勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年09月

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    中国の不動産バブル崩壊が、中国経済に大きな影響を与える。これを踏まえ、中国の歩む先については「日本化」とか「ソ連化」とか、いろいろの形容詞がつけられている。今回は、「日本化」は悪い例でなく中国の歩むべき「見本」である、という見解が出てきたので取り上げる。 

    『ニューズウイーク 日本語版』(9月27日付)は、「日本は不況の前例ではなく、経済成長の手本 中国が『日本と違う』これだけの理由」と題する記事を掲載した。筆者は、経済学者の練乙錚(リアン・イーゼン)氏である。 

    中国経済の不調を伝えるニュースが続くなか、多くの識者は中国が1980年代後半から日本を悩ませてきたのと同じ「好況・停滞・低迷」の道をたどっているとみている。だが、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンの見方は違う。「日本は警戒すべき前例ではなく、手本と言っていい」と彼は主張する。

     

    (1)「日本は1991年以降、「失われた」30年を送ったが、その間も労働年齢人口の1人当たり実質GDPはアメリカとほぼ同じペースで推移し、45%の成長を遂げた。深刻な高齢化に直面し、人口が2008年をピークに減少に転じた先進経済にとっては容易なことではない。日本の事例で評価すべきなのは、2014年以降は若い世代も含めた労働者のほぼ完全雇用を維持しながら、この成長を達成したことだ。世界最大の債務国でありながら財政が比較的安定し、デモや暴動などの社会不安がほとんどないことも注目に値する」 

    日本は、2008年に人口がピークをつけその後、減少する中で経済成長を続けてきた。しかも、完全雇用を実現させて社会も安定している。

    (2)「一方の中国は、職探しをしていないため統計に表れないケースを含めると、若者の失業率が50%近くに達しているともみられる。しかも超成長期でさえ、年間数万件のデモや暴動が発生していた。中国が日本に似ているとは言えないだろう。だが日本との比較がほとんど役に立たないなら、国際社会が中国に提案している強力な刺激策や個人消費の促進といった対処法は、あまり意味を成さないことになる。そもそも中国の習近平国家主席は、国民の消費増を望んでいない。消費行動への補助金を嫌っていることで知られる習は、先日も若者に「苦労は買ってでもしろ」と促した」 

    中国経済は、すでに若者の失業率が実質的に50%を超えるという混乱状態である。需要不足から起った事態だが、財政は大赤字で景気を刺激する余力も失っている。習氏は、若い頃の自分の経験から若者に対して「苦労は買ってでもしろ」と言い出すほど。無策の極致だ。そうする以外に方法がない。

     

    (3)「2008年の世界金融危機の後、中国は4兆元という世界最大規模の刺激策で成長を一時的に安定させたが、後に再び減速した。しかもその後に残されたのは、浪費と汚職が蔓延する経済と多額の債務だった。「経路依存性」という社会科学の言葉がある。人や組織は過去の経緯や歴史に縛られがちだ(つまり「歴史がものをいう」)という意味だが、そう考えれば中国はさらに悪い状態に陥るだろう。なぜか」 

    「経路依存性」とは、過去の歴史が将来を決めるという実証主義的分析である。米英独の資本主義経済発展が、プロテスタントによるとの分析論文が、ノーベル経済学賞に輝いている。日本の武士道が、プロテスタントに近似しているとして、日本の経済発展論が注目されたことがある。中国の儒教は、経済発展思想と無縁の存在である。 

    (4)「2008年の刺激策では中国政府が補助金や投資、融資をハイペースで提供し、国民がそれを奪い合うような騒ぎが全国に広まった。中国の国民はその後10年、苦労せずに多額の資金を手にすることばかり考える「パラサイト(寄生虫)」と化した。刺激策が国民を甘やかした結果は、投資効率の低下としてデータに表れている。今の中国では、同じ生産高を生み出すのに必要な投資額が20年前の約2倍に達している。刺激策が「パラサイト」を生んだ一方、資本はその効力を失っているのだ」 

    中国経済は、農村の都市化で住宅が必要という事情を背景にして、不動産バブルを引き起こして急成長を遂げた。技術と資本は、先進国からの移転であり、自ら生み出したものではない。まさに、「パラサイト(寄生虫)」化した結果である。「経路依存性」に従えば、中国には難局打開の能力が存在しない。

     

    (5)「同じことは、形こそ違うとはいえ、習を含めた若者たちが「階級闘争」の中で育った毛沢東時代にも起きていた。ここでも歴史を参考にするならば、中国では今後、健全な経済を維持するために必要な人的資本や適切な職業倫理の不足が予想される。今の習には、経済政策について3つの選択肢がある。

    1つ目は自由市場型アプローチ。中国ではこれは縁故資本主義を意味し、習と敵対する派閥が今も力を持っている分野だ。

    2つ目は毛沢東主義的アプローチ。政治的には有効だが、かつて中国を窮地に追い込んだ方法だ。

    3つ目は国家主義。政府が主要産業を独占し、民間部門には厳しい規制や制限を課す。

    習は1つ目の選択肢は受け入れ難く、2つ目を全面的に受け入れるほど愚かでもない。3つ目のやり方を選び、それに固執することになる」 

    3つめの国家資本主義は、マルクス経済学の到達点である。生産力を拡充し国有企業が担い手であれば「万事OK」という思想だ。習氏は、この考えに沿っているので、家計への支援という政策はゼロである。中国経済は、泥沼にあえぐほかない。 


    (6)「クルーグマンは正しい。2023年の中国は1991年の日本とは違う。「中国は(当時の日本より)さらに悪い状態に陥るだろう」と、彼は書いている」 

    クルーグマンは、経路依存性に則った分析でノーベル経済学賞を受賞した。日本と中国は、経済基盤の立脚点が異なるという主張である。日本には可能でも、中国には不可能という判断である。

     

    次の記事もご参考に。

    2023-09-25

    メルマガ501号 「高賃金・高配当」、日本経済再生のカギ 23年度決算は実現できるか

     

    テイカカズラ
       

    米国が懸念するほどの悪化

    警察が法を犯す異常財政へ

    先端研究の後押しも空回り

    隠れ債務2千兆円の恐怖も

     

    中国経済は、危機の渦中にある。個人消費が落ち込んでも、財政面からテコ入れできない事態に追込まれている。土地売却収入が急減しており、地方政府の財政そのものが大赤字であるからだ。金融面では利下げをしたくても、人民元相場がデッドラインの1ドル=7.3元台へ急落するほど不安定である。為替不安に陥れば、虎の子の資金が流出する騒ぎとなりかねない。こうして、財政面と金融面で手足を縛られた状況に追込まれている。財政と金融の両政策が、機能不全に陥っているのだ。舵を失った船同然である。

     

    中国経済が、ここまで事態の悪化を招いたのは2008年以降の経済成長の不健全さにある。負債をテコとする投資主導経済成長に依存したことだ。住宅・設備・インフラの投資をしゃにむに行い、GDPを押し上げてきた。それが、国威発揚に結びつき人民解放軍の装備充実を行わせた。すべては、台湾解放に向けた準備であったのである。今その政策が、破綻したと言うべきであろう。

     

    米国が懸念するほどの悪化

    米国はすでに、中国経済が容易ならざる事態へ直面していることを把握している。米財務省は9月22日、米国と中国との間で経済・金融分野の作業部会を設けると発表した。イエレン米財務長官が7月に訪中した際、中国の何立峰(ハァ・リーファン)副首相と設置で合意していたものだ。

     

    米財務次官アディエモ氏は9月11日、CNNとのインタビューで中国の経済問題が米国よりも近隣諸国に影響を与える可能性が高いと述べていた。中国経済が、 人口動態悪化や過剰債務といった長期的な構造問題に直面していると指摘したのだ。「このような問題への中国の対応は、時間の経過とともにはるかに困難なものになる」とした。これが、そのまま近隣諸国へ大きな影響を及ぼすと世界的な危機をもたらすという認識である。下線部こそ、中国経済の本質的な危機を物語っている。

     

    中国は、米国から経済問題で「心配」される立場になっている。米国が、上から目線で中国経済の危機へ「助言」しようとしていることから、米中の経済対決は終わったとみてよい。その根拠は、前述の下線を付した部分にある。人口動態の悪化(高齢化)と、過剰債務がもたらす「雪だるま式」債務増加である。債務は、返済が遅れれば遅れるほど、金利が金利を生んで身動きできなくなる「ガン」のようなものだ。早く摘出(削減)しなければ、中国経済の寿命を縮める「業病」である。

     

    債務をテコにして経済成長する。こういう安易な「中国式モデル」は、もはや精算すべき段階にあるが、それは容易ならざることでもある。

     

    中国国家統計局の元高官は9月、国内のマンション空室や空き家について、「中国の人口14億人でさえ全てを埋めることは不可能かもしれない」との見方を示した。国家統計局の最新データによると、8月末時点で国内の売れ残り住戸の床面積は、平均的な住宅の広さを90平方メートルと想定した場合、720万戸に相当するという。このほか、2016年以降の住宅投機で買われた未使用住宅が在庫として控えている。一人で、2軒や3軒の住宅を買い込み値上がりを期待してきた投機用住宅である。

     

    国家統計局の元高官発言は、住宅統計について知悉している。だから、「14億人でも埋め切れない住宅在庫」と発言したのであろう。この事実は、住宅販売が「青田売り」であったことが災いしている。住宅が竣工していない段階で、極端なのは設計図の段階で販売契約して頭金と住宅ローンを組ませるという強引な商法である。集めた資金は、さらなる土地購入で地方政府の財政を潤してきた。住宅バブルで、最も利益を得たのは地方政府である。

     

    こういう構図が今や、空中分解しようとしている。地方政府は、住宅不況による土地売却収入の急減で歳入に大きな穴が開いているからだ。土地売却収入のピークは、2021年の8兆7051億元(約157兆円)で、税収の5割に相当した。今年1~7月の土地売却収入は前年比19.1%減の2兆2875億元(約45兆7500億円)である。年率に換算すると、約78兆円になる。21年のピーク時に比べて半減だ。これだけ、地方財政に歳入減が生じる。地方政府が、歳入欠陥でてんてこ舞いしている理由である。

     

    警察が法を犯す異常財政へ

    この穴埋めでは、信じられないことが起っている。国営メディアによると、中国全土の地方警察やその他の法執行機関は、地方政府の財源を潤す方法として、交通違反や営業・安全規則違反、その他の軽犯罪に対して、より高額な罰金を頻繁に科している。

     

    中には、確かな証拠がほとんどないにもかかわらず、地元警察が管轄を越えて容疑者を追うケースもある。弁護士や国営メディアは、不正に得たとされる利益を差し押さえる狙いがあると指摘しているのだ。法の違反を取り締る警察が、法を犯すという事態まで起っている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月18日付)が報じた。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

     

     

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    韓国経済の不況抵抗力が、意外に弱いことが分ってきた。輸出依存度の高さが証明するように、内需による景気推進力に脆弱性を抱えているのだ。これまで、GDP成長率が日本よりも高かったことを理由に成長力を誇ってきたが、それも過去のことになりそうだ。 

    『朝鮮日報』(9月27日付)は、「韓国の企業債務が過去最高を記録 GDPの124% 1998年通貨危機を上回る」と題する記事を掲載した。 

    韓国の企業債務が今年6月末現在で過去最高となる2705兆8000億ウォン(約298億円)を記録した。金額だけではなく、対国内総生産(GDP)比は124.1%となり、1998年の通貨危機当時(108.6%)をはるかに上回り、同様に過去最高を更新した。

     

    (1)「多くの企業は資金を借り入れて投資するのではなく、金利が高い債務を償還しながら持ちこたえている。今年18月の企業破産件数は前年同期比で58.6%急増し、稼いだ利益で利子も返せない「自転車操業」状態になってから7年以上たつ企業が全体の3.6%に達した」 

    韓国企業は、自転車操業的な経営が増えている。こういう状態が7年以上続く企業が3.6%もある。早く整理して、次なる活路を探させるのがベストである。 

    (2)「韓国銀行と国際決済銀行(BIS)によると、6月末現在で韓国の民間債務の対GDP比は、企業債務が124.1%、家計債務が101.7%で、両者を合わせると225.7%を記録した。韓国よりもこの割合が高い国は、世界主要52カ国・地域で6カ国・地域(香港、ルクセンブルク、スイス、スウェーデン、中国、フランス)だけだ(国際比較は3月末現在)。他の主要国はほとんどがコロナを経て、企業債務の対GDP比は低下傾向だ。しかし、韓国は例外だ。コロナ直前の2019年にGDPとほぼ同じ規模(101.3%)だった企業債務は、コロナ期間に757兆ウォン急増。大半が借り入れ(600兆5000億ウォン増)や起債(118兆7000億ウォン増)だった」 

    下線部は、腐食状態の韓国の民間(企業と家計)の実態をさらけ出している。家計債務の対GDP比101.7%は、ワースト・ワンである。ともかく、簡単に借金するという特性を持つ国民である。

     

    (3)「借金をして投資収益を高める適切な負債活用は、企業の成長にプラスとなる。しかし、耐え難いほど多額の借金を背負えば、債務不履行と破産のリスクが高まる。韓国租税財政研究院のホン・ビョンジン副研究委員は、「企業負債の水準が高くなるほど元利償還が難しくなる可能性が高まり、予期できない経済的ショックに弱くなる」と指摘した」 

    下線部の状態は、中国の民間企業とも類似である。野放図に借金して平然としているところが、似通っているのだ。儒教社会特有の「計数管理意識」の欠如を意味している。 

    (4)「企業が借金に耐えられる水準かどうかは、自己資本に占める負債の割合を示す負債比率や流動資産に占める流動負債の割合を示す流動比率を見れば分かる。韓国銀行のイ・ジョンヨン安定分析チーム長は「流動比率が100%を下回る企業が26%前後で大きく増えず、負債比率が200%を超える企業も昨年よりはやや低下した約12%なので、直ちに債務による大きな危機が来る状況ではない」と指摘した」 

    韓国流動比率100%を下回る企業が約26%、負債比率200%以上の企業も約12%である。厳密に言えば、いずれも破綻予備軍である。まさに、「朽ち果てる」という状況だ。

     

    (5)「大幅に上昇した金利が収益性を低下させることが問題だ。昨年末基準で外部監査対象の対象となる企業2万5135社(金融機関除く)のうち、3年連続で営業利益によって利払い費用を賄えない企業が全体の15.5%に達した。直近の5年間で最高だった。また、そういう状況が5年以上続く「長期存続限界企業」も903社に達した。利益で利払いも賄えず7年以上経過した企業が全体の3.6%を占めることを意味する。それ以上耐えられなければ破産しかない。大法院法院行政処によれば、今年18月に全国の裁判所が受理した再生・破産など倒産事件は計13万7484件で前年同期を21.36%上回った。特に企業再生と企業破産がそれぞれ63.8%、58.6%増えた」 

    いわゆる「ゾンビ企業」(営業利益で利払いを賄えない)が、15.5%もある。この状態が7年以上続く企業が3.6%に達している。韓国経済は、内部腐食が進んでいるのだ。 

    (6)「韓銀は、「長期存続限界企業は正常企業に回復する割合が低く、過去には9.9%にとどまった」とし、「不良企業に対する構造調整と金融支援などの政策を展開する場合には、企業の再生可能性も総合的に評価すべきだ」と指摘した。底が抜けたみずがめに水を注いではならないというメッセージだ」 

    長期ゾンビ企業の再生確率は、9.9%にすぎない。早く、整理して楽にさせるべきだ。

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    中国の自動車の業界団体、中国汽車工業協会は9月26日、欧州連合(EU)の中国製電気自動車(EV)の補助金に関する調査について反対の声明を発表した。それによると、「重大な保護主義の行為だ」として調査や規制措置を慎重にするよう求めた。 

    中国は、新エネルギー車輸出の48.1%(2022年)が欧州向けである。それだけに、EUによる政府補助金調査に神経を使っている。中国EVメーカーは、工場建設段階から多額の政府補助金を得てきた。調べられれば必ず「ボロ」が出る。こういう事情であるので、調査させまいとEUへ圧力を掛けている。 

    中国汽車工業協会、中国製EVが欧州でシェアを拡大するなど成長していることについて、同協会は「中国企業が激しい市場競争でイノベーションを続けてきた結果であり、補助金に支えられたものではない」と主張。さらに「サプライチェーン(供給網)も整備し、EUを含む世界の消費者から受け入れられた」などと強調した。

     

    『ブルームバーグ』(9月26日付)は、「テスラの中国製EV EUの補助金調査の標的ー関係者」と題する記事を掲載した。 

    事情に詳しい関係者によると、EUが中国製EVに対する補助金調査を今月発表するに至った証拠収集の過程で、中国の国家補助金の恩恵を受けている公算が大きいと判明した企業の中にテスラも含まれていた。 

    (1)「報道を受けて、米株式市場開始前の時間外取引でテスラ株は一時1.6%安と下落している。EU調査の目的は、中国がテスラのほか、BYDや上海汽車集団(SAICモーター)、蔚来汽車(NIO)などの国内メーカーに補助を提供しているのか、している場合の規模はいくらかを判断し、EU域内のメーカーにとって公平な競争条件を確保するための必要な対抗措置を講じることにある」 

    米国のEVメーカーであるテスラまで、中国政府の補助金を得ていたのかが、焦点になってきた。テスラは、ことあるごとに「正論」を吐いてきただけに、もし補助金を得ていたとすれば、企業イメージは悪化する。

     

    (2)「テスラは、米国外で初の工場となる上海工場を稼働させてから1年足らずの2020年終盤に、同工場で生産したセダン「モデル3」の輸出を開始。翌年7月までに、テスラは主要輸出拠点として上海工場を挙げるようになった。シュミット・オートモーティブ・リサーチによると、テスラは今年1~7月に同工場からの納車台数のおよそ47%に相当する9万3700台を西欧で販売したと見積もられる。中国から欧州に輸出したEVが次に多いメーカーはSAICで、約5万7500台だった。テスラ、BYD、SAICはいずれもコメントを控えた」 

    テスラ、BYD、SAICがコメントを控えているのも「怪しい」ことだ。補助金をもらっていなければ堂々と否定するはず。仮に、補助金を得て輸出していたとすれば、政府も企業も「結託」していたことになろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月25日付)は、「中国自動車大手、欧州でEV生産拡大 補助金批判を回避」と題する記事を掲載した。 

    中国の自動車大手が欧州で現地生産に乗り出すと相次ぎ表明した。欧州連合(EU)は中国製の電気自動車(EV)が域内で台頭していることを警戒。安価な中国製の流入拡大は中国政府による補助金が問題とみて調査を始めた。中国側は地元雇用への貢献を訴えて摩擦を回避する。 

    (3)「EUは9月、中国製EVが価格競争力を持つ裏に、政府の補助金があるとみて調査を始めた。安価な中国製が市場を席巻すれば、欧州メーカーは商機を失い、域内の雇用減につながると懸念する。中国側は補助金と販売価格の相関性を否定する。業界団体幹部の崔東樹氏は「中国政府の(EVを含む)新エネルギー車への補助金は2022年末に終了した」と話す」 

    下線部のように、22年末まで補助金を出していたことを認めている。この発言が突破口になって、過去の補助金実態が掴めるであろう。 

    (4)「欧州経済が減速するなか、欧州委員会は域内の産業振興、雇用確保に目配りする姿勢を鮮明にし始めた。なかでも自動車産業はドイツ・フランスを中心にEU域内で多くの雇用を抱える。これまで有望な進出先だった中国でも、欧州車の販売シェアは19年の23%から23年16月に18%に低下した。欧州の産業競争力や雇用が維持できなければ、各国のポピュリスト政党が勢いづきかねない。特定国への依存を減らす経済安全保障上の狙いもあり、やり玉として中国製EVが挙がった」 

    EUにとっては、自動車産業はメインである。そこへ補助金を背にした中国EVが、土足で上がってくるという事態になれば、EUは絶対に容認できないであろう。

     

    (5)「欧州に広がる警戒感を見据え、中国側は現地生産による雇用創出を打ちだしている。国有自動車大手、上海汽車集団の幹部は9月中旬に「欧州で自動車の組み立て工場の立地の選定作業を始めた」と工場新設計画を明らかにした。中国メディアによると、EV世界大手の比亜迪(BYD)幹部も9月、独ミュンヘンの展示会で「年末までには完成車工場の立地選定作業を終える」と述べた。このほか、長城汽車の幹部はドイツメディアに独やハンガリー、チェコを候補地に工場新設を検討していると話した。奇瑞汽車は英政府と工場建設で協議中だと英メディアが報じた。 

    中国EVは劣勢を察知して、EUでのEV工場建設を臭わせている。独仏は、こういう動きにどう対応するか。初めてEUが、自らの利益を掛けて中国と対峙する場面となった。

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    韓国は、経済の先行きに悲観論が強まっている。米国金利が高止まりする気配が濃厚になっており、韓国の利下げは不可能であるからだ。一部都市銀行では、変動金利型住宅担保融資の最高金利が今年に入って初めて年7%を超えている。8月末には年3.38~6.25%だった混合型住宅担保融資の金利は、9月22日現在で年3.9~6.469%にまで上昇している。こうした高金利に家計は悲鳴を上げている。日本住宅金利は、全期間固定(35年)で、1.580%~1.710%にすぎない。日本は、この面で恵まれている。 

    『中央日報』(9月25日付)は、「低成長、韓国経済のニューノーマルに定着するか」と題する記事を掲載した。 

    低成長が韓国経済の「ニューノーマル」として定着しつつある。韓国の経済成長率は今年も経済協力開発機構(OECD)加盟国平均より低い水準を記録し、3年連続で平均に満たない可能性が提起される。韓国が1996年にOECDに加盟してから初めてのことだ。

    (1)「OECDは19日、今年の韓国経済が前年より1.5%成長するだろうとし、6月に出した見通しをそのまま維持した。米国や日本をはじめとする世界経済成長見通しを上方修正したのと対照的だ。韓国の経済成長率はOECD平均を3年連続で下回る可能性も大きくなっている。2021年のOECD平均成長率は5.8%、韓国は4.3%だった。昨年はOECDが2.9%、韓国が2.6%で、韓国が0.3ポイント低かった。OECD平均の成長見通しは6月には1.4%だったが主要国の景気回復動向を考慮すると11月には見通し上方修正が有力だ。「アジアの4頭の竜」と呼ばれ高い成長率を記録した韓国が、いまでは成長中位圏に固定化される姿だ」 

    韓国は、今年のGDP成長率がOECD平均を3年間連続で下回るとしてショックを受けている。ついこの間まで、「G8入り」と張り切っていただけに青菜に塩という感じである。韓国社会は、喜怒哀楽が激しいのだ。

     

    (2)「2021~2022年の2年連続でOECD平均以下の成長率を記録した国は、韓国のほかラトビア、スイス、チェコ、ドイツ、スロバキア、フィンランド、ルクセンブルク、日本だ。その日本は、今年下半期に入り明確な景気回復傾向を見せている。今年は「平均以下グループ」から脱出するだけでなく、通貨危機後で初めて韓国を上回ると予想される」 

    韓国が、勝手に「ライバル視」している日本のGDP成長率予測は1.8%である。韓国は、日本を下回るとしてショックを広げている。韓国は、急速に高齢化が進んでいるので、GDPで日本を下回ることも不思議でなくなってきた。この現実を認識すべきであろう。 

    (3)「韓国経済は、半導体と対中輸出に依存した限界を見せたという分析が出ている。梨花(イファ)女子大学経済学科のソク・ビョンフン教授は、「半導体という単一品目に依存し輸出と成長が好況を享受したが、反対に半導体サイクルにともなう不況が近づくと反作用も大きく現れている」と話した。見通しもイバラの道だ。当初韓国政府が上半期に景気が鈍化して下半期に回復するという「上低下高」の見通しを提示したのは中国の景気回復への期待のためだ。しかし不動産債務不履行(デフォルト)リスクなど中国経済が振るわず韓国の輸出回復は進んでいない。1~7月の韓国の総輸出額で中国が占める割合は19.6%だ。主力輸出品であるメモリー半導体は対中輸出額の割合が45%に達する。高い中国輸出依存度が回復の足を引っ張る局面だ」

    韓国の輸出構造は、対中国依存で半導体依存という「単線型」である。中国経済は簡単に回復軌道へ復帰できる状況でない以上、新たな道を切り開かなければならない。

     

    (4)「ここに米連邦準備制度理事会(FRB)が、5%台の政策金利を来年下半期まで継続するという見通しを出すなど高金利の長期化も予告された。緊縮が今後も続くことを意味するだけに世界的な需要減少につながる。「強いドル」も長期にわたり持続する見込みだ。高くなったドルで各種原材料価格負担は大きくなり企業の生産費用が増加する。製造業輸出中心の経済構造に打撃がもっと大きくなるほかない。 

    米国の高金利は、短期で終わる可能性はない。来年いっぱいの引締めが続くという見通しも出ている。となると、韓国の高金利も継続となる。 

    (5)「ここに国際原油価格が1バレル=100ドルの再突破を見通せる圏内に置いている。現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は「ひとまず物価が懸念され、原油価格が上がれば全体的に原材料価格上昇にともなう貿易減少に続く恐れがある。韓国のように輸出に大きく依存し通貨政策手段が限定的な国には衝撃がさらに強くなるかもしれない」と話した」 

    原油100ドル説も出ている。韓国の物価はこれに引っ張られる。来年も高金利に悩まされよう。

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