中国政府は、現在の減速経済に対してほとんど有効な対策を見送っている。「量的成長よりも質的成長」を目指すとうそぶいているのだ。中国がもはや有効な対策を打つ力がなくなっていることを示している
『ブルームバーグ』(8月28日付)は、「人民元は年内に4%下落も、中国売りで過去最安値へーMLIV調査」と題する記事を掲載した。
世界の投資家は中国が金融市場のてこ入れに成功するとの確信をほとんど持っておらず、経済的ストレスの高まりが人民元のオフショアレートを歴史的安値に押し下げると予測していることが最新調査で分かった。
(1)「ブルームバーグの「マーケット・ライブ(MLIV)パルス」調査の回答者455人の予想中央値によると、国外で取引される人民元は年末までに1ドル=7.6元まで下落する見通し。先週25日終値の7.29元から4%下げることを意味し、過去最安値となる。今後12カ月間に中国へのエクスポージャーを増やす予定だと回答したのはわずか19%で、中国を巡る弱気な見通しを浮き彫りにした。回答者の24%は保有を減らす計画だとした。3月時点では、25%の投資家がエクスポージャーを増やすと答えていた」
中国経済への評価が、冷めきっている。対ドル人民元相場は、年内に7.6元と過去最安値まで下げるという見方が増えている。中国政府が、有効な景気対策を打ち出さないことへの失望売りだ。
(2)「中国政府はここ数日、国内資産の急落を食い止めるため取り組みを強化。当局は金融機関に株式と元を買い入れるよう要請し、オフショア人民元の空売りコストを高め、投資基金には株式を売り越さないよう求めた。中国財政省は27日、「資本市場の活性化と投資家信頼感の改善」に向け、08年以来となる株式取引の印紙税引き下げると発表した。こうした取り組みが相場を一時的に押し上げたものの、物価下落や不動産市場の低迷、地方政府の債務急増といった中国の苦境に対する懸念から、外国のファンドは記録的なペースで売り続けている。モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスはここ1週間に、中国株の目標を引き下げた」
中国当局は、株式市場へのテコ入れ策として株式取引の印紙税引き下げを発表した。28日は、これを好感したものの効果は一時的にとどまった。中国本土株は大きく上昇して始まったが、取引終了までに上げの大半を失った。投資家を呼び戻そうとの措置が、外国勢による売りを呼び込むだけに終わった。海外投資家は、誰も中国を信じないという末期的な状況になっている。
(3)「他国・地域が金融引き締めに動いている状況で、中国が金融緩和策を講じていることから元には下押し圧力が強まっており、投資家はより高利回りの米国資産に目を向けている。米2年国債利回りは同年限の中国債より3ポイント近く高く、2006年以来最大のプレミアム状態にある。ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キヨン・ソン氏(香港在勤)は、「中央銀行による元下支えのための政策対応には元相場のトレンドを変える効果はみられておらず、今後もそうだろう」と述べた」
世界的な高金利の中で、中国は金利引下げ措置に出ている。こうした逆行した行動の結果、人民元は売られやすい状況になっている。
(4)「中国が成長てこ入れで大規模な財政支出を行った08年とは異なり、今回は中国が経済を救うため大規模な対策を打ち出すと見込む人はほとんどいない。MLIVパルス調査の回答者のうち、政策当局が「バズーカ砲のような」景気刺激策を打ち出すと予想しているのはわずか11%で、大半は特定産業を対象とした穏健な対策を想定。また、どんな救済策も遅きに失するだろうとの回答が32%に上った」
中国経済の閉塞状態を打破するには、「バズーカ砲」クラスの大規模な対策が必要としている。こういうコンセンサスができあがっている以上、小出しの対策を打っても効果はない。
(5)「中国株安が世界的な株価暴落の引き金となるには、MSCI中国指数が今後1カ月でさらに20%下落する必要があると回答したのは約31%。中国株安が世界に大きく波及することにはつながらないと予想したのは33%だった。同様に、市場参加者の過半数(回答者の56%)は、中国の景気減速が米連邦準備制度理事会(FRB)など他の主要中銀の行動に大きな影響を与えないだろうと述べた。ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏らは、主要国が中国向けの輸出や銀行取引エクスポージャーを抑制しているため、「中国での債務問題による景気後退が、08年のような世界的金融危機の引き金になることはないだろう」との見方を示した」
中国の債務問題が、リーマンショック再来とはならないという見方が出ている。当局が、強制的に手を打つであろうということだ。それが、問題の根本的な解決を遅らせることも事実だ。傷の規模は、「深さ」よりも「長さ」で中国経済を揺さぶるだろう。「万病の元」になるという意味である。





