韓国は、7月の主要経済指標が軒並み落ち込んだ。生産・消費・投資が一斉に減ったのだ。これら3指標が揃って減少する「トリプル減」は、今年1月に続き半年ぶりである。中国経済が低迷した影響で、半導体などの在庫率が大きく膨らみ、消費は降雨日数が多くて減ったことが主因と分析されている。
韓国経済は、これまで中国の経済成長に「随伴」して伸びてきたというのが実態だ。その中国経済は、不動産バブル崩壊による急減速に見舞われている。韓国の対中輸出が、マイナスになるのは当然としても、韓国はこういう事態の起ることを想定していなかったのだ。
『中央日報』(8月31日付)は、「韓国、7月の産業活動トリプル減 生産0.7%、消費3.2%、投資8.9%」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国統計庁が、8月31日に発表した7月産業活動動向によると、7月の全産業生産指数(農林漁業除外)は前月より0.7%減少した。全産業生産の設備投資は、前月より8.9%減った。2012年3月から11年4カ月ぶりの下げ幅を記録した。消費動向を示す小売り販売額指数は3.2%減った。これは、2020年7月から3年ぶりの減少幅だ」
生産は一進一退を続けているが、設備投資と消費が不調である。設備投資は、11年4カ月ぶりの落込み。小売り販売額は、3年ぶりの減少幅である。生産がジグザグ状況を続けていることから、設備投資に迷いが生じている。同時に、個人消費も先行き展望難から落ち込んでいる。このように、韓国経済は気迷い状況になっている。
『中央日報』(8月28日付)は、「中国経済がくしゃみ、韓国は風邪ひくか」と題するコラムを掲載した。筆者は、ルイーズ・ルー/オックスフォード・エコノミクス エコノミストである。
(1)「中国経済が構造的沈滞に陥っている状況で政策担当者が景気サイクルの底をつかむのは難しいことだ。観測通は最近、北京の食い違う政策シグナルが投資心理と世界需要に重い圧力として作用すると懸念する。中国国内の危機が、他の国へ広がる可能性は限定的とみる。ただ、中国不動産開発業者の不渡りは続きそうだ。不動産部門に対する段階的調整過程で、長期的流動性危機に耐える能力がない企業は特に危険だ」
不動産開発企業の信用危機が、中国の流動性供給面で厳しくなるので、企業デフォルトは続く。
(2)「中国が、くしゃみをすればアジアの国は風邪をひく。特に韓国としては中国の景気鈍化の懸念から始まった金融リスク増大で相当な波及効果に襲われる可能性がある。中国の厳しい状況は人民元急落に明確に現れる。特別な事情がなければ、人民元急落は世界的に金融状況を悪化させ、域内の「リスクプレミアム」(リスク資産と無リスク資産の収益率差)を高める」
中国経済の苦境は、人民元急落リスクを高めている。韓国ウォンは、この影響を受けやすい。仮にウォン急落場面があるとしても、日米韓三カ国の財政相会談で救済策が練られるであろう。この経験によって、韓国は三カ国提携強化の有り難みを知ることになろう。
(3)「対ドルのウォン相場は、韓国の成長率が鈍化し市場リスクが高まる時に下落したりした。中国の景気が、萎縮し金融リスクが高まるほどこうした危険性は大きくなる。ウォン・ドル相場が過去韓国の消費者物価に大きな影響を及ぼした点を考慮するならば、すでに高い水準である韓国のコアインフレ(食料品とエネルギーを除いた物価上昇率)はさらに長く高止まりしかねない。これは世界の成長鈍化を迎え韓国銀行の政策対応を複雑にさせる」
人民元相場が荒れる事態になれば、ウォン相場もこれに巻き込まれるリスクが高くなる。要警戒である。
(4)「消費者心理が、世界的に楽観的だった「良い時代」の間、韓国経済は輸出と高い技術力で強力な長期需要にともなう利益を享受した。韓国の強みだった。しかし選択材(必須材の反対)の需要が減る「厳しい時代」にはその反対の現象が起きる。韓国銀行は、10~12月期から基準金利を下げると予想される。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を据え置く可能性が高い状況で、韓米の金利差がさらに広がるとみられ、ウォンが下がる公算が大きい」
韓国の強みである選択財=中間財の需要が、これから減少する気配である。これは、輸出相手国が、国産化を進めて輸入代替するからだ。中国が現在、これを強力に進めているので、ウォン相場は不安定になろう。米韓金利差が拡大すれば、ウォン相場は下落しよう。要するに、韓国ウォンは米中双方から大きな影響を受けやすい状態になろう。
(5)「韓国を困らせるものがまだある。韓国は、主要市場である米国と中国の間で挟まれた不便な状態だ。これまでは韓国が、双方の需要条件の変化を最大限活用できた。中国は、サムスン電子とSKハイニックスが生産する半導体の最大の市場だ。これに対し、韓国の自動車メーカーは米国のインフレ抑制法体制で米政府が与える巨大補助金を狙っている。韓国の大企業は北京とワシントン双方の国家安全保障と産業議題で重要な役割をする。このため韓国の産業の運命は景気変動と関係なく2つの強大国の間の地政学的変化と緊密に絡むものと予想される」
韓国輸出では、半導体が中国向け。自動車は、米国向けと大別される。韓国の二大輸出品が、米中双方に分かれていることで、地政学的な対応が困難になろう。




