勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年07月

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    日本は、半導体製造装置の輸出管理強化を7月23日から始めた。先端半導体の軍事利用を防止することが目的である。この輸出規制には、中国が該当する。これに対して早速、中国が報復措置を発表。中国通関が、コメ・魚・菓子などを対象に放射能検査を行う。

     

    『中央日報』(7月27日付)は、「中国、日本産のコメと酒に菓子まで 食品通関遅延『全面的放射線検査』」と題する記事を掲載した。

     

    中国北部の税関で日本産のコメと酒、菓子などの食品通関が遅れていることがわかった。日本メディアが27日に伝えたところによると、中国と香港政府は今月から税関当局が日本産輸入水産物に対し全面的な放射線検査をする方法で事実上の輸入規制を開始した。福島第1原子力発電所の汚染水海洋放流を控えたのに伴ったものだ。全面的な放射線検査により水産物が長期間税関を通過できず足止めされると鮮度を維持できなくなり、これは事実上の輸入規制に当たる。

     

    (1)「日本の貿易関係者は、中国税関の検査強化が水産物以外の食品など他の分野の日本産輸入品に拡大している可能性があるとみて原因を調査している。食品通関遅延の原因として中国税関が日本産水産物を全面検査するために業務量が増え作業が遅れているという見方もあるという。日本の松野博一官房長官はこの日午前の会見で「報道については承知している。現在日本政府として詳細な状況を確認している」と明らかにした。松野長官は「仮に全面的な放射線検査が導入されているとすれば日本からの食品輸入規制の緩和・撤廃に向けた国際的な動きに逆行するものであり強く懸念している。日本産食品の安全性は科学的に証明されており、政府として輸入規制措置を早期に撤廃するよう中国側に求めている」と話した」

     

    半導体への報復が、コメ・魚・菓子など事実上の輸入禁止措置である。日本の当該関係者にとって見れば大きな損害になるが、中国の消費者も困るだろう。そもそもことの発端は、ロシアのウクライナ侵攻をめぐる中国の支持にあった。他国侵略を支持する中国の招いた半導体輸出規制である。

     

    (2)「中国海関総署(税関)は7日、汚染水の海洋放流が食品に及ぼす影響を注視するとしながら「適時に一切の必要な措置を取り中国の消費者の食卓の安全を確保するだろう」と明らかにしている。昨年基準で日本産水産物の最大の輸入国は中国で、2位が香港だった。日本の農林水産省によると、昨年の水産物総輸出額3873億円のうち、中国が22%の871億円、香港は19%の755億円をそれぞれ占めた。中国当局は福島第1原発事故が発生した2011年に福島県を含む12都県で生産された食品と食用農産物、飼料の輸入を禁止した。現在は10県で生産された水産物を含む食品に対し輸入を禁止している」

     

    日本は、中国からの農産物へ輸入規制をかけることを検討すべきであろう。理不尽にも日本人5人が、中国で不法拘束されている。この問題もうやむやにすべきでなく、中国の不法行為取締りを強化することで対抗するべきだ。日本が、「中国人スパイ天国」になっていることは有名な話だ。この際、野党も中国の「反スパイ法」に倣った取締り強化に協力して、「邦人救出」への圧力をかけるべきだ。もはや、「日中友好」などは消し飛んでいる。遠慮はいらない。

     

    中国が、日本へ報復したきっかけになった半導体輸出規制は、次のような内容である。

     

    『ロイター』(7月24日付)は、「半導体装置の輸出管理強化『日本も開始』中国報復に身構え」と題する記事を掲載した。

     

    日本の半導体製造装置の輸出管理強化が23日に始まった。先端半導体の軍事利用を防止することが目的だが、先行する米国のように中国を名指ししてはいない。それでも中国は報復とも取れる動きをすでに見せており、日本は過度に中国を刺激することを避けつつ規制内容が違う米国と足並みを揃え、実効性を確保する難しい舵取りを迫られる。

     

    (3)「米国は昨年10月、軍事力強化につながる恐れがあるスーパーコンピューターや人工知能(AI)向け半導体の開発を抑え込むことを狙い、中国を名指しして技術輸出に広く網をかけた。回路線幅14ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の先端ロジック半導体などの開発・製造に使われるものの輸出はすべて事前申請が必要で、原則不許可となる。一方、米国に歩調を合わせて今年春に輸出管理の強化を決めた日本は仕向地を絞らず、対象を成膜や露光装置など23品目に限定した。輸出管理体制の状況などを踏まえ米国など42カ国・地域向けは包括許可に、中国を含めその他向けは輸出契約1件ごとの個別許可とした」

     

    中国は、尖閣諸島領海への侵犯を繰り返している。日本の安全保障上、警戒すべき対象国になっている。戦略物資の輸出規制を受けるのは当然であろう。それにしても、中国の報復が、コメ・魚・菓子とは絶句する。余りにも、日中の産業構造が違い過ぎからだ。これでは、勝負にならない。 

     

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    FRB(米連邦準備制度理事会)は7月26日、政策金利を0.25%引上げ5.25~5.50%に決めた。金融市場は、インフレと雇用市場がいずれも落ち着いた兆候を見せていることから、今回の引上げが最後とみている。政策金利の誘導目標が、来年末までに現在より1ポイント以上低くなるとみられていることも、金利先物の動きから分かる。

     

    『ロイター』(7月27日付)は、「米FRBの利上げ終了、金利ピーク到達でドル安加速へ」と題するコラムを掲載した。

     

    米連邦準備理事会(FRB)の金利はついにピークに達したようだ。今回の利上げが最後とみられる中、他の中央銀行は利上げを続ける見通しで、この差がドル安をさらに加速させるだろう。

     

    (1)「FRBは2526日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、5.255.50%とした。昨年3月以降で11回目の利上げとなった。FF金利先物市場が織り込む次回会合の追加利上げ確率はわずか20%。さらに先を見ると、リフィニティブのデータでは早ければ来年3月にも利下げが開始されることが示唆されている」

     

    金融市場では、早ければ来年3月にも利下げが始まるというシグナルが出てきた。利上げが、物価引き下げに効果を上げたという評価であろう。

     

    (2)「FRBは、インフレ抑制に向け急速なペースで利上げを実施してきたことから他の中銀に先行している。例えば、デリバティブ市場によると欧州中央銀行(ECB)は10月に25bpの追加利上げを行う見通しだ。イングランド銀行(英中央銀行)も75bpの利上げを実施した後に2024年7月まで金利を据え置くと予想されている。こうした違いはインフレ動向の差で正当化される。6月の米インフレ率は3%と昨年に記録したピーク水準の約9%から鈍化。一方、同月のユーロ圏のインフレ率は5.5%にやや鈍化したに過ぎない。英インフレ率は比較的大きく鈍化したものの、7.9%と依然として高止まりしている」

     

    FRBは、昨年3月から矢継ぎ早に利上げしてきただけに、物価抑制効果もそれだけ早く出てきた。ECBよりも3ヶ月早い利上げであった。

     

    (3)「劇的な変化がない限り、FRBは自然と資金を安くしているのかもしれない。他の中銀に先行するFRBの動きは昨夏にドル指数を20年ぶりの高水準まで押し上げたが、逆方向にも同様の効果をもたらしそうだ。利上げは利回り上昇につながるため通貨の需要を促す傾向があるが、その逆もまた同じように言える。ドル指数は昨年9月に付けた最近の高水準である約114から下落し、101を割り込んだが、ポンドやユーロなどの魅力が増したことが一因だ」

     

    ドル指数は、昨年9月にピークをつけ、すでに下落へ転じている。今後は、この「落勢」が強まる気配だ。ドル下落=円上昇という局面転換である。

     

    (4)「ドル安は悪いことばかりではない。例えば米国の輸出企業は、海外に製品を割安で販売できるため恩恵を受けるはずだ。とはいえ、ドル指数は世界的な金融政策の差を背景に新型コロナウイルス禍前の水準である97を容易に下回る可能性があり、FRBの計画を複雑にする恐れがある」

     

    ドル指数は、新型コロナ前の水準である97(現在101)を割り込むのは確実と見られる。余り急速に下落すると、FRBは利下げスケジュールで狂い(遅れ)が出る可能性もある。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月27日付)は、「FRBのポーカーフェイス、見抜く投資家」と題する記事を掲載した。

     

    米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定者たちが追加利上げをする根拠は、結果的には何もなくなるかもしれない。しかし、彼らが今、そんなことを言うべき理由は何もない。

     

    (5)「FRBの政策決定者は26日、今回の利上げで自分たちの仕事が終わったとの見方を一切示さなかった。会合後に出した声明は、6月の会合後に出したものとほぼ同じで、雇用の伸びが力強く、失業率が低く、インフレ率が上がっていることを再度指摘したものだった。彼らは程度の差こそあれ、金融引き締めの取り組みの影響が経済に完全には表れていないとみているため、追加利上げをする前に少し長めの時間を取って、状況がどう進展しているのかを見極めようとしている」

     

    FRBは、今少し物価動向をみたいという慎重姿勢をとっている。


    (6)「こうした状況は、FRBが9月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送り、その次の11月の会合で政策を再検討することを示唆している。FOMCメンバーのうち、少なくとも何人か、恐らくは大半が、追加利上げは見込まれていないとの投資家らの分析に賛同していると思われる。インフレは沈静化しつつあるが、注目点はそれだけではない。FRBが労働市場を抑え込む必要が生じないまま、今後もインフレの沈静化傾向が続くとの見方があるのだ

     

    さらなる利上げの検討は、11月の会合ですることになろう。内心では、利上げはないという市場の見方に賛成していると思われる。失業率は、高まらない形でインフレが沈静化すると見ている節がある。

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    台湾侵攻計画を優先

    GDP統計で小細工

    迫る「中所得国の罠」

    無謀な米国対抗戦術 

    習近平・中国国家主席は、現在の経済混乱に対して大型対策を行わない腹を固めたようである。内外の論評では、財政赤字を増やしても救済しなければ後々、傷を深くするという指摘が圧倒的である。習氏は、あえてこれを退け民間の創意と資金を活用し、現下の苦難を乗り越えるという意思表示にとどまった。あたかも、景気悪化の責任が民間にあるのだから、民間が処理せよ、という感じでさえある。これで、済むであろうか。 

    地方政府が、管理する「融資平台」(金融と公共事業を兼務)は、約1100~1200兆円もの「隠れ債務」を抱えている。隠れ債務ゆえに政府統計には計上されない債務だ。中国GDPの半分以上を占める巨額規模である。地方政府の財政破綻は、国民生活の疲弊に直結するのだ。 

    民間では不動産開発企業が、不動産バブル崩壊によって膨大な債務を抱えている。有力不動産開発企業も住宅販売の不振が続けば、自力での債務返済が困難という状況に追込まれている。中央政府は、これに対して目立った救済策も取らずにいる。債務返済の時期を延ばすとか、住宅ローン規制の緩和程度である。雀の涙程度だ。 

    台湾侵攻計画を優先

    中国共産党中央政治局は7月24日、「国内経済は新たな課題に直面しており、景気回復には紆余曲折が予想される」との認識を示しただけで終わった。一言で言えば、「お手上げ」状態であることを示したが、このような「政策放棄」に見える対応している裏には、習氏の壮大な戦略が隠されていると見なければならない。

     

    それは、最近の米国CIA長官も証言するように、習氏が2027年の台湾軍事侵攻目標を捨てていないことだ。当面の景気悪化を忍んでも、軍備を増強して台湾侵攻が実現できる体制整備を目指しているに違いない。換言すれば、ここで大型経済対策を行う資金を取っておき、軍備増強に回す戦術である。 

    習氏は、2年ほど前から頻りに毛沢東の行った「長征」(2014~15年の移動距離1万2000キロ)を例に引き合いに出している。国民党軍との内戦を避けるべく逃避行したことが、精力を蓄え革命を成功させたという歴史的事実である。忘れていけないのは、共産党革命が成功した裏に、日本軍敗北によって中国を撤兵した「天佑」があったのだ。この点は、毛沢東自身が認め、田中角栄首相(当時)に語っている。 

    この「天佑」が、現代において期待できるだろうか。さしずめ、ロシアがウクライナ侵攻で勝利を収めることだ。そして、ロシア軍が中国の台湾侵攻へ支援するというものであろう。これを想定した台湾侵攻計画は、極めて危険であることは言うまでもない。そこで、習氏は「軍産複合体構築」を目指している。中国経済の体質を軍事化させる体制構築である。平たく言えば、経済の軍事化だ。国民生活は当然、犠牲になる。戦時中の日本では、「勝つまで欲しがりません」という標語を張りめぐらした。その再現である。 

    習氏の描く軍産複合体とは、どういうことか。中国共産党は昨年10月、5年に1度の党大会で指導部を一新した。その中で、従来にない階層の人たちが大量に指導部へ登用された。地方政府や共産党でのキャリアと異なるもので、中国の軍産複合体で豊富な経験を積んできた人たちである。つまり、205人で構成する党中央委員会委員の3分の1以上が現在、科学、技術、エンジニアリング、数学の経歴を持っている人たちだ。5年前に任命された前回中央委員会から、35%も増えたことになる。

     

    この狙いは何か。今年3月、習氏が北京で人民解放軍の幹部らを前に演説している。習氏は、中国の軍事的自立を確立する必要性を改めて説き、「独立した独創的なイノベーションに重点を置く、科学や技術における協調的イノベーション」を加速させるよう求めたのだ。つまり、米国と十分に対抗できる軍事力の充実を迫ったのである。 

    国内では、この演説をどう受け取ったかだ。党中央委員会の委員3分の1以上が軍産経験者であることと重ね合わせて、習氏が明確に政策の軸を経済成長から安全保障重視へと移していると読み取られたのだ。これと同じような戦略が、ソビエト連邦の破滅の原因になったことから、早くも中国の将来に警鐘が打たれている。 

    GDP統計で小細工

    習氏は、4~6月期のGDPが前期比で0.8%(年率3.23%)と予想を下回る結果になったが、冒頭に指摘したように大型の景気対策を見送った。その理由は、前述の下線部分にある。経済対策よりも軍事予算拡大へ財政資金を振り向けるのである。 

    習氏は、景気実勢の悪化を「隠蔽」する動きを始めている。4~6月期は、「前年同期比」で6.%増である。だが、直近4四半期の「前期比伸び率」を合計すると、年間伸び率は6.%になって辻褄が合わないと指摘されている。「前年同期比」の伸び率は、直近4四半期の「前期比伸び率」合計と一致しなければならない。それが一致しないことは、前期比を算出する基礎になる「季節調整値」が外部に説明されることなく変えられていることだ。「前期比」の算出過程で「底上げ」をしていると見るべきであろう。 

    技術的な話で恐縮だが、今少し続けさせていただきたい。そうしないと、中国経済が危険水域へ入っていることを明瞭にご理解いただけないと思うからだ。それは、4~6月期の名目GDPが、実質GDPを下回ったのだ。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

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    中国は、これまで海外企業の進出条件として技術移転を求めてきた。居ながらにして技術を「取得」するに等しい行為だが、非難の的になっていた。だが、最近の中国進出企業の減少から、この「あこぎな商法」を諦める方向である。まずは、複合機での技術公開中止が決まった様子である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月26日付)は、「中国、複合機の技術移転要求を撤回、外資企業に配慮か」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は外資企業に求めていた複合機(コピー機)などオフィス機器の技術移転方針について、一部を撤回する方向で検討に入った。業界ごとに製品の技術などを定める「国家標準」で、中国での中核部品の設計や開発を求める文言が草案から削除された。日米などの外国企業は中国からの撤退につながるとして反対していた。

     

    (1)「中国は世界貿易機関(WTO)や2国間での議論のなかで強い反対を受けており、今回の判断に影響した可能性がある。景気も低迷しており、底上げに欠かせない外資企業に配慮する姿勢を示したとの見方もある。同国の複合機市場は年間70万台規模で、日本よりも約4割大きいとされる。光学などの複雑な技術力が必要なことから外資企業がシェアの大半を占める。企業別では日本のコニカミノルタや東芝、米HPなどが上位とみられる」

     

    中国は、コピー機も満足に作れない技術水準である。大言壮語しているが、科学技術面では立遅れているのだ。

     

    (2)「中国の政府や国有企業は技術移転を促すため、オフィス機器などの調達で外資の排除を進めている。7月にはスパイ行為の摘発対象を広げた改正反スパイ法も施行。外資企業による中国での事業展開にはなお不安が残る。中国政府は2022年4月、国家標準の刷新に向けた検討に着手。初期の草案では、オフィス機器の作動に必要な半導体やレーザー関連といった中核部品を含めて、中国国内での設計や開発、生産を新たに要求した。関係者によると、国家標準の刷新を検討する「全国情報安全標準化技術委員会」(TC260)のワーキンググループ(WG)が今年5月、企業側に提示したパブリックコメント(意見公募)案で、こうした要求項目を削除していたという」

     

    これまでのように、無条件の技術移転が難しくなってきたのは、中国の影響力が相対的に落ちてきたことの証明でもあろう。

     

    (3)「外資企業は中国市場の需要に合わせるほか、コスト削減を目的に現地で製品を組み立てるのが一般的だ。ただ、中核部品の開発や設計などは技術流出の恐れなどから、日本など中国以外で手掛けているケースが多いとされる。このため、複合機などを手掛ける日米企業は、自社製品の性能の優位性に直結する技術移転に強く反対。中国事業の見直しを検討する企業も相次いだ」

     

    中国が折れてきたのは、景気回復には外資企業による国内投資が欠かせず、中国側が歩み寄ったとの見方も出ているという。

     

    (4)「中国側は近くパブコメ案を公表。来年前半までの施行を目指すとみられる。ある外資企業の関係者は「現時点では、我々が最も懸念していた項目がなくなった。最終的に盛り込まれないのか注視していきたい」としている。

     

    技術移転要求は、一種の「強盗行為」である。中国としてやるべきではない。國の格を引下げる行為だ。堂々と代金を払って行うべきである。

     

    (5)「中国の複合機市場の約3割は、政府や国有企業向けとみられる。日米の大手の販売は厳しくなっている。富士フイルムビジネスイノベーション(BI、旧富士ゼロックス)は22年、上海の複合機工場の閉鎖を決めた。習近平(シー・ジンピン)指導部は15年、ハイテク産業育成をめざす「中国製造2025」を発表し、18年には技術標準の長期戦略「中国標準2035」の策定に着手した。米中対立の先鋭化を受けて、米国など外国の経済制裁に影響を受けない中国独自のサプライチェーン(供給網)構築を狙う」

     

    技術は、知的財産である。それを公開しろというのは、余りにも度が過ぎた要求である。「戦狼外交」も、この延長で行われているのであろう。「そこのけそこのけ私が通る」である。

     

     

    あじさいのたまご
       


    韓国では、ビジネスマンの退職年齢が50歳未満である。定年は60歳であるにも関わらず、途中退社している。これは、老後の生活不安を招く大きな理由だが、「血気」に走って自ら辞表を出しているのだ。理由は、「役員になれると思っていたがなれなかった」ショックという。後輩の下で働くのはメンツに関わる、という古い観念に縛られているのだ。

     

    日本では、転職市場が備わっている。転職によって、次なるキャリアを目指して動き出せるので、49歳でビジネス生活に終止符を打つ人はまずいない。韓国のような「メンツ社会」で、先輩後輩の硬直的関係も困ったものである。儒教社会の欠陥である。

     

    『中央日報』(7月26日付)は、「韓国、最も長く働いた職場の勤続期間は平均15年 現実の定年は49歳」と題する記事を掲載した。

     

    3年前から「第2の人生」を歩む会社員のキム・デソンさん(53)。キムさんは1997年にある流通企業に入社した。一生の職場だと思いながら23年働いたが2020年に退職した。48歳で人より早く役員(常務)に昇進する喜びも味わった。だが専務昇進で脱落し50歳で辞めなくてはならなくなった。退職直後にある病院に再就職し院務チーム長として働く。彼は「定年は60歳だが会社生活をしながら定年まで務めるのは幸せな結末。周囲でも50歳前後で勤めていた職場を辞めて新たに出発する場合が多い」と話した。

     

    (1)「キムさんの事例は高齢層の入口に差しかかった中年の自画像だ。25日に韓国統計庁が発表した「2023年5月の経済活動人口調査高齢層付加調査結果」とも一致する。2005年から毎年5月基準で55~79歳の高齢層人口を調査した結果だ。今年は初めて「最も長く勤めた勤務先での勤続期間と離職した年齢」を分析した。統計庁の分析によると、高齢層が最も長く勤めた職場を辞めた時の平均年齢は49.4歳と集計された。男性は51.1歳、女性は47.8歳で男性が相対的に遅かった。この職場での勤続平均期間は15年7カ月だった。同じように男性は19年1カ月、女性は12年2カ月で差があった」

     

    50歳未満で退職しても、次の職場は簡単に見つからない。転職市場がないからだ。仕事に就けなければ、自営業となる。所得はガクッと減る。それでも早期退職者が後を絶たない。「自信過剰」で自分は役員になれると思う人は減らないのだ。

     

    (2)「簡単に言えば、規定上の定年が60歳でも、一生で最も長く身を置いた職場で直面する「現実の定年」は49歳という意味だ。ただ36.4%は最も長く勤めた勤務先で現在も働いていた。統計庁のイム・ギョンウン雇用統計課長は「初めて入社した会社を『一生の職場』と考えるケースが多かった50~70代の実際の定年と勤続期間を見ることができる統計。女性の場合、出産と育児によりキャリアを中断した影響を受けた」と説明した」

     

    韓国社会は、意識革命をして後輩の上司でも定年まで務めなければ、老後問題が発生する。転職もできずに自営業の開業では、生産性が低く社会全体の負担を増すばかりである。

     

    (3)「職業別では、農林・漁業熟練従事者が27年2カ月、管理者・専門家が19年10カ月、事務職従事者が16年11カ月と長く働いていた。サービス販売は12年6カ月、単純労務は9年2カ月で相対的に勤続期間が短かった。辞めた理由としては、事業不振・操業中断・休廃業が30.2%で最も多かった。男性は定年退職・辞職勧告・名誉退職・整理解雇が30.2%、女性は家族の世話が26.6%で多かった。イム課長は「男性は会社の事情、女性は家庭の事情で辞めるケースが多かった」と話した」

     

    「名誉退職」とは、40代での自己都合退職を指す。血気盛んに会社へ辞表を「叩きつける」という形である。そのときは、格好が良くても後の再就職見通しが立っていないのだ。

     

    (4)「年金を受け取っている高齢層の割合は50.3%だった。月平均年金受給額は75万ウォン(約7万5000円)と集計された。国民年金研究院によると2021年基準で50代以上の中高齢者の適正生活費は夫婦が月277万ウォン(約27万7000円)、個人が月177万3000ウォン(約17万7000円)だ。貯金がないならば仕事を探さなければならないという意味だ」

     

    年金未受領者が、50%近くいるのも困った問題だ。政府は、日本のように救済策を取らないのだろうか。ともかく、日本から見ると「穴だらけ」というのが実態だ。

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