EV(電気自動車)は、「ノーカーボン」(脱炭素)のシンボルとして持てはやされている。その裏で、情報を抜き取られるという情報漏洩問題が提起されているのだ。中国は、すでに米国企業テスラ車について、国内での走行禁止地域を定め拡大しているほどだ。米国商務省が、中国EVによる情報漏洩の「危険性」を強調しており、関税引上げと個人情報保護の大統領令を検討している。EVが、情報摂取の道具になるという警鐘である。
『ブルームバーグ』(1月31日付)は、「レモンド米商務長官、中国製EVは米安保上の重大なリスクもたらす」と題する記事を掲載した。
レモンド米商務長官は1月30日、中国製電気自動車(EV)について、米国家安全保障上の重大なリスクをもたらすと懸念を表明した。バイデン政権は中国から輸入される自動車への追加関税と、米国民の個人情報を保護する大統領令を検討している。
(1)「レモンド長官は大西洋評議会のオンラインチャットで、EVや自律走行車は「ドライバーや車の位置、車の周囲に関する膨大な情報を収集している」とし、「そのデータがすべて中国政府に渡ってもいいのだろうか」と訴えた。ブルームバーグは先週、極めてセンシティブな個人情報が外国の敵対勢力に流出するのを防ぐためホワイトハウスが大統領令を準備していると報じた。米政府高官は、中国がこの分野で特に脅威になると以前から警告しており、大統領令が発令されれば幅広い産業に影響が及ぶ可能性がある」
中国EVが、米国で膨大な情報収集しているという指摘は重要である。その情報が、中国へ流れているというのだ。米国政府は、この事態を防止すべく大統領令を検討している。事態は、ここまで進んでいる。かつて、中国製の鉄道車両輸入問題が起こったとき、米国では、情報収集の危険性が話題になり商談はストップした。鉄道車両に秘密のカメラが取り付けられて、その情報が中国へ流れる危険性である。
(2)「商務省当局者によると、レモンド長官の発言はこの大統領令に関連したものではなく、国家安全保障の観点から同長官が注目する技術分野が広がっていることが反映されているという。同当局者は内部情報であるとして匿名で語った。ホワイトハウスは現在、EVを含む一部の中国産品に対する関税を引き上げるかどうか検討している。比亜迪(BYD)など中国EVメーカーの車は欧州・中南米に輸出されているが、米国の27.5%関税も一因となり米国市場には参入できていない」
中国製EVは、トランプ時代に27.5%もの高関税を掛けられ、実質的な輸入禁止措置になっている。この高い関税をさらに引上げるという。事実上の「輸入禁止」にする。中国政府は、すでに中国国内でのテスラ車乗り入れ規制をしている。その実態を次のようだ。
『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「テスラ、中国で乗り入れ制限拡大 米中対立の安保懸念で」と題する記事を掲載した。
2021年に導入したテスラ車の軍事施設などへの乗り入れ制限は、23年には市民が利用する政府関連施設などに広がった。米中対立による安全保障上の懸念の高まりが原因とみられ、中国ブランド車への追い風にもなりそうだ。
(3)「上海市随一の観光スポット、外灘(バンド)に位置する会議・宴会場「ザ・グランド・ホールズ」は最近、「テスラを駐車場に止めることは禁止です」と、利用客がテスラ車で来場することを断っている。地元の住民によると、敷地の通過も認めない。その理由について従業員は「規則に従ったものだ」というだけで、詳細を明かさない。上海市政府系企業が運営しており、政府機関がテスラの乗り入れを制限していることに対応したものとみられる」
中国は、人混みの多い場所でのテスラ車の駐車を禁止している。理由は不明であるが、情報漏洩を危惧しているのだろう。
(4)「中国版のX(旧ツイッター)と呼ばれる微博(ウェイボ)によると、江蘇省や浙江省、湖北省の複数の地方政府機関で安全保障上の理由からテスラの利用を禁止する通知があった。四川省の拘置所では施設から50メートル以上離れた場所への駐車を求める通知が出された。通行規制も広がる。23年夏に四川省成都市で開いた大学生年代のスポーツの国際競技大会「世界ユニバーシティー大会」の期間中に、テスラ車の走行が制限されたルートがあった。重慶の繁華街でも昨年末、一部地域でテスラの走行を禁止する規制があった」
地方政府機関からもテスラ利用の禁止が出ている。
(5)「テスラ車が、駐車中に周囲の不審な動きを検出して録画したり警報システムを作動したりする機能を、中国政府が警戒しているとの見方もある。中国メディアは昨年8月、湖南省の地方空港が同機能で情報漏洩の懸念があるとの理由でテスラ車の乗り入れを禁止したなどと報じた」
中国が、自らテスラへの「嫌がらせ」を行っている。この行為が、米国政府を刺激しており、中国EVへのさらなる関税引上げへと繋がっている。中国EVが、情報摂取の機能を果しているとすれば、EUも輸入抑制へ動くであろう。中国EVにとって思わざる伏兵の登場である。



