日本航空(JAL)次期社長は、CA(客室乗務員)出身の鳥取三津子氏の昇格が決まった。「ナショナルフラッグ」のJALは、スタートが政府支援であったので、経営の顔は政治に向いてきた。それが、航空会社にとって最も必要な「安全運航」をないがしろにするリスクを内包してきた。14年前の経営蹉跌は、そうしたJALの脆弱な体質がもたらしたものでもあった。新生JALは、「官」との関係を切り捨て純粋な「民」企業としてとして、女性社長を出すまでに変革が進んでいる。
『ロイター』(2月2日付)は、「CA出身のJAL新社長 経営破綻が異例の人事に道筋」と題する記事を掲載した。
JALの異例な社長人事は、同社が経営破綻した14年前に種がまかれていたのかもしれない。同社の鳥取三津子代表取締役(59)は4月に社長に昇格し、豪カンタス航空、仏エールフランス航空、蘭KLMオランダ航空の最高経営責任者(CEO)と並び、世界的な航空会社を率いる数少ない女性の1人となる。
(1)「鳥取氏が次期社長に選ばれたのは、日本が変わりつつあることを示唆していると同時に、2010年の経営破綻から故・稲盛和夫氏の下で再生を果たしたJALの組織的な変化を象徴している。22年に他界した稲盛氏は「経営の神様」と呼ばれ、経営と現場が価値観を共有することを重視した。JAL破綻後初の社長に指名したのは整備出身の大西賢氏。その後任は元操縦士の植木義晴氏、整備出身の赤坂祐二・現社長で、元CAの鳥取氏と続く。4人に共通するのは「現場」の人間だったということだ」
JALは、社長の「出自」を変えた。デスクワークの人間から労働現場に立ってきた人たちだ。整備・操縦士・整備・CAと4代の社長が現場出身者である。JALの経営改革は、社長の出自を変えた。日本企業の出直しを象徴する人事である。
(2)「もともと半官半民のJALは、完全民営化後も官僚主義がはびこり、採算度外視で日本各地の空港へ路線を開設。高コストな企業体質にリーマン・ショックなどが追い打ちをかけ、経営が行き詰まった。当時の民主党政権からJAL再生のかじ取りを委ねられた稲盛氏は会長着任直後の会見で、「『親方日の丸』で大変官僚的な仕事の仕方をしてきたようだ。ビジネスを展開するには損益計算に関心を持つ組織になる必要がある」と語った。「JALをつぶしたのは歴代の経営企画系出身トップと考えている社員は多い」と関係者は話す。現取締役会長の植木氏も、今回の人事で「経営企画系の出身者に(トップを)戻したくないという思いがあった」と指摘する」
JALは、政治家とのつながりが深かった。これが、デスクワーク出身者が経営の枢軸を担う結果になった。それが、経営破綻をもたらしたのだ。
(3)「日本の大手企業で出世するのは、四年制の有名大学を出た男性で、新卒採用された生え抜き社員がこれまで一般的だった。JALは歴代社長13人全員が男性で四大卒(院卒も含む)、9人が東大を出ている。鳥取氏はいずれの条件にも当てはまらない。地方の短大を卒業し、東亜国内航空でCA職に就いた。同社は3年後に日本エアシステム(JAS)へ社名変更し、04年にJALに吸収合併された」
次期社長の鳥取氏は、大企業の社長の歩んできたコースとは異なる。既存コースが、「失われた30年」をもたらした社長を生み出したのだ。学校秀才の限界を示したものでもある。新たな日本企業の経営には、新たなコースが用意されなければならない。JALは、それを示しているのであろう。
(4)「日本ではいまだに女性トップを「お飾り」、つまり男女間の不均衡を解消するためだけに据えられたと見る向きが多い、と専修大学経営学部の根本宮美子教授は指摘する。鳥取氏の昇格はそうした見方を変え、「社内でスキルと経験を積み重ねることで現在の地位を獲得した」というメッセージを送ることができる、と同教授は語る。鳥取氏はJAL破綻から3年後の13年、安全推進本部統括マネジャーに就く。そのころには社内に稲盛流の考え方が浸透し、経費削減やサービス向上について各部署が知恵を出し合う会議が開かれるようになっていた。鳥取氏の社長抜擢は、「JALに根づいた稲盛氏の『現場主義』や『エリート嫌い』の表れ」と複数の関係者は口を揃える。稲盛氏は幹部のエリート意識が会社の一体感を阻む元凶と見ていたという」
女性社長の特色は、粘り強いことだ。上場企業でも女性管理職の多い企業は、好業績とされている。東京証券取引所が、上場企業に女性管理職や女性役員の比率を公表させる理由は、業績テコ入れへの隠れた意図であろう
(5)「航空会社の根幹である「安全とサービス」一筋のキャリアが評価された鳥取氏だが、ある関係者によれば、鳥取氏自身、幅広い業務に携わってこなかったことを少し懸念しているようだ。これまでの経験はもちろんプラスだが、「客室・安全以外の分野の経験は不足しているという問題意識があるのだと思う」と、同関係者は話す。「鳥取氏の経営手腕は未知数」との見方が関係者の間では大勢だ。ある関係者は、会長となる赤坂社長は理論的で厳しく、鳥取さんは穏やかで周りに気配りするタイプで、「北風と太陽、二人三脚のようなイメージで経営は進むのではないか」と話す」。
社長と言っても、全てを知り抜いているわけでない。首相と同じだ。だから、大臣がいて日常業務を担当させている。社長も、部下の能力を存分に発揮させ、最終判断をすればいいのだ。案ずるよりも産むが易しである。




