中国の経済司令塔は瓦解したのか。そう思わざるを得ないほどの混乱に陥っている。上海総合株価は、8月25日終値で3064ポイントと昨年11月以来の安値に落ち込んでいる。当局は対策として、新規上場(IPO)を徐々に抑制することになった。株式の供給を減らして、株価回復を図ろうという原始的な狙いだ。
スタートアップは、これによって資金調達の道を絶たれるので、企業発展の芽が摘まれる危険性が高まる。すでに米国は、中国の半導体やAI(人工知能)などへの投資規制法を成立させたので、中国スタートアップは、内外から資金調達の道を狭められることになった。
『日本経済新聞 電子版』(8月27日付)は、「中国当局、新規上場『段階的に抑制』新興企業に打撃」と題する記事を掲載した。
中国証券当局は27日、新規株式公開(IPO)を段階的に抑制すると発表した。株式市場の需給悪化要因になる新規上場の抑制で株式相場の下支えを狙う。一方、スタートアップへの打撃は大きく、中国が目指す産業構造の高度化の障害になりかねない。
(1)「中国証券監督管理委員会が「最近の市場環境に基づき、IPOのペースを段階的に抑制する」と発表した。2022年のIPO調達額で上海証券取引所は世界1位、深圳証券取引所は2位だった。23年も8月27日時点で半導体関連など242社が上場し、将来のイノベーション(技術革新)を生み出すと期待されていた。中国では、大型IPOが株式相場の下押し圧力になるとの考え方が根強い。一部の投資家がIPO資金を捻出するために保有株式を売却するためだ」
外国人投資家は、8月として(24日まで)761億元(1兆5220億円)売り越した。2014年以来、月間最大の売り越し額である。「チャイナ・エクソダス(脱出)」が加速化している状況だ。中国経済の先行き不透明を嫌っての行動である。
中国当局は、こういう外国人投資家の動きを理解できず、IPOの抑制で株価下落を防ごうという「トンチンカン」な対策に出ている。
(2)「このため中国は株式市場が低迷した13年や15年など過去にたびたびIPOを停止してきた。「チャイナ・ショック」があった15年には約5カ月間、IPOを完全停止した。今回の抑制措置は「段階的」としている。完全な停止は避け、市場の状況を見ながらIPOを停止する企業の規模や期間などを判断するとみられる」
このIPOがらみの政策発動は、過去の株式市場混乱期にも行われている。当時は、米中関係は順調であったから、米国のベンチャーキャピタルを介しての資金調達が可能であった。現在は、これが急速に細っている。米国の投資規制法が発効すれば、ほぼゼロになろう。
(3)「中国は、個人の資産形成が住宅に偏っており、住宅価格下落による逆資産効果が個人の消費意欲を急速に減退させるリスクがある。先進国に比べて遅れている株式市場の育成が急務となっており、証券当局は18日にも、取引時間の延長や企業の自社株買いの規制緩和を発表している。一方、相場の下支えを理由にした政府の恣意的な介入は、投資家や上場・候補企業の信認をかえって損ない、健全な市場育成の妨げとなる恐れがある」
不況対策として、「2軒目購入条件緩和」が政策メニューに入っている。政府が、住宅投機を勧めているのも同じことだ。政府は、やるべき対策を怠り国民を食い物にしていると言って過言でない。こういう「恥知らずの政策」が堂々と罷り通る現状は、政策の貧困そのものを表している。本来ならば、財政出動の局面だがそれを回避しているのだ。台湾侵攻による軍事費増大に備えているに違いない。中国は、こういう見え透いたことを平気で行っている國である。株価が下落して当然なのだ。
『ブルームバーグ』(8月10日付)は、「バイデン氏、半導体など中国企業への米投資制限ー大統領令に署名」と題する記事を掲載した。
バイデン米大統領は一部の中国企業に対する米投資を制限する大統領令に署名した。米国の国家安全保障上の脅威となる恐れがある次世代の軍事・監視技術を中国が開発する能力を規制しようとする取り組みの一環。
(4)「9日に発表された大統領令は、半導体や量子コンピューティング、人工知能(AI)分野の一部の中国企業への米国の投資を規制する。大統領令はほぼ2年にわたる議論の末に署名された。対中タカ派がより迅速で厳格な措置を主張する一方、米財務省などは発効までに時間を要するより狭い措置を主張していた。規則の詳細は今後取りまとめが必要だが、大統領令の文言からは、一段と慎重なアプローチを支持していた財務省などの主張が通ったことがうかがわれる。規制対象のセクターから売上高の50%超を得ている規模が大きめの中国企業やスタートアップに限定される見通し」
米国の対中投資制限法では、スタートアップが対象になっている。この法律が施行されれば、中国のスタートアップは「日干し」になろう。





