日本企業による投資が増えているアジアの国・地域はどこか。投資額の伸び率をみるとシンガポール向けが4年間で約3倍となった。シンガポールは、政府が進めるオープンイノベーション政策が奏功して研究開発(R&D)拠点の集積地となっている。中国への投資は、経済活動の自由度が狭まるリスクの高まりから、多くの日本企業が慎重になっている。中国は、日本企業誘致で血眼になっているが、結果は全く逆である。
『日本経済新聞』(2月26日付)は、「日本企業のアジア投資の増減率 首位シンガポール 4年で3倍 中国・韓国は大幅減少」と題する記事を掲載した。
日本銀行が集計し、財務省がまとめた国際収支関連統計で国・地域別の統計を比べた。日本企業が海外で工場の新設や設備増強をしたり、企業を買収したり、といった直接投資の金額を新型コロナウイルス禍前の19年と23年(速報値)とで比較し増減率をランキングした。現地からの撤退にかかるコストや負債の支払いといったマイナス収支は加味しない。
(1)「アジア全体では23年の投資額は17兆3000億円と過去10年間で最も大きかった。コロナ禍直前の19年比では1.7倍に増えた。新型コロナの影響が大きく出た20年は9兆円にまで落ち込んでいた。19年から23年にかけ、世界全体への日本企業の投資額は1.2倍の伸びで、アジア向けの伸びが際立つ」
日本企業は、19年から23年にかけての世界への投資額1.2倍の増加で、アジア向けが飛び抜けていた。
(2)「ランキング首位のシンガポールの伸び率は、3.3倍と2位以下に大きく差をつけた。海外投資の実態に詳しい国際貿易投資研究所の増田耕太郎客員研究員は、「政府が進めるオープンイノベーション政策が奏功して研究開発(R&D)拠点の集積地となり、アジア事業を展開する上でハブ地域になっている」と分析する。人工知能(AI)や半導体、ヘルスケアなどの企業が世界から集まりつつある」
シンガポールの伸び率は3.3倍で、「断トツ」である。シンガポース政府のオープンイノベーション政策が成功しているからだ。オープンイノベーションとは、企業が技術の価値を高めようとする際、内部のアイデアともに外部のアイデアを用い、市場化の経路としても内部の経路と外部の経路を活用することだ。シンガポールは、これが優れている。
(3)「雪印メグミルクは22年、シンガポールにアジア・オセアニア地域の統括拠点となる現地法人を設立した。消費が拡大するアジア市場の調査やM&A(合併・買収)を進める上での拠点と位置づけた。シンガポールはスタートアップの間口も広い。JR東日本は50億円を投じてコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を同国に設立する。広告や物流のデジタル化で新たなアイデアを持つスタートアップを東南アジアで探し、出資するための拠点にする」
シンガポールのオープンイノベーション政策は、JR東日本まで取り込んでいる。
(4)「伸び率の2位は、ベトナムで2.1倍になった。豊富な労働力が経済を押し上げる人口ボーナス期は峠を越したとみられているが、国民の平均年齢が30歳代前半と日本よりも10歳以上若く、人口は増え続けている。消費市場の拡大を狙った小売業や、労働力を求める製造業の進出が目立つ。ファーストリテイリング傘下のユニクロは、19年末にベトナムに初出店し、現在までに22店舗を展開する。良品計画も20年11月に店舗を構え、8点まで増やした。イオンモールは都心だけでなく、郊外への展開も進めている。村田製作所は23年8月、43億円を投じて電子部品の工場を新設した」
ベトナムが、日本の投資先2位となった。人口が増え続けるなど市場としての価値が高い。
(5)「日本貿易振興機構(JETRO)が、23年に実施したアンケート調査によると、日本の企業で事業拡大を図る国・地域はベトナムが25%と、米国の28%に次いで多かった。同機構でベトナムを担当する庄浩充氏は「人件費が比較的安価で、購買力も伸びる。米中とも関係が良好で地政学リスクが少ない」と利点を話す」
ベトナムは、地政学リスクがないことや人件費の安いこともあり、米国と並んで今後の有望市場に上げられている。
(6)「3位は、インドで91%増だった。モディ政権の製造業振興策に伴い、半導体や自動車、電池の世界大手が製造拠点を相次ぎ立ち上げている。投資誘致では金融業の役割が増し、三菱UFJ銀行が22年に経済特区で邦銀として初めて支店を立ち上げた。」
インドは3位である。製造業が立ち上がるまでには時間が掛るとみられている。
(7)「韓国は47%の大幅減少となった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になってから日韓関係は改善しているが、文在寅(ムン・ジェイン)前政権が打ち出した素材や部品の「脱日本」施策などの影響は残る。また、経済の冷え込みで韓国企業の設備投資が盛り上がりに欠き、日本企業は韓国以外の国・地域に投資を振り向けた可能性がある」
韓国は、日本企業にとって「反日イメージ」が残っており、「脱韓国」という流れが存在する。
(8)「中国への投資は20%減少したが、投資額そのものは23年も1兆円を超えた。海外における日本法人の拠点数は、中国が圧倒的に多い。外務省がまとめた22年の日系企業拠点数によると、中国は3万1324カ所とアジアのみならず世界で最多だった。1990年代以降、労働力や原材料などのコストが低いことを理由に日本の製造業が中国拠点を増やしたが、これらの利点は薄れつつある。企業活動の自由度を狭める習近平(シー・ジンピン)政権の施策への不安もあり、代わりにベトナムやフィリピンへの投資を増やす「脱中国」の動きも広がっている」
ベトナムやフィリピンが、「脱中国」の受け皿になっている。「反スパイ法」も影響している。




