勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年08月

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    中国経済は、失速状態に陥っている。建直し策は、GDPの約4割を占める個人消費の回復しかない。だが、多額の住宅ローンを抱えている家計に対して、雇用不安のつきまとう中で「貯蓄より消費を」呼びかけたところで効果はないであろう。そうなると、中国政府が制度的に消費増強策を立てることだ。政府はこの場合、台湾侵攻計画にそった軍備強化に回す資金がなくなる。個人消費強化は、こういう「八方塞がり」状態におかれているのだ。

     

    『ロイター』(8月26日付)は、「経済失速の中国、消費喚起策に立ちはだかる複数の障害」と題する記事を掲載した。

     

    北京に住む書籍編集者のエリン・ヤオさん(30)はストリートダンスの教室に通ったり旅行したりと、中国政府が「ゼロコロナ」政策を続けた3年間にできなかったことをするつもりだった。しかし、それを諦めて、給料から貯蓄に回す額をパンデミックの最中よりも増やしている。「突然病気になったときのための貯蓄が十分か、自問自答しています。もし、職を失ったら、次の仕事を見つけるまで暮らすお金はあるのかと」――。お金の使い道を変えた理由をこう明かした。

     

    (1)「ヤオさんが財布のひもを引き締めることになったのは、中国の1980年代の経済成長モデルに原因がある。このモデルは不動産、インフラ、鉱工業への投資に過度に依存し、消費者の所得と消費を増やす取り組みが不十分だったとの指摘が多い。中国は経済の低迷で「リバランス」、つまり不均衡の是正が焦眉の急となっているが、経済資源の家計への移転には、目先の痛みを一段とさらに大きくするような困難な決断が必要だ。具体的に言えば、国民所得に占める家計の割合を高めることは、他の部門、特に中国の巨大な鉱工業部門や政府部門の割合の低下を意味する」

     

    中国GDPの構成は、個人消費4割と固定資産投資4割と偏っている。この経済では、固定資産投資を減らせば、GDPがガクッと落ち込む。それを覚悟で、個人消費を増やす対策が取れるかだ。

     

    (2)「ファソム・コンサルティングの中国エコノミスト、ジュアン・オーツ氏は「鉱工業部門や政府部門の比率が低下すれば、景気後退入りは不可避だ」と予想。理屈の上では、ヤオさんは月給8000元(1097ドル)以上の仕事を見つけることができれば、支出を増やすことができる。だが、中国の雇用市場は弱く、若者の失業率は過去最高の21%超に達している。都市部の新規雇用の80%を占める民間部門は、ハイテク産業などに対する政府の規制面での締め付けから、まだ立ち直っていない。政策立案者は企業への信用供与を強化する方針を示しているが、企業は最終的に脆弱な内需によって制約を受けている

     

    都市部の若者失業率が高いのは、ハイテク部門への政府の締め付けが影響している。企業はこの影響を受けるので業績は振るわないという悪循環だ。

     

    (3)「ヤオさんのような国民に消費してもらうもう一つの方法は、こうした国民の抱える不安に対処することだ。エコノミストの多くが、経済の不均衡を是正するために社会的なセーフティーネットを強化するよう国に求めている。ヤオさんが暮らす北京の失業手当は期間が3カ月から24カ月で、金額は最高で月2233元(約4万5000円)。この額はヤオさんの12平方メートルもない部屋の家賃にも満たない」

     

    約4万5000円の失業手当では、12平方メートルもない部屋の家賃も払えない。こうなると、消費を切り詰める以外に生きる術がない。

     

    (4)「ヤオさんの両親は農村部に住んでいる。まもなく定年を迎えるが、年金は1人当たり1500元(約3万円)とわずか。ヤオさんは父親の薬代として毎月300元(約6000円)負担しているが、これはダンス教室の受講料と同額だ。ヤオさんは「公的医療保険が高齢者の医療費をもっとカバーしてくれたら安心できるのに」とため息をつく。経済的な不安もあり、彼女は子どもを持つことにも消極的。中国は高齢化が進み、特に消費がピークを迎える20代から40代で人口が減っている」

     

    中国は、消費の担い手である20~40代の人口が減っている。これも痛手である。


    (5)「経済学者からは需要サイドの政策案として、公共サービスを改善してより広く利用できるようにすることや、社会保障給付の増額、労働者の法的交渉力の強化、国有企業の株式の市民への分配などが挙がっている。だが、問題はこうした政策に伴うコストを誰が負担するかだ。社会保障給付を引き上げて企業の負担が増えれば、雇用と成長への打撃も大きくなる。残るのは政府部門だが、地方自治体は債務危機に見舞われている。
    カーネギー・チャイナのマイケル・ペティス上級研究員は、中央政府が地方政府に働きかけてGDPの1~1.5%相当を家計に移転させれば、中国は現在の成長を維持できると試算」 

    下線部は理想論である。習政権は、台湾侵攻計画を立てている以上、これを実行するはずもない。結局、決断がつかないままに「衰弱」する経済となろう。

    あじさいのたまご
       


    韓国左派は、あくまでも反日姿勢を貫いている。文在寅・前大統領までが反対声明を出す事態だ。韓国世論は、福島処理水放出をめぐって完全に二分される事態になった。

     

    『中央日報』(8月25日付)は、「文在寅前大統領「私は日本の汚染水放流に反対」 韓国与党議員「鄭義溶前外交部長官、IAEAに従うと言った」と題する記事を掲載した。

     

    日本の汚染水放流が始まった8月24日、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領はフェイスブックに「私は汚染水の放流に反対する。また、この問題に対する政府の対応が非常に間違っていると考える」と書き込んだ。文前大統領はこのような立場を明らかにした理由を「国民の力の河泰慶(ハ・テギョン)議員のため」と書いた。

     

    (1)「河議員はこれに先立ち午前、「文前大統領は日本が処理汚染水を放流しても、韓国の海には影響が事実上ないことを知っているだろう。そのため、文在寅政府当時、〔鄭義溶(チョン・ウィヨン)〕外交部長官は国際原子力機関(IAEA)の結論に従うと言った」とフェイスブックに書いた。河議員は「そのため、文前大統領は民主党と異なる反応を見せている」とも述べた。文前大統領は河議員の主張が間違っているという旨で立場を明らかにしたわけだ」

     

    文氏は、未だに大統領時代の権力を懐かしんでいるようだ。「元大統領」としてやるべきことは、国論の分裂拡大を防ぐことだろう。だが、現実にはガソリンを投げ込むような振舞である。

     

    (2)「河議員が書いたように、2021年4月の国会対政府質問で鄭義溶元長官が似たような旨で発言したのは事実だ。しかし、正確な発言は「3つの条件が用意され、IAEAの基準に合致する適合性手続きに従うなら、あえて反対することはない」だった。「3つの条件」は▽日本の科学的根拠の提示と情報共有▽韓国政府と十分な協議▽IAEAの検証過程に韓国専門家が参加することだ。IAEAの検証過程に韓国専門家は実際に参加した。ただし、先の2つの条件について現政権・与党は満たしたとみているが、民主党はそうではないとみている」

     

    文政権時代は、IAEAの結論に従う旨を表明している。文氏は、この立場から言えば、野党「共に民主党」を説得しなければならないのだ。その「汚れ役」を忌避して、一緒になって反対の神輿を担ぐ姿勢である。こういう元大統領が居たのでは、韓国は救われないであろう。

     

    (3)「河議員は、「文前大統領は(現)民主党とは異なる反応だった」とも述べた。文前大統領は2021年4月、相星孝一駐韓日本大使と会談して汚染水に関連して「海を共有した韓国の憂慮が非常に大きい」と述べた。しかし、現民主党のように強力な反対の意思を明らかにしなかった。また、文前大統領は汚染水に関連して国際海洋法裁判所の日本提訴を検討するように参謀に指示したが、実際には提訴しなかった」

     

    文氏は、大統領時代に反日の急先鋒であった。これが、どれだけ大きな混乱を招いたか分らない。文氏の5年間の足跡はすべてひっくり返されている。それだけに、「一矢報いる」という感情的行動に出たのであろう。

     

    (4)「この日、国民の力の成一鍾(ソン・イルジョン)議員は、民主党に「来年3月24日、両党の立ち会いのもと、済州(チェジュ)沖で採水し放射能数値を検査してみよう」と提案した。民主党が日本の放流汚染水が7カ月で済州海域に到着すると主張したためだ。成議員は「嘘をついた方が国民の審判を受けるためには来年4月10日の総選挙の前には必ずやるべきこと」と話した。民主党は汚染水関連緊急議員総会を開き、日本産水産物の輸入禁止と韓国の水産業界への被害支援などを内容とする「福島原発汚染水対応特別安全措置4法」の推進を党方針で決めた

     

    「福島原発汚染水対応特別安全措置4法」なる日本への嫌がらせ「立法」は、野党「共に民主党」が最大議席数を占めるので、国会を通過するはずだ。だが、ユン大統領の拒否権にあうだろうが、余りにも政治目的優先が芬芬としている。目的のためには手段を選ばないのだ。 

     

     

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    エコノミストの間では、ドイツ経済に対して抱く心理的なイメージが安心から不安に変わってきた。ドイツは、高齢化からインフラの老朽化まで構造的問題を抱えている。ウクライナ戦争、金利の上昇、国際貿易の停滞も追い打ちを掛けているのだ。 

    IMF(国際通貨基金)とOECD(経済協力開発機構)は、ドイツが23年に先進国の中で経済成長が最も低迷するとの見方で一致している。同国で発行部数が最多のタブロイド紙ビルトは「助けてくれ。ドイツ経済が崩壊しつつある」と訴えるほど。GDPで、日本を追い抜くとさえ見えた時期もあったが今や、「欧州の病人」と揶揄される始末だ。 

    ドイツの連邦統計当局が、8月25日発表した4~6月期のGDP改定値は前期比変わらず。世界的な景気低迷で、ドイツの輸出が落ち込んでいる。製造業が大きく下振れしたほか、消費者には高水準のインフレと欧州中央銀行(ECB)の積極的な利上げの影響が及んでいる。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(8月20日付)は、「回復遅れるドイツ経済 構造改革が立て直しのカギ」と題する記事を掲載した。 

    世界第4位の経済規模を誇るドイツは、2四半期連続でGDPがマイナス成長となった後、23年4〜6月は横ばいにとどまった。先進国の中では最も成長が低迷している。

     

    不振の主因は、製造業の世界的な低迷の影響がドイツで特に大きかったことだ。ドイツは日本と同様に製造業の総生産に対する寄与度が5分の1と高く、米国、フランス、英国の倍近くに達する。独ハレ経済研究所でマクロ経済部門を統括するオリバー・ホルテミュラー氏は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の上昇と貿易摩擦が製造業に深刻な影響を及ぼしたと述べた。資金調達コストの増大と熟練労働者の不足も製造業を「大きく圧迫した」と言う」 

    (1)「ドイツのガス・電力価格は、昨年以降低下しているが、欧州以外の多くの国よりまだ高い水準にある。また、化学、ガラス、製紙などエネルギー集約型産業の鉱工業生産指数は昨年初めから17%低下し、長期的な低迷が続いていることがうかがえる。英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスのシニアエコノミスト、フランツィスカ・パルマス氏は「ドイツ製造業の見通しは暗い」と言う。従来はドイツ企業が強かった自動車業界では、成長著しい電気自動車(EV)分野でドイツ大手が低価格路線の中国企業に市場シェアを奪われるなど、脅威にさらされていることがドイツの苦境に追い打ちをかけている。ゼネラリ・インベストメンツ・ヨーロッパのシニアエコノミスト、マーティン・ウォルブルグ氏は「ドイツの主要な輸出品である自動車は一段と競争が激しくなっている」と述べた」 

    ドイツ製造業は、安価であったロシア天然ガスへ依存し過ぎたことが命取りになった。前首相メルケル氏が、米国の忠告を聞かずロシアへ傾斜した結果だ。中国への過度の依存もメルケル氏が主導した。「反米」メルケル氏は、意識的に中ロへ接近したが、その代償は大きくなっている。中国は、台湾リスクを抱えており「深入り禁物」になった。

     

    (2)「英コンセンサス・エコノミクスが8月に実施したアナリスト調査によると、ドイツのGDPは23年に0.35%縮小すると予想され、3カ月前の小幅増から見通しが悪化した。24年の成長率予想も年初の1.%から0.86%に引き下げられた。他のユーロ圏諸国に比べて、ドイツは08年の金融危機からの立ち直りが早かった。世界貿易が拡大した一方、南欧諸国は銀行・債務危機に陥ったからだ。だが、先頭を走っていたドイツ経済が今や後れを取っている。ドイツのGDPは6月に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)前の水準をようやく回復したのに対し、ユーロ圏は2.%上回っている」 

    ドイツのGDPは、23年マイナス成長が予想されている。24年はプラス成長へ転じるが、小幅である。ユーロ圏全体の平均成長率に及ばない状態だ。病めるEU盟主である。 

    (3)「独コメルツ銀行のチーフエコノミスト、ヨルグ・クレマー氏は「新型コロナ危機の要因を除くと、ドイツ経済の低迷は17年から始まっている。つまり、構造的問題がしばらく続いているということだ」と指摘した。人件費の上昇、高い税率、抑圧的な官僚主義、公的サービスにおけるデジタル化の遅れによってドイツの競争力はじわじわと低下していると専門家は指摘する。これは、スイスのビジネススクールIMDの世界競争力ランキングで順位が低下していることでも明らかだ。10年前は主要64カ国・地域の中で10位以内に入っていたドイツは、現在22位に低迷している」 

    ドイツ経済の低迷は、17年から始まっているという。人件費の上昇や高い税率が問題という。これが、ドイツの競争力を奪ってきたというのだ。

     

    (4)「暗い影がドイツ経済を覆っているものの、不振は長くは続かないとみるエコノミストもいる。エネルギー価格が落ち着き、対中輸出が回復すれば、ドイツの周期的な停滞が一段落するという。他のエコノミストはもっと悲観的だ。オランダの金融大手INGでマクロ経済分野のグローバル責任者を務めるカールステン・ブルゼスキ氏は、「ドイツには包括的な改革と投資計画が必要だが、実現にはほど遠い」と語った」 

    下線部は、楽観的である。エネルギー価格の落着きは好材料としても、対中輸出回復は余りにも希望的過ぎる。現在の中国経済は、一時的なスランプでなく構造的な問題を抱えている。不動産バブル崩壊なのだ。この中国が、成長軌道へ復帰できると見るのは、世界のバブル崩壊の歴史と比べて余りにもかけ離れている。

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    中国で、50万円のEV(電気自動車)が登場し話題を呼んだ。この企業はあっけなく倒産したが、中国のEV業界は過剰生産の渦中にあり、値下げ競争が激烈である。だが、需要は増えず危機的な状態を迎えている。米国でも、規模は違うがEVの過剰在庫が問題になってきた。これは、EVが世界的に曲がり角にある証拠だ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月23日付)は、「EVバブルの崩壊が始まった」と題する社説を掲載した。 

    中国の産業政策の失敗が明らかになった今、米国が中国の経済モデルを模倣しようとしていることは、控えめに言っても皮肉な展開だ。崩壊しつつある中国の電気自動車(EV)バブルを見よ。そこには、政府が構築した産業は政府のせいで破綻しがちだという教訓がある。 

    (1)「米EV大手テスラは先週、中国での価格を引き下げた。供給が過剰なEV市場で販売台数を伸ばすためだ。テスラと中国国内の他の自動車メーカーは7月、EVの値下げ競争をやめることで合意した。しかしその数日後には、独占禁止法上の政府の懸念を背景に、この合意を破棄した。価格の低下は消費者に恩恵をもたらすかもしれないが、中国の自動車メーカーは赤字を垂れ流し、破綻に向かっている」 

    中国は、EVの過剰生産を止めるべく値下げ競争自粛を申し合わせたが、独禁法違反の恐れで撤回。経営破綻企業が増えている。EV需要が頭打ちになった結果で、マーケッティングでは、「キャズム(溝)理論」とされるエアーポケットへ落ち込んだものだ。ここからの脱却には、数年を必要とする。

     

    (2)「中国では過去10年間、EVを手掛けるスタートアップ企業が大量に誕生した。消費者向けの購入促進策や企業への直接融資といった政府の支援策に後押しされた。自動車メーカー各社は補助金を得るためEVを大量生産した。政府がメーカーに対するEV生産義務を強化する一方で補助金を減らしたことで、過去数年間に中国EVメーカー約400社が経営破綻に追い込まれた。全国各地の廃棄物の置き場は、技術面で時代遅れとなったEVであふれている。その光景は、政府主導の投資で進められたが未完成で入居できないままになっている住宅開発プロジェクトと重なる」 

    中国政府は、EVに補助金をつけて増産させれば、世界のEV市場を一気に支配できると見ていたが、それは甘かった。マーケッティング理論に背く話なのだ。つまり、市場論理は中国政府の意向通りに進まないということである。消費者は、EVという初物に飛びついたが、圧倒的多数の消費者は「様子見」である。現在はこの「助走」段階である。「ホップ」の段階だ。すぐには「ステップ・アンド・ジャンプ」には達しない。消費者の「選球眼」に耐えられるEV登場を待っているのだ。

     

    (3)「中国政府はこのほど、業界の苦境を緩和するため、EVの売上税免除措置を延長した。それでも自動車メーカーは製造を義務付けられているEVを売るために価格を下げざるを得ず、利益率は削られる。中国のEV化に向けた規制は米カリフォルニア州やバイデン政権が課しているものと似ており、とりわけ西側諸国の従来型ガソリン車メーカーに打撃を与えている」 

    中国政府は強引である。消費者の趣向を無視して増産させてきた。そのギャップが今、現れている。 

    (4)「中国にある独フォルクスワーゲン(VW)の合弁企業は今月、EV「ID.6 X」について最大8200ドル(約120万円)の販売奨励金を支払うと発表した。中国国内のゼネラル・モーターズ(GM)シボレーブランドの販売店は、EV価格を25%以上引き下げている。EVは現在、中国の自動車販売の3分の1を占めるにもかかわらず、供給が需要を大幅に上回ったままだ。個人消費が弱まるにつれ、需給の差は拡大する公算が大きい」 

    消費者の意向を無視した商品戦略はあり得ない。中国政府は、このことに気づかないのだ。 

    (5)「中国で起っていることは、米国で起こる予兆かもしれない。バイデン政権は中国のEV産業政策をまねているからだ。調査会社コックス・オートモーティブは今月、米国のEV在庫が103日間供給できる量にまで膨らみ、ガソリン車の約2倍になったと発表した。自動車メーカーと販売会社は増え続ける供給分を売るためにEVを値下げしている。消費者が支払ったEV価格の平均は5万3438ドルと、前年比で20%低下している。テスラによる値下げと販売奨励金の提供が主な要因だ。フォード・モーターはこのほど、赤字拡大と売れ残り在庫の増加を受けてEVの生産目標を引き下げた。6月末時点の在庫水準は、フォードの「マスタング・マッハE」が116日分、GMの電動「ハマー」が100日分以上だった。しかもこうした事態は景気が拡大する中で起きている」 

    中国で起っているEV騒動は、米国でも起る前兆を見せている。米国のEV在庫が、103日間供給できる量にまで膨らみ、ガソリン車の約2倍にもなったことだ。米国でもEVの値下げが始まっている。

     

    (6)「従来型の自動車メーカーは、EV事業での損失を補うためにガソリン車の価格を引き上げざるを得なくなるだろう。全米自動車労組(UAW)のある幹部は20日、欧州自動車大手ステランティスがピックアップトラック「ラム1500」の生産をデトロイト郊外からメキシコに移すことも辞さない姿勢を示していると述べた。コスト削減を狙っているのは明らかだ。バイデン大統領が盛んに宣伝するEV関連の雇用は、ガソリン車を製造する労組員の雇用を犠牲にして生み出されることになる」 

    米国の従来型自動車メーカーは、EVの赤字をガソリン車の利益でカバーできる範囲でEV化を進めてきた。だが、EV不振が明らかになって赤字が膨らんでいる。EV生産を縮小するほかない。

     

     

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    韓国経済の悩みが深まっている。中国経済は、不振が本格化する気配だ。韓国の対中輸出へは、マイナスの影響力が長引く。一方、米国の金融引き締めが長期化する見通しが強く、国内の政策金利引下げ時期が遠のく。こうして、米中に挟まれた韓国経済の苦悩が深まっているのだ。 

    『ハンギョレ新聞』(8月25日付)は、「中国の不動産、米国の高金利 影響受ける韓国経済」と題する記事を掲載した。 

    中国の事情に詳しいある証券会社のアナリストは20日、ハンギョレの電話取材に対して次のように強く述べた。「中国経済(GDP)に占める建設・不動産業の比率は30%に達します。不動産発の景気低迷で中国国内の需要が急減すれば、韓国の成長率も最大0.3ポイント下がる可能性があります」

     

    (1)「『中国の不動産発の危機説に過剰反応する必要はない』とか『不動産問題は中国の内部事情に過ぎない』とする韓国政府の見解は大きく的が外れているということだ。このアナリストは「対中国輸出は中間財中心であるため中国の投資や消費の悪化が韓国の輸出に与える波及効果は小さい、などというのは『遠い昔』の話」だと断言した」 

    前記の「証券会社アナリスト」は、氏名を伏せられている。中国政府が、弱気を語ってはならないという「禁令」を発している結果だ。中国経済の停滞が、韓国の成長率を最大0.3ポイント下げるという見方は的外れでない。あり得る話だ。 

    (2)「韓国経済は、「冷たい中国」と「熱い米国」が両側から押さえつけている。中国の不動産発の金融不安、景気の沈滞が韓国の輸出不振とウォンの価値の低下を招くとともに、米国発の高金利の長期化見通しまで広がっているからだ。何よりも、このような対外環境の悪化に対応するための財政・通貨などのマクロ政策の身動きの幅まで非常に狭まっているため、懸念は大きい」 

    米国景気が堅調で、政策金利引下げ時期は24年後半以降と見られている。となれば、韓国も利下げの時期がそれだけ遅れることになろう。韓国経済にはマイナス要因である。

     

    (3)「中国の不動産危機は金融市場の不安にとどまらず、輸出・成長率の停滞の懸念まであおることで、「上半期低迷、下半期回復」とみられていた韓国経済の成長を脅かしている。中国の投資・消費需要が下火になれば、韓国からの半導体、建設機械、化学、家電製品の輸入量も一斉に縮小する恐れがあるからだ」 

    韓国では、「上半期低迷、下半期回復」という景気回復コースを前提に議論している。本欄は、半導体不況の回復が遅れていることから、その可能性を否定してきた。現実は、その方向に向っている。 

    (4)「ハッシュドオープンリサーチのキム・ヨンボム代表(元企画財政部次官)は、「新型コロナウイルス封鎖が解除された後も2年間も抑えつけられていた中国の消費が依然として低迷しているのは、並大抵の深刻さではない」とし、「いちばんの投資資産だった不動産がめちゃくちゃになっていることで、家計と企業が共にお金を使わない『バランスシート不況』の兆候が明確に表れている」と診断する。これは、不動産デレバレッジング(負債縮小)の影響で中国経済に長期不況の影がさしているということを意味する。JPモルガン・チェース、バークレイズなどのグローバル投資銀行が、中国の今年の成長見通しを中国政府の目標値である5%台より低い4%台に続々と下方修正している理由はここにある」 

    中国経済の実態は、予想以上の悪化である。頼みの個人消費が落ち込んでいるからだ。国民の信頼は、ゼロコロナ3年間で地に墜ちている。昨年春、上海の高層ビル街で夜間に叫ばれたあの悲痛な声は、「政府を信頼しない」という叫びだったのだ。それが今、消費不振となって現れ、貯蓄先行の行動を生んでいると見るべきである。

     

    (5)「国外発の不安要素がある一方で、韓国政府が取れる通貨・財政などのマクロ政策の身動きの幅は狭い。まず通貨政策は、家計債務が再び増えているとともに、韓米の金利格差が史上最大であるという状況にあっては、景気浮揚のための政策金利の引き下げは容易にはなしえない選択だ。いっぽう財政政策は、最悪の税収不足に加え、政府の強固な緊縮基調に足を引っ張られているのが実情だ。政府は補正予算の編成も行わず、来年予算も今年より3%ほど増やすにとどめる方針だ」 

    韓国は、米金利高の長期化によって簡単に利下げできない状況だ。財政支出でカバーするほかない。 

    (6)「韓国政府が、国外発のリスクを軽視しているのも、このような事情と無関係ではない。企画財政部の幹部は、「中国の不動産開発企業の債務不履行は中国不動産市場内部の問題だ。システムリスクなどへと拡大する可能性は低い」、「韓国の対中輸出が減っていることも、デリスキング(中国への依存度を弱めることによるリスク低減)の面から見れば悪いことばかりではない」と語った。漢陽大学のハ・ジュンギョン教授(経済学)は、「対外リスクが拡大するにつれ、低成長が固定化し、不平等はひどくなるという悪循環が起きる恐れがある。財政運用の変化が必要だ」と述べた」 

    韓国政府は、意図的に楽観論を流している。文政権もそうであったが、楽観論は傷を深くするだけだ。冷静な現実認識が不可欠である。

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