勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年02月

    テイカカズラ
       

    IMF(国際通貨基金)は2月2日、中国経済の年次報告書を発表した。長期化する不動産不況を巡り、「存続不可能な不動産企業の撤退を加速させるべきだ」と指摘した。中国政府は、金融緩和で不良債権を凍結して、EV(電気自動車)・電池・太陽光発電の3事業を支援強化して景気回復を図る「待ち姿勢」である。IMFは、中国政府の姿勢へ真っ向から反対している。今の状態が続けば、25年の成長率は2.3%へ急落すると警告した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月2日付)は、「中国25年成長2.3%に失速も IMF 不動産対応遅れなら」と題する記事を掲載した。

     

    国際通貨基金(IMF)は2日、中国経済の年次報告を発表した。不動産開発企業の整理・再編などの対応が遅れれば、2025年の成長率が2.%に下振れする恐れがあると予測した。都市に住む世帯の増加ペースなどが鈍り「新築住宅を買う需要が今後10年で35〜55%減る」と試算した」

     

    (1)「24年の実質経済成長率、4.%と予測した。財政出動の拡大などを踏まえ、23年10月の前回予測から0.4ポイント引き上げた。それでも、不動産市場の低迷や外需の伸び悩みが響き、23年(5.%)より減速する。先行きの見通しは下振れリスクが上振れを上回るとみる。中国の経済や財政は不動産市場に依存してきた。同市場が想定以上に縮小すれば民間需要が落ち込むとした。地方の財政難にも拍車をかけ、物価が上がりにくい「ディスインフレ」圧力につながると指摘した

     

    現状は、「ディスインフレ」ではない。金融引き締めによって起こった不況でないからだ。不動産バブル崩壊による不況ゆえ、「デフレ」と言い換えるべきだ。間違いである。

     

    (2)「マンションの販売不振が続き、価格に下落圧力がかかる。家計はさらなる値下がりを期待して購入をためらうため、販売が一段と落ち込む悪循環に陥っている。需要に見合った価格調整が進まなければ、民間の固定資産投資も持ち直しにくい。IMFは住宅の価格調整や開発企業の再編が遅れた場合、25年の成長率が標準シナリオより1.8ポイント下振れする恐れがあるとはじく。1月時点で4.%と予測した25年の成長率は2.%に失速する。中長期的にみても新築住宅の需要は増えず、市場の本格回復を遅らせかねない。都市に住む世帯の増加ペースが落ち、再開発などに伴う住み替え需要も減るため、今後10年間で新築購入の需要は35〜55%減るとはじいた」 


     最近のIMFは、中国を甘やかす見通しを発表しなくなり、ストレートに言い切っている。それだけ、危機感が迫っているのだ。下線部の指摘も的確である。今後10年間で、新築購入の需要は35〜55%減ると推計されている。20代から30代の人口が減っているので当然である。

    (3)「IMFは不動産市場の混乱を防ぐため、経営が行き詰まった開発企業の再編のほか、予約販売物件の早期完成を急ぐべきだと強調した。中国では20〜21年に強めた政府の不動産金融規制により、資金繰り難に陥った開発企業が工事を停止する例が全国に広がった。引き渡しの遅れへの不安も住宅取引を冷え込ませた。IMFの試算によると、中国の債務残高(除く金融部門)は23年、国内総生産(GDP)比で300%を超えた。新型コロナウイルス流行前の19年から50ポイント近く上昇したが、このうち3分の2は地方政府傘下の投資会社である融資平台を含めた政府部門の債務だ

     

    下線部では、中国の債務残高の対GDP比は300%を越えたとしている。現実は、350%を超えている。

     

    (4)「IMFは、地方財政問題をめぐり、中央政府の主導で地方債務残高を圧縮するよう提起した。融資平台は多額の「隠れ債務」を抱えており、負債の償却や国有資産の売却を含む破産処理を通じて再編すべきだとした。財政の安定に向けて税制改革の必要性にも言及した。個人所得税の課税対象を広げて税率も高めるよう提言。固定資産税に相当する不動産税の全国導入も中期課題として求めた

     

    IMFは、現在も税制改革で注文をつけている。固定資産税の必要性だ。同時に、相続税も設けるべきである。税制制度が、まったく恣意的になっている。全て、土地国有制度がもたらした歪みである。

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    中国経済は、末期的症状をみせている。ネットから経済悲観論を一掃しているからだ。戦時中の日本国民が、「大本営発表」で敗北を勝利と騙されていた事態と瓜二つの状況になっている。中国週刊誌『財新』(12月25日付)は、次のような社説を掲げ当局から削除された。「事実から真実を求めるイデオロギー路線の再検討」と題する社説だ。詳細は後で取り上げる。習氏にとっては、最も忌避したい社説であろう。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「中国のネットから消える経済悲観論」と題する記事を掲載した。 

    最近話題になった中国のエコノミストやジャーナリストの論評がインターネットから姿を消した。中国政府が苦境にある経済を実際より良く見せるため、検閲を強化しているとの懸念が広がっている。習近平・中国国家主席の側近らは1月、「中国経済について明るい見通しを広める」よう当局に促した。昨年12月には同国の最高情報機関である国家安全部が異例の警告を出し、経済について否定的意見を述べる人物を警戒するよう呼び掛けた。「経済安全保障は国家安全保障の要の一つだ」とした。

     

    (1)「最近消えた論評の一つは、市場改革を支持することで知られる北京の経済メディア『財新』が昨年12月に掲載した社説だ。中国経済が崩壊の危機にひんしていた1960年代から1970年代にかけての文化大革命に言及し、政府が経済的課題に直接対処するよう求める内容だった。文革当時、当局者が「状況は素晴らしい」と主張する裏で、人々の生活は困窮していたと解説していた。記事はまた、当局者に「事実から真実を求める」よう促した。これは毛沢東や、その後継者で40年にわたる改革開放政策を先導した鄧小平などがしばしば口にした、中国古来の格言だ。「事実から真実を求める姿勢を貫かなければ、不適切な政策を適時修正することはできない」とするこの記事は無署名で、毛沢東生誕130周年の前日に当たる12月25日に掲載された。数時間の内にこの社説は財新のウェブサイトから消えた」 

    北京の経済メディア『財新』の社説は、当局者に「事実から真実を求める」よう促した内容だ。「実事求是」(じつじきゅうぜ)と言われている。この言葉は、中国共産党の雑誌名にもなっている。習近平氏にとっては、急所を突かれた社説であろう。『財新』は、習氏の盟友であった王岐山氏が後ろ盾になっているとされる。盟友からも「三行半」を突きつけられた形だ。 

    (2)「同じ日、中国国有・中泰証券のエコノミスト、李迅雷氏は、中国のニュースサイト「第一財経」に掲載したコラムで、中国指導部が低所得層を支援する措置を取らない限り、家計の消費不足は続くと警鐘を鳴らした。李氏はまた、人口の約7割に当たる約9億6400万人が月収2000元(約4万1200円)未満で生活していることを示す北京師範大学の調査結果を取り上げた。このデータは、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」で瞬く間に拡散したものの、公式トレンドリストから消えた。李氏のコラムも第一財経のウェブサイトから消えた。通信アプリ「微信(ウィーチャット)」の李氏の公式アカウントでも記事にアクセスできなくなり、「規約違反のため、このコンテンツは閲覧できません」のメッセージが表示された」 

    中国人口の約7割に当たる約9億6400万人は、月収2000元(約4万1200円)未満で生活している。これは、北京師範大学の調査結果で客観的データである。当局は、これも「世を惑わす」として取締り対象となった。

     

    (3)「中国政府が経済に関する言論に神経をとがらせている背景には、成長鈍化がある。2023年の国内総生産(GDP)成長率は目標の5.2%に達したとされているものの、伸び率は新型コロナウイルス流行期を除くと数十年ぶりの低さだった。中国経済は長引く不動産不況や輸出鈍化といったさまざまな逆風に直面している。当局は消費者や企業の景況感を回復させるため、金融システムへの流動性供給を増やすなどの措置を講じた。それでも、住宅価格は主要都市で下落し、外国人投資家は急ピッチで中国から資金を引き揚げ、国内株式市場は数年ぶりの大幅下落に見舞われている」 

    中国経済は、まさに「底なし沼」という最悪状態だ。だが習氏は、「中国式経済政策」を実践すると胸を張っている。経済政策には、合理性が求められる。中国式経済政策は、政治色が強く「共産党不滅=財政赤字不拡大」という原則に縛られている。この呪文は、一時的に解かなければならない。その決断がつかないのだろう。

     

    (4)「統計の数字が悪くなるにつれ、中国政府は経済に関する情報の統制を強化。若者の失業率が過去最悪の21.3%に達すると、統計局は昨年8月に突然、公表を中止した。12月に発表した新たな算出方法に基づく若者の失業率はわずか14.9%だった。規制当局は一部のデータベースへの海外からのアクセスを制限し、外国のデューデリジェンス(資産精査)会社の事務所を家宅捜索した。景気低迷の主因の一つは消費者や民間企業の信頼感低下だとエコノミストは指摘。消費意欲が後退し、企業は新規投資を控えているという。経済に関する自由な言論を抑圧しているのは、中国指導部の不安の表れだ。オックスフォード大学中国センターの研究員ジョージ・マグナス氏はこう話し、情報や論評の統制は不透明性と政策ミスのリスクを高めるだけだと述べた」 

    中国は、経済実勢の悪化とともに言論統制を強めている。「反スパイ法」もこの一環であろう。中国国民は、当局の誘導をそのまま信じていない。「上に政策あれば下に対策あり」で、必ずその裏をかくという才覚を持っている。国民を侮ってはならないのだ。

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    日本企業が米国で買収攻勢に出ている。日鉄によるUSスチール合併(米当局の承認待ち)に続いて、ハウスメーカー積水ハウスがM.D.C.ホールディングスを49億5000万ドル(約7310億円)で買収すると発表した。この買収は、住宅建設部門における日本企業の買収としては過去最大規模になる。積水ハウスは、2022年の引き渡し数ベースにおいて全米5位の住宅建設会社へと一気に駆け上る。

     

    米国は、22年来の金融引き締め策により、30年物の住宅ローン金利は8%近くまで上昇している。40万ドル(約6000万円)のローンの月々の支払いは、1100ドル(約16万5000円)ほどに膨らんでいる。こうした悪条件で、住宅販売額は記録的な低水準に落ち込んでいる。積水ハウスは、米国の業界再編成の機会を狙って、吸収合併に乗り出した。日本企業が、合併を仕掛けるほど「自信」を持つに至ったのだ。大きな変化である。

     

    『フィナンシャル・タイム』(1月25日付)は、「日本の住宅会社、米若者の救世主となるか」と題する記事を掲載した。

     

    業界の専門家らによれば、米国の住宅建設市場は多数の企業によって驚くほど細分化されているが、今回の買収は早晩起こるはずだった統合再編の波の一部だと指摘する。アナリストらの計算によると、大手20社が市場の約40%を支配しているという。統合再編が進めば、供給が増え、住宅価格は低下して消費者に朗報となろう。若年層にとって住宅を購入し、独立できるチャンスが拡大する可能性がある。彼らは親と同居している主な理由の一つに、住宅価格が手の届かない高さにある点を挙げる。

     

    (1)「日本企業の重要性は、こうした機会を生み出す原動力としてますます高まっているようだ。大和ハウス工業もこの1月、積水ハウスによる買収に比べると小規模だが米国で戸建て住宅事業を買収した。これらの動きは、日本の住宅建設各社が野心を膨らませており、米国市場での買収先探しが新たな攻めの段階に入ったという『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の昨年の報道を裏付けている。大和ハウスや積水ハウス、住友林業はいずれも今、規模の面では米国での順位を上げている。この3社のM&A(合併・買収)を支援している銀行家らは、3社が事業拡大のための買収を終える気配は当分ないと明言する」

     

    米国流の住宅建設手法である「2×4」は、日本へ流入してすっかり定着した。この技術を本場の米国で「低コスト・高効率」として逆上陸する。日本企業が、米国の住宅企業と競争できる自信を付けてきたのだ。

     

    (2)「これら3社を含めた日本企業は、次の3つの日米の有利性を生かして米国市場へ積極策に進出するとみられる。

    1の差異が最も重要で、それは人口動態を巡る差異だ。日本は高齢化が進んでおり、毎年約50万人のペースで人口が減少する。

    2の差異は、金融面での差異だ。日本銀行が今年後半にも利上げサイクルに入るかもしれないとの期待は高まるものの、日本では今も大規模な金融緩和政策が続いており、金利を引き上げてきたほかの先進国とは全く異なる。

    第3の差異は、実務面にある。日本の住宅建設各社は効率的で、無駄を徹底的に嫌い、労働集約度の低い技術の確立では先頭に立っている。米国市場でかなりの手ごわい競争相手になる可能性があると指摘する」

     

    日本企業の優位性は3点あるという。

    1)日本企業は、人口減社会で激しい競争を繰り広げてきた。

    2)日本企業は、日本の低金利で勝負できる。

    3)日本企業は、技術力が優れ効率性が高い。

    以上のような3点を擁する日本企業が、米国企業に十分対抗できるとしている。

     

    (3)「日本の住宅メーカーは、効率性が高く安価に資本を調達でき、技術的優位性に優れているので、日本企業による米企業買収は存在感を高めるであろう。米住宅建設業界に明らかに新しい「緊張」を生み出しているとみられる。米住宅建設業界では統合再編が進む機運が高まっており、国内企業同士が買収されるのを防衛するために合併する可能性や、カナダや欧州など海外企業の買い手を巻き込む可能性もある」

     

    日本企業が、日本に止まっていても人口減という大きな壁にぶつかっている。となれば、移民増も期待できる米国住宅市場は「黄金市場」である。

     

    (4)「米国では、「木材とレンガ(建築資材)」が住宅コストの半分を占めるのであれば、規模の経済と安価な資本を入手できる企業が、業界では何よりの強みとなり成長につながる。住宅建設各社は、子どもたちに巣立ってもらいたいと願う米国の親のために、もっと速く、もっと安価に住宅を建設する必要がある」

     

    日本流の建設工法で、米国の住宅価格を引下げられれば、米国の若者が親元を離れて、独立生計を営むきっかけになる。こういう副次的な効果も期待されているのだ。

     

     

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    中国恒大集団の資産は、全て担保として差し押さえられている。中でも、香港の一等地にあるオフィスタワーと豪邸は、不動産不況で買い手がつかない事態になっている、中国恒大集団の清算の前途は多難となってきた。

     

    香港の不動産不況が長期化し、住宅ローン残高が持ち家の評価額を上回るローンの借り手が増えている。香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)が1月31日発表した統計で判明した。HKMAによれば、昨年12月末時点でいわゆる「ネガティブエクイティー」状態となっている住宅ローンは、1313億香港ドル(約2兆4600億円)と、2003年以来の高水準だ。世界中の多くの不動産市場は、金利上昇を背景に住宅価格の下落に見舞われている。香港は、経済の低迷が続く中国への依存など、さらなる逆風に直面している。『ブルームバーグ』(2月1日付)が報じた。

     

    『ブルームバーグ』(25日付)は、「中国恒大、売れないオフィスタワーと許氏の豪邸-債権者に悪い兆候」と題する記事を掲載した。

     

    コンサルティング会社のアルバレス・アンド・マルサルは今週、経営に行き詰まった中国の不動産開発会社の清算を担当することになったが、中国恒大の16億ドル(約2350億円)相当の旧香港本社ビルは、2022年に別の手続きで差し押さえられた後、いまだに売れていない。中国本土の代理店が投資家を引き付けようと手を尽くしたが売れなかった。

     

    (1)「住宅の売却も同様に難航している。中国恒大の創業者、許家印氏が所有していた高級住宅も22年に差し押さえられたが、今も売りに出されている。二つの優良物件がいずれも売れないということは、中国恒大の資産を整理する作業の困難を浮き彫りにする。清算は香港で過去最悪級の不動産不況の中で進められており、適切な価格で物件を売却することが難しくなっている」

     

    英コンサルティング会社サヴィルズは最近、アジアの金融ハブとしての歴史を誇ってきた香港の住宅価格が、今年10%余り下落し同社がモニターしている世界30都市の中で最悪になるとの予測を公表した。HKMAによると、ネガティブエクイティーローンは全住宅ローン残高の約7.1%を占める。

     

    香港は現在、高い借り入れコストやマクロ経済を巡る懸念、人口減少に端を発した不動産不況のただ中にある。昨年の不動産取引件数は過去33年で最少となり、住宅価格は17年以来の低水準となった。政府は取引を促進するためさまざまな施策を導入しているが、アナリストは今年の香港住宅価格は変わらず、もしくは下落すると想定している。このような厳しい状況下では、恒大集団の担保物件は値下げするほかあるまい。

     

    (2)「コリアーズ・インターナショナル・グループの調査責任者、キャシー・リー氏は、債権者は「恐らく値引きを提示せざるを得ないだろう」と述べた。中国恒大の旧香港本社ビルの売却に時間がかかっていることは、価値が下がり続ける可能性の高い市場で買い手の期待に応えるために価格を調整しなければならないことを示していると同氏は付け加えた。中国当局が中国恒大の本土のプロジェクトを売却対象とすることは疑問視されるため、焦点は中国本土以外の資産となりそうだ。裁判所文書によると、中国恒大は海外に224億香港ドル(約4200億円)余りの資産を保有しており、そのうちのほぼ70%にあたる155億香港ドル相当は香港の不動産物件だという」

     

    香港の住宅価格が、今年10%余り下落し世界30都市の中で最悪になると予測されているほどだ。恒大集団の担保物件の値下げは不可避だ。


    (3)「湾仔(ワンチャイ)地区にある旧中国恒大本社ビルを含むこれらの不動産には、書類上では抵当権が設定されている。これは他の債権者が担保としていることを意味し、債券保有者のような無担保債権者は高値で売却されない限り支払いを受けることが難しくなる」

     

    債券は、無担保が普通である。企業の信用だけが頼りになるが、恒大集団は破産状態である。信用度はゼロとなっている以上、債券保有者の立場は最も弱い立場だ。

     

     

     

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    韓国では、結婚に当たり「手鍋さげても」というケースは消えているという。かつては、新居がワンルームであったが、今やマンションでなければ結婚しない。こういう風潮が高まっているのだ。マンションに住むには、二人の年間合計収入が700万円以上も必要とする。それ以下では、結婚を諦めるというのだ。「愛情より金銭」が、現代韓国の結婚条件になっている。これでは、出生率低下は不可避であろう。

     

    『中央日報』(2月1日付)は、「結局『ある人』が結婚する…新婚42%が年俸7000万ウォン」と題する記事を掲載した。

     

    公共機関に勤めるチャさん(33)は今年に入って5年間交際していた恋人と別れた。結婚を計画していたが、首都圏にマンションを用意する過程でいさかいが増えたためだった。チャさんは「2人合わせれば年所得が6000万ウォン(約660万円)程度だったが、どう計算してみても会社の近くにマンションをチョンセで借りて利子を返して生きていく自信がなかった」とし「子どもなんて考えることすらできず、お金のために争うのに疲れて結局あきらめた」と吐露した。

     

    (1)「これは特異な事例ではない。最近2カ月間、結婚情報を共有するインターネットのあるコミュニティに「婚約を破棄した」あるいは「婚約破棄を悩んでいる」などとして投稿があった36件中16件(44.4%)はお金に関する問題だった。伝統的な離婚・婚約破棄の理由である嫁姑の葛藤や性格の不一致は今やお金よりも珍しい問題になった」

     

    婚約破棄などの悩みが、44%もあってトップという。嫁姑の葛藤や性格の不一致よりも、金銭問題が主たる悩みになっている。

     

    (2)「韓国統計庁の1月31日の発表では、2015年30万3000件だった年間婚姻件数は2016年(28万2000件)に初めて30万件を下回った。2021年(19万3000件)には20万件ラインも崩壊した。昨年の統計がまだ発表されていないが、19万件台を記録する見込みだ。韓国内では婚姻以降に出産という流れである点を考慮すると、婚姻の減少が少子化の根本原因に挙げられる」

     

    年間婚姻数は、2015年の30万件から23年は19万件へと減ったとみられる。8年間で3割強の減少である。この裏には、マンション価格の急上昇が大きな影響を与えている。

     

    (3)「結婚しない理由が、お金が足りないことは統計でも確認される。新婚夫婦の平均所得は急増傾向にある。2022年新婚1年目の夫婦のうち世帯の年所得7000万ウォン以上の比率は41.8%だ。2015年には年所得7000万ウォン以上の新婚夫婦の比率が全体の23.2%にしか過ぎなかったが、7年間に倍近くに急騰した」

     

    2022年は、新婚1年目の夫婦で世帯の年所得7000万ウォン(約770万円)以上の比率が41.8%もある。合計年収が700万円以上であれば、マンションを購入できるのだ。

     

    (4)「各種オンラインコミュニティや結婚関連のインターネット掲示板には、次のような話が出ている。「ソウルに家一軒を買えないため婚約破棄の話が出る現実に気が遠くなる」、「家賃80万ウォンの自炊部屋に一緒に住みながら結婚準備をしているが、マンションに引っ越すとすると現在の所得ではとても手に負えないのが悩み」などの反応が出てくることもこのような現実を反映している」

     

    新婚生活が、ワンルームで始められないのは、完全な「見栄」であろう。儒教社会特有の悪弊である。結婚は、愛情が経済よりも大事なはずだ。価値観の倒錯が起っている。

     

    (5)「結婚生活が、ワンルームからを始める話は昔話となった。新婚1年目夫婦のマンション居住比率を分析した結果、2015年57.7%から2022年には65.2%に上昇した。マンション居住の比率が増加し続け、初婚夫婦の3分の2がスタートラインをマンションとしている。反対に連立・多世帯住宅居住比率は、この期間13.6%から12%に減少した」

     

    新婚1年目の住居が、マンションである比率は65%にもなっている。こうなると、見栄も手伝い「勝ち馬」に乗れない限り、結婚しないという事態になる。

     

    (6)「結局、「お金がある人」だけが結婚できる時代だ。高度成長期は、不動産価格が上昇しても所得の急増で居住条件を改善することができた。現在は、給料よりも不動産など価格上昇が速くなっている。結婚生活は、ワンルームから始めやがてマンションへ買い換える。こういう昔ながらの方法は難しくなった。結婚するスタートラインを準備できず、結婚生活を始められないという意味だ」

     

    韓国の現状は、なんとも侘しい話である。新婚生活は、ワンルームでなくマンションでなければダメだという現実が、韓国を出生率低下で最初に「消える国」へ導くのであろう。

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