中国の家計資産の7割が住宅である。それだけに、住宅価格が5%下落すれば、19兆元(約399兆円)の財産目減りになると指摘されている。住宅不況が、中国経済全体を直撃しているのだ。2月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、5ヶ月連続50をわった。好不況の分岐点が50だから、不況局面にある。
『日本経済新聞 電子版』(3月1日付)は、「中国製造業景況感 5カ月連続で50割れ 2月受注振るわず」と題する記事を掲載した。
中国国家統計局が3月1日発表した2024年2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.1だった。前月より0.1ポイント低く、5カ月連続で好調・不調の境目である50を下回った。2月中旬の春節(旧正月)休暇で工場の稼働日数が少なかったほか、長引く需要不足で新規受注が振るわなかった。
(1)「内訳をみると、柱の新規受注は前月と同じ49.0となり5ヶ月連続で50を割り込んだ。回答企業の6割超が「需要が不足している」と答えた。春節休暇で工場稼働率が下がり、生産も1.5ポイント低い49.8となり、23年5月以来の節目割れとなった。企業の規模別でみると、大企業は2ヶ月連続で50を超えた。対照的に、民間企業が多い中小零細企業は11ヶ月連続で50を割り込んだ」
需要不足が、中国製造業の足かせになっている。需要不足は、住宅不況がもたらす不安心理が、消費者マインドを萎縮させている影響が拡大しているのであろう。
(2)「同時に発表した2月の非製造業のビジネス活動指数は51.4だった。1月を0.7ポイント上回った。このうちサービス業は0.9ポイント高い51.0となった。春節休暇で帰省や旅行を楽しむ人が増えて外食や娯楽が堅調だったとみられる。建設業は53.5となり前月から0.4ポイント下がった」
非製造業は、春節による好影響を受けている。建設業の低下は、民間の固定資産投資減少を反映しているとみられる。
『ブルームバーグ』(3月1日付)は、「中国の住宅販売、2月も大幅減ー政府の支援策加速でも低迷続く」と題する記事を掲載した。
中国の新築住宅販売が2月に急減した。規制当局は苦境に陥っている不動産市場の救済に向け取り組みを強化しているものの、低迷が続いている。
(3)「中国房産信息集団(CRIC=克而瑞)の速報データによると、不動産大手100社による2月の新築住宅販売額は前年同月比60%減の1859億元(約3兆9600億円)。1月は同34.2%減だった。CRICは、2月の減少は春節(旧正月)連休期間中の季節的な販売不振が一因だと説明。3月は需要と供給が前月比で回復する見込みだが、市場の信頼回復には時間がかかるため、前年同月比では減少傾向が続く可能性があるという」
不動産大手100社による2月の新築住宅販売額は、前年同月比60%減である。1月の同34.2%減を上回る落込みである。打つ手がない状況だ。
(4)「不動産不況は中国経済にとって大きな逆風だ。債務の返済やプロジェクトの完了に苦慮している開発会社への圧力を強めている。かつて、中国のデベロッパー最大手だった碧桂園は今週、香港の裁判所で債務不払いを巡り債権者からの清算の申し立てを受けた。この1カ月前には、中国恒大集団が清算を命じられ、3年間の不動産不況の中で最大の破綻となった」
かつて、中国不動産開発企業の1位や2位を競い合った中国恒大集団と碧桂園が、ともに清算状態へ追込まれている。中国不動産開発の危機を象徴している。
(5)「当局は、支援適格とした不動産プロジェクトを記載したいわゆる「ホワイトリスト」を通じて不動産融資を増やすよう銀行への圧力を強めている。国営メディアが先月報じたところによると、中国の国有銀行は支援対象の不動産プロジェクトに少なくとも1240億元の融資を割り当てた。
国有銀行は、1240億元(約2兆6000億円)の融資枠をつくっているが、融資には慎重である。不良貸付になれば、「丸損」になるからだ。本来ならば、財政資金を投入する局面である。
(6)「ゴー・キャピタル・パートナーズのグッドウィン・ゴー会長は、住宅価格の下落と雇用の喪失によって政府が一段と強力な景気刺激策を打ち出す必要性を意味すると指摘。同氏はシンガポールで2月29日に開催されたPEREアジアサミットで、「底は近い。刺激策を始めなければならない」と述べた。中国の不動産市場が危機に瀕している。住宅価格が下落し、デベロッパーはデフォルトに陥り、人々が怒りをあらわにしている」
下線部は、消費者心理を大きく揺さぶっている。地方政府は、土地売却で税収を上げながら、現在は不動産開発企業を救済する力を失っている。「食い逃げ」である。