IMF(国際通貨基金)が、韓国の今年経済成長見通しを再び引き下げた。今年に入ってから3回目だ。IMFは7月25日、韓国の今年の経済成長率を1.4%と予想した。4月に出した成長見通しの1.5%より0.1ポイント下がっている。IMFは、今年に入って1月、4月、7月と3回成長見通しを出したが、発表のたびに下方修正している。輸出不振を理由に挙げてきたのだ。
輸出不振は、韓国が製造業依存度の高いことを示している。これをカバーするには、サービス業のテコ入れである。だが、2012年7月に国会へ提案された「サービス産業発展基本法案」は、左派の反対で未だに棚上げされたまま。不思議な国である。
「東亜日報」(7月26日付)は、「不況型成長の沼に陥った韓国、内需を活性化させて輸出空白を埋めるべきだ」と題する社説を掲載した。
(1)「第2四半期の韓国の国内総生産(GDP)が、第1四半期より0.6%伸びた。成長したのは事実だが、輸出より輸入が大幅に減ったことによって現れた典型的な「不況型成長」だ。消費と投資が同時に減少し、下半期の景気持ち直しの可能性を暗くした。最近、アジア開発銀行(ADB)が韓国の今年の成長率予測を1.3%に下げたのに続き、昨日、国際通貨基金(IMF)は1.4%と昨年1月以降5回連続で予測値を下げた」
4~6月期は、消費・投資・輸出がすべて減少する不況型だったが、輸入が大幅に落ち込んだことで純輸出(輸出-輸入)が大幅プラスに。これで前期比0.6%成長を実現した。まさに、不況が生んだ「プラス成長」という奇跡だ。
(2)「韓国の実質GDPは、第1四半期の0.3%に続き、2期連続で逆成長を免れた。しかし、前期の成長を牽引した消費は0.1%減少に転じ、設備・建設投資もマイナスだった。前期はプラスだった輸出も、1.8%減少した。それでも成長したのは、国際原油価格の下落で輸入が4.2%減ったためだ。輸出萎縮を招いた半導体不況、中国経済の低迷も回復時期が遅れている。結局、凍りついた消費や投資を蘇らせることができるかに、今年の経済の成績表がかかっている」
このパラグラフは、4~6月期成長率の中身の説明である。輸出回復が困難であれば、内需をいかに増やすかが問われている。輸出=製造業である。製造業不振をカバーするには、サービス業の育成強化が課題になる。
(3)「最近の消費・企業投資の萎縮は、民間にお金がないからではない。韓国銀行は、コロナ禍の3年間、韓国の家計に100兆ウォンを超える超過貯蓄が積もったと試算する。GDPの5%もある膨大な金額だ。パンデミックで消費する機会が減ったが、賃金所得などが着実に上昇した影響だ。コロナ禍が終わったにもかかわらず、このお金が消費拡大や負債返済に使われず、住宅市場の不安を増大させる引き金としてのみ働いている」
コロナ3年間で、約10兆円の超過貯蓄が貯まっている。この一部は、日本観光への出費になっている。今年上半期(1~6月)に海外に行ってきた旅行客10人中8人は、下半期(7~12月)も出国の計画があることが分かった。最も人気のある旅行先は日本。上半期に海外旅行に行ってきた回答者の53%は、日本を訪問したと答えた。その次は、ベトナム(25%)とタイ(11%)などの順だった。下半期に行きたい旅行先としても、回答者の46%が日本を挙げた。
(4)「輸出が萎縮した今は、韓国のサービス産業の水準を引き上げるのに良い機会だ。医療や観光、公演のような高付加価値サービス業に投資が行われるよう、政府が先頭に立って道を開かなければならない。12年間国会の敷居を越えられずにいる「サービス産業発展基本法案」の処理を急ぎ、生産性向上の足を引っ張ってきた規制緩和に拍車をかける必要がある。
「サービス産業発展基本法案」とは、どんな内容か。2012年7月、サービス産業発展基本法案は、国会に提出された。法案の趣旨は、雇用創出と内需産業への波及効果が大きいサービス業を集中育成しようという法案だ。だが、この法案は医療民営化の土台として利用されるだろうという市民団体の主張と、これと呼応した左派政党の反対を受け、法案廃棄と再立法推進という漂流を繰り返してきた。この間に、韓国のサービス産業の発展は足踏み状態に陥ってきた。
この法案は、保健医療を潜在成長力の大きい分野と位置づけている。左派系は、医療を営利行為にするなという「理念闘争」を挑んで反対している。法案では、医療の子会社にサービス業的な営業を認めるとしているが、「聖域侵犯」と見なされて反対が起っているのだ。この裏には、医師会という圧力団体が控えている。韓国医師会は、韓国最高の「英知」という誤解と錯覚をしている集団だ。事実、大学入試の成績はほぼ「満点組」である。