勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年08月

    テイカカズラ
       

    ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)首脳会議は、6カ国の加盟を決定した。議長国南アフリカのラマポーザ大統領が24日、発表した。大統領によると、アルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国が2024年1月1日にBRICSに加わる。 

    中国の習近平国家主席は、今回の決定はBRICSの協力メカニズムに新たな活力を注入する歴史的な拡大だと指摘した。加盟国の拡大は、他の途上国と団結し協力するという決意を反映するとし、「国際社会の期待に応えるもので新興市場と発展途上国の共通の利益に資する」と述べた。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(8月22日付)は、次のように論じている。「中国の目的は、中国が主導する国々の集まりを数多く構築、拡大し、資金を賄うことによって、途上国世界でのリーダーシップを確立していくことだ。さらに、この戦略の狙いは主に2つあるという。ひとつは世界の大半の国々が、今後も中国の貿易と投資に対して開かれているようにすることだ。もうひとつは国連やその他の国際会議の場で、途上国による投票の力を使い、中国の国力と価値観を打ち出すことだ」 

    中国は、自国経済が今後も順調に発展するという前提で、こういう世界のリーダー国を目指しているが、足下の経済はどうなっているか。その冷静な認識がないようだ。

     

    『レコードチャイナ』(8月24日付)は、「中国経済危機論、実際のところはどうなのかー独メディア」と題する記事を掲載した。 

    独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ』中国語版サイト(8月22日付)は、中国経済の先行きに対して欧米メディアから懸念の声が出ており、「問題の根源は政治にある」との指摘も飛び出したことを報じた。 

    (1)「記事は、バイデン米大統領が8月中旬に資金集めのイベントで中国の経済問題を「時限爆弾」と呼び、これに対して中国の国営メディア・新華社が同大統領を批判した上で「課題はあるが、今年の中国経済の回復は堅調だ」とする評論を発表したものの、中国当局が発表した7月の経済指標は軒並み不調だったことから、海外の主要メディアからは中国経済が現在直面している問題や課題についての議論が起こり始めていると伝えた」 

    バイデン米大統領は、中国経済に対して「時限爆弾」という形容詞をつけたが、過剰債務を抱えていつ破綻するか分らない現状への警告である。

     

    (2)「米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)が22日付の記事で「中国が貧困から抜け出し、大国としての地位を獲得した経済モデルは、もはや持続可能なものではない。単なる経済の低迷期ではなく、これは長い時代の終わりかもしれない」と指摘、 国際通貨基金(IMF)が中国の国内総生産(GDP)成長率について今後数年間は4%を下回ると予想しており、 このままでは、35年までにGDPを倍増させるという目標や、中国が長年抱いてきた「米国を抜いて世界最大の経済大国になる」という野望が実現しない可能性があると報じたことを紹介している」 

    WSJは、中国式経済モデルが持続不可能と指摘している。不動産バブルが支える経済の異常性を指摘したものだ。IMFも、中国GDPが今後、数年間は4%を下回ると推計している。これは、労働力人口の減少を重視している。 

    (3)「『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)も同日、ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマン氏が「中国は持続不可能な不動産投資をより高い消費者需要に置き換える必要があるにもかかわらず、中国当局は銀行に融資を増やすよう働きかけることで潜在的な危機に対応しようというこれまでと同じやり方を進めており、人々の不安を募らせている」と論じた文章を掲載したと伝えた」 

    NYTは、ルーグマン氏のコラムで、中国経済再興が個人消費の上昇に掛っていると指摘する。ただ、中国の個人消費は対GDP比で40%弱である。米国の70%弱に比べて大差である。中国が、米国へ経済面で対抗する力はない。

     

    (4)「中国市場に対して常に強気と見られてきた投資家のレイ・ダリオ氏でさえ、中国は現在の苦境から抜け出すために、早急に債務再編を行う必要があると述べており、ダリオ氏のファンドで中国企業に数十億ドルを投資してきたブリッジウォーターが、昨年よりは中国企業への投資を減らし始めているとの報道も出ていることを紹介した」 

    海外ファンドは、中国本土株市場から8月22日までに12営業日連続で計93億ドル(約1兆3500億円)相当の資金を引き揚げた。2016年にデータ追跡を開始してから最長の資金流出となっている。住宅不況の長期化で金融危機拡大のリスクが高まる中、中国本土株の指標、CSI300指数は今月に入り約7%下落と、世界の主要株価指数の中で下げが目立っている。売りの勢いが弱まる兆しはほとんどない。8月23日半ば時点で海外ファンドは70億元余りの売り越しとなっている。 

    (5)「シンガポール紙『聯合早報』(8月21日付)は、「問題は経済にあり、根源は政治にある」と題した非常にストレートな評論が掲載されたと紹介。著者である香港の実業家、劉夢熊(ラウ・モンホン)氏が「改革開放の最初の30年間は着実に上昇し、近年では負のスパイラルに陥っているという逆転現象の最も根本的な原因は政治にある。中国は今、世界で最も経済が政治に縛られている国だ」と論じた」 

    中国は、政治が経済に介入して負のスパイラルへ落ち込んだ。中国共産党は、企業を指導するということ自体が逆立ちしているのだ。中国経済は、習氏の登場で「破滅」の運命に陥った。

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    中国地方政府が発行した「隠れ債務」は、中国GDPの5割以上を占めるという巨額な規模になっている。この隠れ債務は、地方政府の身代わりである「融資平台」が発行し、商業銀行の資産運用部門や保険会社、投資信託、証券会社、ヘッジファンドなど、あらゆる種類の金融機関・会社が購入してきた。地方政府の「保証」を暗黙の前提にしていたのだ。だが、中央政府が地方政府の保証を禁じており今や、債券が単なる「紙切れ」になりかねないリスクが高まっている。

     

    『ブルームバーグ』(8月24日付)は、「中国の地方債務、大規模救済なしで再編図る-危うさはらむ戦略」と題する記事を掲載した。

     

    中国は地方政府の資金調達事業体(融資平台=LGFV)について、大規模な救済策を回避しながらリスクを軽減しようとしている。LGFVが発行した債券の市場規模は9兆ドル(約1300兆円)に上る。

     

    1)「習近平政権は、危うさをはらむ戦略を進めつつある。世界最大のインフラブームをけん引してきた地方政府は、経済成長の足を極端に引っ張ることなく、支出を減らし、債務を再編する必要がある。失敗すれば、世界2位の経済大国を長期停滞に追い込みかねない。このジレンマの中心となっているのが「融資平台」と呼ばれるLGFVで、中国全土に設立され省や市に代わって借り入れを行うが、その実態は不透明だ。習政権はこうしたLGFVを収益性の高いビジネスに変え、借入金の利払いに公的資金を充てずに済むようにしようとしている」

     

    中央政府は、自らの財政収支を黒字化するために、インフラ投資などの資金調達はすべて地方政府の責任で行わせた。2008年のリーマンショック時の「4兆元投資」は、ほとんどが地方政府の赤字で賄われた。事情を知らない向きは、中国政府の健全財政を称えるという間違いをしてきたほどだ。中国財政は、このように二面性を持っている。

     

    地方政府の融資平台が発行した債券規模は、実に9兆ドル(約1300兆円)にも達している。この債券に対する元利金返済への懸念が高まっている。中央政府は、返済能力の低い地方政府を効果的に救済し、信用収縮を回避するための措置を講じるよう動いている。すでに10省へ調査派遣チームを送った。

    地方政府が財政危機に陥ったのは、歳入の3割程度を土地売却益に依存するという異常な歳入構造にある。この一方で、不動産税(固定資産税)も相続税も存在しないという「金持ち優遇税制」を行ってきた。こうした矛盾が今、一挙に表面化しているものだ。煎じ詰めれば、地価下落が招いた地方財政破綻である。

     

    2)「幾つかのLGFVは、利息を支払うだけの収入を得ることができていない状態だ。ブルームバーグの取材に応じたあるLGFVの従業員によれば、銀行は融資に消極的で、投資家は債券を敬遠し、ボーナスはカットされ、実行可能な投資プロジェクトを見つけるのが難しくなっているという。中央政府が救済を回避した場合、返済の負担は、地方政府もしくは金利の引き下げや債務の返済期限延長を求められる銀行に一段とのしかかることになる。どちらの選択肢も、景気を支える地方政府や銀行の能力を制限する」

     

    中国地方財政が、不動産バブルに支えられてきたという異常性の是正は簡単に実現するものではない。長い歳月が掛るものだ。この間の中国経済が、どうなるかは推して知るべしである。不動産バブルが二度は起らない以上、債務返済に長時間を必要としよう。中国経済停滞は不可避である。

     

    3)「中国本土社債市場の半分近くを占める2兆ドル相当のLGFV債でデフォルト(債務不履行)が生じれば、60兆ドル規模に上る中国の金融システムが揺らぎ、世界中に衝撃が走りかねないことから、投資家は懸念を強めている。調査会社ロジウム・グループの中国市場リサーチディレクター、ローガン・ライト氏は、「今後2年間、中国の経済成長に影響を与える最も重要な変数は地方政府による債務再編の成否だ」と指摘。「地方政府が行った投資の破綻は、不動産市場の危機が経済に与える影響に匹敵するだろう」と述べた」

     

    下線部の指摘は重要である。9兆ドルの融資平台債券のうち、2兆ドルがデフォルトになれば、中国全体の金融システムにとって大きな動揺を来す。中国の金融システムは、ノンバンクである信託銀行がすでに元利金返済ができなくなっている。大変な事態に入っているのだ。

     

     

     

     

     

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    韓国の合計特殊出生率は、22年に0.78と世界最低記録を更新している。中国は、同年に1.09と判明。中韓はいずれも日本の1.26を下回る。合計特殊出生率は、一人の女性が生涯にわたり出産する平均的子どもの数である。この数値が、一国の国勢に大きな関わりを持っている意味で、中韓とりわけ韓国は重大な局面にある。

     

    2001年の日韓の合計特殊出生率は、ほぼ同じレベルにあった。日本が1.33で韓国は1.31であった。それが22年には「1.26と0.78」と差がついた。日本も危機的な状況にあるが、韓国や中国は劇的な低下になった。この背後には、高い失業率が就職難=結婚難を招いている面がある。

     

    『中央日報』(8月24日付)は、「『大韓民国は完全に終わった』韓国の出生率に驚いた米国大学者」と題する記事を掲載した。

     

    「大韓民国は完全に終わった。これほど低い数値の出生率は聞いたことがない」。カリフォルニア大学法科大学院名誉教授であるジョアン・ウィリアムズ氏が韓国の合計特殊出生率を聞いて示した反応だ。生涯を女性と労働、階級問題の研究に捧げてきた世界屈指の大学者ウィリアムズ氏は、最近韓国教育放送公社(EBS)の『ドキュメンタリーK-人口大企画超低出生』の制作スタッフから昨年の韓国の合計特殊出生率が0.78人だったことを聞いて、頭を抱えながらこのように話した。

    (1)「今年3月に韓国統計庁が発表した資料「2022年韓国の社会指標」によると、昨年の韓国の合計特殊出生率は0.78人で、前年比0.03人減少して1970年の統計作成開始以降、歴代最低値を更新した。韓国の合計特殊出生率は世界最低だ。2020年基準で経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の合計特殊出生率の平均は1.59人だった。当時も韓国は0.84人で最下位だった。韓国以外の残りの37カ国はすべて1人台以上だった。1位イスラエル(2.90人)、2位メキシコ(2.08人)は2人台を記録している。昨年は格差がさらに広がっている可能性がある。高齢化が急速に進んでいる日本は2021年基準の合計特殊出生率は1.30人で韓国より高い」

     

    韓国は、中国と並んで日本以上の「男尊女卑」社会である。育児は、女性の仕事という認識が極めて強い。ある統計では、欧米とアジアを比較して、これが顕著な差として浮かび上がっている。日中韓で女子の高等教育が進んでいる一方で、変わらない男尊女卑の慣行が存在すれば、女性が結婚・出産を忌避するのは当然であろう。前近代的文化と指摘される理由はここにある。

     

    (2)「このような理由で、韓国が「人口消滅国家第1号」になるという見通しまで登場した。これを警告した著名な人口学者でオックスフォード大学名誉教授のデービッド・コールマン氏は今年5月に訪韓して「人口減少は世界的な現象だが、東アジアで目立つ」とし「このままいけば韓国は2750年に国家が消滅する危険があり、日本は3000年までに日本人がいなくなる危険がある」と明らかにした」

     

    合計特殊出生率が、際限なく低下することはありえない。AI(人工知能)などによる、業務軽減が、労働時間を劇的に引下げて、「残業」は昔話になる時期が近い。在宅勤務が広く普及すれば、「家庭」の素晴らしさは再認識される。欧米のようなゆとり社会への憧れが強まるはずだ。

     

    (3)「コールマン氏は、17年前の2006年国連人口フォーラムで韓国の少子化現象が持続すれば韓国が地球上からなくなる「人口消滅国家」第1号になるだろうと展望し、当時「コリアシンドローム」という用語を作った世界的な大学者だ。しかし合計特殊出生率は当時1.13人から昨年0.78人に落ちて少子化状況はさらに深刻化した。コールマン氏は韓国をはじめ東アジアで出生率が低い理由として、過去から始まった前近代的な社会・文化と急速な経済発展の乖離、過度な業務負担と教育環境などを挙げた」

     

    韓国は、国内で改革を行う場合でも左右両派が激しく対立する。結論が出ないのだ。こうした政治要因も、韓国の低出産率に影響を与えている。

     

    (4)「コールマン氏は、「経済が急速に発展して女性の教育・社会進出は拡大しているが、家事労働の負担は加重される家父長制と家族中心主義は続いている」とし「教育格差は縮小したが、賃金格差は依然として大きく存在し、過度な業務文化や入試過熱など教育環境も出生率が低い背景」と説明した。続いて「これに伴い、女性にとって結婚は魅力的ではなくなった」とし「反面、行政システムと政策は非婚者を考慮しないでいる」と指摘した」

     

    低出産率は、韓国の儒教倫理が招いた側面もある。20~30代では、性差別をめぐって激しい対立がある。韓国社会には、「妥協」という言葉はなさそうだ。あくまでも自説を主張する。子供じみた点が見られる。「大人の対応」はゼロだ。

     

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    中国からの団体旅行再開で23日、第1陣が日本へ到着した。これから、どれだけの人たちが来日するか興味深いが、従来のような「爆買い」は中国国内の経済悪化もあって期待薄であろう。ただ、リピーターの訪日であろうから、「コト消費」(体験消費)という質的に一段高い需要が増えるとの見方もある。 

    中国政府が、「福島処理水放出」絶対反対の声を強めている。その中で、中国訪日観光客にどのような影響が出るかも注目点である。リピーターであるから、「知日派」であることは間違いない。中国政府の悪宣伝に乗せられれば、訪日観光客数が伸び悩むことになろう。今回は、そのバロメーターになる。 

    『ロイター』(8月24日付)は、「爆買いは過去の話か、中国団体旅行解禁『コト消費』に商機」と題する記事を掲載した。 

    中国人団体旅行の解禁により、日本の観光業界ではコロナ禍で落ち込んだインバウンド消費の回復が期待されている。だが、コロナ流行前と今では状況が違う。歴史的な円安は追い風だが、中国景気は減速。原発処理水の海洋放出の影響も不透明だ。団体客数は以前ほど戻らず「爆買い」も起こりにくいとの声もある。中国人の消費行動がそもそも変化しているとみて新たな商機を探る企業も出ている。

     

    (1)「『新鮮な食べ物、まだ食べたことのない日本料理が一番楽しみです』。日本への団体旅行解禁後、全日本空輸(ANA)を利用した初のツアーの一行が23日夜、羽田空港に到着。ツアー参加者の1人、今回で5回目の来日という10代の徐梓暢(シュー・ジーチャン)さんはこう話す。撮影や文化体験のできる浅草などを巡る4泊5日の旅で、人気バスケットボール漫画「スラムダンク」で登場した鎌倉市の江ノ島電鉄の踏切も訪問場所に含まれている」 

    若者の訪日は、リピーターである。「コト消費」が目的だ。こういう「知日派」であれば、「福島問題」は無縁となろう。 

    (2)「小売りの現場でも需要を取り込むため、さまざまな対応策を模索中だ。三越伊勢丹ホールディングスでは、三越銀座店で昨年6月から、伊勢丹新宿店で昨年10月から免税カウンターを増強。広報によると、同社では「今後はモノ消費からサービス体験型のコト消費に移る」とみている。「これまでは化粧品を単品で何十個も買っていたが、これからはブースに座ってゆっくり時間をかけて肌診断などを受けた上で自分に最適な商品を買う」といった日本人と同じ体験に需要があるとみてサービスや接客を強化する」 

    小売り現場でも、コト消費に期待している。日本人と同じ体験に需要があるとみる。

     

    (3)「日本政府は、訪日外国人観光客数の目標として2025年にコロナ禍前(19年の3188万人)水準超え、消費額5兆円(同4.8兆円)の早期達成を掲げる。観光庁の高橋一郎長官は21日の会見で、大型連休となる10月の国慶節に「中国人団体旅行客が本格化すると想定している」と話し、単月の訪日客数は「年内にはコロナ前の水準に戻ることも視野に入れている」と述べた。だが、団体旅行の解禁効果には慎重な見方が多い。経済不安が広がっており、どこまで旅行消費にお金を回せるのか見通せない」 

    中国の国慶節である10月の大型連休に、どれだけの訪日観光客が来るか。これが、今後を占うことになろう。 

    (4)「中国の7月の経済統計は、不動産や消費など大半の指標が市場予想を下回り、前月より悪化・低下、景気減速が鮮明となった。ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは、雇用・所得環境の悪化で「中国の消費者マインドはかつてないほど冷え込み、貯蓄意欲が高まる一方だ」と説明。中国政府が大幅な景気浮揚を意図した景気対策を実施するとは考えにくく、中国人訪日客数が早期に19年水準に回復する可能性は小さいと予想する。株価低迷で資産効果も小さく、「円安により消費単価は高水準となりそうだが、15年のような爆買いブームが再現する可能性は低い」とみる」 

    中国経済の不調から、中国人訪日観光客が19年水準に回復する可能性は小さいとしている。これは、従来になかった要因である。ましてや、爆買い期待は無理であろう。

     

    (5)「24日の東京電力福島第1原発処理水の海洋放出の影響も読みにくい。四川省成都市で個人旅行代理店を経営するアリス・シュウ氏は、海洋放出の受け止めには「個人差がある」とした上で、「人々の旅行の熱意が下がるかどうかはわからない」として様子を見たいと述べた。一方、オンライン旅行会社トリップドットコム・グループは海洋放出にはコメントしなかったが、同社のデータによると、8月10日の団体旅行解禁から17日までの1週間で日本への団体旅行商品の予約は前月比90%近く増加国慶節に出発する予約は前月比5倍以上に増加した」 

    「国慶節に出発する予約は、前月比5倍以上の増加」としている。9月よりも急増しているという意味であろう。ただ、その9月の予約数が不明であるから、10月出発の「実像」を掴めない。

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    中国で始まった鳴り物入りのEV(電気自動車)競争は、「初物人気」が終わって、次の本格的な競争が始まるまで「小休止」に入る。中国は今、本格普及時代にどれだけの企業が生き残れるか注目されている。本来のクルマづくりの実力が問われる分岐点にさしかかった。 

    この際、業界分析に必要な知識は「キャズム理論」である。新製品が、市場に本格普及するために越えなければならない溝だ。中国EVは現在、この溝に阻まれている。これまでの「独走」が、今後も続く保証がないという分岐点に来ているのだ。 

    トヨタがEVで、全固体電池をひっさげて27年までに登場するが、まさにこの「キャズム理論」通りのビジネス仕法で先発組を追い抜く体制を固めている。トヨタは、セオリー通りの「戦い方」である。

     

    『Merkmal』(8月23日付)は、「覚醒する中国人消費者、自国NEVは前途多難も 自動車『本来の価値』に気づき始めたという脅威」と題する記事を掲載した。筆者は、大庭徹(技術開発コンサルタント)氏だ。 

    2023年、50万円の電気自動車(EV。プラグインハイブリッド車(PHEV)とバッテリー電気自動車(BEV)の総称)として話題になった「宏光MINI」の販売激減など、EVをめぐるさまざまな変化が起きており、特に世界最大の中国市場は混迷を極めている。中国における新エネルギー車(NEV。定義はEVと同じ)の今後を、最新状況を踏まえて予測する。 

    (1)「中国の自動車販売台数は、2017年の約2888万台をピークに、コロナや半導体不足の影響で一時的に落ち込んだ。2022年には2686万台まで回復し、2023年前半は前年同期比8.%増となったものの、伸び率は鈍化している。2023年のNEV普及率は、人口1000万人以上の大都市では40%近いのに対し、人口50万人以下の町では20%と大きな差がある。地方都市は大都市に比べて補助金の財源が少なく、年収の差、充電インフラや販売店の少なさも普及率を下げる要因となっている 

    EVの普及率は大都市が50%程度、50万人以下の都市では20%と差が出ている。補助金政策の差でもある。

     

    (2)「コンサルタント会社のオートモビリティは、「中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台」と見積もっている。これは、2022年の米国販売台数1423万台のほぼ70%に相当する。さらに、BEV用のバッテリーパックも過剰生産されている。主要産業の発展戦略を策定する中国の国家発展改革委員会は、生産能力の過剰を懸念しており、NEV工場の新設承認には慎重な姿勢を示している」 

    EVでも過剰生産能力が問題になっている。当局は、EV工場新設に慎重である。 

    (3)「トヨタ、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズなど、中国市場への依存度が高い企業は中国市場から撤退するのか、加速するのか、彼らは決断を迫られている。VWはシャオペンと提携し、トヨタは中国第一汽車集団、広州汽車集団(GAC)、BYDの3社との合弁で中国でのNEV開発を強化する。一方、三菱は撤退を検討し始め、日産も撤退の危機にある。2019年には約500社あった新興NEV企業は現在100社程度に減少しており、しかもBYDとテスラがNEV市場の約半分を占めている。将来的に中国の自動車企業は5社程度に減るという見方もある」 

    海外の既存大手自動車企業は、今後の戦略について選択を迫られている。三菱は撤退を検討し始め、日産も撤退の危機にあるという。2019年には約500社あった新興NEV企業は現在、100社程度にまで減少してきた。将来的には、5社程度に絞られるという。

     

    (4)「中国の2023年上半期のBEVの普及率は、20.%(欧州は12.%)に達した。ただ、優遇政策による押し上げを考慮すると現在は、(マーケッティング理論である『キャズム理論』によれば)普及率16%までの「初期市場」から「主流期」への過渡期に入った段階と見られ、消費者の価値観の変化に対応した開発・販売戦略の見直しが必要になる米調査会社J.D.パワーは6月に実施した調査で、「開発期間の短縮と複雑な技術への適応不足」によるNEV関連の不具合の増加と、「顧客の価値観と品質管理にもっと注意を払う必要がある」と指摘している。中国の消費者もまた、「車本来の価値」の重要性に気づき始めている」 

    このパラグラフは、世界のEV市場を予測する上でも極めて重要だ。「キャズム理論」によれば、普及率が16%で「初期市場」と規定しており、この段階で消費者による企業選別が行われる。これが、「キャズム」(深い溝)とされる。現状は、この段階である。ここを通過すると、「主流期」という黄金期を迎える。 


    消費者は、「初期市場」で「新しさ」を求めるが、「主流期」では「安定」を購買条件にするという。この初期市場から主流期までの「キャズム」が、5年程度必要としている。トヨタが、27年までに全固体電池を武器にEVへ本格参入するのは、極めて理論通りの戦略であることが分る。トヨタの戦略は見事と言うほかない。 

    (5)「自動車コンサルティング会社のJSCオートモーティブは、「消費者の関心は、自動運転などの先進装備やつながる車から、安全性や性能、耐久性に向かう。今後5年間が勝負だ」と述べている」 

    EVも自動車である以上、安全性や性能、耐久性が問われる。今後5年間が勝負とされている。トヨタには、その勝負の時間が残されている。

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