勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年09月

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    「貧すれば鈍す」である。ホテルには、国慶節大型連休の旅行客目当てにして、長期にわたる国内不況を一挙に取り戻すべく、宿泊代を数倍も上げる「暴利ホテル」が出現している。しかも、予約済みの宿泊客に対して、こういう仕打ちをするというのだから、中国社会がいかに貧しくなっているかを示している。 

    東方新報』(9月29日付)は、「中秋節・国慶節の8連休、旅行客を襲うホテル代の高騰」と題する記事を掲載した。 

    今年中国では中秋節の祝日が新暦9月29日の金曜日に当たり、10月1日の日曜日から始まる国慶節休暇と合わせ8連休のゴールデンウイークとなる。旅行に出かける人が多い中で、旅行者がまず打撃を受けるのは宿泊先の驚くほどの価格高騰だ。

     

    (1)「大手SNSのプラットフォームを開くと、連休中におけるホテル代の急騰への嘆きであふれている。「連休で洛陽市に行こうと思ったら、ホテル代が5倍に値上がりして、これでは公園のベンチで寝るしかないね」「9月27日分までは200元(約4079円)台だったホテル代が、翌日から1600元(約3万2639円)以上に値上がりした。わずか一晩の宿泊費が毎月の家賃より高いなんて、もう家で寝ている方がましだ」、と不満が渦巻いている」 

    ホテル側が、「山賊行為」を働いている。モラルの一片もない振舞だ。予約客に対して当日宿泊のキャンセルや値上げを迫るというのは異常だ。習近平氏が、南シナ海は中国領海と一方的に宣言して実力行使する構図と瓜二つだ。中華民族は、こういう身勝手なことを平気でやれる精神構造なのだろう。 

    (2)「9月11日までの時点で全国の航空券の予約状況の国内トップ3は、上海市、北京市、成都市だった。オンライン予約サイトで検索した連休中における前門地区のホテルの価格は、13日時点で軒並み大幅に値上がりしていた。「ザペニンシュラ北京」の例では、デラックスダブルベッドタイプの部屋が、通常は2630元(約5万3650円)のところ、国慶節期間中は3738元(約7万6253円)まで値上がりしていた。上海ディズニーランドも安定した人気を誇る観光地だが、オンライン予約サイトで「上海ディズニーランドホテル」のデラックスガーデンビューツインの部屋が、17日の宿泊分では2482元(約5万631円)なのに対し、連休期間は5634元(約11万4931円)と2倍以上の値上がりとなっている」 

    北京の名門ホテルでは、4割増しの料金である。上海ディズニーランドは、通常宿泊代の2倍以上に引き上げている。日本でも「土曜の宿泊」や「大晦日と元日」は特別料金だが、2倍にはなるまい。ともかく、「ぼったくり精神」は旺盛である。

     

    (3)「このような状況下で、宿泊費の数倍の値上がり以外に、かねて問題視されていた「ホテルや民宿側からの一方的な予約取り消し」という現象がまた目立つようになってきた。ネットユーザーの書き込みを見ると、「メンテナンス中」「空室無し」「すでに先約あり」「価格システム未更新」など取り消しの理由説明はマチマチだ」 

    予約が成立しながら、ホテル側が一方的に予約を取消し、高値の代金を要求する。これは、中国社会の品位を下げるだけだ。 

    (4)「上海に暮らす吉さん(仮名)は、国慶節連休で山東省沂水県の旅館を7泊予約していたが、「部屋がありません」という理由で取り消しを要求された。ところが、吉さんが予約プラットフォームを見てみると、その旅館にはまだ部屋が残っている上に、宿泊料が大幅に上がっていた。プラットフォーム側の説明では「部屋はまだあるが、国慶節の宿泊費高騰で旅館側が契約を履行したがらない。最初の1泊分の宿泊費を賠償するなどの提案を言ってきている」という。吉さんはプラットフォーム側と何度も交渉を重ね、領収書に基づいて全額400元(約8159元)余りの補償を勝ち取ったが、これでも問題の解決にはならない。付近の宿泊施設の部屋代は、もはや7泊で1500元(約3万599円)以上になっているのだ。結局のところ客が損をすることになる」 

    日本は、こういう「ノンモラル」の人たちとビジネスをしなければならない。「約束を守る」という社会的な仕来りがないのだ。

     

    (5)「連休中の旅行関連の市場価格の規律保持に関する通達は、安徽省、青島市、福州市でも公布されている。福州市では関連5部門の連名文書を出し、「ホテル・宿泊施設の経営者は、予約プラットフォームなどを通した予約注文の成立後に、勝手な契約破棄や料金値上げを行ってはならない」と警告している」 

    何か、日本の戦後の混乱した「闇市場」での取引のような感じだ。中国の地方政府は、暴利を貪るホテルに警告を発しているが、恥ずかしい話である。この中国が、これまで世界覇権を狙っていたというのだから、「二度ビックリ」である。

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    習近平国家主席が就任以来、中国は一帯一路事業と戦狼外交を同時に行い、国威発揚へのテコにしている。だが、中国と国境を接する14カ国と関係は悪化している。一帯一路プロジェクトも相手国を債務漬けにしたり、杜撰工事によって中国への信頼を失わせている。「攻めの中国」に大きなアキレス腱が見え始めているのだ。

     

    『朝鮮日報』(9月29日付)は、「一帯一路10年、国境を接する14カ国とは悪化の一途をたどる中国」と題する記事を掲載した。

     

    「一帯一路(陸と海のシルクロード)」を通して周辺地域への影響力拡大を狙っている中国だが、肝心の隣接諸国とは対立を引き起こし、事業に狂いが生じている。英誌「エコノミスト」は最近、「隣国と一層緊密に結び付こうとする習近平国家主席の努力は計画通りに進んでいない」とし「中国の欠陥ある外交が、この課題をますます難しいものにしている」と報じた。

     

    (1)「中国の陸の国境は、総延長2万2800キロに達し、国境を接する国の数だけでも14に上る。フィリピン・マレーシア・ブルネイなどは南シナ海を挟んで中国と向き合っている。これらの国々は10年前、一帯一路事業の初期の攻略地だったが、多くの地域で一帯一路はきしみを上げ、一部の国では外交関係まで行き詰まった。ネパールの場合、中国が当初約束したインフラ建設事業の大部分が、きちんと終了しなかった。中国の支援で作られたポカラ国際空港では、今年初めに68人が命を落とす旅客機墜落事故が発生し、手抜き工事の可能性が浮上した。当初は中国の民営会社が担当して造ることになっていた水力発電所事業も、足踏み状態が続き、ネパール政府が「われわれが自ら作る」と立場を変えた」

     

    中国は、敬虔な仏教國であるネパールの信頼を損ね、水力発電所をネパール自身が建設するとまで言わせている。「小国」ネパールゆえに、「大国」中国は侮った振舞をしたのであろう。ネパールは、仏教開祖である釈迦の出身地である。

     

    (2)「ネパール側は、中国の提示した金融支援が、開発途上国に対して先進国の一般的に提供する寄付や信用提供方式ではなく、高金利の信用融資にすぎないという点に不満を持っているという。実際、建設には必ず中国製の設備を用いなければならず、これに伴って中国の労働者が大挙国内に流入することが自国経済にとって役に立たないという判断もあった-と分析されている」

     

    ネパールは、中国の提示した金融支援が高金利であることに根本的な不満と疑念を持つっている。中国に食い物にされるという疑惑を深めたのだ。

     

    (3)「実際、中国の高金利融資は経済基盤の弱い事業参加国の財政状況を悪化させた。AP通信は最近、一帯一路事業に関連して最も多くの対中負債を抱える12カ国を分析したところ、この中には一帯一路の核心事業地域であるパキスタンとラオスも含まれていた。これらの国は融資の利子を支払うために外貨が枯渇し、遂にはデフォルト(債務不履行)の危機に陥った。急激な資本と人員の投入が経済成長につながらず、地下経済に流れ込むという副作用も発生した。エコノミスト誌は、「ラオス、ミャンマー、フィリピンでは、いずれもギャンブル事業に伴って中国資本や労働者が大挙流入し、犯罪が増加した」と指摘した」

     

    中国は、自己資金を融資するように振る舞っているが、世界金融市場から借りた資金の又貸しである。だから、貸付金利は年利5%とIMFの2倍をふっかけている、ネパールは、こういう中国のカラクリを知ってしまったのだ。

     

    (4)「このように、中国の一帯一路事業がきちんとした成果を出せずにいることを受け、中国発の投資に対する不信も深まっている。シンガポールの国際研究機関「ISEAS-ユソフ・イサーク研究所」が最近実施したアンケート調査によると、東南アジア6カ国(ミャンマー・ラオス・ベトナム・マレーシア・ブルネイ・フィリピン)の国民の間で、中国に対する信頼が大幅に低下していることが判明した。しかも、こうした不信は習近平体制になってから一層深まった、という分析もある。中国は、日本・インド・フィリピン・ベトナムなどと領土もしくは領海を巡って対立を引き起こしている。習近平体制において、こうした対立は一層激化する様相を見せている」

     

    習氏は、秦の始皇帝張りに周辺国を威嚇して統御しようとしているが、現代で通用するはずもない。これからは、自らが蒔いた種で苦しむことになろう。

    テイカカズラ

       

    中国恒大集団は、これまで理財商品の元利金返済が滞ってきた。過去2年間、返済を求める女性は、何十回となく警察に調査を求めたが動きをみせなかった。だが、今月になって風向きが変わったのだ。女性は、警察当局から申し立てを受理されたという通知を受け取った。これが、中国恒大集団会長許家印氏の逮捕であった。

     

    警察は、2年間も被害届けを処理せずにいたにも関わらず、突然の会長逮捕に至ったのは、社会不安が高まっていることへの「ガス抜き」でもあろう。だが、9~10月という住宅販売の書き入れ時に起ったこの逮捕劇は、中国不動産業界へ「メガトン級」の爆弾投下に等しい衝撃を与える。不動産業界のイメージが回復不可能なほどの打撃を受け、住宅販売へ水を差すことだ。業界は最悪の事態である。警察は、もっと早く調査に掛るべきであった。

     

    『ブルームバーグ』(9月29日付)は、「中国警察監視下の恒大会長、当局の怒り招いたのは市民への不払いか」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産開発大手、中国恒大集団の資金繰り難で外国人投資家が逃げ出し、金融市場が動揺、何千ものサプライヤーは窮地に陥った。しかし、当局が我慢ならなかったのは資産運用商品に資金を投じた市民への支払いを同社が怠ったことだったようだ。

     

    (1)「恒大のドル建て債デフォルト(債務不履行)から2年近くを経て、同社を創業した許家印会長は犯罪に関与した疑いで警察の監視下に置かれた。ただ、その犯罪が何かは特定されていない。グループ内の資産運用事業従業員も拘束されている。地元メディアは、かつて同社の資産運用部門を運営していた許氏の息子ピーター・シュ氏も身柄を拘束されたと報じた。恒大は8月末、資産運用部門は個人顧客が資金を預けた「理財商品」に関係する支払いができなかったと発表。その後、警察が動いた」

     

    「理財商品」は、ノンバンクの信託銀行が販売している。信託銀行商品は、リスクを購入者が負うシステムであるから、購入者は元利金の未返済の場合、泣き寝入りを余儀なくされる。こういう法的な限界を超えて、恒大集団会長逮捕になった。このケースは、他の理財商品の未返済にも適用されよう。となれば、理財商品の未返済企業はいずれも「逮捕」という影がちらつこう。

     

    (2)「恒大は他の多くの中国デベロッパーと同様、他の資金調達手段を通じた資金集めが厳しくなると、個人投資家に高利回りの理財商品を販売し運営資金の足しにしていた。中国共産党の習近平総書記(国家主席)は社会不安を回避するとともに、「共同富裕」(共に豊かになる)運動の推進を望んでおり、今回の拘束は、外債保有者といった他の利害関係者よりも市民の不安解消を優先する政府の方針と一致している。また、負債を抱えた他のデベロッパーに対し、集合住宅の完成と消費者への支払いを重視するよう求めるシグナルにもなっている

     

    マンションの「青田売り」によって、いまだに住宅を竣工できない企業は、中国恒大集団の会長と同様に「逮捕」という事態も想定されるという。

     

    (3)「オックスフォード大学で中国政治を研究するラナ・ミッター教授は、「不動産セクターが成長の原動力になりそうもない今、よく知られた不動産王は政治的に効果的なターゲットになる」と指摘。「共産党は反社会的な企業行動には罰則を与えるということを示したいと考えている」と語った。恒大の資産運用部門が2年前に資金繰り悪化で理財商品約400億元(約8200億円)の支払いを滞った際には抗議デモが起きた。チャオさんはそうした投資家の一人だ。過去2年間、彼女は返済を待っていた。何十回となく警察に調査を求めたが動きはなかった」

     

    警察がここで逮捕へ動き出した理由は、民間で起った問題は民間で解決させるという意思を鮮明にしたことだ。財政資金は一銭も使わないという意思表示でもあろう。

     

    (4)「驚いたことに、広東省深圳市の警察と関係当局は個人投資家数万人からの相談に対応するため、9月29日からの大型連休中も働くという。安全上の理由で名字だけを公開する条件で取材に応じたチャオさんは、「ほとんど気が狂いそうだった」と2年間を振り返りながら、この情報をすぐに拡散したことを明らかにした。シャドーバンキング(影の銀行)や理財商品に関する規制を以前から強化していた中国当局は9月、世帯の保護を目的に違法な資金調達を取り締まるキャンペーンを開始した。新設された国家金融監督管理総局のトップに5月に就任した李雲沢氏は9月の講演で、消費者の権利と利益を守るため多くの重大事案に対処すると表明した」

     

    警察は、個人投資家で理財商品を購入して未返済の人たちから苦情を聞くという。新設された国家金融監督管理総局は、「消費者の権利と利益を守るため多くの重大事案に対処する」という。多くの理財商品を発行して資金繰りをつけてきた不動産開発企業にとっては、「逃げ得」は許されない事態になってきた。

     

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    韓国で9月15日、大邱市で客を乗せたEV(電気自動車)タクシーが、時速190km近いスピードで暴走し、信号待ちの車に激突する事故があった。タクシー運転手と乗客の男性が頭や肋骨に大けがを負うなど、7人がけがをすする大事故になった。

     

    暴走したタクシーの運転手は、「最初に車と衝突した後に突然車が暴走した」「ブレーキが利かなくなった」などと話しているという。事故当時のドライブレコーダーの映像を見ると、時速50キロメートルで正常に走行していたタクシーは、衝突直後に急に速度を上げ始めている。加速36秒で車の速度は、時速188キロメートルに達した。映像で、車の速度が上がるとタクシー運転手は慌てた様子で「うわあ」「大変なことになった」と何度も叫び続けた。乗客が運転手に向かって「ブレーキを踏んで」「エンジンを切って」と急いで言うと、タクシー運転手は何をやってもまともに作動しないと答えるなど緊迫した雰囲気になった。『朝鮮日報』(9月28日付)が報じた。

     

    『レコードチャイナ』(9月29日付)は、「『大変だ、電源も切れない』 韓国でまたEV急加速事故 衝撃の映像に韓国ネット『欠陥認めて』」と題する記事を掲載した。

     

    今年に入り、韓国ではEVが急加速する事故が相次いで発生している。韓国警察は、事故当時の車の速度やアクセルペダルの変位量、ブレーキペダルの操作有無などについて詳しく調べる方針だという。

     

    (1)「韓国のネットユーザーからは、「EVには絶対に乗らないと決めている」「後ろの車がEVタクシーだと不安になる」「この事故もまた『運転技術未熟者』で済まされてしまうのだろうか」「こんなにも急加速事故が相次いでいるのだから、メーカーはそろそろ車の欠陥であることを認めてほしい」「加速し始めてから激突するまでかなり時間があり、運転手はあの手この手を使って車を止めようとしている。これは意図しない急加速事故に決まっている。証人までいるのだから今回は認めざるを得ないだろう」「車の欠陥でないことをメーカーが証明するように、早く法律を変えてほしい。なぜ個人が欠陥を証明しなければならないのか理解できない」などの声が上がっている」

     

    韓国でEVを製造しているのは、現代自と起亜の二社である。今回の暴走EVタクシーの事件は、メーカーからリコール申請が出るべきだが、沈黙したままである。だが、前記の二社は米国ではエンジン車で330万台のリコール申請を行っている。韓国では頬被りしながら、自動車事故には厳しい米国ではリコール申請と使い分けしている感じも否めない。

     

    『レコードチャイナ』(9月29日付)は、「発火の恐れ、韓国車ヒョンデとキア 米国で330万台をリコールー韓国ネットからは不満続出」と題する記事を掲載した。

     

    韓国・聯合ニュース(9月27日付)によると、現代自動車(ヒョンデ)と起亜自動車(キア)が米国でそれぞれ約160万台、約170万台をリコールすると、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が27日(現地時間)に発表した。

     

    (2)「記事によると、起亜自動車側は「車両の油圧式電子制御装置(HECU)がショートを起こす恐れがあり、これにより駐車中や走行中にエンジン部品から発火する可能性がある」と説明した。現代自動車側は「アンチロックブレーキシステム(ABS)モジュールのブレーキ液漏れによりショートが起きる可能性があり、これがエンジン部品からの発火につながる恐れがある」と説明した。両社は油圧式電子制御装置やアンチロックブレーキシステムの交換などを行い、問題を解決する方針だという」

     

    現代自と起亜は、同一資本系列である。技術的にも同じだ。米国では、両社合計で330万台のリコールを申請した。米国の罰則は厳しいので、「危ない」とみればすぐにリコールを申請している。

     

    (3)「この記事を見た韓国のネットユーザーからは「なぜ米国だけでリコールする?」「韓国の消費者には『自分で欠陥を証明せよ』と言うのにね」「米国の消費者の前では何も言えない弱虫企業なのに、韓国の消費者のことはカモ扱い」「韓国内の車も大々的なリコールを実施するべきだ」「韓国で車を売って稼いだお金を全て米国に貢いでいる」「それよりも韓国内での急加速事故問題をどうにかしてほしい」など、韓国内との対応の差に不満を示す声が多数寄せられている」

     

    現代自は、米国で21年にEV8万2000台をリコールした。そのコストは、1兆ウォン(約1000億円)と過去最大規模に達した事例もある。今回のEVタクシーの暴走事故について、会社側から何らかの説明があってしかるべき、と消費者は不満を募らせている。

     

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    中国は、9月で「一帯一路」プロジェクトを始めて10年になる。中国が、大幅な経常黒字を出した2010年代前半、一挙に貸出活動を拡大した。当時は、中国に世界覇権を握れるという幻想に現実味があったこともあり、チャイナマネーは影響力をもった。 

    10年間で9620億ドルもの融資を行った。だが、金利は商業ベースの年利5%と国際金融ではあり得ない「暴利」であった。この結果、23カ国が債務危機に陥るという負の副産物を生んでいる。 

    日本のODA(政府開発援助)は、0%台で相手国が返済しやすい条件を設定している。中国は、これと全く逆で相手国が返済できないことを見込んで貸し付け、返済不能になれば担保を取り立てるという国際高利貸しまがいの振舞をしてきた。スリランカは、その犠牲になった國の一つである。 

    『朝鮮日報』(9月29日付)は、「借款で運営権奪った中国『一帯一路』10年、23カ国が破綻危機」と題する記事を掲載した。 

    中国の習近平国家主席が進める世界的な経済・軍事領土拡張事業である「一帯一路(陸と海のシルクロード)」が97日で10周年を迎えた。中国は一帯一路を次の段階に拡大するため、「一帯一路国際協力首脳フォーラム」を10月17日に北京で開くなど大々的な広報戦略を繰り広げている。ロシアのプーチン大統領をはじめ、約30カ国の首脳が参加する予定だ。

     

    (1)「中国は2010年、日本を抜き世界2位の経済大国に浮上。それから3年後に一帯一路を宣言し、「パックス・アメリカーナ(米国による平和)」に挑戦状をたたきつけた。習主席の就任から6カ月後の電撃的な発表だった。それから10年間、一帯一路で参加国は152カ国に増えた。上海復旦大学グリーン金融開発センターの報告書によると、一帯一路に関連する中国の累計投資額(22年現在)は9620億ドルに達した。中国は一帯一路関連の借款に国際通貨基金(IMF)による借款の約2倍となる年5%の金利を適用する。米グローバル開発センター(CGD)によると、一帯一路参加国のうち23カ国が中国に対する高金利債務の償還負担で破綻の危機に直面した」 

    中国は、一帯一路で累計投資額(22年現在)が9620億ドルにも上がっている。これは、全額自己資金を貸し付けたものでなく、借入金を「又貸し」しているので金利を5%も取っている理由だ。最近は、返済が滞っているので中国の支払い金利が急増して、経常収支を圧迫している。もはや、従来のような一帯一路事業の継続は不可能になった。 

    (2)「1980年代、中南米に対外債務危機が迫ると、米国はIMF、世界銀行などをテコに新自由主義政策を強制移植した。メキシコ、チリ、アルゼンチンなどは強制的な民営化と市場開放の過程で二極化と雇用不安、エネルギー供給難などの副作用をまともに経験し国力が衰えた。そうした例を見た開発途上国が「内政不干渉」をスローガンに掲げる一帯一路の中国資金を歓迎した形だ。独裁と腐敗がはびこるアフリカ諸国も同じ理由で一帯一路に積極的に合流した。アフリカにおける一帯一路参加国は、全55カ国のうち37カ国に上る。中国初の海外軍事基地はアフリカ東部のジブチ(17年)に建設された。ニューヨークタイムズは「21年時点で中国の海外への借款規模はIMFの60%に達する」とし、「国際社会における米国の『最後の貸し手』の地位を中国が脅かしている」と評価した」 

    中国経済の現状を見れば、下線部のように中国が「最後の貸し手」という世界の中央銀行まがいの振舞は不可能である。中国は、体裁を整えながら一帯一路事業から手を抜くであろう。その理由が、最後のパラグラフにある「高い品格の一帯一路建設を模索する準備ができている」という強弁だ。逃げ腰になっている。

     

    (3)「一帯一路10年の光と影は交錯している。ザンビアは中国の国有銀行から66億ドルを借りたが返済できず、20年に債務不履行(デフォルト)を迎えた。スリランカは債務を償還できず、ハンバントタ港の権益の80%を17年に中国に強制的に譲渡させられた。中国は「明代の鄭和がアフリカ東部まで進出した」という歴史的根拠まで挙げ、アフリカ進出の拠点として取り込んだジブチの対外債務は中国による資金投入の初期(16年)には国内総生産(GDP)の約50%だったが、2年後には85%に上昇し、財政危機に追い込まれた。70%は中国からの借金だった。バイデン米大統領は今年7月、一帯一路を「貸し剥がし事業」と批判した」 

    西側諸国(G7)は、「インド・中東・欧州」を結ぶ開発構想を先のG20サミット(インド)で調印した。一帯一路事業を上回る規模となる見込みだ。海上と陸上(鉄道)を結び、通信網や水素輸送管を併設するという。一帯一路事業の比ではない。

     

    (4)「一帯一路の明暗が分かれる中、中国指導部は10周年を機に一帯一路を次の段階に引き上げる計画だ。中国の王毅外相は9月1日、「我々は新たな出発点で高い品格の一帯一路建設を模索する準備ができている」と表明した。中国の次の目標は、一帯一路を通じて得た国際的影響力を自国の利権のために使うことだ。開発途上国のスポークスマンを自任して国際社会で声を高め(米外交専門誌「ディプロマット」)、各国に軍事基地と普及拠点を確保しながら(米民主主義防衛財団)、交通網とサプライチェーンを新たに構築し、米国に対抗するものとみられる」 

    中国は、一帯一路事業から撤退できないので規模を縮小する。対外融資や援助が、ピーク時の水準まで戻らないので、中国の国際的影響力の低下は避けられない。大盤振る舞いは、不可能になっている。

     

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