日本が、国策会社半導体企業「ラピダス」を創業し、27年に2ナノ(10億分の1メートル)以下の最先端半導体生産計画に着手した。この計画に対して、韓国では冷ややかな見方もある。「日本が、コスト・収率・工程の問題で20年前にあきらめた半導体の量産を今になって政府が支援したからといって、果たして可能なのか」と言うもの。
だが、これは皮相的な見方である。韓国でも専門家は、日本が半導体の設備や素材で世界的存在であることを勘案すれば、総合力で日本が韓国をはるかに上回っているので、「日本復活」の可能性大と見ている。
『韓国経済新聞』(7月30日付)は、「韓国専門家『素材・部品・装備競争力前面に出した日本の半導体 反騰の可能性十分』」と題する漢陽大学融合電子工学部の朴在勤(パク・ジェグン)碩学教授へのインタビュー記事を掲載した。
約2兆円。日本政府がこの2年間に用意した半導体産業支援補助金の金額だ。米国と中国の半導体覇権競争激化を機会として「失われた30年」を取り戻そうとする日本の覚悟を端的に見せる。
(1)「日本の半導体装備世界シェアは約35%で米国の50%に次ぐ。ただ米国は前工程装備だけで強いのに対し日本は前工程と後工程の両方とも強い。(日本)市場規模では米国に劣るが米国と同等水準の競争力があるとみなければならない。半導体素材では日本が最も強い。世界の半導体素材売り上げの50%以上を日本が占める。その次が米国とドイツなどだ。日本が半導体産業復活を夢見る背景もこうした素材・部品・装備競争力からくる自信だ。素材・部品・装備の裏付けがない場合、日本は2ナノメートルファウンドリーをすることも現実的に難しいはずだが、素材・部品・装備で強みがあるので可能とみて試みるものだ」。
日本の半導体競争力は、総合的に見て米国並みという。日本は、素材・部品・装備の裏付けを持っている。この総合力で「2ナノ」という世界最先端半導体で勝負をかけているのだ。かつての半導体世界王者である。自信がなければ、取組むはずもないのだ。支援する日本政府も「無駄金」になる。
(2)「半導体チップは性能が改善され続けなければならない。これは使われる製品の電力消費減少、速度向上、費用削減と直結する。そうするならばスケールダウンを持続しなければならず、それでこそ半導体産業が生き残ることができるが、いまは物理的限界に至った。特にシリコン技術を活用したスケーリングが難関に直面した。その解決策を提示するのが半導体素材と装備だ。サムスン電子やSKハイニックスも競争で遅れをとらないようにするなら日本からより良い素材・装備を輸入して使わなければならない」。
下線部は、韓国半導体の弱みを示している。サムスンなどは、日本企業の開発した素材や設備を使わなければならない。日本の「ラピダス」は、大学・素材メーカー・設備メーカーが別途、組織する研究所からの成果で支援される仕組みである。この「オール日本」体制がラピダスを支えるのだ。韓国にはないバックアップ体制である。
(3)「日本がうまくいくほど韓国が厳しくなるとだけみるのは難しい。米国のチップ4同盟構想と素材・部品・装備などを考慮すれば日本とは相互補完的に進むほかない関係だ。したがってあくまでも韓国の半導体産業の状況そのものだけを見ようとするなら危機でもあり機会でもある。危機という理由はスケールダウンが難しくなったため競合国の企業が急速に追い上げているためだ。しかもファウンドリーでは台湾TSMCを追撃しなければならない立場で技術開発に投資する余力が十分でない。選択と集中をしなければ打撃が大きくなるかもしれない状況だ」。
韓国半導体は、日本などの追い上げを受ける反面、米国のチップ4同盟構想と素材・部品・装備などを考慮すれば、日本とは相互補完的に進むという期待だ。日本が、研究成果を韓国にも分けてくれるだろうというのである。韓国は、「前門の虎(TSMC)・後門の狼(ラピダス」に取り囲まれる構図が想像できる。
(4)「いずれにしてもと全世界が先端デジタル時代に移動しているからだ。データ使用量が増え続け半導体消費も多くなるほかない。マッキンゼーによると世界の半導体市場規模は2030年に1兆650億ドルで2021年より1.8倍増加する見通しだ。自動運転車とメタバースなど新産業分野での半導体需要急増も予想される。米国と中国だけでなく日本と欧州、台湾まで半導体投資に死活をかける理由だ」。
世界の半導体市場は、2030年に21年比で1.8倍に拡大するという。この成長市場で日本が利益を享受できれば、経済にも大きく貢献する。