中国の不動産危機が緩和される兆しが見えない中、中国最大級の不動産会社の1社が決算発表を延期し、もう1社は記録的な減益となった。かつて売上高で中国トップの住宅建設会社だった碧桂園は28日遅く、より多くの情報が必要だとして通期決算報告を延期すると突然発表した。一時は上場デベロッパー最大手だった万科企業は、23年の通期純利益が前年比46%減少し、1991年の上場以来最大の落ち込みを記録したことを明らかにした。万科企業は、深セン市の後援を得ている国有企業だ。
『ブルームバーグ』(3月29日付)は、「中国不動産業界の苦境続くー碧桂園が決算延期 万科企業は利益急減」と題する記事を掲載した。
(碧桂園や万科企業などの絶不調に関する)発表は、一部の銀行における不良債権の急増とともに、弱い経済と低迷する消費者心理が中国の住宅販売に重くのしかかり続けていることを浮き彫りにする。2月には新築・中古住宅ともに前年比の価格下落幅が拡大し、低迷する市場を支えようとする当局の困難が鮮明になった。
(1)「CGSインターナショナル・セキュリティーズHKの中国不動産調査責任者、レイモンド・チェン氏は「中国の不動産セクターは、当社の調査開始以降で初の純損失を計上する可能性が高い」と述べた。「デベロッパーの売り上げが改善するまで、このセクターには慎重な見方を続けている」と続けた。不動産市場の低迷は、民間、国営を問わずほとんどの企業に影響を及ぼしている。碧桂園と万科はわずか1年前には生き残る可能性が高いと評価されていたが、碧桂園は昨年10月にドル債務不履行に陥り、万科はデフォルト(債務不履行)回避に取り組んでいる」
中国の不動産セクターは、初の純損失を計上する可能性が高いという危険な状況だ。これが、現実になれば中国経済の受けるダメージは決定的になる。
(2)「碧桂園の発表によると、同社の通期決算発表は3月31日の期限よりも後になる見込み。香港市場が祝日明けで取引が再開される4月2日から同社株は売買停止となる公算が大きいという。万科の2023年通期の株主帰属純利益は前年比46%減の122億元(約2560億円)。ブルームバーグが調査したアナリストは14%の減益にとどまると見込んでいた。同社は向こう2年で1000億元を超える債務削減を目指すとし、上場来初めて配当を見送った。株価は29日の深圳市場で一時3.8%安となった」
国内最大の民間デベロッパーである碧桂園は、23年の決算発表を延期した。会計上の適切な見積もりと判断を行うためにより多くの情報を収集する必要があるとしている。同社は昨年終盤、110億ドルのオフショア債で債務不履行(デフォルト)を引き起こしていた。
国内2位の万科企業は、国有企業である。売上高は7.6%減の4657億元、純利益は46.4%減の122億元だった。純負債比率は54.7%で、11%ポイント上昇した。万科の株と債券はここ数週間、大きく売られており、株主の深セン当局は資金繰り難を打開するための支援を要請している。
万科企業は別の発表文で、上場予定となっている自社の消費関連REIT(不動産投資信託)を大株主の国営企業・深センメトロが約10億元購入すると発表したことを受け、深セン政府による今後のさらなる支援を期待しているとした。『ロイター』(3月29日付)が報じた。
国有企業である万科企業でも、こういう事態に陥っている。不動産バブル崩壊が、不動産開発国有企業をも飲み込んでいるのだ。深セン市は、もはや救済能力を失った形である。
(3)「長引く不動産不況は、大手国有銀行のバランスシートもむしばんでおり、不良債権は増加の一途をたどっている。政府は国有銀に対し、国内経済の活性化を支援するとともに、負債を抱える不動産開発業者を支援するよう要請している」
不動産セクターは関連産業も含めれば中国の国内総生産(GDP)の約3割を占めるとされる経済の支柱だ。中国政府は問題の沈静化に動くが、動員される銀行側の負担が増し、金融システムへの圧力が強まるというジレンマもある。政府は1月に、地方政府が支援すべき住宅開発プロジェクトを選別する不動産融資協調制度(通称ホワイトリスト制度)を創設した。リストの対象プロジェクトについて銀行に積極的な融資を促す、実質的な指導だ。
碧桂園は28日、15日時点で計272件の住宅開発プロジェクトがホワイトリストに入ったとアピールした。だが、銀行からの支援融資は満足に受けられないのだろう。
銀行側にすれば、将来の返済が確実でなければ、いたずらに不良債権を増やすだけだ。既に、貸出利ざやは最低限の1.8%ラインを割っている。これ以上の支援は、銀行も「共倒れ」になるリスクを抱えている。限界点なのだ。