中国は、中央政府自らが1兆元(約20兆5000億円)の国債発行でインフラ投資へ踏み切ると発表した。今夏の水害などの復旧事業に充当するという。だが、これだけの資金をインフラ投資へ向けることの経済効果を計算算しているか、と言えば「ノー」であろう。権力者特有の心理によって、自らの治績を土木工事でみえる形にして表したいのであろう。「万里の長城」建設と同じ志向である。民の生活には一片の配慮もないのだ。
「民への配慮」とは、未完成のマンション建設の完成である。不動産開発企業が、資金不足で途中放棄した工事を完成させ、国民を安心させることだ。習氏は、これを選ばなかった。問題を起こしているのは民営企業であるから、「倒産させればいい」という考えであろう。これは短絡思考すぎる。習氏への支持を失わせる最大要因になろう。民を無視してはいけないのだ。
『フィナンシャル・タイム』(10月23日付)は、「不動産危機を解決できない中国政府、流動性不安消えず」と題する記事を掲載した。
中国の不動産最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は10月18日に猶予期限を迎えた海外債務の利払いができず、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高まっている(注:正式にデフォルトと認定された)。深刻な債務危機にある中国の巨大な不動産市場は再び重大な局面を迎えようとしている。
(1)「碧桂園の資金繰りの悪化は2つの事実を示している。販売不振で中国全土に開発が中断された物件が多数残るなど不動産市場の悪化が続いていることと、数年にわたって世界第2の経済大国を揺るがしている不動産危機に政府がうまく対応できていないことだ。不動産開発業者の混乱が、中国経済にもたらす影響は甚大だ。建設と不動産は中国経済の両輪であり、不動産は関連産業を含めると中国のGDPの25%前後を占める」
中国政府は、一口で言って「無責任」である。従来は、景気刺激策として不動産開発を利用してきたからだ。だが、不動産バブルが手に負えなくなると、その責任を開発業者に押しつけ「悪者」にしている。中国の家計資産は、7~8割が不動産である。それだけに、これから始まる住宅価格の下落は、家計資産の棄捐にむすびつくのだ。それは、個人消費不振となって中国経済へ逆襲するであろう。習氏は、業者へ責任をなすりつけているが、いずれ習氏の政治手腕へ疑問符となって跳ね返るであろう。
(2)「中国の不動産事業者は長年、国内外で債券を発行して資金を確保し、本土での開発事業を進めてきた。マンションは完成前に売却することが多く、得た資金は新たな開発に注ぎ込む。ところが20年に政府が「三条紅線(3つのレッドライン)」を設定して不動産会社に対する銀行の新規融資を制限すると、この資金調達モデルは崩壊した。同年は消費者心理が冷え込んで不動産大手10社のほとんどで売上高が急減し、業界の流動性への懸念はさらに深まった。住宅購入者は、破綻の可能性が低そうな国営の開発会社の物件を選ぶようになっているようだ。政府は昨年11月、軌道修正を図ろうと不動産業界への支援策を発表した。銀行は、碧桂園を含む「良質」とされる企業に新規の融資枠を設けたが、業界の流動性危機は収まっていない」
碧桂園は、政府によって財務内容からみて「優良会社」として太鼓判をおされていた。その碧桂園がデフォルトの事態である。政府は、碧桂園の住宅購入者に「推薦責任」がある。だが、このことには一切、触れないのだ。
(3)「20年に大手とされていたデベロッパー50社のうち、すでに半数以上がデフォルトに陥っている。ブルームバーグによると、中国の不動産会社が抱えるドル建ての債務残高1750億ドルのうち、21年以降1150億ドルがデフォルトになっている。国内の銀行からの借り入れは更に巨額で、再編や借り換えが必要になっている。未完成物件に関する包括的な統計はないが、全体の数は21年より減少したものの今なお過去20年間をほぼ上回る水準にあるようだ。デフォルトに陥っている不動産会社がどこまでこうした物件を完成できるかは疑問だ」
住宅の未完成物件は、依然として高水準である。購入者は、住宅ローンを支払い続けながら、竣工した住宅を受け取れないという事態だ。購入者の中には、抗議の意思を示すべく未完成住宅に住み込んでいる人たちが増えている。
(4)「英調査会社TSロンバードの中国担当チーフエコノミスト、ロリー・グリーン氏は中国の政府関係者は2年前に既に不動産業界の債務を削減する必要性を理解していたようだという。「結果としてうまくいかなかったのは、中国の不動産業界をどう変え、新しいビジネスモデルを作るためにはどうすべきかプランがなかったためだ」と同氏は分析する。「成長モデルを突然変更し、資源を不動産から他の分野に再配分するのは非常に難しい。不動産が家計から地方政府、そして金融システム全体の資産まで大きく左右する場合はなおさらだ」とグリーン氏は語った」
下線部分は重要である。政府は、民間不動産開発企業がデフォルトしてもかまわないという現在の姿勢が、これから中国経済をむしばみ最終的には金融システム動揺へと波及する危険性を持っているのだ。そのことの認識が、習氏には希薄である。





