勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年09月

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    韓国は、7月の主要経済指標が軒並み落ち込んだ。生産・消費・投資が一斉に減ったのだ。これら3指標が揃って減少する「トリプル減」は、今年1月に続き半年ぶりである。中国経済が低迷した影響で、半導体などの在庫率が大きく膨らみ、消費は降雨日数が多くて減ったことが主因と分析されている。 

    韓国経済は、これまで中国の経済成長に「随伴」して伸びてきたというのが実態だ。その中国経済は、不動産バブル崩壊による急減速に見舞われている。韓国の対中輸出が、マイナスになるのは当然としても、韓国はこういう事態の起ることを想定していなかったのだ。

     

    『中央日報』(8月31日付)は、「韓国、7月の産業活動トリプル減 生産0.7%、消費3.2%、投資8.9%」と題する記事を掲載した。

    (1)「韓国統計庁が、8月31日に発表した7月産業活動動向によると、7月の全産業生産指数(農林漁業除外)は前月より0.7%減少した。全産業生産の設備投資は、前月より8.9%減った。2012年3月から11年4カ月ぶりの下げ幅を記録した。消費動向を示す小売り販売額指数は3.2%減った。これは、2020年7月から3年ぶりの減少幅だ」 

    生産は一進一退を続けているが、設備投資と消費が不調である。設備投資は、11年4カ月ぶりの落込み。小売り販売額は、3年ぶりの減少幅である。生産がジグザグ状況を続けていることから、設備投資に迷いが生じている。同時に、個人消費も先行き展望難から落ち込んでいる。このように、韓国経済は気迷い状況になっている。

     

    『中央日報』(8月28日付)は、「中国経済がくしゃみ、韓国は風邪ひくか」と題するコラムを掲載した。筆者は、ルイーズ・ルー/オックスフォード・エコノミクス エコノミストである。 

    (1)「中国経済が構造的沈滞に陥っている状況で政策担当者が景気サイクルの底をつかむのは難しいことだ。観測通は最近、北京の食い違う政策シグナルが投資心理と世界需要に重い圧力として作用すると懸念する。中国国内の危機が、他の国へ広がる可能性は限定的とみる。ただ、中国不動産開発業者の不渡りは続きそうだ。不動産部門に対する段階的調整過程で、長期的流動性危機に耐える能力がない企業は特に危険だ」 

    不動産開発企業の信用危機が、中国の流動性供給面で厳しくなるので、企業デフォルトは続く。 

    (2)「中国が、くしゃみをすればアジアの国は風邪をひく。特に韓国としては中国の景気鈍化の懸念から始まった金融リスク増大で相当な波及効果に襲われる可能性がある。中国の厳しい状況は人民元急落に明確に現れる。特別な事情がなければ、人民元急落は世界的に金融状況を悪化させ、域内の「リスクプレミアム」(リスク資産と無リスク資産の収益率差)を高める」 

    中国経済の苦境は、人民元急落リスクを高めている。韓国ウォンは、この影響を受けやすい。仮にウォン急落場面があるとしても、日米韓三カ国の財政相会談で救済策が練られるであろう。この経験によって、韓国は三カ国提携強化の有り難みを知ることになろう。

     

    (3)「対ドルのウォン相場は、韓国の成長率が鈍化し市場リスクが高まる時に下落したりした。中国の景気が、萎縮し金融リスクが高まるほどこうした危険性は大きくなる。ウォン・ドル相場が過去韓国の消費者物価に大きな影響を及ぼした点を考慮するならば、すでに高い水準である韓国のコアインフレ(食料品とエネルギーを除いた物価上昇率)はさらに長く高止まりしかねない。これは世界の成長鈍化を迎え韓国銀行の政策対応を複雑にさせる」 

    人民元相場が荒れる事態になれば、ウォン相場もこれに巻き込まれるリスクが高くなる。要警戒である。 

    (4)「消費者心理が、世界的に楽観的だった「良い時代」の間、韓国経済は輸出と高い技術力で強力な長期需要にともなう利益を享受した。韓国の強みだった。しかし選択材(必須材の反対)の需要が減る「厳しい時代」にはその反対の現象が起きる。韓国銀行は、10~12月期から基準金利を下げると予想される。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を据え置く可能性が高い状況で、韓米の金利差がさらに広がるとみられ、ウォンが下がる公算が大きい」 

    韓国の強みである選択財=中間財の需要が、これから減少する気配である。これは、輸出相手国が、国産化を進めて輸入代替するからだ。中国が現在、これを強力に進めているので、ウォン相場は不安定になろう。米韓金利差が拡大すれば、ウォン相場は下落しよう。要するに、韓国ウォンは米中双方から大きな影響を受けやすい状態になろう。

     

    (5)「韓国を困らせるものがまだある。韓国は、主要市場である米国と中国の間で挟まれた不便な状態だ。これまでは韓国が、双方の需要条件の変化を最大限活用できた。中国は、サムスン電子とSKハイニックスが生産する半導体の最大の市場だ。これに対し、韓国の自動車メーカーは米国のインフレ抑制法体制で米政府が与える巨大補助金を狙っている。韓国の大企業は北京とワシントン双方の国家安全保障と産業議題で重要な役割をする。このため韓国の産業の運命は景気変動と関係なく2つの強大国の間の地政学的変化と緊密に絡むものと予想される」 

    韓国輸出では、半導体が中国向け。自動車は、米国向けと大別される。韓国の二大輸出品が、米中双方に分かれていることで、地政学的な対応が困難になろう。




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    韓国左派は、科学的根拠を無視して福島処理水放出へ反対運動を行ってきた。かつての「狂牛病騒動」の再現を狙って政府を窮地に追込もうとする「政治運動」であることは明白だ。それだけに、国民の側にも「二度は騙されない」と身構える人たちが増えている。

     

    左派の組織的悪宣伝にもかかわらず、「ソウルでも水産物の消費に大きな影響はない」と8月30日放送のTV朝鮮「ニュース9」が伝えた。それによると、「先週末に鷺梁津水産市場を訪れた車の台数は通常よりも多く、スーパーマーケットの水産物売り上げも増加しました」というのだ。

     

    韓国最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が8月31日、就任1周年で「民主主義の破壊を防ぐ最後の手段として、今日から無期限ハンガーストライキを始める」と宣言した。このハンストの目的には、福島処理水放出に反対も含まれている。国会議席の過半を占める「共に民主党」代表がハンストへ突入することで、国民の関心を呼ぼうという戦術である。政治的に追込まれていることを雄弁に物語っている。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月1日付)は、「被害拡大しているのに「汚染処理水」に名称変更とは」と題する社説を掲載した。

     

    韓国政府と与党「国民の力」は、福島第一原発から放出されている「汚染水」の名称を「汚染処理水」に変更することを検討するという。政府与党が汚染水の名称変更を公式化したのだ。

     

    (1)「ハン・ドクス首相は30日の国会答弁で「ALPS(多核種除去設備)を経ているので『処理された汚染水』が科学的に正しい表現」だとし「用語の変更を検討する」と語った。国民の力の「韓国の海を守る検証タスクフォース(TF)」の委員長を務めるソン・イルチョン議員はすでに5月から「汚染処理水が正しい」という意見を表明している。日本は汚染水を薄めて流しているというのが理由だ。国際原子力機関(IAEA)と日本政府もそのような理由で「処理水」または「汚染処理水」と書いている。汚染水という用語が水産物忌避心理を過度に刺激する面があるのなら、水産業従事者への被害の拡大を防ぐために名称変更もありうるだろう」

     

    左派が、現在の「汚染水」という露骨な表現を改めて、「処理水」または「汚染処理水」に変更することに賛成している。状況変化が、しだいに左派に不利になってきたことに気づき始めたのであろう。

     

    (2)「物事には順序というものがある。日本の一方的で無責任な放出によって、韓国国民の被害が本格的にあらわれている。水産物の消費減少で販路が断たれたことで生計を脅かされる国民が増えているが、放出はいつ終わるとも知れない。だとすれば、今からでも日本政府にさらなる安全対策を打ち出すよう求めることこそ正しい。だが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこれまで、水産業界の被害は「フェイクニュースと虚偽扇動」のせいだとし、野党とメディアにばかり矛先を向けてきた。これほど被害を受けても一言も言えないとは、いったい日本政府にいかなる弱みを握られているのか」

     

    下線部は、明らかに「フェイクニュース」である。冒頭に挙げたように、海産物スーパーへの来客が増え、売上高増加が見られるのだ。左派は、かつて「狂牛病騒ぎ」を引き起こした張本人である。その反省もなく今度は、「福島汚染水」で国民を騒がせ、来年の総選挙を有利にさせようという狙いが透けて見える。左派は、紛れもなく「狼少年」である。

     

    (3)「政府はこの日、800億ウォン(約88億2000万円)の予備費を緊急投入する被害救済対策を打ち出した。来年度予算には560億ウォン(約61億7000万円)の水産物に対する放射能検査予算が新たに策定された。放出期間は30年を超える。「日本政府が及ぼした被害に、なぜ韓国国民の税金を、いつまで使わねばならないのか」という批判は避けられない」

     

    韓国政府は、福島問題で海水検査の費用を計上している。もともとは、左派が政治目的で始めた国民への恐怖心を取り除くためのコストである。責任は、左派の悪宣伝にある。主客を間違えてはならない。

     

    (4)「イ・グァンソプ大統領室国政企画首席は8月30日の国会答弁で、国際機関への提訴について「笑いものになるだろう」と述べた。事実関係は別として、このように大統領室は不安がる国民をあざ笑うような発言をためらわない。むしろ日本が汚染水を放出して1週間もたたないうちに、韓国政府が率先して日本政府のように「汚染処理水」への名称変更を急げば、それこそ笑いものになるだろう。国民たちの不安は大統領が水産市場を訪れてパフォーマンスを行い、「汚染水」の名を変えたからといって解消されはしない。大統領が日本を代弁するばかりで、国民を守ってくれるという確信が持てないからだ」


    国際機関への提訴は、文政権時代も検討して「勝訴の見込みなし」という結論を出した経緯がある。左派は、それを承知で政府を困らせるために持ち出しているのだ。この間の事情は、『ハンギョレ新聞』自身が熟知しているはずだ。いつまでも左派の宣伝機関に止まる言説を続けていれば、読者の支持を失うだろう。

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    中国の不動産開発大手、碧桂園の債権者グループが人民元建て債のデフォルト(債務不履行)宣言を求めていることが分った。碧桂園は流動性で窮地に立っており、中国の金融市場全体を揺るがしかねない局面になっている。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月31日、碧桂園を再び格下げした。格付けは、「Caa1」から「Ca」への変更だ。格付け見通しは引き続き「ネガティブ(弱含み)」で、さらなる格付け引き下げを示唆している。 

    格付けCaaは、「信用リスクが極めて高い債務に対する格付け」とされる。これが、Caへ格下げされた。「非常に投機的であり、デフォルトに陥っているか、それに近い状態である。一定の元利回収の見込みはある」という判断だ。さらに、Cへの格下げも示唆されている。これは、「最も低い格付け。デフォルトに陥っており、元利回収見込みが極めて薄い債務に対する格付け」である。最下等の格付けである。

    碧桂園債権者にとっては、「一定の元利回収の見込みのある」最後の段階でデフォルトに持ち込んだ方が、少しでも回収できる最後の機会と見ているのであろう。碧桂園がデフォルトになれば、地価はさらに下落する。現状よりも3割の値下がりになれば、不動産開発会社主要11社のすべてが、「債務超過」に落ち込むという試算が出てきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月31日付)は、「中国不動産に債務超過リスク 開発用地3割評価減なら」と題する記事を掲載した。 

    中国の不動産開発会社に債務超過リスクが浮上している。主要11社の6月末の開発用不動産(開発用地)は約6兆3500億元(約130兆円)にのぼる。単純計算ではこの評価額がおよそ3割下落すれば現在の資本は枯渇し、債務超過に転落する。 

    (1)「開発用不動産は、将来の住宅開発のために仕入れた土地使用権や建設途中のマンションなどを指す。不動産開発会社は、入札や相対取引で開発用地を仕入れ、建設会社に建設を発注する。引き渡しまで物件を自社のバランスシート(貸借対照表)上に保有するため、住宅価格の下落局面では評価減のリスクにさらされる。主要11社の6月末のバランスシートは資産総額が約12兆3300億元に対し、負債総額が約10兆3400億元。差し引き約1兆9900億元が資本となっている。総資産のおよそ半分を占める開発用不動産の評価が、仮に32%下がれば資本不足で債務超過に転落する計算だ」 

    開発用不動産が、総資産のおよそ半分を占めるという異常な「土地偏重」の資産構成に驚かされる。これは、地価が万年値上がりしていたので、こういう歪な構成になったのであろう。中国経済の縮図を見るような思いだ。この歯車が、逆回転を始めた。慌てふためく様子が目に浮かぶようである。

     

    (2)「主要11社が保有する開発用不動産は、経営再建中の恒大が最多で1兆859億元にのぼる。恒大は2021年12月期に3736億元、22年12月期に16億元、23年16月期に21億元と連続して評価損を計上した。これが2年半で計6149億元という巨額の最終赤字の主因となり、6月末に6442億元の債務超過となった。不動産最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は6月末時点で2544億元の資産超過だった。ただ開発用不動産は8436億元と資本の3倍を超えており、リスクをはらむ」 

    経営再建中の恒大は、監査法人から厳しい意見が付されているはずだから、毎決算期に土地の評価損を計上してきた。これが、巨額赤字の主因となり6月末に6442億元の債務超過を招いた。碧桂園も、これから同じ道を歩む。土地評価損の計上によって、6月末時点で2544億元の資産超過も食いつぶされる。となれば、債権者は早い段階でデフォルトに持ち込み、債務超過にならないうちに資金回収したい気持ちになるのだろう。

     

    (3)「16月期決算は、恒大と碧桂園の2社が最終赤字、深圳市地鉄集団が筆頭株主の万科企業や上海市政府系の緑地控股など4社が減益、軍系国有企業の保利発展控股集団など5社が増益と分かれた。ただ、資産をどう評価するかは経営陣と監査法人の裁量が大きい。16月期は、恒大以外が目立った評価減を計上しなかった」 

    主要11社中、恒大以外は目立った土地評価減を計上しなかった。恒大だけが土地評価減を計上して、他社が計上しないのは不自然である。いずれ他社も、多額の評価減を計上しよう。 

    (4)「今後の資金繰りが厳しさを増せば、販売上位の有力不動産会社でも建設代金未払いによる開発プロジェクトの「ゾンビ化」が起きかねない。碧桂園は、決算資料に債務不履行(デフォルト)リスクを明記。万科の祝九勝総裁は「借入金を膨らませて大量の土地を買う従来のやり方は持続不可能だ」と話す。中国政府は政策金利の引き下げや住宅購入規制の緩和などで住宅市場の活性化を目指している。消費者は、将来の引き渡し不能を恐れて未完成物件の購入をためらうようになっており、政策効果は限られている」 

    万科のトップは今後、借入金で大量の土地購入が不可能としている。地方政府の歳入には、貴重な土地売却収入が入らないことを意味する。これは、財源難をもたらすので大変な事態だ。不動産バブル崩壊で、中国経済が「逆回転」する段階へ入った。

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    中国政府は、福島処理水放出に反対と独りで拳を高く上げている。これが、せっかく再開された中国からの訪日観光客にどのような影響が出るのか。一部では、予約の取り消しも報じられている。だが、中国訪日観光客の大半はリピーターである。日本が、好きで好きでたまらないという人たちだ。過去の例を見ても、ショックは一時的であってすぐに回復している。この事実から、「福島ショック」を超えて中国人訪日観光客は日本の土を踏むであろうというレポートが出た。

     

    『ブルームバーグ』(8月31日付)は、中国人訪日客に影響あっても長期化せずかー処理水放出」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する日本の決定は、中国国内で反発を招いた。中国人団体客の増加とそれに伴う成長押し上げが期待されているが、今やそれは望み薄なのだろうか。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の見解は「ノー」だ。短期的には、風評被害で一部が訪日を取りやめるかもしれない。そのインパクトは、感知するにはあまりにも小さいものとなるだろう。たとえかなりの影響があるものとなっても、過去の事例からは長期化はしないと想定される」

     

    過去の東日本大震災や尖閣諸島国有化の大ショックに比べれば、福島問題の影響は小さいという。その裏には、中国人訪日観光客が日本の高い「文明」へ憧れを持っていることだ。リピーターが多いのは、その証明であろう。

     

    (2)「4~6月(第2四半期)の実質GDP(国内総生産)の大きな伸びを唯一主導したのは輸出だった。中国政府が日本行きの団体旅行を解禁し、訪日外国人客(インバウンド)の回復が景気回復の持続を支えるだろう。処理水の海洋放出に対する中国国内の反発が日本への旅行にどう影響するか、正確に予測するのは困難だ。インパクトは取るに足りないというのがBEの基本的な見解だ。中国人の対日感情が悪化した過去の出来事を見ると、かなりのインパクトがあっても、長続きしなかったことがうかがわれる」

     

    日本観光の持つ魅力は、韓国人もそうだが中国人にも抜群の高さである。日本が、世界一の観光ランクに輝いていることがその証明である。安全・快適という条件が、日本観光の世界的位置を押し上げている。

     

    (3)「2011年3月の福島第一原発事故を受け、インバウンドが急減したのは当然と考えられるが、3四半期後には事故前の水準に回復した。日本が沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)の購入を閣議決定し、日中間の緊張が高まった12年にも同様のパターンが見られ、直後の四半期には中国からの訪日客は前年同期比37.4%減となったが、1年後には回復した。処理水放出の影響が深刻化しないと想定した場合、中国政府による日本行き団体旅行解禁は、日本の成長に確実に寄与すると考えられる

     

    中国政府の福島処理水放出反対は、完全な政治的動きである。日本へのリピーターは、中国政府「まやかし発言」を見抜くであろう。

     

    (4)「中国人団体客が戻ってくることで23年7~9月(第3四半期)のGDP伸び率は前期比年率0.2ポイント、10~12月(第4四半期)は同0.1ポイントそれぞれ押し上げられるとBEは推計。23年通年のGDP伸び率は1.8%と予想され、そのうち0.1ポイントは中国人団体客のインバウンド消費が寄与すると推計される。日本経済の潜在成長率が0.5%前後に過ぎない点を踏まえると、この寄与度はかなり大きい」

     

    日本の7~9月期GDPは、全体の外国人観光客の寄与で年率0.2%が見込めるという。日本も成熟経済になって、インバウンド消費が重要な要素になってきた。

     

    (5)「4~6月期の実質GDP速報値は前期比年率6.0%増となったが、7~9月期は低調な輸出を背景に同2.3%減とBEは予想する。中国政府による団体旅行解禁がなければ、もっと大きな落ち込みとなっていただろう。処理水放出決定の影響がどうなるかは、まだ評価するには早いのは明らかだ。仮にそれが大きなものとなれば、BEの成長見通しは下振れのリスクがある。ただ、過去の事例を考慮すると、それもやがて過ぎ去ることになるだろう」

     

    日本の4~6月期GDPは年率6%と予想外の高い成長率になった。この反動もあって、7~9月期はマイナス成長が不可避である。ただ、そのマイナス幅はインバウンド消費が幾分でもカバーする。

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    不動産開発業者の碧桂園は、デフォルト(債務不履行)不安で中国の金融市場を動揺させている。1~6月(上期)に、過去最大の赤字9800億円を計上しただけに、デフォルト回避に向け重大な試練に直面している。中国政府も、資産調査に着手したとのニュースも流れているほどだ。デフォルトの場合の影響が、極めて大きいからだ。

     

    『ブルームバーグ』(8月31日付)は、「碧桂園、デフォルト回避で重大局面ー償還延長と利払い予断許さず」と題する記事を掲載した。

     

    事情に詳しい複数の関係者によれば、碧桂園は9月4日に実質的な償還期限を迎える未払い元本39億元(約782億円)の人民元建て社債について、2026年まで償還を延長し、分割返済に同意するよう債権者に求めている。

     

    (1)「債券保有者は40日(暦日)の猶予期間を設定する提案に関する投票も行う。碧桂園が30日発表した上期の純損益は過去最大の489億元(約9780億円)の赤字となった。今月初めにはドル建て社債2本2250万ドル(約32億8500万円)相当の利払いを履行できず、苦境が深まった。デフォルトを回避するには、ドル建て社債についても来週終了する猶予期間内に利払いを行う必要がある」

     

    碧桂園は8月30日提出文書で、業績が今後も悪化し続けた場合、債務返済が不可能になり得るとし、「これはデフォルト状態につながる可能性がある」と説明。「重要な不確実性」により継続企業の前提維持に強い疑念が生じる可能性もあるとした。この警告は、中国の不動産危機が碧桂園にいかに大きな打撃を与えたかを如実に示した。同社は、競合する中国恒大集団の4倍の不動産プロジェクトを抱えており、デフォルトの場合は恒大集団よりも深刻な事態になる可能性が指摘されている。

     

    同社は、上期の売上高が前年同期比39%増加したものの、不動産の販売件数減少や価格低下、開発中の物件の減損損失拡大などにより赤字が膨らんだとし、「グループの流動性は売上高と資金調達の双方がタイトになったことから、かつてなく圧迫されている」と提出文書で説明している。ここまで苦境を訴えているのは、中国不動産開発企業に共通していることであろう。

     

    (2)「ブルームバーグ・ニュースが上海証券取引所の非公開の情報開示プラットフォームで確認したところでは、碧桂園の提案は、元本の50%以上を保有する債権者らの同意を必要とする。債券保有者の投票は当初8月25日に終了予定だったが、一部の保有者が人民元建て社債の実質的な償還期限である9月4日に全額返済を要求したことを受け、8月31日まで期間を延長した。31日の香港株式市場では、巨額の赤字が予告されていたこともあって、上期決算は材料視されず、碧桂園の株価は一時7.95%上昇した。現地時間午前11時半(日本時間午後0時半)すぎには前日終値比1.1%高で取引された」

     

    下線部のように、一部債券保有者の意向通りになればデフォルトを示唆しているとみられる。そういう最悪事態にならぬように協力を求めているのであろう。ただこの先、展望があるのかどうかだ。再建できなければ、傷が深くならないうちにデフォルトという選択も出てくる。デフォルトになれば、恒大集団の4倍ものプロジェクトが破綻する。大変な事態になろう。

     

    (3)「JPモルガン・セキュリティーズ・アジアの中国不動産株調査責任者カール・チャン氏は「デフォルトが正式に認定されてもされなくても、碧桂園はもはや成長できないだろう。継続企業としての能力に疑問がある」と指摘する。一方、モルガン・スタンレー・アジアのアナリスト、スティーブン・チャン氏は「デフォルト回避は、数週間中に当局から追加の資金支援があるかどうかにかかっているが、実現の可能性は低下している」との認識を示した」

     

    碧桂園の経営モデルは、住宅と教育を両立させる特異のものであった。中国の高い教育熱を利用して、住宅購入者に優秀な私立学校入学「特典」を与えるものだった。中国政府は、こういう教育をビジネスに利用する事態を禁止することにしたので、碧桂園はただの不動産開発企業に堕する羽目になった。こうなると、再建のチャンスは極めて小さくなるのだ。

     

    【中国、「激震」不動産大手・碧桂園デフォルトの場合、恒大より4倍のプロジェクト抱え「影響甚大」】の続きを読む

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