勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年02月

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    日本航空(JAL)次期社長は、CA(客室乗務員)出身の鳥取三津子氏の昇格が決まった。「ナショナルフラッグ」のJALは、スタートが政府支援であったので、経営の顔は政治に向いてきた。それが、航空会社にとって最も必要な「安全運航」をないがしろにするリスクを内包してきた。14年前の経営蹉跌は、そうしたJALの脆弱な体質がもたらしたものでもあった。新生JALは、「官」との関係を切り捨て純粋な「民」企業としてとして、女性社長を出すまでに変革が進んでいる。 

    『ロイター』(2月2日付)は、「CA出身のJAL新社長 経営破綻が異例の人事に道筋」と題する記事を掲載した。 

    JALの異例な社長人事は、同社が経営破綻した14年前に種がまかれていたのかもしれない。同社の鳥取三津子代表取締役(59)は4月に社長に昇格し、豪カンタス航空、仏エールフランス航空、蘭KLMオランダ航空の最高経営責任者(CEO)と並び、世界的な航空会社を率いる数少ない女性の1人となる。 

    (1)「鳥取氏が次期社長に選ばれたのは、日本が変わりつつあることを示唆していると同時に、2010年の経営破綻から故・稲盛和夫氏の下で再生を果たしたJALの組織的な変化を象徴している。22年に他界した稲盛氏は「経営の神様」と呼ばれ、経営と現場が価値観を共有することを重視した。JAL破綻後初の社長に指名したのは整備出身の大西賢氏。その後任は元操縦士の植木義晴氏、整備出身の赤坂祐二・現社長で、元CAの鳥取氏と続く。4人に共通するのは「現場」の人間だったということだ」 

    JALは、社長の「出自」を変えた。デスクワークの人間から労働現場に立ってきた人たちだ。整備・操縦士・整備・CAと4代の社長が現場出身者である。JALの経営改革は、社長の出自を変えた。日本企業の出直しを象徴する人事である。


    (2)「もともと半官半民のJALは、完全民営化後も官僚主義がはびこり、採算度外視で日本各地の空港へ路線を開設。高コストな企業体質にリーマン・ショックなどが追い打ちをかけ、経営が行き詰まった。当時の民主党政権からJAL再生のかじ取りを委ねられた稲盛氏は会長着任直後の会見で、「『親方日の丸』で大変官僚的な仕事の仕方をしてきたようだ。ビジネスを展開するには損益計算に関心を持つ組織になる必要がある」と語った。「JALをつぶしたのは歴代の経営企画系出身トップと考えている社員は多い」と関係者は話す。現取締役会長の植木氏も、今回の人事で「経営企画系の出身者に(トップを)戻したくないという思いがあった」と指摘する」 

    JALは、政治家とのつながりが深かった。これが、デスクワーク出身者が経営の枢軸を担う結果になった。それが、経営破綻をもたらしたのだ。 

    (3)「日本の大手企業で出世するのは、四年制の有名大学を出た男性で、新卒採用された生え抜き社員がこれまで一般的だった。JALは歴代社長13人全員が男性で四大卒(院卒も含む)、9人が東大を出ている。鳥取氏はいずれの条件にも当てはまらない。地方の短大を卒業し、東亜国内航空でCA職に就いた。同社は3年後に日本エアシステム(JAS)へ社名変更し、04年にJALに吸収合併された」 

    次期社長の鳥取氏は、大企業の社長の歩んできたコースとは異なる。既存コースが、「失われた30年」をもたらした社長を生み出したのだ。学校秀才の限界を示したものでもある。新たな日本企業の経営には、新たなコースが用意されなければならない。JALは、それを示しているのであろう。

     

    (4)「日本ではいまだに女性トップを「お飾り」、つまり男女間の不均衡を解消するためだけに据えられたと見る向きが多い、と専修大学経営学部の根本宮美子教授は指摘する。鳥取氏の昇格はそうした見方を変え、「社内でスキルと経験を積み重ねることで現在の地位を獲得した」というメッセージを送ることができる、と同教授は語る。鳥取氏はJAL破綻から3年後の13年、安全推進本部統括マネジャーに就く。そのころには社内に稲盛流の考え方が浸透し、経費削減やサービス向上について各部署が知恵を出し合う会議が開かれるようになっていた。鳥取氏の社長抜擢は、「JALに根づいた稲盛氏の『現場主義』や『エリート嫌い』の表れ」と複数の関係者は口を揃える。稲盛氏は幹部のエリート意識が会社の一体感を阻む元凶と見ていたという」 

    女性社長の特色は、粘り強いことだ。上場企業でも女性管理職の多い企業は、好業績とされている。東京証券取引所が、上場企業に女性管理職や女性役員の比率を公表させる理由は、業績テコ入れへの隠れた意図であろう

     

    (5)「航空会社の根幹である「安全とサービス」一筋のキャリアが評価された鳥取氏だが、ある関係者によれば、鳥取氏自身、幅広い業務に携わってこなかったことを少し懸念しているようだ。これまでの経験はもちろんプラスだが、「客室・安全以外の分野の経験は不足しているという問題意識があるのだと思う」と、同関係者は話す。「鳥取氏の経営手腕は未知数」との見方が関係者の間では大勢だ。ある関係者は、会長となる赤坂社長は理論的で厳しく、鳥取さんは穏やかで周りに気配りするタイプで、「北風と太陽、二人三脚のようなイメージで経営は進むのではないか」と話す」。 

    社長と言っても、全てを知り抜いているわけでない。首相と同じだ。だから、大臣がいて日常業務を担当させている。社長も、部下の能力を存分に発揮させ、最終判断をすればいいのだ。案ずるよりも産むが易しである。

     

     

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    トランプ前大統領は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画について、「自分が当選すれば阻止する」と表明した。トランプ氏の経済ナショナリズムが、外国企業による対米投資の脅威となりかねないことを浮き彫りにした。『ブルームバーグ』が報じた。

     

    トランプ氏は、全米運輸労組(通称チームスターズ)のメンバーと会った後、「直ちにそれを阻止する。絶対だ」と発言したもの。「われわれは鉄鋼産業を救った。今、USスチールは日本に買収されようとしている。とてもひどいことだが、われわれは雇用を米国に取り戻したい」と語った。日本製鉄が昨年12月に141億ドル(約2兆円)でUSスチールを買収する合意を発表後、トランプ氏がこの計画について正式に発言するのは初めてだ。

     

    一方、米鉄鋼業界の取引業者や需要家、さらにUSスチール従業員は、日本製鉄による合併を歓迎している。トランプ氏のような外野の人間は、政争の具にしようとしているが、純粋な経済合理性から言えば「賛成論」に立っている。

     

    『ブルームバーグ』(2月4日付)は、「日本製鉄のUSスチール買収計画、米鉄鋼の取引業者や需要家は歓迎」と題する記事を掲載した。

     

    日本製鉄に買収されることで合意したUSスチールの決断は、鉄鋼取引業者や自動車業界の顧客、そして同社従業員までも歓迎している。鉄鋼業界関係者は、なぜ米政治家らがこの合意に疑念を投げかけることに熱心なのか不思議に思っている。

     

    (1)「昨年12月の買収合意発表後に続いている政治的反発は、今週初めにフロリダ州で開催された北米最大級の鉄鋼会議でも話題となった。日鉄による買収が実現すれば、米クリーブランド・クルフスによる買収よりも米国内の鉄鋼価格競争力が増し、雇用は維持され、独占禁止法上の問題は回避されるというのが大方の見方だった。ウォルフ・リサーチのアナリスト、ティムナ・タナーズ氏はタンパ鉄鋼コンファレンスで、「私の理解では鉄鋼の消費者、顧客は買い手として日鉄の方をずっと歓迎している」と述べた」

     

    北米最大級の鉄鋼会議は、今回の日鉄によるUSスチール合併を歓迎した。米国の鉄鋼ユーザーとしては、合併によって市場シェアが高まるわけでなく歓迎すべきとしている。ユーザーにとっては、市場支配力の強化を最も恐れているのだ。

     

    (2)「業界内の肯定的な見方にもかかわらず、日鉄のUSスチール買収計画は米選挙の年に非難の的となっている。USスチールの本拠地であるペンシルベニア州選出の民主党上院議員2人は、組合員の雇用が影響を受けるとの懸念を挙げ、バイデン大統領に買収を阻止するよう要請した。ホワイトハウスのブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は先月、同買収計画について、国家安全保障の観点から「真剣な精査」に値するとの考えをあらためて示した」

     

    今年は、米国大統領選の年である。何か選挙に引っかけて有利な話を作り出そうという魂胆のようである。バイデン大統領は、合併承認を大統領選の後にすると報じられている。

     

    (3)「トランプ前大統領は1月31日、11月の米大統領選で返り咲きを果たせば同計画を「絶対に」阻止すると表明した。タンパ鉄鋼コンファレンスの出席者らは、日本は米国の同盟国であるため、国家安全保障上の懸念は当たらないと指摘した。外国の買い手として日鉄を恐れる必要がない理由として、何年も前から米国に拠点を構えている同社をよく知っていることを挙げる出席者もいた」

     

    トランプ氏は、合併反対論が大統領選に有利という判断であろう。専門家は、日本が米国の同盟国であり米の国益を損ねることはないとしている。これが、冷静な見方であろう。

     

    (4)「日鉄の買収提案は業界関係者の多くにとって理にかなっているが、主なハードルは対米外国投資委員会(CFIUS)による国家安全保障上の審査だ。バイデン政権の経済担当補佐官による公のコメントは、労働組合の雇用と国内製造拠点の維持を優先する政権の姿勢を示唆している。鉄鋼労組は買収を阻止することはできないが、選挙シーズンが熱を帯びる中、激戦州で多くのブルーカラー労働者を代表しているため政治に大きな影響力を持っている。CRUグループのプリンシパル鉄鋼アナリスト、ジョシュ・スポアーズ氏は、「労働組合からすれば、組合員の雇用への投資について何らかの約束を取り付けることができると考えることはおそらく正しいだろう」と語った」

     

    USスチール労組も合併に賛成している。日鉄は、労組が懸念するような雇用問題に手をつけるような話をするはずがない。USスチールには、水素製鉄技術があるのだ。

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    象徴するTSMC熊本工場

    ラピダスは復興シンボルへ

    周回遅れが最先端へ躍出る

    NTTは光半導体で世界初 

    半導体受託生産の世界最大手、TSMC(台湾積体電路製造)熊本工場は、2月24日に開所式を行う。22年4月に工事着工以来、18ヶ月という最速で竣工した。23年末には機械搬入を始めており、24年末には製品出荷の運びである。 

    熊本工場建設を担ったのは、鹿島である。国策半導体ラピダスの北海道・千歳工場建設も鹿島が行う。ラピダスは、23年9月に起工式を済ませており、25年4月には「2ナノ」(10億分の1メート)の次世代半導体試作品を発表予定だ。27年から、量産化という過密スケジュールである。このように、ラピダスもTSMCに負けないスピードで取組んでいる。この裏には、日本半導体産業の持つ潜在的成長力の大きさが、いかほどであるかを窺わせている。 

    1980年代後半、世界半導体の半分強の生産シェアを誇った日本半導体は、米国の半導体戦略に巻き込まれて力を失った。現在のシェアは10%見当で、「40ナノ」半導体程度の生産である。だが、潜在的な半導体生産能力を生かし、米国IBMや海外の半導体研究所と提携して、一挙に「2ナノ」半導体へと飛躍する構えだ。「腐っても鯛」という言葉どおりに、日本半導体の擁する総合的技術力の高さを証明しようとしている。

     

    象徴するTSMC熊本工場

    TSMC熊本工場建設過程は、TSMC本社を驚かせるに十分であった。工事は、新型コロナウイルス禍でも異例の24時間体制で行われた。熊本県知事の蒲島郁夫氏は、「10年近くかかってもおかしくない工事と聞く。かつてないスピード感だ」と語ったほどである。 

    TSMCは、米国アリゾナ州にも工場を建設中である。だが、同州の労働組合との調整が長引き、2024年末の操業予定が25年以降にずれ込んでいる。日本は、工場誘致時期で遅れたが、結果的に遅れを取戻して米国工場よりも早い操業になる。TSMC創業者である張忠謀氏は、「米国の労働者は、不器用で勤勉さを欠く。半導体という高度な製品をつくる場所としてふさわしくない」と公言しているほどだ。 

    一方で、張氏は日本を高く評価する。昨秋の記者会見で、「日本は(半導体製造に)理想的な場所だ。土地や水、電力が豊富で、仕事文化もよい」と述べたのだ。日本の半導体事情は、台湾に比べても潜在的な優位性が存在することを再認識させるものである。それは、次の3点に要約できよう。 

    1)工業用水・水資源・工業用地・電力などが豊富。

    2)専門技術者が多い。

    3)設備・素材などの高い技術水準。

     

    1)水資源は、台湾に比べれば豊富である。年間降雨量は、日本が台湾の6.4倍、韓国の6.2倍もある。台湾の水資源の8割は、台風によってもたらされている。このため、台風が1回も襲来しなかった2021年は大変な「水飢饉」となり、半導体がつくれないという騒ぎが起こった。日本は、地下水が豊富であるからそのような懸念はない。 

    2)台湾では、兵役に服するか半導体技術者になるかという選択をさせている。政府が、半導体技術者養成に力を入れている証拠だが、総人口は2342万人(2023年)と日本の5分の1である。これでは、半導体技術者の確保でいずれ限界に突き当たる。その点で、日本では多くの国立大学・私立大学が半導体技術者の養成(工学部電子工学科)を行っている。 

    3)日本は、1980年代後半に世界の半導体で5割強の生産シェアを誇った。それだけに、半導体製造設備から半導体素材までワンセットで先端技術を蓄えている。TSMCは、筑波市に研究所を設けており、日本の半導体素材メーカーが研究に参加している。TSMCが、もっとも信頼できる国は日本をおいてほかにないのだ。 

    TSMCは、熊本工場建設過程によって日本が半導体生産で最適性を持っていることを認識した。この結果、2月24日の開所式では第2工場建設を発表するとみられている。続いて、熊本に第3工場を、第4工場は福岡県に建設すると報じられている。九州が、半導体製造基地として最適という判断である。

     

    熊本工場の膝元である菊陽町は、人口流入が続いている。現在人口は、4万9318人(23年12月末)と年初から13%という急増ぶりだ。この結果、市制移行が視野に入ったとされている。JR新駅や九州最大級のスポーツ施設も計画されるなど、「21世紀型の企業城下町」へ変貌している。 

    ラピダスは復興シンボルへ

    TSMC熊本工場の動きは、半導体国策企業のラピダス発展へと繋がる要素を持っている。それは、前記の日本が擁する半導体の発展3要素が生きるからだ。ラピダスは、北海道千歳市へ工場を建設中である。鹿島が建設を担う。TSMC熊本工場と全く同じ構図である。 

    ラピダスは、日本の半導体技術が現在「40ナノ」レベルであるにもかかわらず、「2ナノ」を足がかりにして、さらに「1ナノ」へステップ・アップする大計画である。半導体事情に詳しくない者には、月へ石を投げるような無謀なことに映るようである。現に、日本の財務省はその立場だ。経済産業省が、自民党の支援でラピダスを発足させたことへ「無言」の批判の目を向けている。だが、これまでの日本半導体復興計画と異なるのは、過去の挫折を踏まえた慎重な計画に基づいている点にある。(つづく)

     

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    中国は、もはや「悠久の国」というイメージではなくなった。「反スパイ法」で外国人への警戒観はピークだ。清国時代も長く鎖国をしてきた国である。現代の風には合わない振舞をしている。韓国の元外交官は、「絶対に行っては危ない国」と警告しているのだ。

     

    『朝鮮日報』(2月4日付)は、「恐怖の中国入国審査」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の李河遠(イ・ハウォン)記者である。

     

    今年初め、20代の韓国人男性がソウルを出発し、中国・北京に立ち寄ってから欧州へ行く時のことだった。北京国際空港に飛行機が着陸し、他の旅行客と一緒に出てきたところ、中国の税関職員に名指しされて「ついて来い」と言われたという。「乗り換え(transit)」のパネルを持った案内員のところに近づいていく前だった。

     

    (1)「数時間空港の外に出て、すぐ出国するのに、10本の指の指紋を取られ、顔認識の機械に顔を撮らせなければならなかった。中国の税関職員がどのようなシステムに基づいてこの男性を指名したのかは分からない。税関職員は既にこの男性の顔と旅行先を知っているようだった」

     

    トランジットで、短時間だけ立ち寄る乗客に対して指紋を取るほか顔写真まで撮られている。しかも、この乗客の顔と行き先まで知っていたとみられるのは、韓国で情報を得ていることだ。中国は、相手国税関職員を抱き込むスパイ行為をしている恐れが大きい。韓国は、自国の関税職員を調べる必要があろう。日本でも同様の事態が起こっているからだ。

     

    (2)「40代の会社員K氏は昨年、中国出張のためのビザ申請書を書いていて、首をかしげた。計6ページにわたる申請書に兵役関連項目が6つあった。兵科・兵役中に専門教育を受けた特技・階級・兵役期間などをすべて書かなければならなかった。最終学歴や専攻も書いた。親・配偶者・子どもの生年月日や出生地の項目もあった。職場関連項目では上司2人の名前・職位・電話番号を書かなければならなかった。「私はもちろん、私の家族や職場・上司のすべての情報が盗まれた感じがした」と話す。いずれも中国が昨年7月、反スパイ法を強化して以降に起きたことだ」

     

    中国は、「反スパイ法」の名を借りて韓国の個人情報を取得している。これは、中国が韓国で「合法的」にスパイ行為を行っているのと同じことである。日本に対しても入国ビザを要求するのは、日本の内情を探る行為だ。

     

    (3)「中国を行き来する韓国人たちの間では最近、入国審査に関する経験を語り合い、「何かなかったか」とあいさつを交わすのが流行になっている。2020年以降の新型コロナウイルス感染症流行期は中国への入国が物理的に難しかったが、今は「精神的に疲れる」という声が増えている。中国で勤務していた元外交官は最近、「絶対に中国に行くな」と言っている。「反スパイ法のモデルケースになってしまうかもしれない」ということだ」

     

    中国が、ここまで入国時の審査を厳重にしているのは、膨大な個人情報を集めて利用する狙いであろう。中国で勤務していた元韓国外交官は最近、「絶対に中国に行くな」と言っているという。この戒めは、日本にも通用する話だ。

     

    (4)「70代の韓国人実業家男性が、ダイアリー(業務用ノート)に付いていた小さな世界地図のために中国・瀋陽桃仙国際空港で足止めされる事件が発生した。台湾が「タイワン」として韓国や日本などと同じく国家と表示されていたため、「一つの中国」の原則に反するということだった。30年間にわたり中国で事業をしてきた男性は「地図が付いていることも知らなかった」と語った。税関職員たちは1時間後に地図をはがしてやっと男性を解放した。このため、中国共産党が普段から男性の中国国内における行動を5G監視システムで監視し、口実を作って心理的に脅したとの見方もある

     

    中国での個人行動は、四六時中当局から監視されている。ましてや、外国人は標的である。中国でビジネスを行い中国の利益になっていようとお構いなしだ。

     

    (5)「昨年、米国のピュー研究所が24カ国・約3万人を対象に世論調査を行った結果、中国に否定的な回答者は67%に達した。韓国人は77%が中国のことを否定的に考えていることが分かった。つい10年前までは「中国文学科が英文科を抜き語学関連学科1位」という記事が多かったが、最近の中国語人気はその跡形もない。その理由は中国共産党が最もよく知っているだろう」

     

    世界24ヶ国で、中国へ否定的なイメージを持つ人々は、67%にも達している。中国自らの行動が、こういう結果を生んでいる。かつての日本も、鄧小平時代は親中派が多かった。

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    多くの専門家は、21世紀が「アジアの世紀」と評している。中国とインドの経済発展が、500年にわたる欧米優位に終止符を打つと指摘しているのだ。こうした論評は、中印両国が世界の国外移住者の大部分を出しているここと大いに矛盾する。両国の繁栄と安定が確実であれば、なぜ高学歴の人や富裕層が両国から移住しようとしているのか、だ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月1日付)は、「中国・インドから逃げ出す国民」と題する記事を掲載した。 

    米国に不法入国するために、生命の危険を冒すことをいとわないインド人と中国人が毎年何万人もいる。米国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)の職員は2023年度に、インド人9万7000人、中国人5万3000人の「許可されない外国人」、すなわち米国への入国許可を得ていない人々に出くわした。この数は21年度と比べると、インド人が3倍強、中国人は2倍強に当たる。

     

    (1)「中国人とインド人は、米国への無許可入国者に占める割合がいまだに小さく、昨年は320万人のうち15万人にすぎなかった。これは、両国からの合法的な移民が大きな流れになっていることと合わせると注目に値する。中国とインドは長い間、米国の学生ビザ取得数で圧倒的多数を占めてきた。もっとも、中国人はインド人に比べて留学後に帰国する可能性が高い。昨年は、約5万5000人の中国人と6万9000人のインド人が選択制の実習を受けた。これは卒業後の1年間か2年間、実際に働くというプログラムで、米国内での就職につながるケースが多い」 

    中国とインドの留学生が、留学後に米国で1~2年働くプログラムで就職するケースは、両国で12万4000人になっている。 

    (2)「インド人と中国人は、他のどの国の国民よりも熟練労働者の米国での一時就労に必要なH1-Bビザを多く取得している。インド人に限っても、H1-Bビザの取得件数は毎年発給される8万5000件の半分以上を占めている。移民政策研究所によると、インド人は現在、米国内でメキシコ人に次いで2番目に大きな移民グループとなっている。中国人は3位だ。国連の推計によれば、2019年の世界人口の約3.5%(2億7200万人)は「出生国または市民権のある国以外で暮らす人々」と定義される移民だった。同年の移民の最大グループはインド人(1750万人)で、中国人はメキシコ人(1180万人)に次ぐ3位(1070万人)だった」 

    米国での移民グループは、1位メキシコ、2位インド、3位中国である。

     

    (3)「米移民研究センターのエグゼクティブ・ディレクター、マーク・クリコリアン氏の見方によれば、これはそれほど驚くことではないと指摘する。「彼らは世界で1、2位の人口の多い国だ。むしろ今後さらに多くの人々が国外へ出るだろう」。インドと中国は世界人口の36%を占めている。これに対し、世界の移民人口に占める両国の割合は10%をやや上回る程度だ」 

    インドと中国の人口が、世界に占めるウエイトからいえば今後、さらに増えるであろう。 

    (4)「こうした移民のパターンからは「アジアの世紀」を信じる人々が見落としがちな弱点が明らかになる。顕著な兆候の一つは、個人富裕層の国外流出だ。繁栄している国々は普通、資本と人材を引き付ける。それらを国外に追いやることはない。しかし、富裕層の外国居住権取得を支援する企業ヘンリー・アンド・パートナーズによれば、2022年に国外に移住した億万長者が世界で最も多かったのが中国で、その数は1万0800人だった。インドは7500人で、ロシアの8500人を若干下回って3位だった。香港を中国に含めると、22年に国外移住した世界の個人富裕層8万4000人の25%近くを中国人とインド人が占めた」 

    従来の観念で言えば、移民は経済的に貧しい国が「人減らし」という意味で行ってきた。現在は、億万長者が移民する事態だ。22年に、富裕層の移民で最も多かったのは中国であった。次いで、インドとロシアが占めた。

    (5)「中国の場合、社会の支配強化を目指す習近平国家主席による民間企業への締め付けが、こうした状況を招いている。中国の富裕層はかなり以前から米国・カナダ・英国・オーストラリア・シンガポールの金融資産や不動産に保有資金を移してきた。習氏の強硬な政策も富裕層を一層おびえさせているようだ。投資を通じて米国の永住権を得るEB-5ビザ取得者の国籍別の内訳では、中国人が最も多い状況が長く続いている。西側諸国のパスポートは、中国が再び政治的混乱に陥る場合に備える保険になっている」 

    投資を通じて米国の永住権を得るEB-5ビザ取得者は、中国人が最も多かった。 

    (6)「インド人が抱く懸念は中国人と異なる。インドの富裕層や最も教育水準が高い人々はしばしば、同国政府の統治面の不備が多いことを理由に国を離れている。彼らは、都市部の環境汚染、税務当局による嫌がらせ、標準以下の公衆衛生政策、劣悪な都市インフラから逃れたがっている。インドは昨年、EB-5投資家ビザの国籍別取得者数で2位となった。億万長者の流出に技術者や医師の流出を加えると、インドは毎年、最も生産性の高い人材のうちかなりの部分を失っていることになる」 

    インドの富裕層や最も教育水準が高い人々の移民理由は、貧しいインフラ投資への不満である。インドは、億万長者・技術者・医師などが米国へ移民している。最も生産性の高い人たちだ。

     

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