勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年08月

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    中国政府は、現在の減速経済に対してほとんど有効な対策を見送っている。「量的成長よりも質的成長」を目指すとうそぶいているのだ。中国がもはや有効な対策を打つ力がなくなっていることを示している

     

    『ブルームバーグ』(8月28日付)は、「人民元は年内に4%下落も、中国売りで過去最安値へーMLIV調査」と題する記事を掲載した。

     

    世界の投資家は中国が金融市場のてこ入れに成功するとの確信をほとんど持っておらず、経済的ストレスの高まりが人民元のオフショアレートを歴史的安値に押し下げると予測していることが最新調査で分かった。

     

    (1)「ブルームバーグの「マーケット・ライブ(MLIV)パルス」調査の回答者455人の予想中央値によると、国外で取引される人民元は年末までに1ドル=7.6元まで下落する見通し。先週25日終値の7.29元から4%下げることを意味し、過去最安値となる。今後12カ月間に中国へのエクスポージャーを増やす予定だと回答したのはわずか19%で、中国を巡る弱気な見通しを浮き彫りにした。回答者の24%は保有を減らす計画だとした。3月時点では、25%の投資家がエクスポージャーを増やすと答えていた」

     

    中国経済への評価が、冷めきっている。対ドル人民元相場は、年内に7.6元と過去最安値まで下げるという見方が増えている。中国政府が、有効な景気対策を打ち出さないことへの失望売りだ。

     

    (2)「中国政府はここ数日、国内資産の急落を食い止めるため取り組みを強化。当局は金融機関に株式と元を買い入れるよう要請し、オフショア人民元の空売りコストを高め、投資基金には株式を売り越さないよう求めた。中国財政省は27日、「資本市場の活性化と投資家信頼感の改善」に向け、08年以来となる株式取引の印紙税引き下げると発表した。こうした取り組みが相場を一時的に押し上げたものの、物価下落や不動産市場の低迷、地方政府の債務急増といった中国の苦境に対する懸念から、外国のファンドは記録的なペースで売り続けている。モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスはここ1週間に、中国株の目標を引き下げた

     

    中国当局は、株式市場へのテコ入れ策として株式取引の印紙税引き下げを発表した。28日は、これを好感したものの効果は一時的にとどまった。中国本土株は大きく上昇して始まったが、取引終了までに上げの大半を失った。投資家を呼び戻そうとの措置が、外国勢による売りを呼び込むだけに終わった。海外投資家は、誰も中国を信じないという末期的な状況になっている。

     

    (3)「他国・地域が金融引き締めに動いている状況で、中国が金融緩和策を講じていることから元には下押し圧力が強まっており、投資家はより高利回りの米国資産に目を向けている。米2年国債利回りは同年限の中国債より3ポイント近く高く、2006年以来最大のプレミアム状態にある。ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キヨン・ソン氏(香港在勤)は、「中央銀行による元下支えのための政策対応には元相場のトレンドを変える効果はみられておらず、今後もそうだろう」と述べた」

     

    世界的な高金利の中で、中国は金利引下げ措置に出ている。こうした逆行した行動の結果、人民元は売られやすい状況になっている。

     

    (4)「中国が成長てこ入れで大規模な財政支出を行った08年とは異なり、今回は中国が経済を救うため大規模な対策を打ち出すと見込む人はほとんどいない。MLIVパルス調査の回答者のうち、政策当局が「バズーカ砲のような」景気刺激策を打ち出すと予想しているのはわずか11%で、大半は特定産業を対象とした穏健な対策を想定。また、どんな救済策も遅きに失するだろうとの回答が32%に上った」

     

    中国経済の閉塞状態を打破するには、「バズーカ砲」クラスの大規模な対策が必要としている。こういうコンセンサスができあがっている以上、小出しの対策を打っても効果はない。

     

    (5)「中国株安が世界的な株価暴落の引き金となるには、MSCI中国指数が今後1カ月でさらに20%下落する必要があると回答したのは約31%。中国株安が世界に大きく波及することにはつながらないと予想したのは33%だった。同様に、市場参加者の過半数(回答者の56%)は、中国の景気減速が米連邦準備制度理事会(FRB)など他の主要中銀の行動に大きな影響を与えないだろうと述べた。ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏らは、主要国が中国向けの輸出や銀行取引エクスポージャーを抑制しているため、「中国での債務問題による景気後退が、08年のような世界的金融危機の引き金になることはないだろう」との見方を示した」

     

    中国の債務問題が、リーマンショック再来とはならないという見方が出ている。当局が、強制的に手を打つであろうということだ。それが、問題の根本的な解決を遅らせることも事実だ。傷の規模は、「深さ」よりも「長さ」で中国経済を揺さぶるだろう。「万病の元」になるという意味である。

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    中国は、福島処理水放出に反対して事実でないニュースを国内で流している。それだけでなく、中国から日本へ抗議電話をかけさせている。抗議電話の内容は、ほぼ同じトーンであることから、背後には中国当局の影を感じざるを得ない。「フェイクニュースの元祖」中国であるから、この程度のことは朝飯前であろう。

     

    『朝鮮日報』(8月28日付)は、「豪クライブ・ハミルトン教授、米国の同盟破壊を狙う中国『豪州の政治家・経済人を抱き込み』」と題する記事を掲載した。

     

    中国がオーストラリア・カナダなど自由・民主陣営諸国で、自国の利益を貫徹するための政治戦を展開している。豪チャールズ・スタート大学のクライブ・ハミルトン教授らは、「韓国が中国に対して正常な外交のみを維持するのであれば、政治戦の犠牲になるだろう。報復と苦痛を甘受する覚悟で中国の影響力工作に立ち向かい、長期戦に耐える準備をすべき」と警告した。

     

    フェイクニュースの流布や選挙・政策介入、親中世論形成など中国の影響力工作を研究してきた世界的な学者らは8月22日、「中国の政治戦と自由民主主義の危機」をテーマにした会議でこのように口をそろえた。隣国である韓国も例外ではないという。オーストラリアは2020年から、新型コロナの発現地調査、香港保安法などを巡って中国と対立を続けている。

     

    (1)「豪チャールズ・スタート大学のクライブ・ハミルトン教授は、「中国の目標は経済を武器にオーストラリアを自国の影響力内へ吸収し、米豪同盟を破壊すること」と語った。有力政治家、企業家、法曹関係者、学者、報道関係者などオピニオンリーダーらに中国旅行や高級ワインといった饗応を提供して抱き込んだ後、南シナ海領有権紛争のような懸案について親中世論拡散を誘導するのが代表的だ。オーストラリア保安情報局(ASIO)のトップが「オーストラリアの歴史上最も多くの人が、スパイ行為や影響力工作にさらされている」と警告するほど広範囲なもので、最近では匿名の関係者が中国の資金を受け取った言論人のリストを暴露する事件もあったという」

     

    豪州は、中国スパイの暗躍舞台になっている。一時、中国と密着時期があったことで、関係が「ユルユル」になっていた。中国からの政治資金が、豪州政治家に渡っていたのだ。日本からの潜水艦技術を導入予定が、土壇場でひっくり返される一件があった。これは、豪州議員が中国から賄賂を掴まされたことが理由で後に明らかになった。これ以降、豪州の対中姿勢は厳しくなり対決型へ変わった。豪州首相夫人が、中国出身という例もあるほど。いかに密接な関係であったかを示している。

     

    (2)「ハミルトン教授は、中国の「経済的強圧」に関連して「鉱業など中国に大きな経済的利害が懸かっている企業を通して、政府が中国に譲歩するよう圧迫するのが核心」と語った。一部の企業家は、自分の所有するメディアを通して中国寄りの偏向報道を集中的に繰り出すこともある。ハミルトン教授は「共産党は、談論の場を支配するためソーシャルメディア(SNS=交流サイト)でフェイクニュースをばらまくことに資源をつぎ込んでいる」とも述べた。2020年12月には中国外交部(省に相当)の報道官が、豪軍兵士がアフガニスタンの少年を凶器で攻撃するかのような合成写真をアップし、豪国民が憤激するという事件もあった。ハミルトン教授は「中国は外交的にやくざじみたことをやったが、豪国民が経済的損害を甘受して政府と共にあったので、うまく対処できた」と説明した」

     

    豪州が、中国につけ込まれた背景は経済面で密接であったことだ。これが、豪州の対中警戒観を緩めてしまった。韓国左派が、中国へ親近感を示す点と似通っている。日本は、伝統的に中国へは一線を引いている。共産党まで、中国と対立した時代があるのだから、超えがたい溝があるのだろう。

     

    (3)「カナダも、昨年ジャスティン・トルドー首相が中国の習近平国家主席とカメラの前で舌戦を繰り広げたほどに、中国との間の溝は深い。米安保政策研究所(CSP)シニアフェローのグラント・ニューシャム氏によると、中国の外交官である領事が直接的あるいは間接的に選挙活動へ介入したことが明らかになり、物議を醸した。親中政治家に資金や選挙遊説の支援を提供した。ニューシャム氏は「中国はカナダの経済依存性を増加させ、カナダに対する直接的、間接的投資を通して影響力を底上げする戦術を展開している」と述べた」

     

    カナダも貿易関係で、中国と密接な関係を築いたことが「カナダ与しやすし」という感じを与えたのだろう。中国は、こういう関係を宣伝工作に利用する。中国社会の接近術は、先ず大量の贈り物することで相手の歓心をひくことから始まる。意味もなく、高価な贈り物が届いたら、中国の「下心」を警戒することだ。古典的な接近術である。「魚心あれば水心」が、中国の術中に嵌まる第一条件である。

     

     

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    韓国で繰り広げられている福島処理水放出反対運動は、最大野党「共に民主党」の政治目的達成使命を持っている。李在明代表は数々の罪名で被告の身である。これまで逮捕を免れてきたのは、国会議員の「不逮捕特権」を使ってきたからだ。この汚れた事実を薄めるべく、福島処理水放出反対運動を組織してきたと言えよう。 

    李氏は、もはや今後は逮捕請求がないとみて、「不逮捕特権」を行使しないと言明したが、実は重大案件での捜査が進んでいる。北朝鮮送金疑惑である。近く、検察から逮捕状請求が出されると見られるにいたった。そうなれば、李氏自らが「不逮捕特権」を放棄した以上、逮捕・拘束は免れない事態となろう。それでも、党代表を務められるか。「共に民主党」は、重大な局面を迎える。 

    『ハンギョレ新聞』(8月28日付)は、「韓国野党第一党イ・ジェミョン(李在明)代表の1年、未来は『視界ゼロ』」と題する記事を掲載した。 

    「身と骨を削る心情で、全く新しい民主党を作ることに私自身をすべて投じます」。1年前の昨年8月28日、野党第一党「共に民主党」の全国代議員大会(全党大会)で、イ・ジェミョン代表は、党代表に当選した直後の受諾演説でこのように述べた。

     

    (1)「1年が過ぎた現在、イ代表のリーダーシップに対する党内外の評価は厳しい。イ・ナギョン(元代表)派だけでなく「中間地帯」に立った議員でさえ「全党大会での資金封筒疑惑」や「キム・ナムグク議員の仮想資産投機問題」はもちろん、「キム・ウンギョン革新委員長の発言問題」でイ代表が左顧右眄(さこうべん)する態度を示したことで、リーダーシップに疑問を提起している状態だ」 

    李氏は、自分に降りかかっている犯罪をいかに隠すかに腐心している。その手っ取り早い手段が反日である。福島処理水放出反対は、李氏にとってはまたとない「チャンス」とみて、徹底的な反対運動を展開し国内世論を引きつける戦略に出ている。これが、偽らざるところであろう。国民は利用されているのだ。 

    (2)「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が30%台のボックス圏にとどまっている状態で、民主党が30%にのぼる無党派層の支持を吸収するどころか、与党と同等の水準に止まっているためだ。派閥色の薄いある民主党の2期目の議員は27日、ハンギョレに「検察政権の波状攻勢を防御するのに集中するあまり、野党第一党として国会運営を主導したり、国政を実効的にけん制するのが力不足にならざるを得なかった」と指摘した。党代表任期2年のうち半分を「司法リスク」との戦いに費やしたということだ」 

    韓国世論は、李氏を支持しているわけでない。李氏は、反日を叫ぶことでユン大統領支持率を引下げているが、「共に民主党」の支持率を引き上げているのではない。「相討ち」という状況である。李氏は、自らが逮捕されるという「司法リスク」を引下げるために、反日を利用しているのだ。

     

    (3)「イ代表にとってさらに大きな試練は、残りの任期中に迫ってくるものとみられる。検察の2回目の拘束の試みと逮捕同意案の処理過程から、来年4月の総選挙に至るまで、イ代表自身の進退をめぐって「政治的決断」を絶えず要求されるものと予想されるためだ。「栢ヒョン洞(ペクヒョンドン)開発特恵疑惑」と「サンバンウルグループ北朝鮮送金疑惑」事件を捜査中の検察は、30日にイ代表の出頭調査を終えれば、来月の定期国会会期中に拘束令状を突きつけるものと予想される。派閥色の薄い別の議員は「9月は、昨年の大統領選挙以降16カ月ほど繰り広げられた検察と民主党の激突のクライマックスになるだろう」とし「逮捕同意案の処理過程と裁判所の令状発行、その後の民意の推移によって、与野党の総選挙前の土台ができあがるものとみられる」と述べた。 

    検察は、北朝鮮送金疑惑で李氏を逮捕するとの予想が強くなっている。李氏が、国会議員の「不逮捕特権」を捨てたと意思表示している以上、今度は国会の議決に任せるほかない。前回の逮捕状請求では、「共に民主党」から約50名の賛成者が出た。次回では、この数が増えれば確実に「逮捕」となる。

     

    (4)「この過程での判断とそれに伴う責任は、すべてイ代表が負わざるを得ない。逮捕同意案処理問題をめぐり指導部内でも「否決」から「可決前提の自由投票」まで議論が交わされているが、すべて仮定に過ぎず、実際に拘束令状が請求された際には当事者であるイ代表の判断が最も重要だ。ある関係者は「イ代表は逮捕同意案の可決・否決を問う算法からはすでに脱したようだ」とし、「今は『万が一拘束されたとしても、それにともなう国民的支持をどのように得るか』を考えている状態」だと伝えた」 

    李氏は、逮捕を覚悟している、とされる。すでに、その後の党運営を模索しているという。李氏が刑務所へ収監されれば、うるさい「反日演説」は聞かれなくなる。 

    (5)「結局、判断は「総選挙の民意」にかかっているとすれば、民主党内の派閥対立の重要なポイントとなるのは、「イ・ジェミョン」という看板で総選挙の勝利を導くことができるかどうかだ。党の柱であるイ代表が万が一拘束されたとしても、全党大会を通じて選出された新しい指導部や非常対策委員会を通じて「獄中からの公認推薦」で総選挙に影響力を行使するという見通しまで提起されており、党内の緊張も高まっている。非イ・ジェミョン派のある議員は「イ代表が拘束と関係なく自ら代表職を整理しなければ、40人であれ50人であれ革新と変化を掲げる人々はイ代表と争うことになるだろう」と語った」 

    李氏があくまでも権力維持にこだわれば、「共に民主党」は分裂する。来年4月の総選挙を戦えないからだ。40~50人が新党を立てるだろう。韓国左派は頓挫する。

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    中国の弱点は、科学技術の専門家が少ないことだ。米中対立の激化で、ますますその必要性が高まっている。中国の求める人材の基準は、マサチューセッツ工科大(MIT)やハーバード大、スタンフォード大などで訓練を受けた研究者で博士号所有者に限っている。これらの有資格者が帰国すれば、住宅補助のほか6000万~1億円の契約金が払われるという。それでも、帰国して不自由な生活を思えば二の足を踏むケースが多い。 

    『ロイター』(8月27日付)は、「中国、『千人計画』が衣替え、国外技術者の獲得作戦続く」と題する記事を掲載した。 

    中国政府の外国人材招致事業「千人計画」は、密かに衣替えされ、より拡充されたプログラムの一環として継続されている──。事情に詳しい関係者3人の話や、ロイターが2019年から今年までの500以上の政府文書を調べて明らかになった。

     

    (1)「中国は2008年、優秀な外国の科学技術者を招く目的で多額の資金援助を盛り込んだ千人計画を立ち上げた。ただ2018年に米政府が自国の利益や科学技術上の優越性を脅かす存在と位置付け、その後国内の科学者に対する厳しい捜査や監視を実施すると、中国側は大々的な宣伝を控えるようになった。しかし現在も中国は、中央政府から地方政府までさまざまなレベルで海外にいる中国人や外国の専門家を集めるための政策プログラムを運営している。幾つかの文書や関係者への取材などによると、その中で主に千人計画の後継となっているのは、工業情報省が主管する「啓明」と呼ばれるプログラムだ」 

    米国は、中国から研究費を受けながら未報告のケースを立件している。それだけに、在米中国研究者は母国からの誘いに乗って良いのか迷っている。主な分野は半導体分野だ。 

    (2)「特に習近平指導部は、昨年10月に米政府が対中輸出規制を始めた半導体分野で内製化を実現する必要性を強調しており、人材獲得は急務となっている。このため「啓明」でも半導体など重要とみなされる科学技術産業の人材を招致対象としている、と2人の関係者は証言した。一方で千人計画と異なり、中央政府のウェブサイトには啓明への言及はなく、対象者の氏名などをも公表されていない。3人の関係者が語ったところでは対象者は一般的に住宅購入補助や契約金300万~500万元(6000万~1億円)などを受け取ることができるという」 

    帰国すれば、住宅購入補助金や多額の契約金が支払われる。だが、この甘い誘いに乗れば二度と再び米国での研究が困難になる。研究を取るか金品に目を奪われるかだ。

     

    (3)「中国政府系シンクタンク、中国電子情報産業発展研究院と中国半導体工業会が公表した2021年の報告書によると、国内の半導体産業はエンジニアや設計技術者など約20万人余りの人材不足に陥っている。衣替え後の人材招致プログラムでも千人計画と同様に、狙いは外国のトップクラスの研究機関で経験を積んだ人々だ。関係者の1人は、「啓明」の対象に選ばれた応募者の大半は米国の最上位大学で学び、少なくとも一つの博士号を取得していると解説。中国が求めているのはマサチューセッツ工科大(MIT)やハーバード大、スタンフォード大などで訓練を受けた研究者だと補足した」 

    中国国内の半導体は、エンジニアや設計技術者など約20万人余りの人材不足に陥っているという。これでは、「千人計画」でトップ研究者を帰国させても間に合わない。時間がかかるであろう。 

    (4)「3月には杭州市のヘッドハンティング会社が、研究者向けSNSのリサーチゲートに、中国企業向けの海外研究者5000人を募集する取り組みの一環として、最上位大学の博士号を持ち、フォーチュン500企業での勤務経験を持つ人々を探していると投稿した。これは「啓明」や別の招致プログラムの適用対象で、採用されれば1人当たり最大1500万元(約3億円)の報酬が得られる上、紹介した候補者が採用されれば紹介者にもダイヤモンドや自動車、住宅などをプレゼントするとしている」 

    金品で人を釣るのは、いかにも物欲の強い中国社会でありそうな話である。こういう「物」で釣られてきた人物に優秀な者がいるだろうか。

     

    (5)「外国で活動している中国の半導体技術者の多くは、国内の政治情勢や西側に比べて遅れている開発環境を嫌っており、内製化を目指すという習近平指導部のかけ声にもかかわらず、本国に戻ることを尻込みしている、と2人の関係者は話す。「技術者らは、こうしたプロジェクトが一夜にして変更されたり、政府が政策を転換してはしごを外してしまうのではないかと不安に思っている」と、このうち1人は話した」 

    朝令暮改の中国である。いつ、政策変更があるか分らない。道を誤ったら、一生を棒に振ることにもなりかねないのだ。 

    (6)「ある地方政府では昨年、主に「啓明」などの人材招致プログラムに200人余りの応募があったが、中国に帰国したのは8人にとどまった。関係者に聞くと、中国の研究者、特に外国の市民権や永住権を持つ人々の間では「啓明」などに参加すれば国際的な活躍の機会を放棄するか、米政府の捜査対象になってしまうことを心配する声も少なくない」 

    人材招致プログラムに200人余りが応募したが、最終的には8人が帰国しただけであった。他の人たちは思いとどまった。これが、正解であろう。

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    EV劣等生が秀才へ変貌

    市場理論で危機を回避へ

    米国でHVの真価を評価

    トヨタEVで無傷の奇跡

     

    トヨタ自動車の4~6月期営業利益は、市場予想を上回る1兆1209億円であった。半導体不足の緩和による生産回復と、円安が追い風になったものだ。23年度の営業利益目標は、過去最高の3兆円である。すでに、4~6月期で37%の高い進捗率だ。このまま推移すれば、目標を上回る営業利益を達成するであろう。 

    トヨタが、こうした好業績を上げたのは、EV(電気自動車)での世界的な過当競争に巻き込まれず、「我が道を行く」戦略が機能したものとみられる。現在のリチウム電池によるEVは、本格的な「ゼロカーボン・カー」へ向けての「一歩」に過ぎないと位置づけてきたからだ。トヨタは、EVについて技術とマーケッティングの両面で、確固たる経営戦略を立ててきたとみられる。 

    この技術面とマーケッティング面からの具体的な分析内容は、後で取り上げるとして、世界のEVブームはさながら「熱病」のような広がりをみせた。EVに乗り出さなければ、自動車メーカーとして失格という雰囲気であった。その点で、世界一の自動車メーカーであるトヨタが、地味な動きであったことから、メディアは「トヨタはEV脱落」とまで酷評するほどだった。先のトヨタの社長交代の裏には、こういう雰囲気も手伝っていたのだ。

     

    それほど、「トヨタ・バッシング」は厳しかった。株価も低迷した。社長交代に当たり豊田前社長は、株主総会で思わず涙する姿が報じられたほどだ。トヨタのEV戦略に対する世界の無理解を嘆いたとみられる。トヨタは、どうしても明らかにしなかったことがある。現在のリチウム電池のEVブームが、すぐに終わると踏んでいたことだ。これは、口が裂けても言えないだけに苦悶したであろう。自らもEV生産の旗を掲げている以上、口外できるはずがなかった。 

    EV劣等生が秀才へ変貌

    トヨタの23年3月期のEV販売台数は、3万8000台であった。世界トップの自動車企業としては、目を疑う数字であろう。トヨタは22年欧州10カ国の市場でシェア0.8%の7554台のEVを売るのにとどまった。トヨタが、EV市場で振るわない背景として充電施設不足と高い価格などを指摘されている。トヨタは、20年以上前からハイブリッドカー(HV)を生産しバッテリー製造技術まで蓄積している。そのトヨタが、欧州で惨敗であった。ハイブリッドカーは、動力源としてバッテリーと内燃機関の「二刀流」である。トヨタは、世界で最も早くEV技術を磨いてきた企業である。トヨタのEVは、ハイブリッドカーの延長線にあり、技術的にいつでも本格的進出が可能な状態にある。トヨタは、あえてそれをしなかった。ここにトヨタの深い読みをみるべきだ。 

    トヨタは、中国でハイブリッドカーの基本特許を無料公開している。中国のEV進出を側面から支援する姿勢をみせた。中国がその後、一挙にEVブームに移っていく技術的きっかけはトヨタの基本特許の無料公開による効果も大きかった。トヨタは、なぜ自社のライバルに塩を送ったのか。トヨタの説明では、中国の二酸化炭素ゼロ運動に協力したとしている。この表面的な話に納得できるだろうか。

     

    本当の狙いは、中国のEV市場を育てて、トヨタがEV本格進出の際に自社で「市場を刈り取る」という深慮遠謀が働いていたと見るべきだ。目先は利益にならなくても、将来は大きな利益を得る。こういうトヨタの経営戦略を嗅ぎ取ることができるであろう。

     

    中国のEV業界は現在、過剰生産状態に陥っている。今年7月、主力EV企業は値下げしないという合意を発表したが、独禁法違反の恐れを指摘されて撤回する羽目になった。これほど値下げ競争が激しくなっている。

     

    中国では、過去数年間にEVメーカー約400社が経営破綻に追い込まれた。全国各地の廃棄物の置き場には、技術面で時代遅れとなったEVが放置される惨状を呈している。これは、政府からの補助金目当てという「不純な動機」も手伝っている。2023年のEV普及率は、人口1000万人以上の大都市では40%近いのに対し、人口50万人以下の都市では20%と大きな差があるという。地方は、財政面が苦しいことや消費者の所得の低い、という事情が影響している。

     

    総じて見れば、中国の2023年上半期のEV普及率は、20.%(欧州は12.%)に達した模様だ。ただ、優遇政策による普及率押し上げで、「EVを無理して買わされた」という層もかなりいるはずである。実は、次に述べるマーケッティング理論から言えば、現段階のEV普及率が目先のピークとなろう。これからしばらくの間、「小休止」に入ると判断されるのだ。

     

    市場理論で危機を回避へ

    マーケッティング理論である「キャズム理論」によれば、普及率16%までの「初期市場」から、次の本格的な息の長い「主流期」へ入る間に「深い溝」(キャズム)が存在すると指摘されている。あらゆる新商品の普及段階では、発売から一挙に熟成期へ達するのでなく、その間に数年の「小休止」期間が挟まると指摘されているのだ。これは、「好奇心の強い」消費者がすぐに新製品へ飛びついても、平均すれば16.5%の普及率の段階で、そういう需要層が一巡する。発売直後ゆえに、新商品の欠陥も浮き彫りになることから、「保守的」消費者は様子見をするのだ。(つづく)

     

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