勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2024年02月

    テイカカズラ
       

    半導体の「チップ4同盟」(日本・米国・台湾・韓国)の中で、日台が接近し、米国は国内半導体強化を打ち出している。韓国だけが取り残される形になった。ただ、「チップ4同盟」は、対中国への輸出規制では共同歩調を取っており、この面での連帯強化は不変である。 

    『中央日報』(2月23日付)は、「台湾・日本同盟に続いて「チームアメリカ」、追い込まれる韓国ファウンドリー」と題する記事を掲載した。 

    米国はインテルを後押しし、台湾と日本の半導体が接近している。だが韓国は、形勢を変えるような強力な顧客を取り込んでいない。「チップ4同盟」(韓国・米国・日本・台湾)のうち、韓国の直面している厳しい現実だ。サムスン電子は、世界ファウンドリー(半導体委託生産)2位である。1位のTSMCと差を狭めるのが容易でないうえ今後、2位を維持できるかも断言できない状況だ。急変する情勢に合わせたファウンドリー戦略が必要という指摘が出ている。

     

    (1)「レモンド米商務長官が21日、「我々は、米国でより多くの半導体を生産しなければいけない。シリコンをまた『シリコンバレー』に引き込まなければいけない。私たちの世代がこの課題を解決しなければいけない」と、米カリフォルニア州サンノゼコンベンションセンターで開かれた「インテルファウンドリーサービス(IFS)ダイレクトコネクト」行事で語った。レモンド氏は、「私たちはすべての種類の半導体を作ろうというわけではないが、人工知能(AI)に必須の最先端チップは直接生産しなければいけない」と指摘した。レモンド長官は全世界の半導体関係者5万2000人が参加したインテルの初のファウンドリー(半導体委託生産)行事で「アメリカワン チーム」を強調した」 

    米国は、AIに必要な半導体を米国内で生産する意思を固めている。レモンド長官が、「アメリカワン チーム」を強調した理由だ。 

    (2)「レモンド長官はインテルのゲルシンガー最高経営責任者(CEO)との対談でも「インテルは米国のチャンピオン企業」と称賛した。また「私たち」という言葉を繰り返し、同じチームという点を暗示した。ゲルシンガー氏もサプライチェーン弾力性を理由に米国で半導体を製造するべきだと強調した。ゲルシンガー氏は「現在、世界の半導体の80%がアジアで生産されている。半導体生産は特定の地域・国に依存してはいけない」とし、「10年以内に米国・欧州が世界半導体の50%を生産できるようにする」と述べた。

    インテルは、10年以内に米国・欧州が世界半導体の50%を生産できるようにする、としている。これは、インテルの米国や欧州の工場が担うという宣言である。TSMCへの強力な「反撃宣言」を出した。

     

    (3)「この日、インテルがマイクロソフト(MS)を1ナノ級工程の顧客として確保したと伝えられた。事前録画映像に登場したMSのナデラCEOは、「MSはインテルの18A(1.8ナノ級)工程で半導体を生産する」と明らかにした。インテルがMSなどから受注した金額は150億ドル(約2兆2600億円)にのぼる。ファウンドリービジネスでは、顧客確保がカギを握る。インテルが、TSMCやサムスン電子よりAIで先頭を走るMSの手を握った形だ。この日、エヌビディアは昨年10-12月期の売上高を前年同期比265%増の221億ドルと明らかにし、純利益もウォール街の予想を上回った。半面、多くのエヌビディアの挑戦者は退却している」 

    インテルが強気になっているのは、マイクロソフト(MS)から1ナノ半導体150億ドルの受注を確保できたという背景もある。ただ、エヌピディアはAI半導体のトップ企業である。MSがこの牙城を崩せるか疑問だ。エヌピディアは、TSMCと一体化しているので、インテル・MS連合がTSMC・エヌピディアとどこまで対抗できるか、であろう。米IBMは、日本の国策企業ラピダスを技術・営業で全面的に支援している。

     

    (4)「チップ4のアジア3カ国のうち、日本と台湾は急激に接近している。ロイター通信は過去2年間に9社以上の台湾半導体企業が日本で支社を設立したり事業を拡張したりしていると報じた。半導体事業の復活に取り組む日本と、米国の要求で「中国デカップリング(脱同調化)」をしなければならない台湾は、両国の必要の一致と円安効果で半導体協力が急速に進んでいる」 

    台湾の半導体企業は、TSMCを先頭に日本へ急接近している。物理的に増産体制が可能という背景のほかに、日本が政府・自治体が大歓迎しているからだ。台湾政府も日本進出へ後押ししている。安全保障面の配慮もあるのだろう。 

    (5)「TSMCは、24日に熊本県に第1工場を完工し、第2工場は2027年に完工するが、TSMCについて台湾半導体企業も日本に渡っている。TSMCは米国政府の勧誘および圧力で米アリゾナ工場を建設しているが、海外生産基地は日本に速いペースで構築されている。ロイター通信は「日本政府が寛大な補助金(最大50%)を迅速に支給し、人材も優秀なため」と分析した。TSMC日本工場は12-28ナノ級のレガシー(非先端)工程だが、車載用半導体やイメージセンサーなど日本産業の需要に合わせてチップを生産する」 

    日本政府が、TSMCへ出した条件は3つある。

    1)10年間は撤収しない。

    2)製造装置と素材の半分以上は日本国内で調達する。

    3)半導体供給が難しい状況でも増産する。

    日本は、将来を見据えた条件を出している。TSMCにとっては、なんら負担にならない条件ばかりだ。あえて言えば、3)であろう。日本国内での供給責任を果すことだ。

     

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    2月22日、日経平均株価が1989年12月28日の最高値を更新した。34年ぶりである。この背後には、日本企業が企業統治(コーポレートガバナンス)によるパラダイムシフトによって、経営意識を180度変えつつあることがある。また、中国の抱える地政学リスクによって、中国へ向う資金が日本へ振り向けられたという大きな世界経済の流れの変化も寄与している。

     

    『ブルームバーグ』(2月22日付)は、「日経平均34年ぶりに史上最高値 パラダイムシフトで海外資金流入」と題する記事を掲載した。

     

     

    日本を代表する225銘柄で構成される日経平均株価が史上最高値を34年ぶりに更新した。デフレ経済からの脱却や上場企業のコーポレートガバナンス(企業統治)改革に対する期待などから、日本株は昨年も世界的に優れたパフォーマンスを記録した市場の一つだが、海外投資家の資金流入が続く中、歴史的な転換点を迎えた。

     

    (1)「22日の取引で日経平均は前日比2.2%高の3万9098円68銭で終了。バブル経済絶頂の1989年12月に付けた終値ベースの最高値(3万8915円87銭)を上回った。米国株は、景気のソフトランディング(軟着陸)期待や好決算だった半導体メーカーのエビディアなどテクノロジー株の好調を背景に最高値圏で推移。為替相場も1ドル=150円台と年始から円安方向で取引され、日本の企業業績を楽観視するリスクマネーの流入も日本株を押し上げている」

     

    日本株好調の裏には、米国経済が高金利下で軟着陸の公算が強まっているという好材料も支援している。

     

    (2)「15日に、日経平均の24年の高値予想を従来の3万9000円から4万5000円に引き上げたシティグループ証券の阪上亮太ストラテジストは、米経済・株式の堅調や日本銀行が金融緩和政策を維持する可能性が高まっている上、資金フローの強さなど「現下の日本株を取り巻く環境を踏まえると、強気スタンスを維持し、高値想定を引き上げるのが妥当」と述べている。バブルが崩壊した90年代から2000年代の日経平均は、銀行の不良債権問題や円高不況などの影響で右肩下がり。リーマンショックで世界が金融危機に陥った08年には一時7000円を割り込んだ。安倍晋三政権がリフレーション政策(アベノミクス)を導入した13年以降は次第に回復し、新型コロナウイルスの流行を乗り越え、経済が正常化した昨年から上昇相場に弾みがついた」

     

    日経平均は、次の目標が4万5000円へ引上げられるほど明るい見通しである。現状では、これを否定する悪材料はない。今春闘が予想を上回る賃上げになれば、さらに弾みがつくであろう。

     

    (3)「内閣府によると、23年の日本の名目国内総生産(GDP)は591兆円(約4兆2106億ドル)とドイツに抜かれ世界第4位に後退した。バブル期にはトップの米国を脅かし、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とも言われたが、国際競争力を失う中で停滞。成長産業の育成や企業の経営・資本効率の改善が急務となる中、昨春から東京証券取引所の主導でコーポレートガバナンス改革が進められ、投資家に評価され始めている。ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは、GDPがドイツにも抜かれる残念な現状もあるが、最高値を抜けると「自信がなかった日本がもう一度頑張ろうという気になり、マインドとして大きい」と言う」

     

    株価の高値更新は、経営者を鼓舞するはずだ。これが、一段とコーポレートガバナンスを忠実に実行しようという気運を高める。

     

    (4)「日経平均の年初来上昇率は17%と、4%台の米S&P500種株価指数を大きくアウトパフォームするなど主要国の中でトップ。けん引役は海外投資家の買いで、1月月間の日本株現物の買越額は2兆693億円と昨年5月以来の高水準に達した。東証が16日に発表した投資部門別売買状況によると、2月第1週(5-9日)の海外勢の買越額は3664億円で、買い越しは6週連続となった。ピクテの糸島氏は、今の相場は「海外投資家を含めたモメンタム投資主導できている。上がるから買う、買うから上がる流れで、最高値を超えるとさらに拍車がかかる」とみている」

     

    日本株は、外人投資家主導によるものだ。日本企業のパラダイムシフトを高く評価したものである。

     

    (5)「日本の個人投資家は、1月に9370億円を売り越した。貯蓄から投資への流れを加速させるため、1月から少額投資非課税制度(NISA)が拡充されたものの、最高値更新が迫った中で利益確定売りが膨らんだ格好だ。しかし、「失われた30年」と呼ばれるほどデフレが長引いた日本でも2%を超す消費者物価指数(CPI)の上昇が2年近く続き、政府の意向もあって昨年から賃上げの動きも活発化。日銀は主要国で最後となった8年に及ぶマイナス金利政策の解除を模索するなどパラダイムシフトが起きており、証券ジャパン調査情報部の大谷正之部長は、個人が「押し目を拾う可能性は十分ある」とみる」

     

    国内投資家は、春闘が予想上回れば視点を変えて国内投資に目を向けるだろう。円相場動向もカギを握っている。

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    台湾半導体トップ企業TSMCは、2月24日に開所式を行う。半導体産業の日台協力の第一歩が始まる。米中対立を背景に半導体ブームに沸く日本で、台湾の半導体関連企業が事業を広げつつある。受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場にだけでなく、再興を目指す日本の半導体産業全体に商機があるとみて、過去2年間に少なくとも9社が日本に進出、あるいは既存拠点を拡充したことがロイターの取材で明らかになった。

     

    『ロイター』(2月22日付)は、「日本の半導体に台湾勢が商機 『脱・中国』で事業拡大」と題する記事を掲載した。

     

    1)「用途ごとに異なるカスタム半導体の設計を手掛けるアルチップ・テクノロジーは、日本進出の1社だ。同社は、2003年10月に日本支社を開設し、自動車用半導体を製造するルネサスエレクトロニクスなどと取引してきたが、ここへ来て日本で人員の増強を進めている。事情に詳しい関係者によると、アルチップは22年時点で大半の技術者を中国に置いていたが、中国国外へ移し始めており、異動先の多くが日本だという。同社はロイターの問い合わせに対し、日本と北米、台湾で採用活動を行っているとしたが、人事に関するこれ以上のコメントを控えた」

     

    半導体の設計を手掛けるアルチップは、22年時点で大半の技術者を中国に置いていた。現在すでに、中国国外へ移し始めており、異動先の多くが日本という。

     

    2)「取材に応じたアルチップ・ジャパンの古園博幸ゼネラルマネージャーは、日本政府がポスト5G、AI(人工知能)などを積極的に支援しており、「新しいプロジェクトが次々と生まれている」と説明した。古園氏は「日本の半導体市場は成長が期待できる」とした上で、「すでにいくつかの優良なプロジェクトに参画している」と語った。ロイターの取材によると、22年以降に日本へ進出したり事業を拡大した台湾の半導体関連企業は、TSMCが約35%の株式を持つ設計会社のグローバル・ユニチップ・コーポレーション(GUC)など少なくとも9社あった。GUCは、日本に注目する理由として、能力の高い技術者と商機の広がりを挙げている」

     

    ロイターの取材によると、22年以降に日本へ進出したり事業を拡大した台湾の半導体関連企業は、TSMCが約35%の株式を持つ設計会社のグローバル・ユニチップ・コーポレーション(GUC)など少なくとも9社ある。

     

    3)「メモリー半導体回路の設計開発を支援するイーメモリー・テクノロジーは22年4月、イーメモリージャパンを設立し、神奈川県のJR新横浜駅近くにオフィスを構えた。TSMCの技術者だった何明洲(マイケル・ホー)社長は、「オフィスを開設してから顧客との会話が増えた」と話す。今は設計と営業部隊11人を抱える。業界関係者によると、9社以外にもさらに多くの台湾企業が日本での事業開始に向けて検討中だという」

     

    業界関係者によると、9社以外にもさらに多くの台湾企業が日本での事業開始に向けて検討中だという。台湾で経済政策の司令塔を担う「国家発展委員会」トップの龔明鑫・主任委員(大臣に相当)は、「従来は日本の製造装置・材料メーカーが(TSMCの工場が集まる)台湾に投資してきた。今回は台湾企業が日本に大規模投資し、生産拠点を作る点で大きな意義がある」と強調する。『日本経済新聞 電子版』(2月22日付)が報じた。

     

    4)「『日の丸半導体』再興の流れに弾みをつけたのはTSMCの誘致成功で、同社が熊本県菊陽町に建設を進めてきた工場は2月24日に開所式を迎える。同工場に製造装置を納めるフィネステクノロジーは九州に自社工場を建設しており、受託材料分析サービスのマテリアル・アナリシス・テクノロジーは昨年末に九州に新研究所を開設した。複数の関係者によると、半導体設計のマーケテック・インターナショナルもTSMCの生産能力拡張と足並みをそろえる。

     

    TSMCと密接な関連を持つ企業が、続々と熊本へ工場や研究所を建設している。

     

    5)「TSMCは第2工場の建設も計画。さらに日本の官民で最先端半導体の量産を目指すラピダスが北海道千歳市に、金融大手SBIホールディングスは台湾の力晶積成電子製造と組んで宮城県大衡村に工場を新設する予定で、いちど失った半導体産業が日本に再び集積しつつある。武者リサーチの武者稜司代表は、米国が中国との「デカップリング」を模索していたところに円安が進み、半導体産業を中心に受け皿としての日本の重要性が高まったとみる。「産業力から見て中国の生産を代替できる国は日本しかない」と語る。日本貿易振興機構(JETRO)によると、台湾の対中直接投資は23年に前年比39.8%減少し、30億3681万ドル(4557億円、1ドル=150円換算)だった。一方、日本の財務省によると、対日投資は2697億円と同46.9%増加した」
     

    台湾企業は、対中投資を減らして対日投資を増やしている。台湾の脱中国が、鮮明になっている。TSMCの日本進出が、台湾関連企業を大挙、日本へ「引き連れる」形になっている。これは、大きな流れだ。

     

     

     

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    中国のスパイ網は、想像を超えたところに張り巡らされている。米国は、自国港湾クレーンで、中国製が圧倒的なシェアを占めていることから、北京がこれを悪用して重要情報を窃取しているリスクを警戒している。この問題は以前にも指摘されたが、そのリスクが高まっているのであろう。

     

    『中央日報』(2月22日付)は、「『中国製クレーンはトロイの木馬』、バイデン大統領 行政命令で除去手順」題する記事を掲載した。

     

    米国のバイデン政府が事実上、中国を直接狙った海洋サイバーセキュリティ対策を21日(現地時間)、発表する。米政府高位当局者によると、バイデン大統領はこの日スパイ道具として利用される可能性が提起されてきた中国製コンテナクレーンに対して強力なサイバーセキュリティを要求する行政命令に署名する予定だ。この当局者は、「バイデン大統領が海洋サイバー脅威に対応するために国土安全保障省の権限を強化する行政命令に署名する予定」と明らかにした。

     

    (1)「今回の行政命令は、沿岸警備隊に敵性国家および勢力の悪意あるサイバー活動に対応したり海上輸送船舶・施設にサイバーセキュリティを強化したりするように要求する権限を付与し、サイバー事故に対する報告義務化などを含んでいる。バイデン政府はこれとあわせて今後5年間で米国港湾インフラに200億ドル以上(約3兆円)を投資することにした。米政府のある関係者は「今回の行政命令にはサイバー脅威が分かっているか疑われる船舶の移動を統制し、港湾の安全とセキュリティ脅威要因を是正するように該当の施設に要求したり該当サイバーシステムやネットワークが組み込まれている船舶・海岸施設を検査したりすることができる権限が含まれる」と説明した」

     

    中国が、ここまでサイバー攻撃を仕掛けているのは、台湾侵攻の際に米海軍出動を阻止する狙いであることが指摘されている。

     

    (2)「港湾施設のサイバーセキュリティ強化を骨子とした今回の指針は事実上、米国港湾の80%以上を占有した中国製クレーン除去を狙っているという分析が出ている。米政府当局者は「中国製クレーンは遠隔で制御・プログラミングができて潜在的な悪用に脆弱な場合がある」とし「沿岸警備隊は米国内の多数を占めている中国製クレーンが加えることができる米国の重要インフラ保護のために海上保安指針を発表する」とした。この当局者は、該当指針の具体的な内容はセキュリティ上公開することができないと話した。ただし中国製クレーンの所有主や運営者にさまざまなサイバーセキュリティ要件を課す予定であり、中国全域の港湾責任者にもこの指針を伝達して順守可否を確認する考えだとした」

     

    中国製クレーンは、米国港湾の80%以上を占有しているが、これを全て除去する計画である。中国にとっても大きな損失となる。

     

    (3)「米国の主要湾港で稼働している中国製コンテナは、スパイ道具に利用される可能性が提起されて「トロイの木馬」にたびたびたとえられてきた。中国製クレーンに装着された情報収集装置が港湾コンテナの出荷元や目的地などの貨物情報を追跡して中国本国に送信することができ、場合によっては物流サプライチェーン(供給網)をかく乱させ、米国に相当な被害を与える可能性があるという懸念が提起されていた。特に米軍の利用頻度が高いバージニア・メリーランド・サウスカロライナなどの湾港に最近数年間で中国上海振華重工業(ZPMC)のクレーンが多数配置されて秘密情報流出に対する懸念が高まっていた。米国防情報局(DIA)は2022年中国がクレーンを通じて港湾物流量をかく乱あるいは軍事装備荷役情報を収集する可能性があるとの分析を出したことがある」

     

    米国は従来、「お人好し」な國である。中国が民主化すると思い込み、自国の重要な技術まで無料で提供してきた。完全に裏切られた形である。中国は、習近平政権以前に膨大な技術をまんまと入手した。共産主義の本質を見誤ったと言えよう。


    (4)「中国最大通信装備会社ファーウェイ(華為)の送信塔から米軍核基地傍受の可能性が提起されたほか、中国動画シェアプラットフォーム「TikTok」が米国の安全保障に脅威になる可能性があるとし、政府機関・研究機関などからの除去が進んでいる。こうした中、中国製クレーンも米軍需物資および貨物情報の収集に悪用される可能性があるという懸念が高まり、強力なセキュリティ対策がこの日出てきた」

     

    ファーウェイによる5Gの情報窃取リスクは、豪州が最初に発見して米国へ通報した。米国は、それまでその危険性に全く気づかなかったのだ。EUは、完全に中国の虜になっていた関係で、5Gの危険性を最後まで否定していた。現在は、ようやくそれに気づきファーウェイへの警戒心を高めている。このように、中国は超長期の計画で西側諸国を罠にはめようと下工作を行っている。

     

    (5)「米政府当局者は「米国の港湾と規制対象施設に中国製クレーンが200基以上あると把握している」とし「既存のクレーンの約50%を調査し、悪意のあるサイバー活動が見つかった場合もある」と述べた。また別の米政府関係者は「中国のサイバー活動に対する明らかな懸念があり、犯罪活動に関連した懸念もある」とした。日本最大の湾港の一つである名古屋港がランサムウエア攻撃で数日間運営が中断されたこともある」

     

    日本でも名古屋港のクレーンが、中国のサイバー攻撃の被害に遭っている。意味もなくこういうトラブル起こせば、そのツケが中国へ回ってゆく。こういう悪循環に気づかないとは、中国も賢明とは言いがたい振舞をしていることになる。

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    中国3000年の歴史は、不況深化によって引き起こされる大衆蜂起である。習近平氏は、毛沢東が創設した企業内の予備役部隊を相次いで復活させている。民衆による政治への怒りを事前に鎮圧させる狙いだ。選挙で選ばれていない共産党の恐怖感を見せつけている。

     

    『フィナンシャル・タイム』(2月20日付)は、「中国の企業、毛沢東時代の予備役部隊を相次ぎ設置」と題する記事を掲載した。

     

    中国の国有企業の間で、毛沢東時代の遺産である企業内の予備役部隊を設置する動きが広がっている。中国経済が減速するなか、社会的・政治的不安に対する当局の懸念が高まっていることの表れだとアナリストらは指摘している。

     

    (1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が2023年の企業発表や国営メディアの報道を分析したところ、中国の国有企業数十社がここ数カ月で「人民武装部」を新設していることがわかった。この組織は歴史的にみると、毛沢東時代に県や村レベルで人民解放軍の募集に携わってきた。現在は一般的に民間防衛のほか、軍の募集、広報活動、訓練に従事している。専門家らは、企業内の人民武装部の台頭について、外国の敵に対する軍事動員の準備の兆候とはみなさないように釘を刺している。むしろ、中国経済の成長がここ数十年で最低のペースとなるなか、習近平(シー・ジンピン)国家主席が安全保障を重視する姿勢を強めていることや、社会が不安定化するリスクを懸念していることを反映したものとみられるという

     

    長期の不況で雇用不安が高まっている。これが、治安不安を招くということ自体、中国政治の不安定性を見せつけている。習近平氏は、不安でたまらないのだ。これは、相当の「神経過敏症」に陥っている証拠だ。

     

    (2)「米シンクタンク、ランド研究所のティモシー・ヒース上級国際防衛研究員は「こうした人民武装部の立ち上げは、国内社会の安定に対する指導部の懸念の表れ」だと指摘する。「非常に多くの企業で一斉に設置されているため、トップダウンの指示であることはほぼ間違いない」という。また、人民武装部は愛国心を促進し、中国共産党の指令の順守状況を監視しながら、企業と社会、治安部隊の間の連絡役として国内の治安維持に重要な役割を果たすこともあり得ると同氏は付け加えた。中国の乳製品最大手で民間企業の内蒙古伊利実業集団(伊利)は、23年末に人民武装部を設置した。同社が本社を置く内モンゴル自治区の民間企業としては初の設置となった。国営メディアは1月、ニュージーランドに複数の乳業会社を所有する伊利が「平時には職務に就き、緊急時には対応し、戦時には戦う」防衛部隊を構築していると報じた」

     

    内モンゴル自治区の乳業メーカーまでが人民武装部を設置した。建国後に編入した地域だけに、将来の「謀反」を警戒している証である。

     

    (3)「シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院の中国専門家ジェームズ・チャー氏は、人民武装部への関心が再び高まっているのは「中国共産党による一党独裁国家が『発展』よりも『安全保障』を重視」しているためだと指摘した。この傾向は少なくとも17年に始まった習氏の2期目以降にみられるという。伊利による人民武装部の設置はその傾向に沿ったものと考えられるという。中国東部・浙江省の人民武装部に所属する人物は、匿名を条件に取材に応じ、自身の部隊は主に軍事訓練と新兵募集に力を入れており、時には学校で軍事をテーマにした授業もあると語った。中国国営通信新華社が伝えた声明によると、同国国防省の呉謙報道官は23年10月、国有企業に人民武装部を設置することは「国防の義務を果たし、国防を強化する」ために必要だと述べた」

     

    中国共産党の存在が、民衆の動揺・不安に対していかに脆いかを示している。一般国民は、共産党を支持していないのだ。「占領軍意識」でみているのだろう。

     

    (4)「ランド研究所のヒース氏は、大部分の中国国民が毛沢東思想や改革開放前の共産主義にほとんど関心がないことを共産党指導部は理解しており、それを考えると人民武装部の設置が急増している事態を「本当に驚いている」と語った。「人民武装部は主に毛沢東時代の兵員募集に関係する組織で、当時の共産党は国民の政治的活動を指揮することにはるかに積極的だった」という。「鄧小平氏が同党を現実的で市場寄りの改革の方向へと導いて以来、この種の活動はかなり衰退していた」

     

    習近平氏は、国家主席就任に当たり最大の関心事が、「共産党員」と言ってのけた人物である。習氏の使命は、国民の生活向上よりも共産党を維持することにある以上、企業に予備部隊をつくらせるのは当然であろう。習氏は、追込まれている。

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