勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2023年12月

    あじさいのたまご
       

    中国経済は、改革開放政策に転じた1978年以来の経済危機に直面している。『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の推計では、海外勢による23年の中国株の純投資額は8月に2350億元(現在の相場で約4兆7000億円)でピークに達した後、年内に87%減少して307億元へ縮小している。つまり、23年の海外勢の投資額のうち9割が流出するという事態に陥っている。

     

    こういう投資魅力が限りなくゼロへ接近しているなかで、中国が存在感を示せるのは「戦狼外交」しかなくなった。強気発言を繰返して相手国へ威圧感を与えるのだ。これは、中国のイメージを下げるだけで、効果のないことは立証済みである。それでも、存在感を示さなければならないのであろう。

     

    『中央日報』(12月19日付)は、「習近平『闘争精神発揮せよ』、大使招集して『戦狼外交』強調」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席が12月27~28日に北京で5年ぶりに開いた中央外事工作会議で「闘争精神を発揮せよ」と指示したと党機関紙「人民日報」が29日、報じた。習近平第3期(2023~2028年)の中国の外交基調を提示する拡大公館長会議で「闘争」を強調したことを受けて「戦狼(オオカミ戦士)外交」と呼ばれる中国の棘のある外交が続くだろうという見通しが出ている。今回の会議は習主席執権以降、2014年と2018年に続いて3回目の開催だ。

     

    (1)「『人民日報』によると、中国共産党は今回の会議で「過去10年間、中国は対外工作で少なくない大きな風浪をくぐり抜け、困難と挑戦で勝利した」とし「外交戦略の自主性と主導権を顕著に強化した」という自評が出てきた。「国際的影響力、革新的指導力、道徳的呼訴力を備えた責任ある大国になった」とも評価した。あわせて「今後の対外業務の全体計画を樹立した」とし「未来を展望すると中国の発展は新たな戦略的機会の時期を迎え、中国の特色ある強大国外交はさらに役割を発揮(更有作為)できる新たな段階に入った」と評価した」

     

    下線部は、中国の未来を明るいものとして自画自賛しているが、現実は全くの逆である。経済政策では、進退に窮している。中国外交を活発に行うには、経済支援を積極的に行う「実弾」が不可欠である。現実は、その経済力を失っているのだ。だから、口先だけは活発に行えという主旨に読めるのである。

     

    (2)「今回の会議では、「西欧中心の従来の国際秩序を変える」という習主席の意志も強調された。中国共産党は「人類の未来運命と世界の発展方向に関する問題で、国際的な道徳と義理の主導権を堅く掌握して『世界大多数の団結』を勝ち取らなければならない」と明らかにした。あわせて「大国の責任と独立・自主精神の発散」を取り上げて「闘争精神を発揮してすべての強権政治や集団除け者行為に断固として反対する」と付け加えた」

     

    中国が、「西欧中心の従来の国際秩序を変える」には、中国が経済支援をする余裕がなければ不可能である。いわゆる「グローバルサウス」(発展途上国)は、中国の主義主張に共鳴するのでなく、中国が経済支援してくれることを期待しているだけである。その肝心な経済支援がなければ、どの國も中国の主張に手を貸すことはない。

     

    (3)「中国が、「世界大多数の団結」を強調したことをめぐり「国連を舞台に米国と多数決競争に本格的に入る展望」という分析が出ている。これを反映するように、2014年と2018年会議で崔天凱当時駐米大使が別途発言をしたこととは異なり、今年の会議では駐米大使ではなく張軍駐国連大使が発言する様子を中央テレビの放送(CC-TV)を通じて伝えた。中国が、国連加盟190余カ国の中で絶対多数を占める「グローバルサウス」の盟主を自認しながら、米国主導の既存の国際秩序に対して、数字を前面に出して攻勢を繰り広げると予想される部分だ。これに関連し、中国共産党は今回の会議で「われわれは平等で秩序正しい世界の多極化と普遍・互恵・包容の経済グローバル化を主導し、大小の国家はすべて平等を堅持し、覇権主義と強権政治に反対して国際関係の民主化を切実に推進するだろう」と強調した」

     

    同盟国を持たない中国が、「世界大多数の団結」を勝ち取ることは不可能である。国際社会は、美辞麗句に賛同するほど甘くはないのだ。経済的な利益がなければ、中国の意見に賛成しないであろう。

     

    (4)「今年の会議で、中国外交の優先順位は別途言及されなかった。習主席執権後初めて開かれた2014年会議では周辺国外交→大国外交→開発途上国外交→多国間外交の順に外交の優先順位を示していた。執権第2期に開いた2018年会議では一帯一路(陸・海上新シルクロード)外交→大国関係→周辺国外交へと順序を調整した。ところが今回の会議では「中国の特色ある大国外交」(7回)、「大国」(11回)、「人類運命共同体」(5回)、「人類」(10回)、「開発途上国」(1回)などに言及しながらも韓日を合わせる「周辺国外交」には全く言及しなかった。習近平執権以降、中国外交が東アジアへ全地球的次元で拡大していることを確認することができるような項目だ」

     

    今年の会議で、中国外交の優先順位を示さなかったのは、足元の「周辺国外交」ですら成功していないからだろう。日本・韓国・フィリピン・豪州などは、反中国姿勢をハッキリと打ち出している。こういう中で、戦狼外交を行っても効果はない。逆に、反発を受けるだけだ。

     

     

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    24年の円相場は、どうなるか。世界の為替市場で注目点になっている。円安が、日本経済の世界における立ち位置を引下げ、日本衰退論にまで発展している。この裏にあるのは、日銀の異次元金融緩和が影響したもので、いよいよ24年にはマイナス金利撤廃が日程に上がることは確実である。このことから、24年の円が世界の主役になるとの見方も出ている。日本に未だに残る悲観論を一掃する機会が迫っていることは疑いない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月29日付)は、「2024年は円の年になるか」と題する記事を掲載した。

     

    円はここ数年、パフォーマンスが最も悪い通貨の一つだったが、2024年には上向くかもしれない。

     

    (1)「円の対ドル相場は2021年末以降、約20%下落し、他の主要通貨よりも下落率が大きい。主要国の大半が積極的な利上げを行う中、日本銀行は超低金利を維持した。海外で利回りが上昇したことで、円は下落する一方だった。日本のインフレ率は上昇したとはいえ、インフレはほぼ全ての地域で起きており、他の先進国に比べると依然として低水準にとどまっている。11月の生鮮食品を除くコアインフレ率は前年同月比2.5%で、年初の4.2%から低下した。目標の2%を上回っているにもかかわらず、日銀は経済への打撃となることを恐れて早急な利上げには慎重だ」

     

    12月発表の「日銀短観」は、賃金と物価の先行きを見通す上で重要な雇用人員判断の大幅な不足超や経常利益計画の上方修正が目立った。24年の春闘は今年以上の賃上げが実現する環境が整ってきたことを示している。人手不足は、サービス価格上昇の圧力を増大させ、2%超の消費者物価指数(CPI)上昇の継続に追い風となりそうだ。日銀は、24年賃上げが4%以上になって実質賃金がプラスになる見通しを付ける必要がある。

     

    (2)「それでもいずれは、金融引き締めにかじを切るかもしれない。インフレ率が目標を持続的に上回っていると判断すればなおさらだ。すでに、長期債利回りを低位に維持しようとする「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」政策は何度か修正した。円は11月中旬以降、対ドルで約7%上昇しており、24年中にマイナス金利を解除するとの観測がその一因だ。だが、24年の円相場にとって最大の支援材料の一つは、やはり米連邦準備制度理事会(FRB)だろう。FRBはすでに利上げサイクルを終了した可能性が高く、利下げ転換を示唆している。日米の10年物国債利回り差はこの2カ月で1ポイント近く縮小した。要因は、米国債利回りの急低下で、実は日本国債の利回りもこの間に低下している」

     

    米国の利下げは、24年に確実な情勢である。米国が利下げして日銀がマイナス金利を撤廃すれば、相乗作用で大幅な円高局面が展開する。それは、日本経済が「健康体」になった証拠であるからだ。円高は、日本経済の健全性を示す尺度になる。

     

    (3)「他の主要中銀が軒並み利上げに踏み切ったとき、日銀は円が下押し圧力に耐えられると判断して動かなかった。その賭けが今、実を結んでいるようだ

     

    このパラグラフは、意味深長である。日銀がじっと円安に耐えていた反動で、思惑の円売り勢力へ一泡吹かせるという意味に取れる。短期間に、再び円売りさせないという意思表示に読めるのだ。

     

    『ブルームバーグ』(12月21日付)は、「ユーロは10%上昇へ 1ドル130円に円高進行もーRBC2024年予測」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「RBCグローバル・アセット・マネジメント(カナダロイヤル銀行グローバル・アセット・マネジメントは、円について24年1ドル=130円に円高・ドル安が進み、パフォーマンスが最も高い通貨の一つになると予想。ただ、この見通しはドル安と日本銀行の金利政策転換に「大きく依存している」とも指摘した」

     

    RBCは、円が24年に世界で最も高い通貨の一つになると予測している。むろん、日銀のマイナス金利撤廃が条件である。こういう円相場への見通しが変われば、円売り側には手仕舞いの機会が訪れよう。

    テイカカズラ
       

    米国の全米産業審議会(カンファレンス・ボード:CB)は、24年の中国経済に対して厳しい見通しを示している。「景気後退は構造的なもので、永続する可能性が高い。中国国民は、富を蓄積する手段としての不動産への信頼を失っている。この部門がいつ安定するのかを予測するのは難しいが、安定したところで、これまでのように重要な成長ドライバーに戻ることはないだろう」としている。 

    中国の家計の70%は住宅である。その住宅価格は、不動産バブル崩壊を受けて日々値下がりしているのだ。こういうなかで、家計消費が回復することはきわめて困難である。雇用不安も重なって、名目GDPの38.4%(2021年)しか占めていない個人消費は一段と収縮する方向である。 

    一方の米国は、名目GDPの68.3%(2021年)を占める個人消費が堅調である。中国の対GDP比の個人消費は、ざっと米国の半分の比率である。市場経済の米国と政府規制の強固な経済体制の中国を比較すれば、米国に多くの歩があることは誰がみても明らかであろう。米国経済は、パンデミックの影響を何ら受けなかったような推移を示している。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月22日付)は、「米経済の現状、コロナ前とそっくりだが」と題する記事を掲載した。 

    (1)「米議会予算局(CBO)が、コロナ流行直前の20年1月に発表した予測と先週の予測を比べると、インフレ調整後の国内総生産(GDP)で見た23年10~12月期の米経済規模は、4年前の予測とほぼ同じだ。厳密には0.3ポイント上回っている。ここ4年間の平均成長率は1.8%と、ちょうど予測通りだった。20年前半に生産は激減したものの、その後に急転して相殺した。失業率はどうだろう。CBOによると、10~12月期は平均3.9%になる見通しで、4年前の予想の4.2%より若干低い。CBOは、10~12月期の消費者物価指数(CPI)上昇率が年率換算で2.5%と、4年前に予測した2.4%にほぼ並ぶと考えている。前年同期比のインフレ率は3.1%と上振れているが、これについては後で検証する」 

    CBOが、2020年1月に発表した予測と2023年12月の予測は、何の齟齬もなくピタリと一致している。これは、米国経済の潜在力の強さをみせている。あれだけ騒がれたパンデミックの影響が、完全に消えているからだ。市場経済の強さと言えよう。中国は、この市場経済の持つ復元力を拒否して、政治が介入している。習氏は、自ら成長しようとする芽を摘んでいる。

     

    (2)「では、全てを一変させると思われていたコロナ禍は何も変えなかったのだろうか。答えはイエスでもありノーでもある。経済は表面的にはほぼ変わっていない。だが表面下では、消費するもの、働き方、インフレと金利がどこで定着するかなどが変化し、その影響は大きい。コロナ流行初期には、前例になりそうなものは自然災害だけだった。経済活動が再開し、サプライチェーン(供給網)の混乱や労働力不足が広がると、第2次世界大戦後の軍需経済から民需経済への転換期や、朝鮮戦争が起きて軍需経済に逆戻りした時期が想起された」 

    パンデミックは、米国経済を変えた面と変えない面がある。変えた面は、後述のインフレ水準である。パンデミック以前の低インフレ路線を変えるのだ。 

    (3)「ソーシャル・ディスタンス(他人との距離を保つ指針)やコロナ変異株の出現が生産性の妨げとなり、数百万人が労働力人口から永久に流出して長期成長を阻害するのではないかと懸念された。これも起こらなかった。労働参加率(16歳以上の就業者と求職者人の割合)は20年末に61.5%と、前年の63.3%から低下したものの、23年11月には62.8%まで回復し、CBOの4年前の予測を上回った。高齢労働者の離職と移民流入により、労働力人口は少し若返った」 

    パンデミック下で、労働力人口の年齢が若干、若返っている。

     

    (4)「結論。CBOと米連邦準備制度理事会(FRB)は現在、米経済成長率の長期見通しを1.8%前後としており、これは4年前の予測に近い。変革をもたらす可能性を秘めた人工知能(AI)の登場で米国株は上昇したが、今のところ生産性は上昇していない。確かにインフレはまだ収束していない。食品とエネルギーを除いたインフレ率は、11月までの1年間で4%だった。だが、固定利付債とインフレ連動債の利回りに基づくバークレイズの分析によると、市場は1年後のインフレ率が2.3%、その後30年までの平均は2.2%になると見込んでいる。理屈は単純だ。FRBは、インフレ率をいずれ目標の2%に戻すと主張しており、投資家はそれを信じた、というわけだ」 

    米国の潜在成長率は、1.8%前後でパンデミック前と変わっていない。インフレ率は、FRBの目標である2.3%程度を市場も受入れている。

     

    (5)「FRBは先週、来年の利下げ開始を示唆した。パイパー・サンドラーのベンソン・ダラム氏は、米国債利回りを基に利下げサイクルの終着点を予測し、市場は短期金利が29年までに3%前後に落ち着くとみていると結論付けた。これはコロナ前の10年間のどの時点よりも高い。インフレの力学はある重要な点で変化した。2008年の世界金融危機からコロナ禍まで、インフレ率は平均1.6%と、FRBの目標を下回っていた。市場はそうした時代は終わったと考えている。これが示唆するのは、コロナ前の10年間が、(2008年の)金融危機後の需要減でインフレ率と金利がゼロ近辺に抑えられていた異常な時期だった、ということだ。コロナ禍の衝撃で、経済はこの停滞から抜け出した。インフレ率と金利は低下に向かっているが、異常な低さではない」 

    2008~2019年までの平均インフレ率は、1.6%であった。それが最近、市場のコンセンサスとして前述のように2.3%になっている。インフレ率は、コロナ禍によって若干の水準切り上げである。この裏には、米中対立による「国産化」が影響している面もあろう。中国は、インフレ率0%前後という需要減に直撃されている。

     

     

     

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    中国経済に昔日の面影はない。中国の国家安全部は、中国経済「衰退論」を喧伝する者を拘束すると威嚇する事態だ。中国政府の立場を代弁する『新華社』(12月29日付)は、「世界的にインフレが高止まりし、国際貿易をめぐる条件も悪化する中、中国は外部の圧力に耐え、内部の困難を乗り越え、リスクを予防・軽減し、経済の回復、上向きの動きを実現している」と宣伝にこれ務めている。

     

    中国経済の不振は、株価下落に現れている。ハンセン指数は、23年通年で19%の下落し、上場廃止銘柄は46に達するという不振ぶりだ。『新華社』が報じるように、「中国は外部の圧力に耐え、内部の困難を乗り越えられる」状況でなかった。

     

    『朝鮮日報』(12月29日付)は、「中国で過去最多の46社が上場廃止、日本は配当額最高」と題する記事を掲載した。

     

    2023年は、東アジア各国の証券市場が両極端の様相を呈した。中国株は泣き、日本株は笑った。

     

    韓国取引所によると、年初に比べ、中国の上海総合指数は6%、香港ハンセン指数は19%下落した。中国不動産開発大手の碧桂園(カントリーガーデン)が8月に債務不履行を宣言するなど不動産危機が証券市場の足を引っ張ったためだ。米国と通商摩擦で輸出が鈍化したことに加え、内需が不振なことも投資心理に悪影響を及ぼした。投資心理が冷え込み、中国株式市場では上場廃止銘柄が過去最多を記録した。一方、日本の日経平均は年初に比べ29%急騰した。主要国の証券市場で米店頭市場ナスダック(44%)に次いで大幅に上昇した。記録的な円安を背景に輸出が好調を見せ、日銀も金融緩和政策を維持したためと分析される。日本の上場企業による配当も過去最高となる見通しだ」

     

    (1)「中国株式市場の低迷は、指数下落だけでなく上場廃止にも表れた。金融紙の証券時報など中国メディアは25日、経済不振の中で今年上場廃止した企業が過去最高の43社を記録したと報じた。業種別では不動産関連の8銘柄を筆頭に、コンピューター関連が7銘柄で続いた。中国株式市場の上場廃止条件の一つは「株価が20営業日連続で1元(約20円)を下回ること」だが、今年これまでに上場が廃止された43銘柄のうち半分(20銘柄)がこの条件に引っ掛かった。それだけ投資心理が冷め込んだことを示している

     

    中国の上場廃止条件は、業績不振の他に株価低迷(1元以下の相場が20日営業日続くケース)がある。今年は、株価低迷条件で上場廃止が20銘柄もあるという。

     

    (2)「証券時報は、「過去には財務問題が上場廃止の主な原因だったが、今年は株価が基準値を下回り廃止される銘柄が大きく増えた」と指摘した。年末までに少なくとも3社の企業が証券市場から追加退出されるものとみられ、今年の上場廃止銘柄は46社に上る見通しだ。 昨年は42銘柄が上場廃止された。 昨年は株価が1元を下回り上場廃止されたケースはたった1銘柄に過ぎなかった」

     

    株価低迷が原因で上場廃止になる銘柄は、年末までにすくともあと3社あるという。昨年は、通年でこの条件に抵触したのは1銘柄であった。

     

    (3)「中国の不動産危機は現在進行形だ。オックスフォードエコノミクスは「中国の住宅過剰供給問題が解消されるには少なくとも4~6年はかかるだろう」と分析した。中国政府は金利を引き下げ、不動産規制を緩和するなどさまざまな浮揚策を打ち出したが、凍りついた消費と投資心理を蘇らせることに失敗した。外国人は脱中国を急いでいる。中国国家外国為替管理局によると、年初来10月末までに中国の株式と債券に対する投資額は310億ドル減少した。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以降で最大の減少幅だ。ウォール街のプライベートエクイティ―ファンドによる対中投資金は例年の5%にまで急減した」

     

    不動産不況は、少なくも4~6年は続くという予測が出てきた。中国経済最大の産業部門だけに、長期経済停滞は不可避である。年初来10月末までに、証券投資は310億ドルの減少である。

    (4)「対照的に日本の株式市場は連日、好調を維持している。日本経済新聞は25日、24年3月期決算の上場企業約2350社による配当額が、今月中旬時点の予測で15兆7000億円に達するとの見方を伝えた。9月末時点の予測より4000億円増えた。同紙は調査対象企業のうち14%に相当する約330社が予想配当を引き上げたとし、商品の値上げが反映された食品、生産能力が回復した自動車、コロナのエンデミック(風土病化)で需要が増えた鉄道などさまざまな業界が配当を上方修正したと指摘した」

     

    日本株は、好調そのものだ。24年3月期決算では、上場企業約2350社による配当額が、15兆7000億円になると予想される。家計へは3兆円が回るとみられる。日中は、完全に明暗を分けた。

     

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    中国の習近平国家主席は、3期目をスタートさせたが恒例の中期見通しを作成する「3中全会」を開催できずに見送っている。景気実態が悪いためだ。24年になれば、景気がさらに悪化する見通しが濃くなっている。米国で非営利の中立的シンクタンク、全米産業審議会(コンファレンスボード:BC)が厳しい見方を発表した。

     

    Business Insider』(12月28日付)は、「中国経済は2024年も低調、全米産業審議会が指摘する4つの要因」と題する記事を掲載した。

     

    中国経済は、まだパンデミック以前の状態になるまでには回復しておらず、2024年もその傾向が続くだろう。中国におけるGDP成長率は、2023年の予測値である5.2%から、2024年には4.1%に減速すると全米産業審議会(コンファレンスボード。経済の分析、予測、リサーチなどを行う米経済団体や労働組合などで構成される非営利の民間調査機関)は予測している。審議会のエコノミストは、中国経済が来年も苦戦を強いられる理由を4つ挙げた。

     

    (1)「中国経済は、パンデミック時の厳しい締め付けから未だ完全に立直っていない。全米産業審議会(The National Industrial Conference BoardCB)の中国経済ビジネスセンターによると、成長の低迷は2024年も続くという。CBは、2023年のGDP成長率を5.2%と予測したが、2024年には4.1%に減速すると予測している。このように中国の成長は2024年にはこれまでの傾向を下回り、それが何年も続く可能性があるとCBは見ている。その主な理由は以下の4つだ」

     

    24年のGDP成長率は、4.1%と厳しい予測である。その根拠は、次の4点にある。消費・住宅・輸出・財政支出にある。

     

    (2)「潜在需要の減少:中国は第3四半期に大幅な消費増となった。これはペントアップ需要(抑え込まれていた消費者の需要が回復すること)によるものだが、今後数カ月のうちにこの需要は減退するとCBは予想している。CBのエコノミストは、「消費者マインドは依然として弱く、現時点ではそれが好転するような進展は見られない」と述べている。彼らの見解では、消費はまだ持ちこたえられるレベルには回復しておらず、中国国民は経済状況や労働市場、そして支出を抑制して不測の事態のための貯蓄を奨励する北京政府の政策に対して依然として不安を抱いている」

     

    労働市場の悪化によって、消費マインドが萎縮している。昨今の小売売上高も季節調整値では微減に転じている。回復の兆しはない。

     

    (3)「不動産不況はなくならない:中国の大手不動産デベロッパーは2023年に入ってデフォルト(債務不履行)に陥ったり、破産宣告を受けたりしている。当局は不動産部門を安定させようと試みているが、まだ望ましい効果を上げていない。CBのエコノミストはレポートにこう記している。「景気後退は構造的なもので、永続する可能性が高い。中国国民は、富を蓄積する手段としての不動産への信頼を失っている。この部門がいつ安定するのかを予測するのは難しいが、安定したところで、これまでのように重要な成長ドライバーに戻ることはないだろう」。不動産セクターはまだ底を打っておらず、当局は需要を活性化させるのに苦労するだろうとエコノミストは見ている」

     

    家計資産の7割を占める住宅不況は、構造的な問題になっている。不動産への信頼は、完全に失われている。政府は、2軒目、3軒目を買わせようとしているが、これに乗る人はいなくなった。

     

    (4)「中国製品に対する需要は減速傾向:アメリカやヨーロッパの景気後退に端を発した世界経済の減速は、中国にとって悪いニュースになるだろう。中国の製造業における輸出の需要は、世界的な景気後退を背景に、2024年に入っても抑制された状態が続くとCBは述べている。「不動産不況に起因する総需要の問題から抜け出すために、輸出に頼ることはできないだろう」と指摘する」

     

    24年の世界経済は、さらに悪化する予想である。高金利の影響が、世界中へ浸透するからだ。輸出が、内需不振をカバーできる状況ではない。

     

    (5)「中国当局は大規模な景気刺激策を実施できず、漸進的な対策にとどまる:中国経済は根深い構造的問題に直面しているため、いかなる大改革や大規模な景気刺激策でも破局への扉を開いてしまうとCBは見ている。政策によって経済に対する信用を高め、投資を刺激する余地はあるが、介入が大きくなるほど、経済の非効率性や投機的投資を誘発する可能性が高くなる。CBのエコノミストはこう記している。「これまでのところ、政府は広範な景気刺激策の実施を控えている。それでもここ数カ月、政府は『的を絞った』投資、特に洪水災害の復旧や防災のためのインフラ投資を刺激するために、金融・財政措置を強化している。その結果、2023年第3四半期に見られた力強い回復の兆しは消えるだろうが、2024年の成長率は安定するだろう」と」

     

    下線部は、重大な指摘をしている。「いかなる大改革や大規模な景気刺激策でも、破局への扉を開いてしまう」としている。つまり、利下げをすれば、人民元相場が急落して資金流出を引き起こす。財政支出を増やせば、財政赤字拡大によって格付けが低下するジレンマだ。結局、まとまった対策は何もできない最悪事態が待っている、という見方である。

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