマル・スピリット、投資家の信頼、市場の信用を回復させるために、もう少し決定的な何かを、われわれは求めている」と語った」

     

    日本株が30年以上も低迷した理由は、下線部のような手応えを得られなかったからだ。中国株は、それを求めているのであろう。

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    土地が歴史を動かしてきた

    テクノクラート登場の背景

    安全保障重視には落とし穴

    「共同富裕」は実現しない

     

    中国経済は今、大きな転換点に立たされている。土地国有制を利用した「土地本位制」(学術用語ではない)を生かし、土地売却収入を有力な地方政府の歳入手段にしてきた。それが、ついに破綻の憂き目に遭っている。膨大な「隠れ債務」(約1200兆円以上)が、置き土産になっているのだ。この処理が、中国経済の将来を左右する重大な事態を招いている。

     

    習近平氏が、国家主席に就任した2012年以来、住宅建設が中国経済を支える最大の要因(GDPの25~30%)となり、不動産バブルは満開状態になった。これに伴う地価高騰で、地方政府が最大の受益者になった。歳入の3割前後を土地売却収入で賄えたからだ。これによってインフラ投資を行い、地方債発行の元利金にも充当することができた。まさに、地価高騰=歳入確保という形で「土地本位制」で潤ってきたのである。

     

    地価高騰で歳入を確保できる。これが、最も安易な経済政策を行わせた。国防費の「隠れ財源」にされたことは言うまでもない。習氏が、不動産バブルに危険サインを出しながらも容認したのは、自由に使える財源の持つ魅力に勝てなかったのであろう。

     

    土地が歴史を動かしてきた

    中国は有史以来、土地政策で躓いてきた。その結果、土地の公有制と私有制を交代しながら繰り返した。公有制にすると土地が荒れ放題になる。そこで、有効活用を目指して私有制にすると、土地が一部へ集積されて不公平の原因になった。中国共産党政権でも、当初は人民公社制にして失敗した。農民の勤労意欲が高まらず結局、部分的な私有制を認めた。

     

    このように、中国社会は土地をめぐって独特の反応をしてきた。裏返せば、4000年の農業社会の歴史が、土地への執着心を抜きがたいまでに高めたと言える。これが、土地神話を生み出し不動産バブルの火を燃えさからせた。

     

    習氏が、中国独特の土地問題をめぐる振幅の大きさを理解していれば、不動産バブルをここまで悪化させなかったであろう。習氏には、「中華の夢」が先行して軍事力強化を優先事項にした。その財源作りの手段として、不動産バブルを利用したことは間違いない。そうでなければ、国家主席就任2期目において抑制策へ手を打っていたであろう。今になってみれば、すべて後の祭りである。中国経済が、不動産バブル崩壊でもはや成長軌道へ復帰する可能性もないからだ。

     

    習氏は、先の米国務長官との会談で意味深な発言を行った。中国は米国の権益を尊重しており、米国へ対抗したり、米国に取って代わろうとはしていない」と述べた。これが、何を意味するかである。習氏はこれまで、国内向けに「米国衰退、中国繁栄」を言い続けて、国内を鼓舞してきた。この言葉の裏には、中国が世界覇権を握るという意味合いを込めている。習氏は今回、それを否定した形だ。

     

    こうした変化の裏には、中国経済の抱える大きな障害=過剰債務という重圧がある。近時の中国の抱える債務残高は、対GDP比で295%である。これは、日本の平成バブルが崩壊したときの状態とほぼ一致している。

     

    当時の日本の株価水準が、最近の株高でようやく回復できると話題になっている。実に、33年ぶりだ。この例を中国に当てはめれば、2053年まで中国経済は「トンネル状態」が続く計算である。いかに強気の習氏といえども、「米国衰退、中国繁栄」を表だって言い続けられるはずがない。

     

    習氏は、昨年10月の国家主席就任3期目の人事で、共産党青年組織の「共産主義青年団」(共青団)出身者や、「太子党」「紅二代」などと呼ばれる親の七光り幹部を一掃した。習氏自身も、「太子党」「紅二代」出身である。だが、自らが出世の足がかりになった母胎を切り捨てたのである。これは、米国経済に比べて劣勢に立つと認識した習氏が、「危機突破作戦」として、人事面で「新しい酒は新しい革袋」という喩えに倣ったものであろう。

     

    テクノクラート登場の背景

    これまでの既成集団に代わって登場したのが、中国の軍産複合体で豊富な経験を積んできた「テクノクラート」(技術官僚)である。昨年、党の序列上位24人からなる党中央政治局員で、新たに昇格した13人のうち5人が「テクノクラート」である。完全に新しい人事の流れができたと指摘されている。「軍民融合」プロジェクトを担ってきたエリート階級が、政治部門へ進出してきたと言える。軍民融合とは、急激に近代化を遂げる中国軍の利益になるよう、民間部門の新しい技術を生かそうとする政策だ。

     

    習氏が、こうした思い切った人事政策を行ったことには、種々の評価がある。

    1)習氏は、政策の軸を経済的な成長から、安全保障重視へと作り替える。

    2)習氏は、自身の支配に対する将来の反対勢力の可能性をつぶすために手を打っている。

    (つづく)

     

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