勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年02月

    テイカカズラ
       


    中国は、かつてAI(人工知能)開発で米国に対抗する勢いであったが、肝心の半導体を米国の禁輸措置で入手できず苦闘している。半導体の国産化に舵を切っているが、性能と量産化で不安を抱えている。 

    『日本経済新聞』(2月3日付)は、「中国AI半導体を国産に」米輸出規制で切り替え 性能・量産化に懸念残る エヌビディアに逆風」と題する記事を掲載した。 

    中国の人工知能(AI)関連大手が半導体の中国産への切り替えを急いでいる。従来は米エヌビディア製品の採用が多かったが、米政府の輸出規制で調達が難しくなったためだ。華為技術(ファーウェイ)などが代替先として脚光を浴びるが、性能面などの懸念があり、中国のAI産業の発展に響く可能性がある。 

    (1)「中国ではエヌビディアに対する逆風が強まっている。同社は中国のAI半導体市場で従来約9割のシェアを獲得していた。ただ、米商務省は軍事転用への懸念を理由に中国へのAI半導体の輸出規制に乗り出し、22年秋にはエヌビディアのAI半導体「H100」などが対象になった。同社は規制をかわすため中国向けに性能を落とした製品などの出荷を始めたが、23年10月の新たな規制ではこれらの半導体の輸出も禁じられた」 

    AI半導体は、米国エヌビディアの独壇場である。米国政府が対中禁輸措置を禁じたので、中国は大きな痛手である。国産化のほかなくなった。

     

    (2)「一連の禁輸に、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)などの中国ネット大手は翻弄された。生成AIの開発や提供には、自社のサーバーなどにAI半導体を搭載することが欠かせないため、23年にはエヌビディア製半導体の在庫を確保する動きが広がった。エヌビディアは最新の禁輸にも対応する半導体を中国に出荷する計画だが、足元では中国ネット大手の多くが中国産への切り替えを急ぐ。米商務省は今後も新たな規制をかけ続ける見通しで、エヌビディアの半導体を使うリスクが一段と高まっているからだ」 

    エヌビディアは、米国政府の規制に合わせて「初歩的」製品を開発したが、それも輸出禁止措置を受けている。こうなると、中国は否応なく国産化に取組まざるを得ない事態となっている。 

    (3)「テンセントの劉熾平(マーティン・ラウ)総裁は23年11月、アナリストに対し「エヌビディアの半導体は数世代分の在庫があり、短期ではAIの開発に影響しない」としつつ、「今後は中国内の調達先を探す必要がある」と説明した。規制の網をかいくぐって一部の同社製品が国内に流通しているとされるが、大手企業の調達数量を確保するのは難しい」 

    テンセントは、禁輸措置を見込んで輸入を増やしており当面は問題ない。ただ、先行きを考えれば国内で代替先を探すほかない。

     

    (4)「代替先として注目されるのがファーウェイだ。同社は米国の制裁を受けながらも、中国半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)と組み「7ナノ世代」と呼ばれる高性能な半導体を実用化し、搭載したスマートフォンを昨年8月に発売した。ファーウェイは、AI半導体「アセンド」を活用した機器やサービスを外部へ売り込んでいる。中国ネット大手の幹部はアセンドについて「エヌビディア製より性能は劣るが、問題なく使える」と話す」 

    ファーウェイが、中国国内のAI半導体製造先として期待が掛っている。性能は劣るとされる。 

    (5)AI半導体の国産化に期待が広がる一方で課題は量産化だ。米商務省は海光など中国半導体メーカーの多くを輸出規制の対象に指定している。こうした企業は自前の生産設備を持たず、半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)などとの取引が制限されている。量産化の取り組みは、ファーウェイにとっても道半ばとされる。上海を拠点とする調査会社86リサーチのアナリスト、チャーリー・チャイ氏は、ファーウェイのアセンドについて「エヌビディア製と性能は近いが、製造工程などの問題により将来は差が広がる可能性がある」と指摘する。一部報道によると、アセンドの歩留まりは2割強にとどまるとの見方もある」 

    ファーウェイのアセンドは、歩留まりが2割強とされる。これでは、コストが跳ね上がらざるを得ない。普及の壁になろう。

     

    (6)「中国政府傘下の調査会社は1月、中国のAI産業の世界シェアが35年に3割を超える見通しを示した。ただ半導体の国産化が滞れば、米国などとの技術格差が広がりAIの性能も劣後する。逆風下でファーウェイなどが技術開発をどこまで突き進めるかが、今後の中国のAI産業を左右する」 

    ファーウェイは、「7ナノ」半導体を製造して自社のスマホ新製品へ搭載して注目された。だが、「マルチパターニング技術」という面倒な過程で製造されたことが判明している。従来1回で済む露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせるものだ。手間暇かかる上に、ズレを生じやすい難点がある。「マルチパターニング技術」は、まさに「手作り」同様の製作過程だ。名人芸のようなもので、とても量産化は不可能とされる。AI半導体もこの手法を用いるのであろう。商業ベースには乗らないのだ。

     

    caedf955
       

    韓国の消費者行動に異変が起こっている。国内物価の上昇と高金利が長期化していることで、割安な海外へ目が向いているのだ。海外旅行は、日本が定番となっており「済州島旅行」を上回る人気だ。耐久諸費財は、個人輸入で海外から購入するという「国際化」が、国内市場の空洞化を生んでいる。

     

    『中央日報』(2月2日付)は、「旅行は海外、消費は個人輸入で エンデミックのジレンマで内需ダメージ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国では、コロナ禍のソーシャルディスタンスが解除されれば消費が増えるだろうという期待とは裏腹に内需不振が続いている。海外旅行に出かける人々が増えたうえ、海外からの直接購入(個人輸入)額まで歴代最高を記録しながらだ。特に、ソル(旧正月)を控えて小商工人(自営業者)や伝統市場の商人が感じる体感景気はこれ以上なく冷え込んでいる。

     

    (1)「韓国統計庁は2月1日、昨年の小売販売が前年比1.4%減り、2022年(-0.3%)に続いて2年連続で減少した。昨年の減少幅は2003年(-3.2%)以降、20年ぶりに最大となった。内需不振が長期化し、さらに深くなったということだ。韓国政府は高金利とウォン安の影響で消費が減少したと説明した。海外旅行と個人輸入の増加も相当な影響を及ぼしたという分析だ」

     

    23年の小売販売額が、前年比0.3%減と2年連続の減少だ。海外旅行と個人輸入の増加も相当な影響を及ぼした、とされている。それにしても、底の浅い経済である。

     

    (2)「国内居住者の海外消費を意味する国外消費支出は、昨年1~3月期に前年同期比85.9%も増加した。4~6月期(85.1%)、7~9月期(80.8%)など、通年で80%超える増加率を示した。韓国観光公社によると、海外旅行に出かけた内国人数は昨年2271万6000人で、前年(655万4000人)に比べて246.6%増加した。海外旅行が増えて国外支出が同時に増加した。使えるお金は限られているが、海外消費が増えれば国内支出は減る」

     

    国外消費は23年、前年比80%も増えるという異常な事態となった。国内で消費せず、海外でたっぷりと使った感じだ。この恩恵は、日本のインバウンド消費増となっている。

     

    (3)「内需不振は、経済成長率に悪影響を及ぼす。韓国銀行経済統計局のシン・スンチョル局長は、「経済成長率自体が低くなったうえに民間消費もまた成長率よりも下回る流れを見せている」と話した。内需不振は今年も続く展望だ。現代経済研究院経済研究室のチュ・ウォン室長は「現在としては金利が下がらない限り、内需が反騰するほどの余地がない」と述べた」

     

    今年の民間消費も不振予想である。金利が下がらなければ、支出は国内へ向かないという想定である。

     

    (4)「耐久消費材の消費形態も変わった。韓国内のショッピングサイトではなく、アリエクスプレスなど海外の個人輸入サイトを通した消費が増加した。昨年、オンライン個人輸入額は6兆7567億ウォン(約7455億円)を記録した。前年(5兆3240億ウォン)に比べて26.9%も増えて歴代最高を記録した。値段が安い中国製品の攻勢が本格化し、内需を脅かしている形だ」

     

    耐久消費財の購入は、海外からの個人輸入で行うという「国際派」である。日本では、ちょっとみられないパターンだ。

     

    (5)「中国からの個人輸入額は、3兆2873億ウォンで、1年間で倍以上増えて全体海外直接購入の48.7%を占めた。従来は、米国が1位だったが中国に逆転された。衣類・ファッション商品(43.5%)、生活・自動車用品(35.9%)、スポーツ・レジャー用品(65.5%)で増加が目立った。高物価の影響で少しでも値段が安い製品を探すなかで中国個人輸入に目を向けるようになったという分析だ」

     

    個人輸入先は、中国がトップとなった。従来は、米国が首位であった。耐久消費財購入を海外輸入で代替する場合、修理などの事態を想定していないのだろう。リスクの高い買い物である。

     

    (6)「小商工人市場振興公団は2月1日、1月の小商工人の景況判断指数(BSI)が48.1で、前月比10.9ポイント下落したと明らかにした。これは、2022年2月の37.5以降、23カ月ぶりに最も低い数値だ。BSIは100以上なら景気実績の好転を、100未満なら景気実績の悪化を意味する。体感景気悪化の理由として、1位は「景気低迷による消費減少」(46.5%)だった。天気など季節要因(18.8%)と流動人口・顧客減少(18.4%)が続いた」

     

    小商工人の景況判断指数が悪化している。小売販売額が、20年ぶりの落込みである。零細商工人は、その影響を受けている。

    a0960_008527_m
       

    中国の知識人が現在、大挙して日本へ身を寄せているという。中国の言論弾圧を逃れて、日本から情報発信している人たちである。中国知識人が日本へ移ってきているのは、今回が歴史的に3回目とされる。 

    1回目は、日清戦争が終結した1895年ごろだ。康有為、梁啓超などの改革派が日本に逃れてきた。孫文、黄興をはじめとする革命派も日本を拠点とした。2回目は、1978年に鄧小平による改革開放が始まってからの日本ブームである。そして、現在の流れは3回目である。 

    『東洋経済オンライン』(2月3日付)は、「習近平の手を逃れ、中国のインテリが東京に大集結 中国国内の政治対立が日本を巻き込み始めた」と題する記事を掲載した。 

    日本に中国から多くの知識人が押し寄せている。中国で言論統制が厳しさを増しているためだ。属性はジャーナリスト、人権派弁護士、ドキュメンタリー映画の監督、出版業者、学者、芸術家と多岐にわたる。あたかも清朝末期に日本で西洋思想を吸収した後に帰国し、辛亥革命(1911年)をリードした先人たちのようだ。

     

    (1)「東京大学大学院総合文化研究科の阿古智子教授(現代中国研究)は、2010年ごろから中国の知識人の受け入れを積極的に行ってきた。日本に拠点を移す中国知識人の増加を感じている。阿古教授は2022年に、東京・中野にある自宅の一部を「亜州コモンズ」と名づけて開放し、宿泊者を受け入れている。ここには言論活動への統制が強まる中国や香港からのゲストが宿泊してきた。政治的事情で弁護士資格を奪われた女性弁護士、ゲイのジャーナリスト、#MeToo運動を牽引してきた女性とそのパートナーなどだ」 

    東大の阿古智子教授は、自宅を開放して中国知識人の宿泊を受入れている。中国で弾圧されている知識人への支援である。 

    (2)「現在の香港では、政治的な講演会などを開催することが難しくなっている。かつては香港中文大学が、中華圏のホットトピックについて忌憚なく議論できる場だった。阿古教授は、「東大をそういう場として提供することで、中華圏の言論活動を活発にし、議論を深めていきたい」と語る。日本における知識人の大集合には、仕掛けられた側面もある。国際交流基金や外務省のプロジェクトとして、日本とパイプがある人物を日本へ招聘する動きが2000年代後半に本格化した。その後、この取り組みは中国で影響力のある知識人を呼ぶ方向へさらに進化した。いま中国から拠点を日本に移している著名な知識人には、そうした招聘で日本に足を運んだことがある人が多い」 

    日本政府の国際交流基金や外務省のプロジェクトで、中国知識人との交流を深めてきた。それが、現在の日本避難への流れに繋がっている。

     

    (3)「こうした知識人と強固なネットワークを形成したのが、先ごろ駐中国大使を離任した垂秀夫(たるみ・ひでお)氏だ。垂氏はメディアで「チャイナスクールでありながら中国に毅然とした態度で臨んできた」と評されることが多いが、同時に中国で人権派を含めた幅広い人脈を築いてきた。実はそれこそが「垂さんの外交官として最大の功績」(外務省関係者)という評価すらある」 

    垂秀夫・前駐中国大使は、中国で人権派を含めて広範囲な層との人脈をつくってきた。それが、現在の「日本避難」を定着させた原動力にもなっている。 

    (4)「退官したばかりの垂氏は、次のよう語る。「日本側が、結果的に共産党を支援する形となった天安門事件以降、民主化志向の強い知識人は日本に対する関心を失っていた。だが、一連の訪日で民主主義と法の支配が定着した日本を再発見した。また、東日本大震災発生時期に訪日し、日本人の秩序ある行動に深く感動した者もいた」と。そうした中国の知識人の中には、日本の選挙期間中に訪日し、民主主義の実情に触れる機会に遭遇し感銘を受けた者もいたという。街頭演説する安倍晋三首相(当時)と握手できたなどと、とても喜んでいる様子だったそうだ。中国国内では、庶民が最高指導部と直接触れ合う機会はほとんどないからである」 

    中国知識人は、日本の政治状況に触れて民主主義の実像を知った。これが、日本を避難先にした大きな理由である。

     

    (5)「最近、来日(移住)する中国人は富裕層が含まれている。これら富裕層が、知識人を支えて、新たな政治的勢力を育てる可能性だ。垂氏は、「日本に逃げてくる中国人を中国共産党の一味と捉えるべきでなく、こうした人々を逆に戦略的に取り込むくらいの発想や度量が求められるのではないか」と指摘する。中国の知識人が日本に来る背景には、香港の自由度が低下する中で、中国政府への抗議活動の前線が香港から東京に移ってきているという側面もある」 

    かつては、香港が中国政府への抗議の場であった。その香港が中国の支配下に組み入れられたので、日本が香港に代わってその役割を果している。日本移住の富裕層が、同胞の知識人を支援できるかもポイントである。 

    (6)「中国の現状を変えたいと願う人々の集結は、今後長期的に日本、そして中国に何をもたらすのだろうか。20世紀初頭のように新たな思想的新潮流が東京で生まれ、やがて中国の体制を変えるほどのインパクトを持ちえるのだろうか。日本への知識人の招聘を進めてきた東大の阿古教授は「まだまだですね」と話す。現時点で体制変革にコミットする中国人は多くない。「中国が経済的にも軍事的にもかなり厳しい状況になった時に、どう声を上げるかですよね」。たとえば台湾有事などが本当に差し迫った時には、在日中国人により何らかの組織が立ち上げられるのではないかとの見方だ」 

    中国が台湾有事の際に、日本へ避難している知識人が反対組織として立ち上がるかどうか。

     

    a0005_000022_m
       

    中国共産党の機関紙、人民日報は2日午前、中国が「楽観」に満ちているとの論評を配信した。だが、数時間のうちに中国本土の株式相場は急落し、ソーシャルメディア上には皮肉な投稿が広がった。株式市場は、株価急落で信用取引を行っている向きへマージンコール(追加担保の差し入れ要求)を要請している。応じられなければ、見切り売りでさらなる株価急落へ拍車を掛ける。最悪事態だ。

     

    人民日報はなんと現実を無視して、国民の生活と幸福を向上させる政府の取り組みをたたえる論評を掲載した。「人民の利得感や幸福感、安心感は大幅に改善された」と主張したのだ。中国本土では、9日から春節(旧正月)の大型連休が始まる。この論評は、旧暦での新年入りを前に経済と株式市場に対する懸念の高まりに対抗することを意図したものであろう。それにしても、なんとも皮肉な結果になった。

     

    『ロイター』(2月2日付)は、「中国株下落でマージンコール増加 保有株売却への懸念強まる」と題する記事を掲載した。

     

    中国株式市場では1月の株価下落を受けて、マージンコール(追加担保の差し入れ要求)が相次いでおり、株価が一段と下げれば、投資家が大量の保有株売却を迫られるのではないかとの懸念が浮上している。

     

    (1)「中国株式市場の優良株で構成するCSI300指数は1月に6.3%下落し、5年ぶりの安値を付けた。政府が一連の支援策を打ち出したが、景気低迷で投資家心理が悪化している。株価が下落する中、上場企業の大株主は保有株を担保とした融資でマージンコールに直面している。浙商証券の試算によると、これに伴って売却を迫られるリスクのある株式は総額1836億元(260億ドル)相当で、昨年11月末から26%増加した。また、信用取引で株式を購入していた投資家も、株価下落でマージンコールに直面。こうした投資家は1月中旬に436億元相当の株式の売却を迫られたという。上海の大手証券会社の関係者は「われわれは毎日、マージンコールを行っている。相場の下落が続いているため、マージンローン(証券担保融資)を返済し、投資をやめた人もいる」と述べた」

     

    株価急落の影響は、多方面に及んでいる。株式を担保にした融資では、増担保を請求されている。信用取引の清算をする人も出るなど、株価の波乱要因になっている。

     

    (2)「国泰君安証券は、株価が現在の水準からさらに10%下落すれば、1000億元近いマージンコールが発生すると予想。さらに20%下落すれば、約3600億元相当の株式が売却される可能性があると試算している。確かに、2015年の中国株バブル崩壊時に比べると、信用取引総額は減少している。規制当局もシャドーバンキング(影の銀行)を通じた不正融資を取り締まっている。投資家は急速にレバレッジの解消を進めており、マージンローン残額は1月に1000億元近く減少し、1年ぶりの低水準となる1兆5500億元となった。ピークを付けた15年の水準を30%下回っている」

     

    株価が、現在の水準からさらに10%下落すれば、1000億元(約2兆500億円)近いマージンコールが発生する。さらに20%下落すれば、約3600億元相当(約7兆4000億円)の株式が売却される可能性があるという。地獄をみる思いだ。

     

    (3)「現在のマージンローン残額は中国株式市場の時価総額の2.3%に相当する。ただ、中国経済は新型コロナウイルス後の景気回復のもたつき、不動産危機の深刻化、地政学的な緊張に見舞われており、レバレッジの解消はすでに脆弱な投資家心理をさらに揺るがしかねない」。

     

    マージンコールの増加は、衰弱している中国株をさらに痛めつける感じになって来た。投資家心理は、完全に離散している。

     

    (4)「大手証券会社の上海支店に勤務するある関係者は、毎日、十件以上のマージンコールを行っているとし「大半の顧客は追加の担保を差し入れるか、資金返済のため保有株を売却している」と述べた。上場企業の大株主の間でも、保有株を担保とする融資で銀行や証券会社のマージンコールに直面する例が増えている。今年はこれまでに上場企業100社近くが、大株主が追加の担保を差し入れたと表明。保有株の売却を迫られるリスクはまだないと強調している」

     

    大株主は、銀行から株式を担保にして借入れていれば、マージンコールを請求される。株価急落の影響は八方に及ぶのだ。これが、中国経済を蝕んでいく。

     

    a0960_008564_m
       


    韓国の大学(短大を含む)進学率は、100.3%(2021年)である。100%を越えているのは、社会人の進学であろう。世界で8位である。日本の61.2%(2020年:世界52位)をはるかに上回っているのだ。韓国は、これだけ教育熱が盛んであり褒められるべきことだが、現実は逆になっている。現場で汗水出して働くことを忌避し、一流企業でホワイトカラーになることを夢見ているのだ。その原点は立身出世主義であり、朝鮮李朝の公務員試験である「科挙」への憧れを未だに引きずっている社会だ。

     

    『中央日報』(2月2日付)は、「韓国人の教育熱は健全か」と題するコラムを掲載した。筆者は、呉世正(オ・セジョン)ソウル大元総長である。

     

    韓国国民の「教育熱」は世界的に有名だ。例えば学齢人口の大学進学率は世界最高水準であり、小中高校生の私教育費は年々増えて2022年には26兆ウォン(約2兆8800億円)に達した。韓国私教育研究協議会の調査によると、韓国の私教育費総支出額は世界私教育費の4分の1程度と推定されるという。全世界人口の1%にもならない国で私教育費は世界の25%程度を支出するというのは相当な教育熱がなければ不可能だ。

    (1)「こうした教育熱が韓国の短期間での産業化、民主化に大きく寄与したのは事実だ。一国の経済が成長するためには生産従事人員の生産性が大きな役割をするが、韓国は高い教育熱で人的資本が急速に増え、超高速経済成長が可能だったということだ。しかし、最近は韓国の教育に対して多くの不満が出ている。代表的なのが「大学を卒業しても使える人材がいない」という企業の不満だ。なぜ世界的な教育熱を持つ国で世界的な人材が育たないのか。重要な理由の一つとして、韓国の教育熱は個人の出世欲によるものであり、健全なものではないという点が考えられる。その間、韓国では良い学閥が社会的成功の道だったため、ただ一流大学に入学することが勉強の目標になってしまった

     

    ソウル大学の元総長が、韓国の教育熱は立身出生主義と認めている。同感である。李朝の科挙と大学入試が同じ感覚で受止められていることは間違いない。それだけに、大学入試は、国民的な話題になっている。警察のパトカーが、大学入試試験に遅れそうな受験生を送った話が美談になっている国だ。

     

    (2)「一つの例は、高校の内申の絶対評価だ。現在の相対評価は同じクラスの友達を競争者にして協同精神を育てることができないという点のため、多くの教育学者は絶対評価を主張してきた。ところが絶対評価をすれば高校別の成績水増しを防ぎにくいという理由でまだ導入できずにいる。高校学点制が施行されながら教育部(文部省)は高校内申絶対評価制を導入すると何度か公言したが、最近発表された2028年大学入試制度でも相対評価と絶対評価を併記する形態に後退した」

     

    韓国の大学入試では、高校の内申書が重視されているという。日本の大学入試では、推薦入試においてのみ内申書を重視する。だが、一般入試は学力試験一本である。高校の成績は、入試に反映されていると割り切れば、相対評価と絶対評価も関係なくなる。

     

    (3)「多様な分野の人材を選抜するという趣旨の学生簿総合典型の場合も同じだ。複雑多端な現代社会で標準化された試験(大学修学能力試験)の成績という単一基準で学生を並べるのは時代錯誤的だ。しかし学生の多様な校内外活動を評価する基準が主観的で親の影響力が作用するという非難があり、学生簿に記載できる内容が大幅に縮小された。結局、学生の多様な才能を高めるという教育的価値は公正性が疑われるという世論に押されて犠牲になった」

     

    韓国は、学歴社会だけに大学入試が社会の一大イベントになっている。こういう取り上げ方をしないで、そっとしておくべきだ。人生は、どこの大学を卒業したかで決まらない。その後の生き方が問われるのだ。たかが、4年間の大学生活によって、人間の一生を決められるとは不条理そのものである。韓国の社会的な矛盾は、全てここから始まっている。現代が、閉塞した李朝の継続でないことを再認識すべきだろう。

     

    (4)「激しい入試競争とこれによる私教育費の負担は、若者が出産をためらう主な理由になっている。かつて国家の発展を牽引した教育が、今では国家消滅の一つの原因として作用しているということだ。しかし、入試制度は単なる教育制度ではないため、教育部の努力だけではこれを解決するのが難しく、根本的に社会的格差と競争を緩和する政策などが必要となる。結局は大統領がしなければならず、教育に対する国民の認識の変化が同時になければいけない。韓国の教育熱が、単純な出世欲でなく未来社会の真の人材を育てる方向に一段階成熟してこそ、入試制度も先進化し、子孫も正しい教育を受けることができるだろう」

     

    下線部の指摘は、その通りである。未来社会に生きる人材を育てることこそ課題である。

    このページのトップヘ