今春闘の労使交渉は既に始まっている。自動車のホンダとマツダが21日、組合要求に満額回答した。大手メーカーから早期に前向きな結果が出たことで、中小企業へ波及や他産業の交渉に弾みが指摘されている。
ホンダとマツダは、3月13日の指定日を待たず前倒しでの回答だった。24年春闘における主要な産業別組織の賃上げ要求方針は物価高などを背景に23年を上回る要求となっており、「個別企業でも乗り遅れてはいけないという雰囲気が広まると、満額回答が続く可能性がある」との見方が出るほど明るい雰囲気である。
『ブルームバーグ』(2月21日付)は、「6割の企業が賃上げ 平均4.16% 日銀正常化に追い風ー帝国データ」と題する記事を掲載した。
2024年度に賃金改善を計画する企業が6割に上り、賃上げ率は前年度を大きく上回る平均4.16%になったとする調査結果を、帝国データバンクが21日に発表した。
(1)「24年度に正社員の賃金改善が「ある」と見込む企業は59.7%と3年連続で増加し、06年の調査開始以降で最高。「ない」企業は13.9%と最低だった。大企業・中小企業・小規模企業の全てで賃上げを見込む企業の割合が増加しており、中小は6割、小規模でも5割を超えた。前年度調査の賃上げ率は平均2.10%だった」
昨年調査では、平均2.10%の賃上げであったが、今年はほぼ倍に当たる4.16%の賃上げである。「賃上げがない」とする企業は、全体の13.9%にすぎない。これら企業は、「限界企業」という厳しい状況にあることを示唆している。従業員の流出は不可避であろう。こうして、気の毒だが企業の自然淘汰は進む。
(2)「日本銀行の植田和男総裁は16日の国会答弁で、マイナス金利解除など金融政策の正常化について、賃金と物価の好循環が強まっていくかを春闘など各種のデータや情報を丹念に分析して判断する考えを表明。中小企業や小規模企業でも賃上げの動きが広がっていることを示した今回の調査は正常化に向けた追い風となりそうだ」
日銀は、高い賃上げ率の実現によって「マイナス金利」という桎梏から解放される。円相場への好影響も期待できる環境になろう。
(3)「賃金改善の具体的な内容は、ベースアップによる賃上げが53.6%と過去最高となった前年を上回り、初めて半数を超えた。賃上げの理由としては、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が75.3%と最も多かったほか、「物価動向」も51.6%と前回より減少したものの、引き続き半数超となった。一方で、賃金が改善しないと答えた企業の中で「物価動向」を要因にあげた企業が17.8%と業績低迷に続いて2番目に多く、物価上昇が賃上げの足かせとなっている状況も示された。調査は、毎年1月に実施されており、今回は全国1万1431社から有効回答を得た」
ベースアップによる賃上げが、過去最高の53.6%となった。賃上げは本来、ベースアップ(基本給の引上げ)である。「号俸引上げ」(定期昇給)は、厳密な意味で賃上げではない。こういう意味から、今年の春闘は、本来の「ベア」に戻っている。
『ブルームバーグ』(1月24日付)は、「物価高に負けない賃上げは『社会的責務』、鍵は価格転嫁-春闘幕開け」と題する記事を掲載した。
2024年の春闘が事実上スタートした。経団連が1月24日開催した「労使フォーラム」では、物価高を念頭に昨年を上回る賃上げの実現を目指す声が相次いだが、国全体として賃金を底上げするには大企業のみならず、価格転嫁に苦しむ中小・小規模企業で賃上げが進むかどうかが注目される。
(4)「経団連の十倉雅和会長は、「今年は昨年以上の熱量と決意を持って物価上昇に負けない賃金引き上げを目指すことが経団連・企業の社会的責務」とし、官民連携して賃金の引き上げに果敢に取り組むと強調。その上で、「中小企業における構造的賃上げに波及させることが不可欠」とし、実現に向けて価格転嫁へのネガティブな意識を社会全体で変える必要性を訴えた」
賃上げは、社会的責務という認識に変わってきた。これまでなかったことだ。賃金を「コスト」として捉えてきたからだ。こうした賃金コスト論から、現在は「人材投資」という前向きの認識に変わっている。
(5)「政府は、デフレからの完全脱却の最大の課題を「物価上昇を上回る賃上げ」と位置付け、企業の賃上げや価格転嫁を後押ししている。一方で、金融政策の正常化をうかがう日本銀行の植田和男総裁は23日の会見で、賃金と物価の好循環が強まり、物価2%達成に向けた確度が高まっていると指摘。今春闘での賃上げ動向が今後の政府・日銀の政策運営の鍵を握る」
日本の名目GDPが23年、ドイツに抜かれて世界4位へ転落した。過去の円安と低い賃上げが理由である。この悪循環から抜け出て、日本経済の正常化を図らねばならない。今、その好機が訪れたのだ。




