これまで、中國GDPの約3割も寄与してきた住宅部門が失速している。政府は、これをテコ入れして経済を軌道に戻そうとしているが、住宅飽和状態の中で難しい問題である。ただ、景気対策としてはこれ以外にめぼしいものもない状態で行き詰まり状態だ。
中国人民銀行(中央銀行)は7月28日、第2・四半期末時点の不動産ローン残高は53兆3700億元(約7兆4600億ドル)となり、前年同期比0.5%増加したと発表した。
個人の住宅ローン残高は、0.7%減の38兆6000億元だ。不動産部門全体の貸出は増えたが、個人の住宅ローンは0.7%減である。開発企業は借り入れを増やしたが、個人のローンは減っている。住宅需要減を示している。
『日本経済新聞 電子版』(7月28日付)は、「中国、住宅買い替え促進 ローン金利や頭金比率下げ」と題する記事を掲載した。
住み替えを促す。規制を緩和して住み替え物件を購入する際の住宅ローン金利や物件購入額に占める頭金の比率を引き下げる。税負担も軽減する。消費者の買い替え需要を喚起し、低迷する不動産市場の立て直しを図る。
(1)「不動産政策を担う倪虹・住宅都市農村建設相が、不動産会社や建設会社と座談会を開き、市場活性化策を明らかにした。住み替え促進は共産党が24日に開いた中央政治局会議で打ち出した「不動産政策の合理化」の具体策となる。中国では2軒目以降の購入時に適用するローン金利や頭金比率は1軒目より高く設定されていた。不動産への投機で市場が過熱するのを防ぐために規制を設けた。北京や上海など大都市では所有物件数に加え、過去の住宅ローンの利用歴も影響する。住み替えでも借り入れ記録があれば2軒目の購入とみなされ、金利や頭金比率が高くなる」
2軒目以降の購入時に適用するローン金利や頭金比率は、1軒目よりも高く設定されている。これを引下げるというもの。「住み替え」名目であるが、2軒目も買ってくれということだ。中古住宅が値下がりしている中で、あえて新築でなくても中古での「住み替え」も可能である。苦し紛れという印象が強い。ここまできても、住宅以外に景気てこ入れ手段がないことを告白しているようなものだ。
(2)「規制緩和では、借り入れ記録の有無を金利などの設定条件から外す。住み替えの場合は1軒目購入時の金利などを適用する。詳細は都市ごとに今後打ち出すとみられる。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、北京で住宅を買い替える場合、金利は年5.25%から年4.75%まで下がる可能性がある。最高80%だった頭金比率も35%まで下がりうる。倪氏は1軒目についても金利や頭金比率の引き下げを進める考えを示した。住み替え時の税負担の軽減にも言及した」
住宅を必要としている人は、あらかた購入済みと見られる。経済環境が、これほど悪化しているなかで、住み替えで新築住宅を購入する層がどれだけいるのか疑問だ。こういう目先のことを行わず、抜本的な経済対策の必要性が指摘されている。
中国社会科学院金融研究所は、7月に発表した報告書「中国マクロ金融分析」において、次のような政策提言を行った。23年の財政赤字を1.3兆元(約26兆円)以上拡大し、家計や中小企業への補助金給付のほか、一部の地方政府の債務を国債発行に置き換えることを提言している。この提言は、無視されている。理由は不明であるが、26兆円をつぎ込んでも、景気テコ入れ策として不十分という判断であろう。そんな資金があれば、人民解放軍へつぎ込んで「台湾侵攻」準備をしたいという見解かも知れない。
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2023-07-27 |